625 これなんだろう?
みんなでおしゃべりしながらのおさんぽ。
ホントはゴブリンの村を探しに来てるんだけど、さっきからずっと歩いてるだけだからもうおさんぽでいいよね。
「天気がいいから、気持ちいいな」
「ちょっと暑いけどね」
森の中と違って、今歩いてるとこは草原でしょ。
だから陰になってるとこがぜんぜん無いんだ。
でも近くにおっきな川があるからなのか、吹いてくる風がちょっと冷たくって気持ちいいんだよね。
そんな感じでてくてくとおさんぽしてたらね。
「あっ、お母さん。川があるよ」
前の方に森の中から流れてきている小川が見えてきたんだ。
「ポイズンフロッグを探しに行った時に通った川かな?」
「こんなところに続いているのね」
そんなお話をしながら歩いてたら、あっと言う間にその小川のとこまで来ちゃったんだよ。
「ちょうどいい機会だし、ここらで少し休憩するか」
その小川はね、幅は2メートルちょっとあるんだけど、深さはそんなにないんだよね。
だからそのままじゃぶじゃぶ渡っちゃってもよかったんだけど、お父さんはここで一度お休みしようって言うんだ。
「水場が近くにあると涼しいから、休むにはちょうどいいものね」
これにはお母さんも賛成みたい。
だから僕たちは、その小川の近くで休憩することにしたんだ。
「この川があるということは、ますますこちらにゴブリンの集落がない可能性が高くなったわね」
ちっちゃなお菓子を食べたりお水を飲んだりして休んでたらね、お母さんがそんなことを言ったんだよ。
「何でこの川があると、ゴブリンの村が無いの?」
「それは、ポイズンフロッグが出たからよ」
僕ね、それを聞いても意味が解んなかったんだ。
だから頭をこてんって倒したら、お母さんが笑いながら教えてくれたんだよ。
「ポイズンフロッグは毒を持つ魔物でしょ。ゴブリンだってお水を飲まないと生きていけないもの。そんなものがいる水場の近くには住めないと思わない?」
「そっか。お水に毒が入ってたら、ゴブリンはみんな死んじゃうもんね」
前にポイズンフロッグが出た時は、冒険者さんたちでも毒で死にそうになってたでしょ。
ゴブリンは冒険者さんたちより弱っちいもん。
毒が入ってるかもしれないお水なんて、飲めるわけないよね。
僕がそっかってうんうんうなずいてたらね、横で聞いてたキャリーナ姉ちゃんが不思議そうなお顔をしたんだよ。
「でも、それはこの川の近くだけでしょ。もっと奥にならいるんじゃないかな」
「多分、それは無いと思うわよ」
「なんで?」
「私たちがここに来るまでに、別の川が流れていなかったからよ」
お母さん、またよく解んないこと言ってる。
確かに僕たちがおさんぽしてる途中に川なんかなかったよ。
でも、それとこの先にゴブリンの村があるかどうかとは関係ないじゃないか。
「ルディーンもキャリーナもよく解らないってお顔をしてるわね」
「うん。だって、なんで川が無かったらゴブリンの村も無いってことになるのか解んないもん」
僕がそう言うと、お母さんが横を流れている小川を指さしたんだ。
「ルディーンが眠らせてくれたブルーフロッグの群れがいた川だけど、これに比べてかなり川幅も深さも規模が大きかったと思わない?」
そういえばあそこって、お水がいっぱい流れてたっけ。
「もっとおっきな川だったよ」
「そうでしょ。ということは、これはあの川の支流。この先にもっと幅の広い川が流れているってことじゃないの」
そっか、森の中でお水がいっぱい流れてたってことは、外にもいっぱいお水が流れてくるってことだもん。
こんなちっちゃな川のはずないよね。
「この場所から見えないってことは、もっと先に大きな川があるはずでしょ。もしゴブリンの集落がそのさらに先にあるというのなら、ニコラちゃんたちが襲われた場所まで来るとは思えないわ」
ゴブリンが村から出てくるのは、ご飯になるものを探しに行く時でしょ。
なら遠くまで行くより、近くで探す方が楽だもん。
だからお母さんは、この先にはゴブリンの村は無いんじゃないかなぁって言うんだよ。
「じゃあさ、もうこの先に行かなくていいの?」
「さっきも言ったでしょ。今日は探索のペース配分を覚える練習でもあるの。それに可能性が低くなったというだけで、まったく無くなったわけじゃないでしょ」
「そうだぞ、ルディーン。もし湧水が出ている場所があれば、川から水を得なくても済むだろ」
湧水には川や池と違ってポイズンフロッグはいないでしょ。
だからもしかするとこの先に湧水が出てるところがあって、そこにゴブリンの村があるかもしれないんだって。
「まぁ、本命は森の奥だろうから元々この先に集落がある可能性は低かったんだ。それがさらに低くなったからと言って、引き返す必要もないだろう」
そう言って笑うお父さん。
「そっか。じゃあ今日はおさんぽの日でいいんだね」
「こら。さっきシーラも言っただろ。探索の練習なんだから、ただの散歩気分じゃダメじゃないか」
あっ、そうだった。
歩きながら魔法で森の中を探さないとダメなんだっけ。
「じゃあさ、今から森の奥に魔法を使ってみるね」
さっき使ってから結構歩いたし、もう冒険者さんがいないかな。
僕はそう思いながら周りの魔力を動かして、森の奥に探知魔法を使ったんだよ。
「あれ? まだ冒険者の人がいる」
さっきの場所よりはちょびっとだけど、まだ冒険者の人が探知に引っかかったんだよね。
「まぁ、この辺りくらいまでならいるだろうなぁ」
そういえばこの小川、普段はブルーフロッグがいる川から流れてきてるんだもん
その川の近くならまだ魔物が出ないから、冒険者さんがいてもおかしくないよね。
そんなこと考えてたらね、キャリーナ姉ちゃんが言ったんだ。
「じゃあさ、じゃあさ。別のを探してよ」
「別のって、何?」
「ルディーンは果物も見つけられるんでしょ、珍しいのがないか探してよ」
そういえばそっか。
ゴブリンの村は無くっても、果物がなってる木があるかもしれないもん。
どうせ探知魔法を使うんだったら、そういうのも一緒に探したらいいかも。
「うん! やってみるね」
というわけで、今度は植物を探すつもりで探知魔法を発射!
でもね、ベリー系のがなってるところはいくつかあったんだけど、この近くに変わったものはないみたいなんだよ。
そのことを教えてあげると、お父さんが当たり前だろうって。
「採取専門の冒険者は果物も採るから、この辺りじゃ珍しいものは見つからないと思うぞ」
そっか、この近くにいる冒険者さんたちは採取の人だもんね。
じゃあ、おいしい果物は見つからないかも?
「それじゃあ草は? 薬草とかは無いの?」
「いや、薬草こそ採取の連中がみんな採っていると思うのだが」
お父さんはそう言ってるけど、とりあえず探してみることに。
でもさ、食べられないものは見つけてもしょうがないでしょ。
「薬草って探すと無いかもしれないから、食べられるもので探すね」
だから食べておいしいものを探すつもりで魔法を使ってみたんだ。
「なんだろう、これ」
そしたらさ、なんかよく解らないものが探知魔法に引っ掛かったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
今週、ちょっと忙しかったため、文字数こそいつも通りではありますが少々中途半端なところで終わることになってしまいました。
おまけに今週末と来週末、用事が入ってしまったので来週とその次の月曜日の更新をお休みしないといけないんですよ。
申し訳ありません。
ですのでこの続きは来週の金曜日になります。
後、感想も頂いているのですが、返す事ができていません。
これに関してはこの話を更新した金曜日の夕方にまとめて返そうと思っています。
それではまた来週の金曜日にお会いしましょう。




