676 おっきくすれば、形も作りやすいよね
宝石の形を変えれるのはすごいって解ったけど、それだけじゃきれいな形にできるわけじゃないよね。
だから僕、どうしたらいいのかなぁって考えたんだよ。
「これ、ちゃんとつるつるになってるのに、なんであんまりキラキラしないんだろう」
「ああ、それは面になっているところが少ないからよ」
僕が頭をこてんって倒しながら何でだろうって言ったら、バーリマンさんがその理由を教えてくれたんだ。
「面?」
「ええ、そうよ。宝石がキラキラするのは、中でも光が反射するからなの。でもこれだと表面は少し反射するけど、中はそのまま素通りしてしまうでしょ」
そう言ってさっき作ったちっちゃな宝石を僕の目の前に持って来るバーリマンさん。
それを覗き込むと、ちょっとぐにゃあってなってるけどその向こう側が透けて見えたんだ。
「ほんとだ。反対側が普通に見える」
「そうでしょ。透明度が高くて色が鮮やかなものや、猫目石のように特殊な模様が浮かび上がるものは丸くすることもあるのよ。でもこれのように小さなものだと、光の反射が無ければきれいには見えないでしょうね」
さっき思い出してたブリ何とかってのも、面がいっぱいあったっけ。
それを思い出した僕は、どんな形にすればいいんだろうって頭をこてんって倒したんだよ。
でも、頭の中だけで考えててもよく解んないもん。
「そうだ! 一度おっきなので作ってみたらいいじゃないか!」
目の前にあれば、どうしたらきれいになるかすぐに解るよね。
そう思った僕は、ポシェットから鋼の玉を取り出したんだよ。
「二個くっつければ、ちょっと大きめのが作れるよね」
そう思った僕はクリエイト魔法で二つの玉をくっつけたんだ。
そしたらおっきなビー玉くらいになったから、そのままさっき作ったちっちゃな宝石とおんなじ形にする。
「これのいろんなところに面を作ればいいんだよね?」
そんな訳で、とりあえず下っ側の平たい逆三角錐の形を変えることに。
「8個くらいの三角にすればいいかなぁ?」
もっと多くできるけど、ちっちゃなのだと解んなくなりそうだもん。
だからとりあえず逆さまの二等辺三角形が8個くっついてできてる形にしたんだ。
でも、三角形だから下も平になるでしょ。
そのせいで、今までは上から見るときれいな丸だったのがかくかくになっちゃった。
「これだと、上も三角形にしないとダメだよね」
そうは思ったんだけど、ここでひとつ問題が。
下っ側と違って、上はてっぺんが平らになってるでしょ。
だから下と同じようにしたら、なんか変になっちゃったんだ。
「そうだ! 上は丸っぽくしたいから、三角形を何個か組み合わせた方がいいのかも?」
そう思いながら何度かクリエイト魔法を使って形を変えてみたんだよ。
そしたらさ、それを見てたキャリーナ姉ちゃんが変なこと言ったんだよね。
「ルディーン。何で四角形をいっぱい作ってるの?」
「違うよ、僕が作ってるの、三角形だもん」
「え~、でもでも」
キャリーナ姉ちゃんはそう言うと、面をいっぱい作った鉄の玉を持って上っ側を僕に見せてきたんだ。
「ほら、四角形がいっぱいだよ」
「あっ、ほんとだ!」
キャリーナ姉ちゃんに言われて初めて気が付いたんだけど、三角形をいっぱい並べたのを上から見ると角度を変えた四角形を何個も作ったみたいに見えるんだよね。
「でも、三角形を並べようって思って作ったから、ちょっと変になっちゃってる」
「なら、ちゃんと四角形にすればいいよ」
「あっ、そっか。お姉ちゃん、頭いい!」
僕はどうなってるか解りやすいように、まずは上っ側を四角い箱形にしたんだよ。
でね、次におんなじ大きさだけど45度傾けた四角形をそれに重なるように作ったんだ。
「あっ、きれいな三角形ができた」
「でもルディーン。これだと上がおっきな平らになっちゃうよ」
「そっか。じゃあこの中にも四角形を作るね」
僕は二つの四角形の線が重なってるとこを頂点にして、中に四角形の線を二個書いたんだよ。
そしたら真ん中がちっちゃな八角形になったから、そこが盛り上がるようにしていろんな線でできた三角形を傾けたりしながら丸っぽくしてったんだ。
「あっ、何かきれいな形になったっぽい」
「でも、ルディーン。さっきの小っちゃいのをこんな風にするんだよね? だったらここの三角、見えなくなっちゃうんじゃない?」
キャリーナ姉ちゃんに言われたところを見てみると、上の八角形に8個のほっそい三角形があったんだよね。
「ほんとだ! でも、こんなのがあると作るのが大変かも?」
「じゃあさ、下のおっきな三角と一緒にしたら?」
「そっか、四角形にすればおっきくなるもんね」
上の平らなとこも八角形なんだから、四角形があってもいいよね。
そう思って下のおっきな逆三角形とくっつけるとなんかいい感じに。
「キャリーナ姉ちゃん。どう思う?」
「何かカッコよくなったし、これで作ってみてよ」
「うん、解った!」
僕は元気にお返事すると、さっきの丸っこくなったちっちゃな青い宝石を持ったんだよ。
でね、鉄で作った見本を見ながらクリエイト魔法を発動。
鉄の時と違ってちょっと大変ではあったけど、何とかそれっぽい形にすることができたんだ。
「やった! ちゃんとキラキラになってる」
「ほんとだ!」
さっきバーリマンさんが教えてくれた通り、面をいっぱい作ったら宝石の中でも光が反射してキラキラになったんだよね。
だからうれしくなって、それをバーリマンさんに見せてあげたんだ。
「あら、できたの?」
「うん! すっごくキラキラになったんだよ」
そう言って宝石をバーリマンさんの手のひらにのっけてあげたんだ。
「かなり変わった形にしたのね」
僕が作ったのは、バーリマンさんの知らない形だったみたい。
そのちっちゃな宝石を指でつまむと、窓の方に向けてお日様の光を当てたんだ。
「っ!?」
そしたらバーリマンさんは、何でか知らないけどすっごくびっくりしたお顔になっちゃったんだよ。
だから僕、ちょっと心配になってどうしたの? って聞こうとしたんだ。
でもその前にバーリマンさんは、おっきな声でロルフさんを呼んだんだよね。
「どうしたのじゃ、ギルマスよ。そのような大きな声を出して」
「伯爵、それどころではありません。これを見てください」
バーリマンさんはそう言うと、ちっちゃな宝石をロルフさんの手のひらにのっけたんだよ。
「ふむ。かなり変わった形をしておるのぉ」
「そんなことより、早く光を当ててみてください」
バーリマンさんに催促されたロルフさんは、何をそんなに騒ぐことがあるのじゃ? って言いながらその宝石を窓の方に向けたんだよ。
「なっ!?」
そしたら今度はロルフさんが、すっごくびっくりしたお顔に。
「どうしたの? 僕、変なことしちゃった?」
だからロルフさんたちに聞いてみたんだけど……。
「これほどの光の乱反射は見たことが無いぞ」
「はい。下側は面が少ないからかそうでもありませんが、上の円形部分は見たこともないほどの輝きを放っておりますわね」
僕をほったらかしにして、二人でそんなこと言ってるんだもん。
だから何でお返事してくれないのって怒ろうとしたんだけど、その前に他の人の声が割り込んできた。
「そんなにすごいのですか?」
「私たちにも見せてください」
何とルルモアさんと、ちょっと離れた所からチラチラこっちを見てたお母さんがすごいお顔でロルフさんに迫っていったんだ。
「うっ、うむ。落とすでないぞ」
それがほんとにすごい勢いだったもんだから、ロルフさんも慌てたみたい。
ちょっと焦ったお顔で、ちっちゃな宝石を手のひらにのっけてお母さんたちに渡したんだよ。
「これは……本当にすごいですね」
「複雑な形の水晶でも、これほど輝くことはないわよ」
二人ともちっちゃな宝石を光に当てながら、周りに僕たちがいるのも忘れてすごいすごいって言ってるんだもん。
だからなのか、横にいたキャリーナ姉ちゃんがちっちゃな声で言ったんだよ。
「あれ、私のなんだよね。お母さん、ちゃんと返してくれるかなぁ?」
読んで頂いてありがとうございます。
なんちゃってですが、ブリリアントカットの宝石爆誕です。
本当なら下のカットももっと凝ったものにしないといけないのですが、そんなことをルディーン君が思いつくことはないのでこの形に落ち着きました。
でもこんな騒ぎになって、本当にキャリーナ姉ちゃんの手に戻ってくるのかなぁ?
さて、2月14日に転生したけど0レベルの3巻が発売されます。
月曜日の更新をお休みさせて頂いたおかげで、無事特典の書下ろしの短編2作も書き終わりました。
お父さんお母さんとの畑仕事のお話と、スティナちゃんとお留守番をするお話の2点なのですが、このうち書籍の初回特典はスティナちゃんとの話になります。
こちらは初回特典なので売切れたら読むことはできません。
因みに1巻の特定書店にだけついた特典は私ですら持っていなかったりします。(一つは近くに店舗が無く、もう一つは午前中に買いに行ったにもかかわらず売り切れていました)
もし気になる方は、お早めに手に入れることをお勧めします。
まぁ、ネット通販ならまず売り切れるなんてことは無いでしょうけどw
3巻の表紙はまだ編集さんから貰えてなかったりする(汗




