675 魔力を通しやすいものはクリエイトしづらいみたい
私のもう一つの作品、「魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをしようと思ったらNPCが許してくれませんでした~」もよろしくお願いします。
https://book1.adouzi.eu.org/n1737jf/
テイストは少し転生0と違いますが、基本ほのぼの路線で進みますのでよかったら読んでみてください。
「あんまりおっきいの、無いなぁ」
クリエイト魔法で形を変えてみることにしたんだけど、赤い宝石のかけらの中にはちっちゃなのしかなかったんだよね。
これだと丸くしてもホーンラビットの魔石より、かなりちっちゃくなっちゃうんじゃないかなぁ。
そう思った僕は、別の色の魔石のかけらを見てみたんだよ。
そしたら青いのの中に、おっきなのがあったんだ。
「バーリマンさん。これ使っていい?」
「いいけど、縦に割れたものだからケガをしないように気を付けてね」
「うん!」
僕が見つけたのはね、薄くて細いけど3センチくらいの長さがある青い宝石のかけらなんだ。
これはおっきいけど、そのまんまだと使い道がないでしょ。
だからかけらの中に入ってたみたい。
「でも、こんだけおっきかったら、ちゃんとしたのができるかも」
という訳でさっそくクリエイト魔法をかけようとしたんだけど、それを見たキャリーナ姉ちゃんが怒ってきたんだ。
「ルディーン。私、赤がいい」
「でも、キャリーナ姉ちゃん。赤いのだとちっちゃいのしかないからきれいなの、できないよ」
赤い宝石のかけらでも形を変えることはできるだろうけど、僕が前世で見たような形にしてもよく解んないもん。
それだとわざわざ形を変える意味が無いんだよね。
「これだと、きれいなのができるの?」
「うん。僕が思ってる通りの形にできれば、すっごくきれいなのができると思うよ」
僕がそう教えてあげるとね、キャリーナ姉ちゃんは納得してくれたみたい。
「きれいなのができたら、前に作ってくれた時みたいにペンダントトップにしてくれる?」
「うん、いいよ。いいよね、バーリマンさん」
これはバーリマンさんの宝石のかけらだから、さっきはくれるって言ってたけどもう一度聞いてみたんだ。
そしたらいいよって。
「私はそのかけらも粉々にして色インクに混ぜ込むくらいしか使い道がないもの。大きいのでも小さいのでも同じだから大丈夫よ」
「やったぁ! ルディーン、いいって」
キャリーナ姉ちゃんも喜んでるから、青い宝石のかけらにクリエイト魔法をかけてみることにした。
「どんな形にしようかなぁ」
このかけら、結構おっきいから変わった形にもちゃんとできると思うんだよね
そう思った僕は、腕を組んでう~んって考えたんだよ。
「そうだ! あれをやってみよう」
前の僕がいたとこにはね、すっごくきれいな形の宝石があったんだ。
確かブリなんとかってやつ。
平らなとこがいっぱいあって、動かすと底がキラキラしてすっごくきれいなんだよ。
「あんなのが作れたらいいなぁって思うけど、僕、ちゃんとした形がどんなのかは知らないんだよなぁ」
だって前の僕も本物は見たことなかったもん。
だから大体こんな形じゃなかったかなぁってのを思い浮かべてみることにしたんだ。
「確か、上は平らだった気がする」
横から見ると下が逆三角形になってて、上が山のてっぺんを平らにしたような形だったような?
それに確か、結構平ぺったいんだよね。
そんな風に形を思い出しながら体に魔力を循環させて、青い宝石のかけらにクリエイト魔法をかけてみたんだよ。
でもちゃんとした形を想像してなかったからなのか、逆さになった背の低い円すいの上にてっぺんがつぶれたお饅頭が載ってるような形になっちゃったんだ。
「ルディーン、これあんまりきれいじゃないよ」
「うん。ちょっと失敗しちゃったみたい」
思ってたのと全然違うものができちゃったもんだから、キャリーナ姉ちゃんと二人でちょっぴりしょんぼり。
でもね、横で見てたロルフさんとバーリマンさんは違ったんだよ。
「おお、本当に宝石の形が変わったぞ」
「それに、あれ程はっきりとした形に変えられるなんて」
ふたりがあんまりびっくりしてるもんだから、僕、なんで? って聞いてみたんだよ。
そしたらバーリマンさんが、宝石みたいに魔力を通しやすいものはクリエイト魔法が効きづらいんだよって教えてくれたんだ。
「クリエイト魔法は物質に働きかけてその形を変えたり結合させたりするでしょ。でも魔力を通しやすいものは引っ掛かりが無いから難しいらしいの」
「引っ掛かり?」
「ええ。例えば土に水をかけると固めることができるわよね。でも小さな石の粒だと水を吸い込まずにそのまま通り過ぎてしまうから固めることができないでしょ」
宝石の中は魔力がスムーズに進めるから、魔法陣を刻んだりするとうまく発動するんだって。
その変わり小さな石の粒にお水をかけた時とおんなじように、形を変えたりするみたいなそのものに魔力で影響を与えるのは難しいんだってさ。
「でもでも、僕、ちゃんと形を変えられたよ?」
「ええ、だから驚いているのよ」
バーリマンさんの知り合いにも、クリエイト魔法を使える魔法使いさんが何人かいるんだって。
その人たちから聞いた話らしいんだけど、宝石とかミスリルみたいな魔法金属だけじゃなくって金や銀も魔力を通しやすいからうまく形を変えられる人は少ないそうだよって教えてくれたんだ。
そしたらさ、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんが不思議そうなお顔をしたんだよね。
「あれ? 前にルディーンがお家でアクセサリー作ったの、銀じゃなかったっけ?」
「うん、そうだよ。でも僕、その時は鉄を使うより銀や銅の方が簡単に形を変えられる気がしたんだけど」
バーリマンさんの言った通りだと、銀は鉄よりクリエイト魔法を使うのが難しいはずだよね。
だから僕、なんでだろうって腕を組みながら頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらさ、ロルフさんが笑いながらその理由を教えてくれたんだ。
「それは多分魔力強度が普通のものたちよりも、はるかに強いからじゃよ」
マジックミサイルとかって、攻撃魔力が高いと強くなるでしょ。
それとおんなじで、クリエイト魔法も魔力強度ってのが高いと強くなるんだって。
「先ほどやってみても解る通り、ルディーン君は宝石の形を変えることができるほど強い魔力強度を持っておる。だから魔法による加工難度よりも金属の特性による加工難度のほうがより顕著に出たのであろう」
「どういうこと?」
ロルフさんの言ってることが難しくって、僕、よく解んなかったんだよね。
だからバーリマンさんに聞いてみたんだけど、そしたら笑いながら教えてくれたんだよ。
「そうねぇ。普通に加工できる力があるなら、硬い鉄より柔らかい銀の方が簡単だったってことなんじゃないかしら」
「ああ、そっか」
そう言えばお姉ちゃんたちに頼まれてアクセサリーを作った時も、銅や銀の方が柔らかいから作りやすいのかも? って僕も思ったっけ。
クリエイト魔法はなれてないものだと思った通りのものができないけど、それ以外にもうまく使えるようになるには魔力強度ってのもいるんだね。
「じゃあクリエイト魔法を使う人はみんな、魔力強度ってのが上がるように頑張らないとダメなんだね」
「それはちと難しいのではないかと思うぞ」
「えー、なんで?」
魔力強度ってのが上がればうまく使えるようになるなら、みんな上げた方がいいよね。
そう思った僕は聞いてみたんだけど、そしたらロルフさんは笑いながらこう言ったんだ。
「魔力強度はレベルが上がらねば強くはならぬ。だが普通の魔法使いは魔物を狩ったりはせぬからのぉ」
「そうですわね。ルディーン君の様に狩りをする魔法使いは、迷宮都市にいる高ランク冒険者チームに所属しているごく一部だけでしょうから」
そっか、魔法使いさんって普通はお金持ちばっかりだもん。
そんな人たちは狩りになんか行かないか。
「その高ランク冒険者をやっておる者たちじゃが、多分クリエイト魔法など覚えてもおらぬであろう。わざわざ自分で作らなくても、金や立場を使えばどんなものでも手に入れるのはたやすいからのぉ」
「そう考えると、ルディーン君はとても貴重な存在と言えますわね」
そう言って笑うバーリマンさん。
そしたらそれを見たロルフさんも、長いお髭をなでながらそうじゃなって笑ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
クリエイトも魔法の一種なので、当然使う人の魔力によって強さと言うか使いやすさが変わります。
ルディーン君の場合、レベルもそうですがジョブが賢者なので普通の魔法使いよりも魔力が高いんですよね。
それにしょっちゅうクリエイト魔法を使っているので、その熟練度も高いです。
正直、これほどうまく宝石の魔法を変えられるのは帝国中探しても殆どいないでしょうね
さて、私事と申しますか、不甲斐ないと言いましょうか、実は3巻の初回につく書下ろし短編2本がまだ書けておりません。
実は一話完結の短い話を書くのがとても苦手でして、休み中も考えていたのですが2本の内まだ1本しか、それもプロットしかできていなかったりします。
そんな状況ですので申し訳ありませんが、この週末はそれに専念したいので月曜日はお休みさせてください。
因みに3巻は2月14日発売です。初回特典の短編、なんとしてもよいものを仕上げるのでよろしくお願いします。




