667 僕の仲良しさんたち
私のもう一つの作品、「魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをしようと思ったらNPCが許してくれませんでした~」もよろしくお願いします。
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テイストは少し転生0と違いますが、基本ほのぼの路線で進みますのでよかったら読んでみてください。
バーリマンさんたちは怖くないよって教えてあげたのに、イザベルさんはまだしょんぼりしたまんまなんだよ。
「イザベルおねえちゃ、どちたの? ぽんぽんいたい?」
そんなイザベルさんのお腹のあたりを手のひらでぽんぽんしながら心配そうなお顔のまねっ子ちゃん。
それに気が付いたからなのか、ちょっとだけ元気を取り戻したみたい。
「大丈夫よ。ありがとうね」
まねっ子ちゃんにそう言うと、僕の方を見たんだ。
「ルディーン君が錬金術ギルドと裁縫ギルドとの関係があることは解ったわ。それじゃあ君の親御さんはバーリマン家とオレナン家とのつながりがあるってことで合ってるわね?」
「バーリマン家とオレナン家?」
バーリマン家ってのはバーリマンさんのお家のことだよね。
でもオレナン家ってなんだろう? そう思った僕は聞いてみたんだよ。
そしたらクリームお姉さんのお家のことだよって教えてもらったんだ。
「つながりってのはよく解んないけど、クリームお姉さんはお母さんと仲良しだよ」
「そうなのね。じゃあ、バーリマン家はお父さんと仲がいいのかな?」
「ううん。バーリマンさんはね、僕と仲良しなんだ」
そう教えてあげるとね、何でか知らないけどイザベルさんは不思議そうなお顔になったんだ。
「えっと、ルディーン君はどうやってバーリマン様と知り合った……じゃなくて、お友達になったの?」
「あのね、最初はロルフさんと仲良くなったんだ」
「ロルフさん?」
「うん。錬金術ギルドにいるお爺さん。僕ね、初めて会った時に、ポーションの作り方や属性魔石の作り方をロルフさんに教えてもらったんだ」
イザベルさんはバーリマンさんやクリームお姉さんのことは知ってたみたいだけど、ロルフさんのことは知らないみたい。
だから錬金術ギルドで仲良くなったんだよって言っても、そうなのねとしか言わなかったんだ。
「その、ロルフさんがどうかしたの?」
「僕ね、村で髪の毛がつやつやになるお薬を作ったんだよ。そしたら司祭様からロルフさんにも教えてあげないとダメって言われたんだ。だからもういっぺん錬金術ギルドに行ったんだけど、そしたらバーリマンさんがいたんだよね」
バーリマンさんとはそのお薬のことで仲良くなったんだよって教えてあげると、イザベルさんはなんとなく解ったわって。
「それじゃあイーノックカウの家というのは、お母さんが仲のいいオレナン家が管理しているものを借りているのね」
「違うよ」
「えっ? でもルディーン君はグランリルの村に住んでいるのよね? それならイーノックカウに家を持てないと思うんだけど」
イザベルさんは頭をこてんって倒しながら少し考えると、両手をパチンって合わせたんだ。
「ああ、そうか。オレナン家が保証人になってお母さんが居住権を取得して買ったのね。当たりでしょ」
「ううん、違うよ」
「え~、これも違うの?」
ますます解んなくなって、う~んって唸りだしちゃったイザベルさん。
だから僕、教えてあげることにしたんだ。
「あのね、森でゴブリンにやられちゃってたお姉さんたちが居たの。だから助けておケガも治してあげたんだけど、そしたらお金がいるってルルモアさんが言いだしたんだ」
「ルルモアさん?」
「冒険者ギルドのお姉さんだよ。でね、前にルルモアさんが魔法で治したのならお金はかからないよって……」
「えっ!? ルディーン君。治癒魔法が使えるの?」
もう! 僕がせっかく教えてあげてるのに!
「なんでみんな僕が教えてあげてると、関係ないこと言いだすの!? お話してる途中でしょ!」
「ごめんなさい。続けて」
もう! イザベルさんは大人なのに困っちゃうなぁ。
でもおとなしく聞いてくれるって言ったからお話を続けてあげることに。
「お姉さんたちがお金をいっぱい払わないと奴隷ってのになっちゃうって言ったから、僕が居住権ってのとお家を買ったんだよ」
僕はエッヘンってしながらすごいでしょって言ったんだけど、イザベルさんはなんでか不思議そうなお顔をしてるんだよ。
「えっと、奴隷にならないように居住権と家を買ったの?」
「うん。なんかね、僕んちに住んだら特別に奴隷にならなくていいんだよって冒険者ギルドのお爺さんギルドマスターが言ってた」
「えっと、ちょっと待っててね」
僕のお話を聞いたイザベルさんは、おでこに手を当てながら考えこんじゃったんだよ。
だからちょっとの間、まねっ子ちゃんとおしゃべりをしながら待ってたんだ。
「あ~、なんとなく解って来たわ」
そしたらなんか考えがまとまったみたい。
「何か特殊な状況が起こって、街の外でも治癒魔法のお金を支払わなければならなくなったのね。そのお金が高額だったから、ルディーン君が治したお姉さんたちは借金奴隷にならなければいけなくなったと」
「うん」
「でも、冒険者ギルドの規則の中に救済制度があって、お金をもらう側のルディーン君の家に住み込みで働きに出れば、借金奴隷にならなくてもよかった。そのためにバーリマン家が保証人となって君が居住権を得て家を買ったと。それで合ってる?」
「ちょっと違う」
「まだ違うの!?」
ほとんど合ってるけど、保証人になったのはロルフさんだもん。
だからそのことを教えてあげたんだ。
「バーリマンさんは僕が買ったお家を持ってた人で、居住権の保証人ってのになってくれたのはロルフさんだよ」
「えっ? ロルフさんって、錬金術ギルドにいたお爺さんよね?」
僕が教えてあげると、イザベルさんはまた頭をこてんって倒したんだ。
「居住権を取得するためには、かなりの信用を持つ人が保証人にならないといけないはずなんだけど……何者なの? そのロルフさんって」
「あのね、ロルフさんはすっごいお金持ちなんだよ。だってイーノックカウの中にもお家があるし、東門の外にもおっきなお家があるもん。それに冒険者ギルドのお爺さんギルドマスターも、何とかろうって言って、頭をペコってするくらいすごい人なんだ」
僕は両手を広げながら、東門の外にあるロルフさんちがどれだけ大きいのかを教えてあげたんだよ。
でもイザベルさんはそれを見ないで難しいお顔をしてるんだ。
だから僕、もしかしてロルフさんちのことは教えちゃダメだったのかも? ってちょっと心配になっちゃったんだよね。
だってもし悪もんがそのお話を聞いたら、お金がいっぱいあるかもって来ちゃうかもしれないもん。
「イザベルさん。もしかしてお金持ちのお家のお話って、他の人にはないしょにしないとダメだった?」
「あっ、そんなことは無いんだけど……」
イザベルさんは別に、僕がロルフさんのお家のことを話したからこんなお顔をしてるんじゃないんだって。
「それだけのお金持ちなら、名前くらい聞いたことがあるはずだと思ったのよ」
イザベルさんは孤児院の人だけど、神殿の人でもあるでしょ。
だから寄付をしてくれるイーノックカウのお金持ちのことは、大体知ってるんだって。
でもロルフさんって言われても思い出せなかったもんだから、あんなお顔をしてたそうなんだよ。
「錬金術ギルドにいたというのがヒントなんだろうけど、私はそっちの方面に関して何も知らないからなぁ」
「あのね、ロルフさんはお薬にも詳しいんだよ。切り株薬局ってとこのハーフリング店長さんとも仲がいいんだ」
イザベルさんは神殿の人だからお薬屋さんなら知ってるんじゃないかなって、マロシュさんとも仲がいいんだよって教えてあげたんだ。
でもね、それだけじゃやっぱり解んないみたい。
一生懸命考えてるのに思い出せなくって、だんだん苦しそうなお顔になってきてるんだ。
「ロルフって響き、なんとなく聞き覚えはあるのよ。だからもうちょっと、もうちょっとだけヒントをくれない?」
「ヒント? 何かあったかなぁ?」
そう思って僕は、おてての指を折りながら頭をこてんって倒したんだ。
「お家が二個あるのは教えたでしょ。錬金術ギルドにいつもいるのも言ったし。あっ、そうだ! バーリマンさんが伯爵ってあだ名で呼んでるんだよ。だからよくロルフさんに怒られてるんだ」
「伯爵……?」
僕がそう言うとね、さっきまでは苦しそうなお顔だったのに今度はなんだかもうダメだぁってお顔になっちゃったんだ。
「ルディーン君。その人のお名前、まさかランヴァルト・ラル・ロルフ・フランセン様とか言うんじゃないわよね」
「あっ、確かそんな名前だったかも? とっても長かったし、お爺さんギルドマスターもフラなんとかろうって言ってたもん」
僕がそう教えてあげるとね、イザベルさんは糸が切れたお人形みたいにへなへなぁって座り込んじゃったんだ。
「仲がいいって……フランセン様と仲がいいって……私、どうなってしまうの……」
「イザベルさん、大丈夫」
心配になって声を掛けたんだけど、イザベルさんはそのままその場に突っ伏してなんかぶつぶつ言いだしちゃったんだ。
「イザベルおねえちゃ、そんなとこでねんねしたら、めっだよ」
でね、それを見たまねっ子ちゃんはそう言いながらその頭をポンポンしたんだ。




