669 お金のお話しと怒られるお父さん
私のもう一つの作品、「魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをしようと思ったらNPCが許してくれませんでした~」もよろしくお願いします。
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テイストは少し転生0と違いますが、基本ほのぼの路線で進みますのでよかったら読んでみてください。
お父さんとお母さんのお話を聞いて、よく解んないって言うお顔をしてるイザベルさん。
だからなのか、お父さんが僕に聞いてきたんだよ。
「ルディーン。この人になんって説明したんだ?」
「あのね、お家に帰って来たお父さんが寄付してきたよって言ってたって教えてあげたんだ」
お父さんはあの時、僕にそう言ったもん。
だから合ってるよねって言ったんだけど、お父さんは笑いながらそれは勘違いするのも仕方ないなって。
「えっと、イザベルさんだったか?」
「はい」
「俺はこの子の父親で、ハンス・カールフェルトだ」
お父さんはイザベルさんにご挨拶するとね、寄付のお話を始めたんだよ。
「孤児院に寄付をしているのは事実だけど、そのお金はルディーンの預金からというか、収入から出ているんだよ」
「ルディーン君の収入からですか!?」
びっくりするイザベルさん。でも、これは当たり前だよね。
だって孤児院で孤児院への寄付はイーノックカウにいる、お金がいっぱいある人にお願いしているんだよって言ってたもん。
でもグランリルの村はお金持ちでしょ? だから一番近い大きな街がこのイーノックカウだからお父さんたちは寄付してくれてるんだろうなぁって思ってたみたいなんだ。
「でもルディーン君はまだ、狩りに行けるような歳じゃないですよね?」
「いや、ルディーンはもう狩りに出てるぞ。流石にうちの村の近くにある森は危ないから、まだ一人で行かせてはいないけどな」
イザベルさんは僕がもう狩りに出てるって聞いて、またびっくりしてるんだ。
今日は何回びっくりしてるんだろう。
僕がそんなこと考えてたら、イザベルさんがあれ? ってお顔をしたんだよ。
「あっ、でも村の森には狩りに出かけていないというのなら、どうやって寄付をするほどの収入を得ているんですか? 普段は村に住んでいるんですよね?」
「ああ、それはだな」
その質問にお父さんが答えようとしたらね、
「それに関しては、私がご説明いたしますわ」
ルルモアさんがカウンターからすごい勢いで飛んできてそう言ったんだ。
これには僕もお父さんもびっくり。
今日はホントに、みんながびっくりする日だよね。
「えっと、あなたは?」
「冒険者ギルドで受付を担当している、ルルモアと申します」
「ああ、あなたが度々名前が出てくるルルモアさんですか」
僕もお父さんも、何度かルルモアさんがって言ってたもんね。
だからご挨拶をしてもらって、イザベルさんもこの人がそうなのかぁって頷いてるんだよ。
「それで、なぜルルモアさんがルディーン君の収入の説明を?」
「そうだよな。別に俺が話しても……」
「ハンスさんは黙っていてください!」
なんか言う前に叱られて、しょんぼりしちゃうお父さん。
そんなお父さんを無視して、ルルモアさんはお話をし始めたんだよ。
「まず最初に、これからお話しするのはルディーン君のプライベートにかかわる話です。なので他言をしないと約束して頂けない場合はここで終わらせて頂きます」
「えっ? ええ、そうですよね。誰にも話さないと約束します」
「では、こちらへ」
ルルモアさんはそう言うとね、イザベルさんと僕たちを冒険者ギルドの二階にあるお部屋に連れて行ったんだ。
「先ほども申しましたが、これは本来部外者にお話しする内容ではありません。ですがそのままにするとハンスさんがペラペラと余計なことまでしゃべってしまいそうなので」
「うっ」
ルルモアさんにキッて睨まれて、しゅんとするお父さん。
「ハンスさんも反省しているようなので、話を続けさせていただきます」
それを見たルルモアさんは、そう言ってイザベルさんにお話しをしはじめたんだ。
「ルディーン君が狩りをしているというのは先ほどお聞きになりましたよね?」
「はい」
「彼は他の冒険者と違い、魔法で狩りをするのです。そのため本来なら高ランクの狩人が数日かけて1匹狩れるかどうかという希少な魔物を、一日で複数狩ることができるのです」
イザベルさんはそれを聞いてもよく解んないのか、はぁって言いながらちょっとぽかんってしたお顔をしてたんだよ。
だから僕、おしえてあげたんだ。
「あのね、僕が狩ったのはブレードスワローっていう、とってもきれいな鳥の魔物なんだよ」
「ルディーン君。わざわざぼかして話をしているんだから、説明しないの」
そしたらルルモアさんに怒られちゃった。
お顔は笑ってたけど、ちょっと怖い雰囲気だったから僕はお父さんといっしょにしょんぼり。
「それでは、話の続きを。実は少し前にこの鳥の狩猟依頼があったんですよ。先ほどもお話ししたようにとても狩るのが難しい魔物なのでその依頼料がとても高く、またその際余分に獲れたものの買取価格もかなりのものでした」
「かなりと言いますと?」
「合計すると、内壁の中の家を購入できるくらいですね」
あれ? イザベルさん、あんまりびっくりしてないみたい。
僕がこのお話を聞いた時はすっごくびっくりしたのになぁ。
そう思いながらイザベルさんのお顔を覗き込んだんだけど、そしたらお口をぽかんと開けて固まってたもんだから僕の方がびっくり。
「わっ! イザベルさん、大丈夫?」
「えっ? ああ、大丈夫よ。君にはいろいろと驚かされたけど、今の話はそれをすべて合わせたより驚いたわ」
イザベルさんはそう言って笑うと、今度はルルモアさんの方を見たんだよ。
「なるほど、その一部を寄付して頂けたのですね」
「いえ。今のはルディーン君の狩りによる収入の話であって、寄付金の原資の話ではありません」
すっごいお金のお話しが出て来たから、僕もそっから寄付したのかなぁって思ったんだ。
でもルルモアさんは、そうじゃないよって言うんだよ。
「ルディーン君の寄付は一度だけ行われるのではなく、これから毎年行われることになっています」
「そうなの?」
よく解んなかった僕は、となりで一緒にしょんぼりしてたお父さんに聞いてみたんだ。
そしたら、
「あれ? 言ってなかったか?」
なんて言うんだもん。
「ハンスさん、まさかルディーン君に説明をしていなかったのですか!?」
それを聞いたルルモアさんが、すっごく怒っちゃったんだ。
「寄付金の説明に関しては、その原資も含めて錬金術ギルドのギルドマスターが直接説明したと聞いています。その時にルディーン君に説明し、その許可を取って欲しいと言われなかったのですか?」
「許可はちゃんととったぞ。なぁ、ルディーン」
「うん。寄付してって言われたからいいよって答えて来たけど、よかったよね? ってお父さんに聞かれたから、僕、いいよって言ったよ」
そう教えてあげるとね、ルルモアさんは偉かったねって笑ってくれたんだよ。
でもその後すぐに、すっごく怖いお顔になってお父さんを見たんだ。
「何の説明にもなっていないじゃないですか! バーリマン様はかなりの時間を取って、丁寧にお話をされたはずですよね?」
「えっと、確かにいろいろ言われた記憶はあるけど……」
ルルモアさんの勢いに、どんどん小さくなってくお父さん。
でもね、それだけじゃ終わらなかったんだ。
「ハンス。私も詳しい話は聞かされていないのだけど、一度だけでなく継続的な出費をあなたはルディーンや私に何の相談もなく決めて来たというの?」
「そっそれは……」
わぁ、お母さんがすっごく怖いお顔になってる。
僕知ってる! これって、近づいちゃダメな時のお母さんだ。
そう思った僕は、お父さんから離れてイザベルさんの後ろに隠れたんだよ。
「待て、ルディーン。ちょっと助け……」
「ハンス!」
お母さんにコラーって叱られて、ビクッてするお父さん。
「ルディーン君はまだ小さいですから、その金の管理は確かにハンスさんたち親がすることになっています。だからと言って、そのすべてを勝手に決めていいという訳ではないんですよ!」
「そもそも、私に何の相談もなく、ルディーンのお金のことを決めるだなんて!」
お母さんとルルモアさんに二人がかりで叱られて、しょぼんを通り越してお顔が青くなってるお父さん。
それを見た僕は、絶対にお金のことでお母さんたちを怒らせちゃダメなんだねって思ったんだ。




