閑話 クリエイト魔法を教えて
レーア姉ちゃんのパーティーと森に行ってからしばらく後のこと。
「ルディーン、お願いがあるの」
キャリーナ姉ちゃんが、僕のところに来てそう言ったんだ。
「なに? 僕にできること?」
「うん。あのね、てつの玉をくしにする魔法を教えて欲しいの」
レーア姉ちゃんたちと森に行った時、クリエイト魔法で作った串とかまな板でお料理したでしょ。
キャリーナ姉ちゃんは、それを聞いてクリエイト魔法を使って見たくなったんだって。
「私もレーアねえさんみたいに、お友達とお外でお肉焼きたいもん」
「そっか。でも、それだと他の魔法も使えないとダメだよ」
あの時は木の枝を乾かすのにドライを使ったし、それに火をつけるイグナイトも使ったでしょ。
かまどはクリエイト魔法で作るけど、それは別の魔法だから同じ事やろうと思ったら覚えないとダメなんだよね。
だからそのことを教えてあげたんだけど。
「それはいい。枯れ枝を探したり、火打石持ってったりするから」
キャリーナ姉ちゃんから、そういうのも友達とやると楽しいんだよって言われちゃった。
そっか、それもキャンプの楽しみだもんね。
なら覚えるのはクリエイト魔法だけで十分。
ということで、早速キャリーナ姉ちゃんにクリエイト魔法を教えることになったんだ。
「その、くりえいと魔法って、どうやってやるの? 呪文は?」
「あのね、クリエイト魔法は魔法だけど呪文は使わないんだ」
お砂糖とかを作る創造魔法やクリエイト魔法って、呪文が無いんだよね。
だから普通の魔法みたいな教え方はできないんだ。
「それじゃあ、どうやって使うの?」
「えっとね」
そういえば、どうやって教えればいいんだろう?
解んない時は調べないとダメだよね。
ってことで、ステータスをオープン!
一般魔法のところにある、クリエイト魔法の説明を読んでみたんだ。
「普通の魔法とおんなじように体に魔力を循環させて、それから変えたい形をしっかりと思い浮かべて使えばいいのか」
そういえば、僕もそんな感じで使ってたっけ。
やり方が解ったから、キャリーナ姉ちゃんにそれを教えてあげたんだよ。
そしたらさ、お手本を見せてって。
「どんな形にするのかなんて解んないもん。だからルディーンが最初にやって見せて」
「うん、いいよ」
何にもないものを思い浮かべてって言っても、すぐには無理だよね。
だからまず僕がお手本を見せることに。
いつもの鋼の玉を何個かポシェットから取り出すと、体に魔力を循環させてクリエイト魔法を発動!
「ほら、こうやって作るんだよ」
出来上がったのは15センチくらいの串。
レーア姉ちゃんたちとお肉を焼いた時は30センチくらいの串だったけど、あれは2個の玉をくっつけて作らないとダメなんだよね。
でもそんなの、いきなり作れるはずないでしょ。
だから1個の玉を使って作れるこの串をお手本として作ってあげたんだ。
「キュアの時みたいに魔力をためてから、変われーってやるのね?」
「うん、そうだよ。やってみて」
お手本は見せたから、今度はキャリーナ姉ちゃんの番。
目の前に置いた鋼の玉に向かって両手を突き出して魔法をかけたんだよ。
「あれ? ルディーンみたいにできないよ」
でも僕が作ったみたいな串にはならなくって、3センチくらいの細い棒になっちゃったんだ。
「私、ちゃんとルディーンがやったみたいになれって思ってやったよ」
「うん。僕が作ったのを見ながらだもん。ちゃんとできたはずなんだけどなぁ」
ステータス画面に書かれた通りにやったのに、なぜか失敗しちゃったキャリーナ姉ちゃん。
だから僕、何でだろうって頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらさ、あることを思い出したんだ。
「あっ、そっか!」
「なんか解った?」
「あのね。クリエイト魔法は、かける物のことをよく知らないとうまくできないってロルフさんが言ってた」
そういえば僕が銅でちっちゃい試験管を作った時、ロルフさんとバーリマンさんがびっくりしてたっけ。
「私、これが鉄だって知ってるよ?」
「ううん。そうじゃなくて、鍛冶屋さんがやってるようなことが解んないとダメみたい」
僕は前世でお勉強したことを覚えてるけど、キャリーナ姉ちゃんはそんなの知らないもん。
だからこのままだと、何べんやってみダメなんじゃないかなぁ。
「それじゃあ、私はくりえいと魔法、使えないの?」
「ううん。知らないなら、お勉強すればいいんだよ」
僕だって前世でお勉強したから使えるんだもん。
キャリーナ姉ちゃんだって、お勉強すればきっと使えるようになるはずだよね。
「お勉強?」
「うん。ロルフさんがね、鍛冶屋の子がクリエイト魔法を使えるようになったら、はじめから金属の形をうまく変えられたんだよって教えてくれたんだ」
ってことは、鍛冶屋さんでお勉強すればキャリーナ姉ちゃんもできるようになるはず。
「そっか。鍛冶屋さんに行けばいいんだね」
「きっとそうだよ!」
グランリルの村には、狩りの道具を作ったり修理したりするから鍛冶屋さんもいるんだよ。
だから僕とキャリーナ姉ちゃんは、その鍛冶屋さんに言って教えてもらおうと思ったんだ。
でもね。
「子供がこんなところに来たら、危ないだろう」
「でもでも、キャリーナ姉ちゃんが鉄のお勉強しないとダメなんだよ」
「理由はよく解らんが、槌で鉄を鍛える時に火花が散るから、中はとても危ないんだぞ。だから作業場に入れるわけにはいかないんだ」
鍛冶屋のおじさんに、危ないから子供は入っちゃダメって言われちゃった。
「怒られちゃったね」
「うん」
せっかくお勉強に来たのに、入れてもらえなくってしょんぼりしちゃうキャリーナ姉ちゃん。
「ねぇ、ルディーン。くりえいと魔法、使えるようにならないのかなぁ?」
「そんなことないよ。だってみんなが鍛冶屋さんでお勉強して使えるようになったわけじゃないと思うもん」
鍛冶屋のおじさんが言ってた通り、お仕事してるところを見るのは危ないでしょ。
だから他にも使えるようになる方法がなんかあるはずなんだよね。
「ほんと?」
「うん。イーノックカウにはおっきな本屋さんがあるんだよ。あそこに行けばきっとお勉強のやり方が書いてあるご本があるはずだよ」
前に行った本屋さん、すっごくおっきかったでしょ。
そこにいたヒュランデルさんていうエルフのお姉さんも、また何かあったら来なさいねって言ってたもん。
「今度イーノックカウに行ったら、ヒュランデルさんのお店に行って聞いてくるよ」
「ルディーン、絶対忘れちゃダメよ。約束だからね」
「うん、約束!」
キャリーナ姉ちゃんとお約束した僕は、イーノックカウに行った時にヒュランデルさんのお店に行ったんだよ。
でね、そこで無事鉄のことが書いてあるご本を手に入れることができたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
あとがきの前に一言
なろうがずっとメンテ中で、寝る寸前にやっとつながりました。
ですが流石にこれから加筆修正はできないので、今回は誤字脱字が多いかもしれませんがそこはご容赦ください。
さて、見ての通り閑話にもかからわず続きがあるような内容になってしまいました。
これに関してはまたの機会に続きを書きたいと思います。
それとこの話について、もう一つ。
今日発売の1巻を買ってくださった方々はご存じかと思いますが、高瀬コウ先生がヒュランデルさんの絵を描いてくれたんですよね。
それもカラーで。
それなのにもう登場しないのはもったいない。
なので、もし出せるなら3巻の書下ろしをこの話の続きとしてヒュランデルさん登場回にしようかとw
まぁ、編集さんからOKが出たらの話ですが。
ただ、それ以前に2巻の修正作業と書下ろしがまだ終わっていないんですよね。
という訳で金曜日に本編の加筆修正分を終わらせて、今週の土日に書きおろしを書こうかと考えております。
このような事情ですので、申し訳ありませんが月曜日の更新はお休みさせてください。
後、感想を頂いているようなのですが、そちらも同様にお返事を書く時間が取れません。
ですので、月曜日にまとめて書きますのでどうぞご容赦を。
さて、先ほども触れましたが、転生したけど0レベルの第1巻、本日3月15日発売です。
web版よりもかなり読みやすくなっていますし、書下ろしもあります。
なにより、高瀬コウ先生の挿絵やカラーイラストがとても素晴らしいです。
他力本願になりますが、それを見るだけでも十分価値がありますのでご購入を検討頂けたら幸いです。




