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626 あれ? 名前が違ってる

「パディ?」


 探知魔法で見つけたもの、それについてるお名前は僕の知らないものだったんだ。


 それはね、今いるとこの横に流れてる小川のちょっとだけ上流にある池みたいなところにあるみたい。


 ただ、それは川岸じゃなくって池の中にあるって出てるんだよね。


「どうしたんだ、ルディーン」


「あのね。この奥に池があるんだけど、魔法で調べたらその中に食べられる草が生えてるって出たんだよ」


「池の中に食べられる草が生えてる?」


 お父さんはなんか知ってるかなって思って聞いたんだけど、よく解んないみたい。


「あのね、パディって言うんだって。お母さんは知らない?」


「私も聞いたことないわね」


 お母さんは昔、イーノックカウに住んでたって言ってたでしょ。


 だから知ってるかなって思って名前を教えてあげたんだけど、聞いたことみたい。


 ってことは、あんまり知られてない食べ物なのかなぁ?


 そんなこと考えてたら、キャリーナ姉ちゃんが聞いてきたんだよ。


「ねぇ、ルディーン。それっておいしいの?」


「解んない。だって食べられるものを探そうと思ったら見つかっただけだもん」


 僕の使ってる探知魔法、こういうのを探したいって思いながら使うとその場所が地図の上に出てくるんだよね。


 さっき僕は食べられるものないかなって魔法を使ったでしょ。


 だから食べられるけど、それがおいしいかどうか解んないんだ。


「でも、食べられるんでしょ? すっごくおいしいものかもしれないよね」


「そっか。僕、辛いものとか苦いものは食べられないもん。食べられるって出たのなら、おいしいのかも!」


 キャリーナ姉ちゃんに言われて気が付いたけど、僕が食べられるものって思いながら探したんだもん。


 だったら、まずくて食べられないものが見つかるはずないよね。


「私、食べてみたい!」


「僕も! ねぇお父さん、いいでしょ?」


 もしかしたらすっごくおいしい草かもしれないでしょ。


 だから僕、お父さんにその草を探しに行ってもいい? って聞いてみたんだよ。


「そうだな。もしかしたら新種の食べ物かもしれないし」


「今日は多分ゴブリンの集落を見つけられないだろうから、ギルドへのいいみやげ話になるかもしれないわね」


 そしたらお父さんたちも、探しに行くのに賛成みたい。


 そんな訳で、僕たちはそのパディってのを探しに、森の中に入っていくことにしたんだ。



 小川の横を森の奥に向かって歩く僕たち。


 そしたら10分ほどで、探知魔法にパディってのがあるよって出てた池のとこまで来れたんだ。


「ここがそうなの?」


「うん。さっき出てたのはここだよ」


 そこは小川の先にあるだけあって、そんなにおっきな池じゃなかったんだ。


 お父さんたちは、池の近くまで行ってそこに生えてるものを見始めたんだよ。


「確かに池から草が生えているように見えるが」


「私には、よく見るものしか生えていないように見えるわね」


 僕がここに食べられる草があるって言ったもんだから、お父さんたちは知らないものが生えてるんじゃないかなって思ってたみたい。


 なのに池の中を見渡してみても知ってるものしか生えてないなぁって不思議そうなお顔をしてるんだ。


「なぁ、ルディーン。もしかして、水面に顔を出さないくらいの小さな草なのか?」


「解んない」


 お名前は解ってるけど、探知魔法じゃそれがどんなものかまでは解らないんだよね。


 だから僕も、池に生えてる草を見てみたんだよ。


「あれ?」


 そしたらさ、なんとなく見たことがあるようなものを見つけたんだ。


「僕、ちょっと近くで見てくる」


 この池って、大きさがちっちゃいだけじゃなくって深さもそんなにないんだよね。


 だから僕、その中に入ってジャバジャバって進んでったんだ。


「おい、ルディーン。何か見つけたのか?」


 僕だけじゃ危ないと思ったのか、お父さんもついて来てくれたんだよ。


 だから安心して、見つけた草のところへ。


「この草ってもしかして稲?」


 それはね、黄緑色だけど前世にあったお米がとれる草、稲ってのにそっくりだったんだ。


 だからそれを一本採って、池のお外へ。


 詳しいことが知りたいからって、鑑定解析してみたんだけど。


「あれ? さっきと違うお名前になってる」


 そしたらエリィライスって出たもんだから、僕、びっくりしたんだ。


「なんで近くに来たらお名前が変わっちゃったんだろう?」


 さっき森の外で探知魔法を使った時は、パディって出てたでしょ。


 なのに何で違うお名前なのかなぁって頭をこてんって倒してたら、お母さんがどうしたのって聞いてきたんだ。


「なにか見つけたみたいね。あれ? なのになぜそんなお顔をしてるのかな」


「あのね。何でか知らないけど、鑑定解析ってので調べたらエリィライスって出たんだよ」


 だから名前が変わっちゃったんだって教えてあげたんだ。


「あら、違うものなのね」


「うん。でも、多分食べられるって出たのはこの草だと思うんだ」


 だってお名前にライスってついてるもん。


 ライスってお米のことだよね。


 ならきっと、食べられる草ってこれのことだと思うんだ。


「えっと、場所を間違えたってことは無いのね?」


「うん。だって僕の使ってる魔法、地図が出るもん」


 場所はさっき魔法を使った時に出たとこなのは間違いないんだよ。


 だからそう教えてあげると、お母さんはもしかしてって。


「ルディーン。もしかしてその魔法は、この草が生えている場所の名前を教えてくれたんじゃないかしら」


「場所のお名前?」


「ええ。例えば麦やお野菜を作る場所は畑って言うでしょ。最初に出たのはその名前だったんじゃないかな」


 そういえば僕、食べられる草じゃなくっておいしいものないかなって探したっけ。


 だから食べられる草じゃなくって、それが生えてる場所はここですよって探知魔法に出たのかも?


 そう思った僕は、この池がどんなとこなのかなって探知魔法を使ってみたんだよ。


 そしたらほんとにパディって出たんだ。


「お母さん、パディって出たよ」


「やっぱり」


 僕が教えてあげると、お母さんはにっこり。


 それを見てうれしくなった僕も、ニコニコしながら手に持った稲に似てる草を見てみたんだ。


「あれ? この草、まだ緑色だけど先っぽが重くなって垂れ下がってる」


 ってことはもしかして、もうお米がおっきくなってるのかなぁ?


 そう思った僕は、その緑色の稲っぽい草に鑑定解析をかけてみたんだよ。


「わぁ! これ、もう食べられるんだ」


 そしたらさ、十分育っててもう食べられるよって出てたんだもん。


 僕、すっごくびっくりしたんだ。


 でもね、そんな僕よりもっとびっくりしてる人がいるんだよ。


「えっ、これって食べられたの?」


 それはお母さん。


 さっきは僕のお顔ばっかり見てたから気付かなかったけど、今見たらお母さんも知ってる草だったみたいなんだ。


「お母さん、この草知ってるの?」


「知ってるも何も、これは浅い池や流れのほとんど無い川によく生えてる雑草よ」


 この草、イーノックカウの森の中だとそんなに珍しい草じゃないんだって。


 だから最初に池の中を見た時、お父さんもお母さんも珍しい草なんかないって思ったそうなんだ。


「これって、池の中に生えてるでしょ? そのせいか草食の動物も食べないから、てっきり毒でもあるのかと思っていたわ」


 稲ってお水の中に生えてるでしょ。


 だからなのか草食の動物はみんな無視するし、落ちたお米はみんな池の中に入ってっちゃうから鳥も食べないもん。


 そのせいでこの草から食べられるものが採れるなんて、だぁれも思わなかったんだってさ。


「ルディーン。この草はおいしいの?」


「あっ、そっか。それを調べなきゃ」


 キャリーナ姉ちゃんに言われて、さっきの鑑定解析の続きを見てみる。


 そしたらね、この草から採れる種は同種のものと違って少し粘りが出るけど甘くておいしいって出てたんだ。


 そういえばお米って種類によって粘りがあったり、パラパラってなるものがあったりするんだっけ。


 ってことはさ、これは前世の僕が住んでたとこのお米と同じようなものってことだよね。


「どうなの? おいしいの?」


「うん。すっごくおいしいって出てるよ」


 これを聞いたキャリーナ姉ちゃんは大喜び。


「お母さん、おいしいんだって。いっぱい生えてるから摘んでいこ」


「そうね。これが食べられるってギルドも把握していないだろうし、おいしいというのなら一度戻って検証するべきかも」


 麦やお野菜はいろんな村で作ってるけど、寒い夏とか長く雨が降った時みたいにあんまり採れない時もあるでしょ。


 でもこの草は森の中に生えてるからなのか、いつでもいっぱいあるんだって。


 だからもしおいしかったら、そうういう時にパンやお野菜の代わりになるかもしれないでしょ。


「もしかしたら、飢饉対策になるかも?」


「そっか。じゃあロルフさんやバリーリマンさんにも教えてあげないとね」


 こうして僕たちは持てるだけのエリィライスを刈って、一度イーノックカウに帰ることにしたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 お米発見!


 ルディーン君は転生者ではありますが、前世の人格そのものではないからあまり執着はありません。


 でも、おいしさそのものは知識としてあるんですよね。


 だからその調理法、ご飯を炊くも知っています。


 また周りを驚かすこととなるでしょうw


 さて、前回も後書きに書きましたが、今週末も用事があって続きを書くことができません。


 ですので月曜日の更新はお休みして、次回は来週の金曜日更新となります。


 挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
魔石のサイズで「米粒大」って言葉が出てきていて、ルディーン君もロルフさんも使っていたから、普通に米が市場に流通していて、偶然ルディーン君が見つけられなかっただけなのかと思っていたけど、ここで雑草として…
[一言] 前世の記憶を本を読んだ感覚でいるのなら、他の転生者・転移者みたいにはならないね。 稲(水稲)って『水の中』といっても水中には生えませんよね(笑) 野生種の水稲は穂から落ちた種籾は水上を漂い…
[一言] ブラックボアのとんかつモドキや鳥系魔物の照り焼きチキンやオムライス、料理回が楽しみ
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