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610 おててが小さいからへたっぴなんだって


 僕、裁縫師の一般職が付いたでしょ。


 でもね、ジョブはついたのに僕はまだすーすーすーってしか縫えないんだよね。


 でもクリームお姉さんはずばばばばって縫ってくもん。


 だから僕、何でこんなに違うんだろうって思ったんだ。


「なんですーすーすーってしかぬえないんだろう?」


 そりゃあ、ジョブがつく前よりはうまくなったんだよ。


 でもお料理の時はちゃんとおいしいものが作れたし、錬金術の時はロルフさんからお薬が作るの上手だねって褒められたもん。


 なのにお裁縫だけはすっすっすって縫えなくって、一般職がついたのにまだお母さんよりへたっぴなんだよね。


「あら、どうしたの? ルディーン君」


 だから、ずっとどうしてかなぁって思いながら縫ってたんだ。


 そしたらさ、そんな僕を見たクリームさんが何かあったの? って聞いてくれたんだよ。


 だからね、なんでか知らないけどうまく縫えないんだって教えてあげたんだ。


「そう? わたしにはうまく縫えているように見えるけど」


「でもでも、お母さんよりへたっぴだよ」


「それは仕方がないわよ。だってルディーン君はまだ手が小さいからね」


 クリームお姉さんの話を聞いて、僕、すっごくびっくりしたんだよ。


 だっておててが小さいからへたっぴだったなんて全然思ってなかったんだもん。


「おててが小さいと、うまくぬえないの?」


「ええ、そうよ。裁縫はこうして布を持ちながら針を通していくでしょ? だからある程度の手の大きさが無いとまっすぐ縫うのが難しいの」


 そう言ってゆっくりと見本を見せてくれたんだけど、クリームお姉さんのおててはすっごくおっきいでしょ。


 だから手に持った端切れの端をつまみながら、最初から最後まで全部いっぺんに縫えちゃったんだよね。


 これが僕だったらきっと、途中で何回か持ち直さないとダメだもん。


「そっか。おててが小さいと、いっぺんに縫えないんだね」

 

「ええ。それに針も大人と同じ長さのものだから余計にね。でも今のルディーン君はもう縫子見習いの子たちくらいの速さで縫えているから、ちょっと驚いてるのよ」


 お針子さんの見習いって、みんな10歳くらいから始めるんだって。


 でもね、それより小さい僕の方がうまく縫えてるんだよってクリームお姉さんが教えてくれたんだ。


「さっきシーラちゃんが言っていたけど、ルディーン君って本当に器用なのね」


「ええ。この子、料理を作ったりアクセサリーを作ったりもするんですよ」


「まぁ、そうなの? それじゃあもしかすると、狩人よりも物づくりの方が向いているのかもしれないわね」


 お母さんのお話を聞いて、クリームお姉さんは裁縫師にならない? って聞いてきたんだよ。


 でも僕、お父さんたちとおんなじ狩人になりたいもん。


 だからヤダって言ったら、笑顔でそっかぁって言われちゃった。



 

 それからちょっとして僕が牙のとこを縫い終わると、その時にはもうクリームお姉さんとお母さんのふたりで残りも全部縫い終わってたんだ。


「それじゃあ、ブルーフロッグの皮を詰めていきましょうか」


 だから今度は3人でちっちゃく切ったブルーフロッグの背中の皮を詰めてったんだよ。


「あら、思ったよりもかわいくできたわね」


 そして完成したブラックボアのぬいぐるみなんだけど、使った端切れが黒じゃなくって白や赤が多かったせいでなんとなく前の世界にいた豚さんっぽいものができちゃったんだ。


 でもそれがよかったみたいで、クリーム姉さんはその見た目に大満足。


「あとは目を入れれば完成だから、すぐに黒い糸で刺繍を入れるわね」


 後は目を入れるだけねって、横に置いてあった箱の中から黒い糸を取り出したんだけど。


「あっ、それだったらいいのがあるよ」


 それを見た僕はそう言ってお外に飛び出したんだよ。


 でね、周りをキョロキョロと見渡して青っぽい石を二つ見つけると、それを持ってまた裁縫ギルドに入っていったんだ。


「見ててね、すぐにおめめを作っちゃうから」


「目を作るの?」


 不思議そうなクリームお姉さんは放っておいて、僕はその石にクリエイト魔法をかけたんだよ。


 そしたらつるっとした球を半分にしたような形で、平らなとこに糸を通す穴が開いてるぬいぐるみの目が二個できあがったんだ。


「ほら、これをおめめにしたらいいと思うよ」


「あら、本当。それじゃあつけちゃうわね」


 それを渡したらクリームお姉さんがあっという間につけてくれたんだけど、僕が作ったぬいぐるみの目は真ん丸だったでしょ。


 だからできあがったぬいぐるみは、ますます豚さんそっくりになっちゃったんだ。


「なんか、ブラックボアじゃないのができちゃったね」


「ええ、そうね。でもつぶらな瞳が可愛いから、この方がいいじゃない」


 でもね、クリームお姉さんはそう言うと、できあがった豚さんのぬいぐるみをぎゅーって抱っこしたんだ。



「思った以上に可愛いものができたけど、これは試しに作った物なのよね」


 クリームお姉さんは豚さんのぬいぐるみを抱っこしたまま次はいよいよ本番だねって言って、僕にこう聞いてきたんだよ。


「それで、ルディーン君。本番はどんな形の物を作ればいいと思う?」


「あのね、お人形さんみたいなくまさんを作ればいいと思うよ」


 前の世界のお家にはね、とっても有名な黄色いくまさんのぬいぐるみがあったんだ。


 クリームお姉さんからどんなのがいいかなぁって聞かれた僕は、それを作ればいいんじゃないかなぁって思ったんだよ。


 でもね、そしたら急に頭の中にいろんな形が浮かんできたんだ。


「あれ? これってもしかして」


 そう思った僕は、クリームお姉さんに板と書く物を貸してって頼んだんだよ。


 でね、その頭に浮かんだ形を描いてクリームお姉さんに見せてあげたんだ。


「どれどれ? って、これってもしかしてぬいぐるみの展開図!?」


「うん。お顔のだけしかないけど、こんな感じで作ればかわいいんじゃないかな」


 裁縫師の一般職がついても縫うのはあんまりうまくならなかったでしょ。


 でも、どんな形の布を使えばいいのかはなんとなく解るようになってたみたいなんだよね。


 だからそれを描いて見せてあげたんだけど、そしたらクリームお姉さんはそれをちょっと怖いお顔でじっと見てるんだもん。


 もしかして怒られちゃうかもって思った僕は、もしかしてダメだった? って聞いたんだよ。


 そしたらさ。


「ああ、ごめんごめん。珍しい形だったから、どんなものが出来上がるのかを考えていたのよ」


 こう言ってニッコリ笑ってくれたもんだから一安心。


「じゃあ、これでいいの?」


「う~ん、せっかく描いてくれたけど、ちょっと手直しをしないとダメかな。後、できたら完成図も書いてもらえると解りやすいかも」


 僕の描いたのは本物のくまさんじゃなくってぬいぐるみのくまさんでしょ。


 これだけじゃどんな形をしてるのかがよく解んなかったみたいで、僕にどんなお顔なのか絵を描いてってお願いしてきたんだ。


「うん、いいよ」


「ありがとう。後、できたら体も一緒に描いてもらえると嬉しいかな」


 そう言われた僕は、これはせきにんじゅうだいだぞ! ってふんすと気合を入れながら、黄色いくまさんのぬいぐるみの形を一生懸命思い出して板に描いていったんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 ぬいぐるみと言ったらやっぱり千葉にある夢の国ですよね。


 でも流石にネズミはまずいだろうという事で、黄色いくまのぬいぐるみにする事にしました。


 端切れで作る以上黄色くなりませんし、服を着せなければ同じ物には見えませんからねw


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― 新着の感想 ―
[一言] ねずみーランドはまずいので、熊のぷー(習近平)さんですか。 冗談は兎も角、ルディーンの魔法で(北海道の)木彫の熊みたいなものを即興で作ればよかったのでは?
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