598 使ってないお部屋の家具はお片付けしてるんだって
僕、いい事を思いついたって喜んじゃったでしょ?
だからそれを見たお父さんたちが、どうしたのって聞いてきたんだ。
「何だ、ルディーン? 急に喜びだしたりして」
「何かいい考えでも浮かんだの?」
でもね、思いついただけでほんとにできるかどうか解んないでしょ。
だから僕、今は内緒にする事にしたんだ。
「まだできるかどうか解んないから、あとでおしえてあげるね」
「あら、秘密なの? でも、後で教えてくれるのなら、今は楽しみにしておくわ」
そしたらお母さんがこう言ってくれたもんだから、僕はわくわくしながらお家に帰ったんだよ。
「皆様、お帰りなさいませ」
「ただいま! ストールさん。どっか、実験できるお部屋、無い?」
お家についたら入口のところでストールさんが待ってて、僕たちにお帰りなさいってしてくれたんだ。
だから僕もただいまって元気にご挨拶。
でね、その後すぐに、どっか実験できるお部屋は無い? って聞いてみたんだよ。
「実験ですか? それはどのようなものでしょうか?」
そしたらさ、何をするのって聞かれたもんだから、僕、フロートボードの実験をするんだよって教えてあげたんだ。
「フロートボードと申しますと、確かものを載せて運ぶ魔法ですよね。何か大きなものを運ぶのですか?」
「ううん。実験だから、今のっけるのはちっこいのでいいんだよ」
ホントに使う時は僕が乗るんだけど、今からやるのは実験だもん。
だから、今からのっけるのはちっちゃなものでもいいんだよってストールさんに教えてあげたんだよ。
そしたらね、ストールさんはどんなお部屋がいいかを考えてくれたんだ。
「なるほど。それならば別に大きな部屋を使う必要はないのですね」
「うん。どっかいいとこ、無い?」
「それならば二階にある、使われていない客間などいかがでしょうか?」
イーノックカウの僕んちって、元はお貴族様のお家だったでしょ?
だから二階には使ってないお客さん用のお部屋が何個かあるんだよ。
ストールさんはね、その中の一つを使ったらどうですかって、僕に聞いてきたんだ。
「ほとんどの客間は使用しないとの事でしたので、掃除などをしやすいように家具を移動させて何もない状態にした部屋がいくつかございます。それに客間ならば十分な広さがあるので、フロートボードのような物を載せて運ぶ魔法の実験にはうってつけかと」
「そっか。じゃあ、そこでやる事にするね」
「はい。ではご案内します」
実験するとこが決まったから僕はお父さんたちと玄関でお別れして、ストールさんにその空いてるお部屋に連れてってもらったんだよ。
でね、ストールさんが開けてくれたドアからお部屋の中をのぞいてみたんだけど、そしたらほんとに何にもなくってびっくりしたんだ。
「わぁ、前に来た時はすっごい家具がいっぱいあったのに、ほんとに何にも無くなっちゃってるんだね」
「はい。ここにあった家具や調度品の殆どは、この館に出向してきているメイド見習いたちの指導に使わせて頂いておりますので」
ロルフさんちはお金持ちだから、お客さんが来る時はここにあったみたいなすっごい家具が置いてあるお部屋に泊るでしょ?
だからお勉強しに来てるメイドさんたちは、その家具を使ってお客さんが来た時のお勉強をしてるんだってさ。
「それに燭台など、一部の家具は扱いや清掃に専門の知識が必要でして。その指導にも、ここに置いてあった家具が使われているのですよ」
「そっか。お勉強に使えるんだったら、ここに置いとくよりそっちに持ってった方がいいね」
「はい。以前はある程度教育が進んだものだけが客間を使っての指導を受けておりましたが、ここにあった家具や調度品のおかげでまだ未熟なものも経験を積む事ができるようになりました」
僕んちの家具のおかげで、メイド見習いのみんなが助かってるんだよって笑うストールさん。
そんなストールさんを見て僕もうれしくなってきたんだけど、でも今のお部屋を見てそれとおんなじくらい困っちゃってるんだよね。
だってさ、こんなに何にもないお部屋だと、僕が思ってるフロートボードの実験ができないんだもん。
だからどうしようかなぁって思ってたんだけど、そしたらそれを見たストールさんがどうしたの? って聞いてくれたんだ。
「どうかなさいましたか?」
「あのね、机かなんかないと実験ができないんだ。だからどうしよっかなぁって思ってたんだよね」
だから僕、このまんまだと実験ができないんだって教えてあげたんだよ。
そしたらさ、それを聞いたストールさんは、それは困っちゃうねって。
「まぁ、それはいけませんね。どのようなものが必要なのかわたくしに教えて頂ければ、すぐにご用意いたしますわ」
「そうなの? じゃあさ、これくらいの大きさの机がほしい。後、椅子も!」
「はい。ではすぐに運ばせますね」
僕が両手を広げてこれくらいのが欲しいんだよって教えてあげると、ストールさんはすぐにお部屋を出て行っちゃったんだよ。
でね、ちょっとだけ待ってたら執事見習いさんたちと一緒に戻ってきて、他のお部屋から机といすを持って来てくれたんだ。
「指定されたものに近いサイズのものを選んで持ってまいりましたが、他に必要なものはありませんか?」
「う~ん、そうだなぁ。あっ、そうだ! 僕が座れるくらいの敷物、ある?」
「はい、ございます。何枚ほど必要ですか?」
「一枚でいいよ。だって、それをフロートボードにのっけるんだもん」
フロートボードって、一度に一個しか出せないでしょ?
だからのっけるのも当然一個しかいらないんだよって教えてあげると、ストールさんは一緒に来た執事見習いさんに敷物を一枚持って来てって頼んだんだよ。
でね、持って来てもらった敷物を受け取ると、僕にはいって手渡してくれたんだ。
「ありがとう!」
「もう他に必要なものはございませんか?」
「うん。これでもう、みんな揃ったと思うよ」
とりあえずこれだけあれば考えてる実験はできると思うんだよね。
だからストールさんにもう大丈夫だよって言ったんだけど、
「解りました。それでは、わたくしはこれで」
そしたら連れて来た執事見習いさんたちと一緒にお部屋から出てこうとするんだもん。
だから僕、ストールさんに帰っちゃうの? って聞いたんだ。
そしたらさ、
「えっ、ここで実験を見ていてもよろしいのですか?」
「うん。だってちっちゃいのをのっけて成功したら、今度は僕が乗ってやってみようと思ってるもん。そしたら、誰かが押してくれないとフロートボードが動かないじゃないか」
初めはちっちゃなものをのっけて実験するだけのつもりだったけど、ここだったら僕がのっかる実験もできるでしょ?
だから僕、ストールさんに今からやる実験のお手伝いをしてねってお願いしたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
実験まで辿り着けなかった……。
そもそも、村での実験と違ってイーノックカウの館にはルディーン君専用の実験部屋がない事に気が付いたのが運の付きで、それを整えようと書いているうちに時間切れになってしまいました。
困ったもんだ。
さて、前回も書きましたが今週末もお休みさせて頂き、次回の更新は来週の金曜日になります。
その後は元の更新ペースに戻すつもりなのですが、ただ、納期が1か月早くなった仕事が思うように進んでいないんですよね。
やっている事はいつもの作業に近いのでもっと簡単かと思ったのですが、思いの他手こずっていまして。
なので申し訳ありませんがもしかすると、10月中はずっと週1ペースの更新になってしまうかもしれません。




