657 冒険者ギルドの近くにこんなのがあったんだ
私のもう一つの作品、「魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをしようと思ったらNPCが許してくれませんでした~」もよろしくお願いします。
https://book1.adouzi.eu.org/n1737jf/
テイストは少し転生0と違いますが、基本ほのぼの路線で進みますのでよかったら読んでみてください。
「どっちに行こう」
遊びに行くとは言ったけど、僕、この近くに何があるか知らないでしょ。
知ってるのは錬金術ギルドに向かう道くらいなんだけど、その途中にある屋台街はちょっと遠いんだよなぁ。
「あそこなら面白いものがあるかもしれないけど、お母さんが遠くに行っちゃダメって言ってたもん。今日はやめとこ」
そう思った僕は、別の方向には何があるかなぁってキョロキョロしたんだ。
でもここからじゃ、面白そうなものは見えないんだよね。
「北門の方にはなんにもないし、行ったことないとこを探検してみよっと」
そんな訳で、錬金術ギルドでも北門でもない方の道を歩き出したんだ。
それからはちょっとの間普通のお家が並んでて、特に面白そうなものは見つからなかったんだよ。
だから僕、違う方を探検した方がよかったのかも? なんて思ってたんだ。
でもね、それからもうちょっと歩いたところで、僕くらいの子の声がいっぱいしてるところを見つけたんだよね。
「あれ、何だろう?」
まだちょっと離れてるから、ここからじゃそれが何なのかよく解んない。
ってことで、僕はそこに向かっててくてく歩いて行ったんだ。
「広場みたいになってるけど、ちっちゃな公園があるのかなぁ?」
近くに行くまでは普通のお家が並んでたのに、そこは他と違って低い柵がある広場みたいになってたんだよ。
だから隣りのお家の陰から、そ~っとその広場をのぞいてみたんだよ。
そしたらちょっとおっきな、でもぼろっちい家がその広場の奥にあったんだ。
「ここ、何だろう? 学校ってとこなのかなぁ。でも、おっきい子やちっちゃい子がいるし」
お家の前の広場には僕くらいの子や、もっとちいっちゃい子がいっぱい遊んでたんだよね。
だから最初はお勉強を教えてくれるとこなのかなぁって思ったんだけど、それにしてはそこにいる子たちの大きさがぜんぜん違うんだもん。
あんなに違ってたら、きっと教える人がすっごく大変だと思う。
だっておっきい子とちっちゃい子じゃ、お勉強する内容がぜんぜん違うでしょ。
ってことは多分、ここは学校ってやつじゃないんだろうなぁ。
そう思いながらその広場をのぞいてたらね、それに気が付いた村のシスターさんみたいな恰好をしたお姉さんがこっちに来たんだ。
「坊や、何か御用?」
「ううん。あのね、ここは何するとこなんだろうって思って見てたんだ。でもお姉さんを見て解っちゃった。ここ、ちっちゃな神殿なんだね」
グランリルの村にも、お爺さん司祭様がいるちっちゃな神殿があるもん。
ここみたいにぼろっちくはないけど、そこも見た目は普通のお家みたいなんだよね。
イーノックカウにはすっごくおっきな神殿があるけど、北門の近くからそこまでお参りに行くのは大変でしょ。
だから毎日お参りする人のために、こういうちっちゃい神殿があるんだろうなぁって思ったんだ。
でもね、それを聞いたお姉さんは違うよって。
「神官が管理を任されているけど、神殿ではないのよ。ここは孤児院なの」
「こじいん?」
こじいんってなんだっけ? どっかで聞いたことがある気がするけど……。
そう思った僕は、腕を組んでう~んって考えたんだよ。
そしたらさ、やっと思い出せたんだ。
「思い出した! お父さんやお母さんがいない子が住んでるお家だよね。お父さんが寄付ってのを頼まれたからしといたよって言ってた!」
お父さんは僕が作り方を教えてあげた簡易冷蔵庫とかがいっぱい売れたから、そのお金からちょっとだけ孤児院ってところに寄付してってバーリマンさんから言われたんだって。
その話はイーノックカウから帰ってきた時に、僕にするかどうかなんて聞かなくてもいいから寄付しといてって言っといたよって教えてくれたんだよね。
確か晩ご飯を食べながら、お父さん、いいことしてきたねってみんなでニコニコしながらお話したんだっけ。
僕がそんなことを考えてたら、シスターの格好をしたお姉さんがびっくりしたお顔でこう言ったんだよ。
「まぁ、寄付をしてくださっている家の子だったのね。ありがとう。せっかくだから、中を見ていく?」
「うん!」
宿屋さんやギルド、それにロルフさんちみたいなお金持ちのお家には入ったことあるけど、イーノックカウにある普通のお家には入ったことないもん。
だから中はどんなのだろうってワクワクしながらシスターのお姉さんについて行ったんだ。
そしたらさ、そんな僕たちにお庭で遊んでた子たちが気付いて寄ってきたんだよ。
「イザベルおねえちゃん、そのこだぁれ?」
「あたらしく、はいってくるこ?」
みんな初めて見る僕が誰なのか、すっごく気になるみたい。
シスターの姉さんの服を引っ張りながら、誰? って聞いてるんだ。
そんな子たちにシスターの姉さんはニコニコしながら、お客さんだよって教えてあげたんだ。
「この子はね、孤児院に寄付をしてくれているお家の子なんだって。だからみんな、お礼を言おうね」
「うん!」
「ありがと!」
みんなが一斉にお礼を言うもんだから、僕、ちょっとびっくりしたんだよ。
でもみんながニコニコしてるのを見て、すぐに僕もニコニコになったんだ。
「シスターの姉さんは、イザベルさんって言うの?」
「ああ、そう言えば自己紹介がまだだったわね。私はイザベル・ムーア。中央大神殿からこの孤児院を任されているのよ」
「僕はルディーン・カールフェルトです。8歳です。よろしくお願いします」
イザベルさんが教えてくれたから、僕もしなきゃって自分のことを教えてペコっておじぎをしたんだ。
そしたらさ、それを見たイザベルさんはびっくりしたお顔に。
「丁寧なごあいさつ、ありがとう。イザベル・ムーアです。こちらこそよろしくお願いします」
慌てておじぎしながらこんなこと言うもんだから、今度は僕がびっくりしたんだ。
「どうしたの、イザベルさん。ご挨拶はさっきしたよ」
「いや、すごく丁寧に挨拶されたものだから……」
イザベルさんは、僕がまだ小さいのにちゃんとご挨拶できたからびっくりしたんだって。
それを聞いた僕は、何でそんなことでびっくりしるんだろうって思ったんだけど……。
「普段はここの子とばかり接しているから、同じくらいの歳なのにちゃんとご挨拶ができるのを見てちょっと慌ててしまって」
「そっか、ここにいるのはみんな知ってる子だから、会ってもちゃんとしたご挨拶なんてしないもんね」
僕だってロルフさんやルルモアさんに会った時はこんにちはってご挨拶するだけだもん。
ここにいるみんなもイザベルさんには同じようなご挨拶しかしてないだろうから、急にお名前を言ってペコってされたらびっくりするかもしれないね。
「いや、そういう訳じゃ……」
僕がそう思いながらうんうんうなずいてたら、イザベルさんがちっちゃな声でなんか言ったんだよ。
だから何言ったの? って聞こうとしたんだけど、その前に孤児院の中に入らないかって聞かれちゃった。
「外から覗いていたくらいだから、中が気になっているんでしょ?」
「いいの?」
「ええ。ちょっと古い家だけど、みんなで毎日お掃除をしているから中はきれいなのよ」
そう言ってニッコリ笑うイザベルさん。
「そっか。僕、イーノックカウの普通のお家にはいるの初めてだから、ちょっと楽しみ」
そんなイザベルさんに手を引かれながら、僕はお庭で遊んでたみんなと一緒に孤児院の中に入っていったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
かなり前に寄付の話が出た孤児院が初登場です。
とは言ってもここはいくつかある孤児院の一つなので、ルディーン君の寄付が全額ここに使われているわけではないのですが。
さて、実は今週末と来週末、2週続けて泊りの出張になってしまいました。
特に今週はもしかすると火曜日までの長期になるかも?
そんな訳で、来週は金曜日だけの更新となります。
また10月は事情があって書く時間がほとんど取れません。
ですので申し訳ありませんが、10月は4日、14日、21日、28日の4回更新となります。
ちなみに魔王信者に顕現させられましたはストックがあるので今のところ毎週更新するつもりですが、もしかすると最終週辺りで休載することになるかも?




