662 そっか、ただ投げるだけじゃつまんないよね
私のもう一つの作品、「魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをしようと思ったらNPCが許してくれませんでした~」もよろしくお願いします。
https://book1.adouzi.eu.org/n1737jf/
テイストは少し転生0と違いますが、基本ほのぼの路線で進みますのでよかったら読んでみてください。
ビュンビュン、カラン。
僕が作った木の輪っかはみんなに大好評。
うまい子もへたな子もみんな飛ばしては、それを拾いに走ってたんだ。
でもね、そのうちただ飛ばすだけじゃ面白くないって思った子がいたみたい。
「そうだ!」
一人の子がちっちゃな子たちが遊んでるところに行って、遊んでた積み木を持ってきたんだ。
でね、それ三つ積み上げると、それに向かって木の輪っかを投げたんだよ。
こつん、カラカラン。
ホントは投げた輪っかをその積み上げた積み木に入れるつもりだったのかな?
でも積木は輪っかよりもちょっと小さいだけだから、一番上のに当たって落ちちゃったんだよね。
「あ~、はいらなかった」
「なにそれ、おもしろそう」
「ぼくもやる」
だから投げた子はすっごく残念そうだったんだけど、周りの子たちはそれを見て真似し始めちゃったんだ。
そうなると、困るのは積み木で遊んでたちっちゃい子たちだ。
おっきい子が輪っかの的にするために持ってっちゃうと、形が作れなくなっちゃうからね。
「ぼくがあそんでたのだよ!」
「もってっちゃだめ!」
「わぁ~ん」
中には遊んでたのまで持ってく子がいたもんだから、泣き出す子まで出てきちゃったんだ。
「こら、小さい子をいじめるのなら、その遊びを禁止するわよ」
そしたらさ、それを見たイザベルさんがもうカンカン。
仲良く遊べないなら、おもちゃを取り上げるって言いだしたんだよね。
「ぐすっ。そんなの、やだ」
それに一番ショックを受けたのは、最初に輪っかで遊んでたまねっ子ちゃん。
この子は何にも悪いことしてないのに取り上げられそうになったもんだから、泣きそうになっちゃったんだよ。
だから僕、何とかしなきゃって思ったんだ。
「イザベルさん。せっかく作ったのに、遊んじゃダメって言わないで」
「でも、ルディーン君。このままだとまたケンカになっちゃうわよ」
「うん。だからね、そうならないようにするんだ」
僕はそう言うと、また薪のところへ。
積み木を的にするから、ケンカになっちゃうんでしょ。
なら別のを作ればいい。
そう思った僕は、クリエイト魔法を使って的になる棒を作ったんだ。
「ほら。これを立てれば輪っかを入れる的になるでしょ」
僕はそう言うと、まねっ子ちゃんを呼んでその棒めがけて木の輪っかを投げさせたんだよね。
かつん。
残念ながら輪っかは棒に入らずに弾かれちゃったけど、まねっ子ちゃんは大喜び。
「もういっかいやる!」
そう言って輪っかを拾いに行くと、また戻ってきて輪っかを投げたんだ。
「たのちい!」
それも入らなかったんだけど、そんなことは関係ないみたい。
まねっ子ちゃんは輪っかを拾っては投げるを何度も繰り返したんだ。
「おにいちゃん、ぼくもやりたい!」
それを見たこのひとりが僕のところに来て、的を作ってって言ったんだよ。
そしたらみんなが集まってきて、私にも作っての大合唱。
だから何本かおんなじのを作ったんだけど……。
「おっきな子が投げると、棒が倒れちゃうのか」
まねっ子ちゃんはまだ小さいから投げた輪っかがあたっても倒れなかったけど、僕とおんなじくらいの子が投げるとうまく入らなかった時に棒が倒れちゃうんだよね。
そうするとその棒も直しに行かないとダメだもん。
そんなの面倒だし、何より走ってく子が多くなったらぶつかったりして危ないかも?
「みんな、ちょっと待ってね。違う的を作っちゃうから」
僕はそう言うと、どんな形がいいかなぁって考えたんだ。
立てるところをおっきくすれば倒れなくなるけど重くなるし、いっぱいあるとじゃまだよね。
なら、何本かまとめた方がいいかな?
そこで思いついたのは、くっつくボールを投げる的当て。
あの的みたいにすれば、楽しいんじゃないかな。
そう思った僕は、どんな形にしようかなって考えたんだ。
「倒れないように板の上に何本か棒を立てるとして」
次に考えたのは、点数をどうするかってこと。
「的当てはちっちゃな丸の方が点が高かったけど、こっちは細いと入りやすいよね」
それに棒が長いか短いかでも、入れやすさは変わると思う。
なら、太さや長さの違う棒を何個か立てればいいってことか。
そう思った僕は、試しに作ってみることにしたんだよ。
動かさないならちょっと大きめでもいいだろうからって、一番ふっとい薪にクリエイト魔法を発動。
おっきな四角い板に、高さの違う棒がいっぱい立ってる的を作ったんだ。
そしたら、それを見たイザベルさんが聞いてきたんだよ。
「これが、さっき言ってた的なの?」
「うん。これから棒の太さを変えたりするつもりだけど、できあがりもあんまり変わんないと思う」
そう教えてあげたらね、もう一度的を見たからこれじゃダメよって言いだしたんだ。
「なんで? どこがダメなの」
「だって、危ないじゃないの」
もしこの的の近くで転んだら、立ってる棒でおケガをしちゃうかもしれないでしょって。
そう言えばそっか。
僕が作った的は、普通の棒が立ってるだけなんだよね。
だからイザベルさんの言う通り、そこに倒れ込んだらちょっとあぶないかもしれない。
ってことで、クリエイト魔法を発動。
棒の先っぽをみんな、まぁるくしたんだ。
「これなら、あぶなく無い?」
「ええ、そうね。でも、できたら土台をもう少し小さなものにして欲しいかな」
僕はみんなが一度に遊べるようにって、おっきな板にいっぱい棒を立てたんだよ。
でもイザベルさんは、小さい方がいいって言うんだ。
「これだと場所を取ってしまうし、なにより真ん中あたりに立っている棒に入ったら、取るのが大変でしょ」
「そっか! そんなとこまで考えてなかった」
そこからはイザベルさんとお話しながら運んでる時に危なく無いようにって板を丸いものに変えたり、大きさや立てる棒の数を調整。
板ごとに太さや高さがを変えて、入れやすさの違う的を何個か作ったんだよ。
そうすれば、ちっちゃい子もおっきな子も遊べるもんね。
「あっ、そうだ! 数字も書かなきゃ」
「数字? そんなものを書いて、どうするの?」
「だって、それが無いと点数が付けられないじゃないか」
棒のとこに数字が書いとけば、その数を足すだけですぐに誰が勝ったか解るでしょって言ったんだ。
でもね、それを聞いたイザベルさんはそれじゃダメよって。
「ルディーン君は計算ができるのね。でもこの子たちには無理だもの」
そっか、足し算ができなかったら点数なんて比べられないもん。
それに数字だって、読める子はあんまりいないかも?
「だから数字の代わりに小さな丸を的の前に何個か書いて、入ったらその数だけ石がもらえるようにしたらどうかな?」
「そうすれば、石の数で誰が勝ったかすぐに解るもんね」
ってことで、一番太くて背の高い棒には星を5つ、それ以外の的にも太さや長さによって星の数を書いてったんだ。
「これでいい?」
「ええ。これなら遊んでも大丈夫よ」
イザベルさんのお許しが出たってことで、みんなのお披露目。
「遊んでいいって」
「わぁ~い!」
「やったぁ」
それを聞いたみんなは、いろいろある的を選んで持って行っては何人かずつで遊び始めたんだ。
これでみんな、ケンカしないで遊べるね。
そう思った僕は、ほっと一安心。
でもね、その時あるものが目に入ったんだ。
「あれ、どうしよう」
それはさっき作った、一本ずつ立てる的の棒。
せっかく作ったんだし、あれも何かに使えないかなぁ?
読んで頂いてありがとうございます。
当初は輪投げだけでおもちゃ作りは終わるつもりでした。
でも思いついてしまったので、申し訳ありませんがあと一話だけお付き合いください。
それとですね、今回からは本来の月金更新に戻すつもりだったのですが、週末に用事が入ってしまいまして。
その為書く時間が取れそうにないので次回は通常通り今週金曜日に更新しますが、次の月曜日の更新は申し訳ありませんがお休みさせてください。




