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閑話 お年寄りは動かないとダメなんだって

 グランリルの村にはお年寄りもいっぱい住んでるんだ。


 僕んちにはいないけど、近所のおばちゃんちにはとっても優しいおばあちゃんがいるんだよ。


 遊びに行くと、いっつもニコニコしながらよく来たねって言ってくれるんだ。


「おばあちゃん、お菓子持ってきたよ」


「おや、ルディーン坊。よく来たねぇ」


 僕ね、この優しいおばあちゃんが大好きなんだよ。


 だからお家でお菓子を作るとよく持ってくんだけど、その時思ったんだ。


「おばあちゃん。いっつも、ここに座ってるね」


「そうねぇ。ルディーン坊のように若い子と違って、私は少し動くだけで疲れてしまうからね」


 おばあちゃんはね、年をとると動くのが大変になるんだよって教えてくれたんだ。


 でも僕、前世で見てたオヒルナンデスヨでやってたから知ってるんだよね。


 長生きしようと思ったら、ちゃんと動いた方がいいって偉いお医者さんが言ってたもん。


 お年寄りはね、すごい運動はしちゃダメだけど、ちょっとの運動はしないとダメなんだってさ。


「でもでも、動かないとダメって偉い人が言ってたよ」


「それは解っているんだけど、なかなかねぇ」


 だから僕、動かなきゃダメって教えてあげたんだよ。


 そしたらおばあちゃんが、出歩くのも大変だからって笑うんだ。


「年をとると、歩くのも遅くなるでしょ。みんな忙しく動き回っているのに、邪魔になってしまったらと思うとねぇ」


「そっかぁ」


 おばあちゃん、スティナちゃんより歩くのが遅いもん。


 道を歩いてたら、みんなの邪魔になっちゃうかもって思ってるのか。


 でも、偉い先生が言ってたんだよ。


 長生きしてほしいから、絶対動かなきゃダメ。


 そう思った僕は、なんかいい方法ないかなぁてうでを組みながら頭をこてんって倒したんだ。


 そしたらさ、すっごくいいことを思いついたんだよね。


「そうだ! おばあちゃん、ゲートボールやろっ!」


 そういえば前世のお年寄りはゲートボールってのをやって体を動かしてるってオヒルナンデスヨでやってたっけ。


 それを思い出すと僕は、すぐにそう言ったんだ。


 でもね、おばあちゃんはちょっと不思議そうなお顔で聞いてきたんだよ。


「げーとぼーる? なんだい、それは」


 おばあちゃんに言われて気が付いたんだけど、そう言えばゲートボールってどんな遊びなんだろう?


 僕もちょっと見ただけだから、よく解んないんだよね。


 だからとりあえず、知ってるとこだけを教えてあげることにしたんだ。


「おっきなトンカチで木のボールを、こうやって叩く遊びだよ」

 

「しぐさからすると、転がっている球を叩く遊びみたいね。それは遠くまで飛ばせばいいのかしら?」


 えっと、確か遠くに飛ばすんじゃなくって。


「あのね、ちっちゃな門みたいののを地面に刺して、それに向かってボールを叩くんだよ」


「そう。その門を通す遊びなのね」


 確か、何個かの目標を順番に通さないとダメだった気がする。


 多分だけどやる人が順番に打っていって、一番最初に全部を通したら勝ちなんじゃないかなぁ?


 あれ、そう言えばなんか真ん中におっきな釘が刺さってなかったっけ?


 あれも関係あるのかなぁ?


 おばあちゃんとお話してるうちに、ちょっとずついろんなことを思い出していったんだよ。


 でも全部解ったわけじゃないから、お庭で一度やってみることにしたんだ。


「おばあちゃん。この薪、もらっていい?」


「ええ、いいわよ」


 おばあちゃんがいいって言ったから、僕はさっそく体に魔力を循環させてクリエイト魔法を使う。


 すると置いてあった薪が、おっきなトンカチと何個かの木のボールに変わったんだ。


「まぁ、すごい。ルディーン坊は魔法が使えるというのは本当だったのね」


 お外で魔法を使うこと、あんまりないでしょ。


 だからおばあちゃんは、僕が魔法を使ったのを見てちょっとびっくりしたみたい。


 でもすぐにニコニコしながら、すごいねって言ってくれたんだよ。


「おばあちゃん。僕がやってみるから、見ててね」


「はい。がんばってね」


 おばあちゃんに褒められてうれしくなった僕。


 今度はゲートボールでいいとこ見せるぞって、おっきな木のトンカチを持ったんだ。


 でね、そのトンカチで木のボールを。


 スカッ。


 打とうとしたんだけど、失敗して空振りしちゃった。


「あれ? 思ったより難しいかも」


 止まってるボールだから簡単かなぁって思ったんだけど、力を入れて叩こうと思ったらうまく行かなかったんだよね。


 だから今度は、ゆっくり打ってみることに。


 カンッ。


 そしたら今度はちゃんと当たって、ボールはコロコロと転がってったんだよ。


「やった! 当たった!」


 だから大喜びしながら、おばあちゃんに当たったよって。


「うんうん。ルディーン坊、偉かったねぇ」


 そしたらおばあちゃんはそう言いながら、僕の頭をなでてくれたんだ。


「今度はおばあちゃんの番だよ」


「あら、次は私かい?」


 これはおばあちゃんのために作ったものだもん。


 だから、はいっておっきなトンカチをわたしたんだ。


「確かこんな感じだったわね」


 そしたらおばあちゃんは2~3回素振りをした後、近くにあった別のボールを置いて。


 カーン。


 僕よりもずっと上手に打ったんだ。


「おばあちゃん、すごい!」


「ルディーン坊が、先に見本を見せてくれたからね」


 それからおばあちゃんと二人で、何度かボールを打ってみたんだよ。


 そしたら僕もちゃんと当たるようになったから、今度は門を作って通して見ることにしたんだ。


「確かこんな形だったよね」


 ポシェットから取り出した鋼の玉でコの字型の門を作ると、僕はそれをおっきなトンカチを使ってお庭に刺したんだよ。


「それを通せばいいの?」


「うん。ほんとは3つくらい刺してそれを順番に通すんだけど、今はこれ一個だけね」


 そう言って始めたんだけど、これが結構難しいんだよね。


 だってお庭には草を取った後の穴ぼこがあったり、ちっちゃな石ころとかが転がってるんだもん。


 だからうまく打てたと思っても、途中で曲がっちゃうんだよね。


「これ、思ったよりも難しいかも」


「そうね。でもこうやって打つだけでも楽しいわよ」


 なかなか門を通すことはできなかったけど、これ、おばあちゃんの言う通りとっても楽しい!


 だから僕たちはニコニコしながら、球を打つ遊びをして過ごしたんだ。



 僕はとっても楽しかったから、それだけで満足しちゃったんだけど。


「ルディーン坊。あの大きなトンカチとボール、あと何個か作ってもらえないかねぇ」


 どうやらそれを見てた人がいたみたい。


 おばちゃんはね、自分もやってみたいからあのおっきなトンカチとボールを貸してって近所の人たちから言われたんだって。


 でもボールは何個か作ったけど、おっきなトンカチは1個だけだもん。


 みんなから言われても困っちゃうよね。


「それにあの時使った鉄の門は、ルディーン坊が球にして持って帰ってしまったでしょ。だからどうしようかと思って」


「そっか。門が無いとゲートボールじゃないもんね」


 僕、ゲートボールがどんな遊びなのか、まだよく解んないんだよ。


 でも門を通さなかったらゲートボールじゃないのは解るもん。


 だからね、あれも木で作っちゃうことにしたんだ。


「おばあちゃん。薪、使っていい?」


「ええ。私がお願いしたんだから当然よ」


 おばあちゃんがいいって言ったもんだから、さっそくクリエイト魔法でおっきなトンカチと木のボールを何個か作る。


 そして最後に作ったのが、ちょっと変わった形の木の門なんだよね。


「おや? この門はそのまま立つようにできてるのね」


 僕が作ったのは、前世にあったハードル競争ってのに使ってたのの小っちゃい版。


 あれだったら置くだけでいいし、何より前と後ろがはっきりしてるのがいいんだよね。


「うん。ゲートボールはね、おんなじ方向から球を通さないとダメなんだって。これだったらどっちが前か後ろかすぐに解るからいいでしょ」


「確かにねぇ。それにすぐ置けるから、どこでもげーとぼーるができそうね」


 僕はちっちゃなハードルも何個か作っておばあちゃんに渡したんだよ。


 そうすればみんなが貸してって言いに来ても大丈夫だと思ったからね。


 でも、それがそうでもなかったんだ。


「ルディーン。何か新しいものを作る時は、ちゃんと言わないとダメでしょ」


「だって、僕もこんなことになるなんて思わなかったもん」


 おばあちゃんができるってことは、誰でもできるってことでしょ。


 それにどこでもできるってことは、場所によって難しさが変わるってことだもん。


 それがおもしろいからって、ゲートボール? はグランリルの村で大流行。


 でもおっきなトンカチは職人さんでも作れるけど、真ん丸のボールは作れないんだって。


 だからクリエイト魔法でみんなの分のボールを、僕が一人で全部作ることになっちゃったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 2巻の作業がなかなか終わらないということで、本編を再開できません。


 なので、前々から使いどころが難しいなぁと思っていた閑話のアイデアを出してくることにしました。


 多分次回も閑話になるんじゃないかな?


 下手に本編を始めて、時間が取れずに中断なんてことになったら困りますからね。


 さて、今週の金曜日、3月15日にいよいよ書籍版転生したけど0レベルの第1巻が発売されます。


 ほぼ全部に手を入れているうえに、書下ろし閑話もあります。


 また、発売元のアース・スター様が特設ページを作ってくれたし、すでに活動報告にも書いたのでご存じの方もいると思いますが、初回にはなんと書籍版と電子版で違う短編がつきます。


 そして、くまざわ書店さんとWonder GOOさんが協力書店というものになってくださっているそうで、そちらでもそれぞれ別の短編がつきます。


(詳しことは活動報告をご覧ください)


 まさかここまでしてもらえるとは。


 いや、ここまでしないと売れないと思われたのだろうか?


 とにかく、やっと発売までこぎつけました。


 皆様、どうぞ手に取ってやってください。


 そしてできればそのままレジに持って行ってもらったり、カートに入れるボタンを押して購入して頂けたらありがたいです。


 売れないと続きが出せないので、よろしくお願いします。


 それと活動報告に載せたり前回のあとがきに追記したのですでにご覧になっている方もいると思いますが、これが1巻表紙です。


 高瀬コウ先生のイラストがとても素晴らしい!


 私の実力以前に、これを見たら思わずレジに持って行ってしまいそうなくらいルディーン君もキャリーナ姉ちゃんもかわいいですよねw


挿絵(By みてみん)


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[気になる点] 漫画家の能力不足でクレームが発生したリアデイルみたいにならないといいね。(井戸の汲み上げ装置の絵とか) 担当の人と意思疎通と打ち合わせは綿密にしてくださいね。 そのせいで小説の進行が遅…
[気になる点] グランリルに住んでるばぁさまが動きたくなくなるって どんだけの老衰なんだろうか? お年寄りが沢山いる=グランリルは平均寿命も長いから 母親が40手前で孫がいて、狩りに出てバリバリ動けて…
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