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638 専用の道具まで作ってあるの?

「なるほど、クレイイールか。あれは確かに美味いし、旦那様も気に入っておられるから試食につけるのはいいかもな」


 僕がクレイイールを焼こうよって言ったら、ノートンさんはそれはいいって喜んでくれたんだよ。


 でもね、横で聞いてたカテリナさんはちょっと違う意見みたい。


「クレイイール、調理に時間いるですよ。お米ってそんなに長い時間、水につけるいいですか?」


「そういえば確かにそうだな」


 クレイイールって、捌いた後に一度脂が落ちるまで焼いてから蒸して、それをまたたれを付けながらじっくり焼かないとダメなんだよね。


 だからカテリナさんは、そんなに時間がかかって大丈夫かなぁって心配してるみたい。


「大丈夫だよ。だってお米はお水につけた後も、炊くのに時間がかかるもん」


「そうなのかい?」


「うん。炊き上がるまでにも時間がかかるけど、その後もふたをしたままちょっと置いとかないとダメなんだって」


 お米って炊くだけじゃなくって、蒸らすってのをしないとおいしくならないってオヒルナンデスヨで言ってたもん。


 だから食べられるまでに結構時間がかかっちゃうから、クレイイールを焼く時間は十分あると思うんだよね。


「そうか。そうと決まれば早いとこ、クレイイールを買いに行かせないとな」


 クレイイールは生きてるやつじゃないとおいしくないから、このお家には置いてないんだよね。


 でもノートンさんがお魚屋さんに捕まえといてって頼んでるから、買ってくるのはすぐなんだよ。


 というわけでお魚屋さんにはメイドさんに頼んで行ってもらい、僕たちは届いたらすぐお料理できるように準備。


「炭火は起こすのに時間がかかるからな」


 そう言って炭をかまどの薪にくべるノートンさん。


「私は蒸し器を出してくるですよ」


「じゃあ僕は、串の用意するね」


 その間にカテリナさんは蒸し器の用意を、僕はポシェットの中から鋼の玉を取り出して串を作ろうとしたんだ。


「ああ、クレイイールを焼くための串だったらこの厨房にも置いてあるぞ」


 ところが、ノートンさんがそんなこと言ったもんだからびっくしたんだよね。


「わざわざ作ったの?」


「ああ。旦那様の屋敷は当然として、この館にも滞在することがあるかもしれないからな。その度に串を運ぶのは手間だから、この厨房にも結構な数置いてあるんだ」


 そういえばロルフさんはクレイイールを焼いたのが好きだって言ってたもんね。


 それならその調理に使う串を作っててもおかしくないのか。


 僕はそう思って一人でうんうん頷いてたんだけど、


「あと、専用の焼く道具も作ったんだぞ」


 そこにノートンさんが足のついた金属製の箱を持ってきたもんだからびっくり。


「そんなものまで作ったの?」


「ああ。クレイイールは脂が多いから焼くと煙が出るだろ。厨房で焼くとその匂いが染みついて困るから、外で焼けるようにこれを作ったんだ」


 ノートンさんが持ってきたのは鉄の箱の横に穴を空けて空気が入るようになってる、バーベキューで使うような箱なんだよ。


 クレイイールをお料理する時はそれをお外に出して、炭を入れて焼くんだってさ。


「ここのはまだ新品だが、本館や別館のはもう何度も使っているんだぞ」


 ノートンさんはそう言いながら厨房のドアを開けて鉄の箱改め、クレイイール用の焼き台を持ってお外へ移動。


「この辺りでいいかな」


 焼き台が斜めにならないように足場をしっかり確かめながら置いていると、ちょうどそこへメイドさんが帰ってきたんだ。


「ノートンさん、クレイイールはこちらに運べばよろしいので?」


「ああ。持って来てもらってくれ」


 ノートンさんがそう言うと、メイドさんはペコってお辞儀した後玄関の方へ。


 それからすぐにお魚屋さんかな? 男の人が台車にのっけたクレイイールを持って来てくれたんだ。


「台車は後で取りに来ますんで」


「おお、ありがとな」


 お魚屋さんを見送った後、ノートンさんはおっきなクレイイールの入った桶をひょいっと持ち上げたんだよ。


「ノートンさん、力持ちだね」


「まぁこれくらいはな」


 そのまま厨房の中に持って行くと、おっきなシンクの中にクレイイールをどーん!


「しめるから、血と泥抜きは頼むな」


 カマみたいな形のぶっとい針の付いた道具をクレイイールのエラのあたりに刺したかと思ったら、そのすぐ下のところにナイフを刺して尾っぽの方まで一気に切っちゃったんだよ。


「ノートンさん、すごい」


「はははっ。何度もやってると流石に慣れるよ」


 ノートンさんは別館の料理長さんでしょ?


 でもクレイイールをお料理するやり方をよく知ってるからって、本館で出す時もわざわざ呼ばれるそうなんだ。


 だからそれ専用の道具もそろえてるし、捌くのも慣れちゃったんだってさ。


 お話しながら、どんどん捌いてくノートンさん。


 だから僕もできた切り身に錬金術の抽出をかけて、血と泥を抜いてったんだ。


「もうかなり捌けてるですか。なら串は私がうつです」


 その音に気が付いたのか、厨房から出て来たカテリナさんが串打ちのお手伝い。


 そのおかげでクレイイールの下ごしらえはあっという間に済んじゃったんだよ。


「さて、次は焼きだな。カテリナはその間に、蒸し器のお湯を沸かしてくれ」


「了解なのです」


 そう言って次の作業に入るノートンさんとカテリナさん。


 それを見た僕は、慌ててクレイイールの頭に抽出をかけて血と泥抜き。


「ノートンさん、先にこれ焼いて。たれ作らないとダメだから」


「おう、解った」


 一番最初に焼いてもらえばすぐにたれ作りに入れるでしょ。


 だからノートンさんに焼いといてってお願いして、僕はカテリナさんのところへ。


「たれを作る鍋、どれ使ったらいい?」


「ルディーン君は火を使えないですよね。私がやるのですよ」


 そこでどの鍋使ったらいい? って聞いたら、蒸し器を火にかけてたカテリナさんにこう言われちゃった。


 う~ん、こうなると僕のやること、何にも無くなっちゃったなぁ。


 ノートンさんとカテリナさんは、ほんとに慣れてるみたい。


 流れ作業のようにノートンさんが焼いたクレイイールがどんどん蒸し器の中に入ってくのを見ながら、僕はただただすごいなぁって。


 でもそこで気が付いたんだ。


「あっ! ごはん炊かなきゃ」


 僕、クレイイールをお料理するのに夢中で肝心のお米のことをすっかり忘れてたんだよね。


「ノートンさん、そろそろ炊き始めないとダメだよ」


「ああ、そういえばそうだな」


 クレイイールはまだ残ってるけど、焼くのは一度やめてお米の入ったお鍋のところへ。


「このまま火にかけるだけでいいのか?」


「ううん。ぐつぐついうまでは普通のお料理とおんなじでいいけど、そこからはちょっと違うんだよ」


 最初は強めの火でもいいけど、中のお水が沸いてきたら火を弱くしないとダメだよって教えてあげたんだ。


「途中から弱火にするのか?」


「うん。お米ってお水がなくなるまで火にかけるでしょ。だからずっと強い火にかけてると、下の方が真っ黒こげになっちゃうんだ」


 煮ものとかだと最後までお水が残ってるから、ずっと強い火で煮ても焦げないでしょ?


 でもごはんは違うもん。


 だから最後の方はホントに弱い火にしないとダメなんだ。


「でも、棒を使ってかき混ぜれば僕でも火の番はできるから、ノートンさんはクレイイールを焼きに行ってもいいよ」


「いや、コメを炊くというのがどんなものか見ておきたい。カテリナ、今蒸してるのが仕上がったらお前も来い」


「はいなのです」


 そういえば今日はお米の試食をするためにお料理してるんだもん。


 その炊き方を見るのが一番大事だよね。


 ってことで、3人そろってお鍋の番。


「ぐつぐついって来たから、薪を崩すね」


「もうほとんどぐつぐついってないから、もうちょっと火を弱くするよ」


 こうやって僕が火の調節をしながら20分ほど。


「そろそろかなぁ」


 料理スキルが働いたのか、これくらいでいいって感じたからノートンさんに頼んで火からおろしてもらう。


「このまま蓋を取らずに置いておくんだったな」


「うん。そうすることを蒸らすっていうんだって。これをするとお米がふっくらしておいしくなるんだよ」


 僕と違って完成したのを知らないノートンさんとカテリナさん。


 だから料理スキルが働かないのか、間違えないように僕のお話を真剣に聞いてるんだよ。


「あとはほっとくだけだから、クレイイールを焼いちゃお」


「ん? おお、そうだな」


 でもこのまま三人でじっとお鍋を見ててもしょうがないもん。


 だから残ってるクレイイールをお料理しちゃうことにしたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 書き始めた当初は1000文字も行かないうちに終わるだろうと思っていた調理のお話。


 ところが書いてみると、試食に行くどころか完成さえしないというw


 まぁ料理の説明ではなくルディーン君の行動を書くのがメインだし、これはいつものことなんですけどね。


 さて、転生したけど0レベルの第2巻、本日発売です。


 もう手に入れてくれた方もいるのかな?


 見どころはなんといっても、高瀬コウ先生の挿絵と裏表紙のかわいいルディーン君。(本文ではないのか?w)


 後、書下ろしのルディーン君とスティナちゃんのお話も、面白いというかかわいく書けていると思うので楽しんでもらえたらなぁと思います。


 前回のあとがきでも書いた通り、特典は書籍版とダウンロード版の2種類。


 書籍の方は相変わらず発行部数が少ないので、欲しい方はお早めに。


 まぁ今回は特定店舗だけの特典がないので、急がなくてもネット通販なら買えそうではありますがw


 話は変わって発売日を前に。


 1巻の時は2巻が出ることが決まっていたから、ワクワクはしたけどドキドキはあまりなかったんですよね。


 でも今回は売れないと3巻が出ないので、今これを書いている時点でかなり緊張しています。


 緊張してどうにかなるものでもないんですけどね。


 ほんと、売れるといいなぁ。


 さて、そんな時に申し訳ないのですが今週末、ちょっと用事がありまして書く時間が取れると言いきれない状況だったりします。


 何とかなるかなぁとも思わないでもないのですが、もし書けなかった場合また突然の休載になってしまうので休ませて頂こうかと思います。


 というわけで次回更新は来週の金曜日、21日になります。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[一言] コメが出だしたから ストーリー グチャグチャですね
[気になる点] 542話にて家族でイーノックカウに来たときにクレイイールを食べたいとルディーンが言い、ノートンが魚屋に手配しておくと答えました。 今話で専用器具が未使用ということは、イーノックカウに来…
[一言] 福岡県は、ここ数年で近所の本屋が数軒潰れる田舎だから手に入るかわからないけど、探してみます。
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