602 置いてきぼりはいやだよね
月曜日は体調不良で急に更新を休んでしまい、本当に申し訳ありませんでした。
フロートボードの実験は終わっちゃったし、ロルフさんたちも帰っちゃったでしょ。
だから僕、家族のみんながいるお部屋に行く事にしたんだ。
「ストールさん。実験も終わっちゃったし、僕、お父さんたちの居るお部屋へ行くね」
「はい。でしたらわたくしは通常業務へ戻らせて頂きますわ」
って事で、ストールさんとお別れしてみんながいるお部屋へ。
そしたらさ、扉の前まで行ったところで、
「ルディーンばっかりずるい!」
って言うキャリーナ姉ちゃんの声がお部屋の中から聞こえたんだ。
でもね、僕、今までストールさんと一緒にフロートボードの実験をしてたからずるい事なんて何にもしてないでしょ。
だから何でそんな事言うんだろうって思いながら、扉を開けてお部屋の中に入ってったんだよ。
「あら、ルディーン。内緒のお話はもういいの?」
でもキャリーナ姉ちゃんにその事を聞く前にお母さんが入ってきた僕に気付いて、もうご用事は終わったの? って聞かれちゃったんだ。
「うん。ストールさんとね、ルーシーさんていうメイドさんがお手伝いしてくれたんだよ」
「そうなの、よかったわね」
だからストールさんたちがお手伝いしてくれたって教えてあげたんだけど、そしたらそんな僕にキャリーナ姉ちゃんがまたずるいって言い出したんだ。
「ルディーンばっかりずるい!」
「なんで? 僕、何にもしてないもん。何でずるいっていうの?」
「だってルディーン、またお父さんたちと3人だけで森にお出かけするんでしょ。そんなのずるいよ!」
「それについては、さっきから説明しているだろう」
お父さんはね、僕がいない間にゴブリンの村を探しに行く事をお兄ちゃんやお姉ちゃんたちに教えてあげてたんだって。
そっか、それでキャリーナ姉ちゃんは僕だけがお父さんたちとお出かけするからずるいって言ってたんだね。
「だってだって、ポイズンフロッグの時だって、ルディーンだけ連れて行ったじゃない。あの時は狩りの装備を持ってなかったからダメって言ってたけど、今日は持って来てるよ。なんで私は行っちゃダメなの?」
「いや、だから、今回のはそういう問題じゃないんだ」
そう言えばポイズンフロッグの時って、キャリーナ姉ちゃんは装備を持ってきてないからついて来ちゃダメって言われたんだっけ。
でも今回は防具はちゃんと持って来てるし、武器だってあるもん。
キャリーナ姉ちゃんが怒っちゃうのも当たり前だよね。
だけどお父さんはそんなお姉ちゃんに、危ないから絶対ダメって言うんだよ。
「今回は狩りに行くのではなく、ゴブリンの集落を探すために普段は人が立ち入らないような場所に分け入る事になるんだ。そんな所に連れて行けるはずないだろう」
「そうよ、キャリーナ。狩りに出かけるのとは違って、集落の探索にはどんな危険があるか解らないもの」
お父さんたちはね、探しに行くところがどれだけ大変なところなのかを話して、そんな危ない所にキャリーナ姉ちゃんを連れていけないでしょって言うんだよ。
でもそれを聞いたキャリーナ姉ちゃんは、そんなの変だよって。
「じゃあ、何でルディーンはいいの? ルディーンは私より小っちゃいんだよ」
「俺だってな、本当はそんな危ない所にルディーンを連れて行きたくないんだ」
お父さんはね、ほんとだったらお母さんと二人だけでゴブリンの村を探しに行きたいんだって。
でもギルドマスターのお爺さんから僕をどうしても連れてって頼まれたから、仕方なく連れて行くんだよってキャリーナ姉ちゃんに教えてあげたんだ。
「ギルドマスターが、そんな危ない所にルディーンを連れて行ってって言ったの?」
「ああ。ポイズンフロッグの時、ルディーンの探索魔法のおかげで幻獣を発見できただろう? あの時と同じで、ルディーンが居ればゴブリンの集落を見つけられる可能性が高くなると考えているようでな」
そう言えばポイズンフロッグをやっつけに行った時に、ドラゴン&マジック・オンラインに出て来たフライングアイって魔物にすっごく似てる幻獣を見つけたんだよね。
どうやらギルドマスターのお爺さんは僕が一緒に行けばきっとその時とおんなじように、ゴブリンの村もすぐに見つけてくれるんじゃないかなって思ってるみたい。
だからどうしても僕を連れて行ってって頼まれちゃったんだよって、お父さんはキャリーナ姉ちゃんに教えてあげたんだよね。
「まったく! 今回の探索エリアはあの時と違って普段は人が分け入らないような難所ばかりだから、本来なら小さな子を連れて行けるような場所じゃないというのに。そしてその中でも特に厄介なのが背の高い草だ」
「そうよね。視界が悪くてゴブリンを見つけにくいというのもあるけど、何より行動を阻害されるのが問題よね」
背の高い草が生えてると、それがじゃまになって動きにくいでしょ。
それにお母さんが得意な弓は、草があんまり高く生えてるとこだと弦に当たってうまく撃つ事ができなくなっちゃうんだって。
キャリーナ姉ちゃんが狩り行く時にいつも使ってる武器は、お母さんとおんなじ弓だもん。
僕よりは高いけど、まだ背の低いキャリーナ姉ちゃんだと弓が撃てる場所の方が少ないくらいだから、余計に連れて行けないんだよってお母さんは言うんだ。
「私はある程度使えるけど、キャリーナはあまり剣を使っての狩りは得意じゃないでしょ?」
「うん……」
弓しか使えないんじゃ、背の高い草ばっかりの所になんかついて行けるはずないでしょ。
だから一緒に行くのはやっぱり無理なんだって思ったみたいで、キャリーナ姉ちゃんはすっごくしょんぼりしちゃったんだよ。
でもね、そんなお姉ちゃんに僕は大丈夫だよって言ってあげたんだ。
「キャリーナ姉ちゃん、背の高い草ばっかりのとこでも弓は使えるから大丈夫だよ」
「えー、草が前にあったら矢がまっすぐ飛んで行かないから、お母さんの言う通り使えないよ」
「うん。だからね、背の高い草の中じゃなくって、その上に出て撃てばいいんだよ」
「草の上に出るの?」
僕がそう教えてあげたのに、キャリーナ姉ちゃんはよく解らないってお顔で頭をこてんって倒したんだよね。
だから僕、さっきまでストールさんたちと実験してた魔法の事を教えてあげたんだ。
「お尻の痛くない馬車に使ってるフロートボードって言う魔法、あるでしょ? 背の高い草の上でもあれに乗っかれば行けるんだよ」
「ほんと? ルディーン」
「うん、ほんとだよ。だってさっき、ストールさんたちと実験したらできたもん。すごいでしょ」
僕はエッヘンって胸を張りながらそう言って、だからキャリーナ姉ちゃんも一緒に行こって笑ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
キャリーナ姉ちゃん、ポイズンフロッグの時に続き二度目の置いてきぼりで激おこです。
でもまぁ、仕方が無いんですけどね。本当ならルディーン君も連れて行きたくないくらいなのですから。
さて、今回の話、かなりの難産でした。
元々は月曜更新のために用意した話なのでプロットは出来上がっていたのですが、なぜか途中から話が変な方向に進んでしまったんですよね。
そのおかげでどうやって今回のラストにつなげようかと四苦八苦、普段はプロットさえできていたら2時間半から3時間ほどで書きあがるところを5時間くらいかかってしまいました。
その上、本来なら書くはずだった話の半分も行かないという体たらくです。
ホント、我ながら文才が無いなぁと思い知らされる回でした。




