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597 探しに行く時は狩りと違うとこを歩くんだって


 ギルドマスターのお爺さんとのお話が終わった僕たちは、イーノックカウのお家に帰る事にしたんだよ。


「それでは明日からの探索、よろしくお願いします」


「ああ、解った」


 でね、冒険者ギルドの入口で見送ってくれたルルモアさんにバイバイした後の帰り道で、お父さんたちがこんな事を言い出したんだ。


「ルディーンを連れて行く事になってしまったが、移動はどうするかなぁ」


「そうね。まだルディーンじゃ、険しい所を進む事はできないし」


 これを聞いた僕はびっくり。


 だってさ、僕、ちゃんと森の中、歩けてるもん。


 だから何でそんな事言うの? って聞いてみたんだよ。


「何で? 僕、お兄ちゃんたちと一緒に狩りに行っても、ちゃんとついてけてるよ」


「ああ、それは解ってる。だがな、探索と狩りとでは分け入る場所がかなり違うんだよ」


「ええ、そうよ。狩りの時は常に自分が有利になるよう、考えながら行動するでしょ? でも今回のような探索は、あえてそのような場所を避けて動かないといけないのよ」


 僕やお兄ちゃんお姉ちゃんたちはね、狩りをする時は間違ってケガをしないように周りの安全を確認しながら行動しなさいってお父さんたちからいっつも言われてるんだよ。


 でもゴブリンの村を探す時は、そういうとこじゃないとこをわざと探さないとダメなんだって。


「ゴブリンがあまり強くないのは、ルディーンも解っているだろ? そんなゴブリンたちが、冒険者が好む場所に集落を作ると思うか?」


「そっか。冒険者さんたちが来たらやられちゃうから、来ないとこに作るよね」


 ゴブリンは弱っちいから、安心して住もうと思ったら人が絶対来ないとこに村を作らないとダメなんだって。


 でも人が来ないような森の奥の方だと、今度は強い魔物がいっぱいいるでしょ?


 だから普通の人が行かないような危ない場所をわざわざ選んで、そこに村を作るんだよってお父さんが教えてくれたんだ。


「だから私はルディーンを連れて行くのに反対したんだけど」


「ギルマスにあそこまで頼まれたら、流石に断れないだろ。だがルディーンの安全を考えると、ただ無策に探索に入ると言う訳にもいかないなぁ」


 僕、レベルが上がったから普通のおんなじくらいの子よりは丈夫なんだけど、体の大きさは変わんないでしょ?


 だからちょっと深めの川とかは渡れないし、背の高い草がいっぱい生えてるとこなんかだと前が全然見えなくなっちゃうんだよね。


 でもゴブリンの村を探そうと思ったらそういうのがあるとこにもいかないとダメだから、お父さんたちはどうしようかなぁって考えてるみたい。


 でね、そのまま二人でああでもないこうでもないってお話してたんだけど、どうしてもいい考えが浮かばなかったもんだから、最後にはお父さんが僕にまで聞いてきたんだよね。


「なぁ、ルディーン。何かいい魔法とか、無いか?」


「ハンス、いくらなんでもそんな都合のいい魔法があるはずないでしょ」


 それを聞いたお母さんは、ちょっとあきれ顔でそんなのあるはずないでしょって。


 でもね、そんなお母さんにお父さんは、そんなの聞いてみないと解らないじゃないかって言うんだよ。


「ルディーンは今までも、俺たちが想像もしないような事を魔法でやって来たじゃないか。例えば、イーノックカウに来る時使ったあの馬車、あんなのが作れるなんて想像したことがあったか?」


「そう言えば、そうねぇ」


 前まではイーノックカウに来るのに普通の馬車を使ってたから、ガタゴト揺れていっつもお尻が痛くなってたでしょ?


 でも僕が魔法の馬車を作ったもんだから揺れずに来る事ができて、家族みんなお尻が痛くならなかったもん。


 お父さんはね、魔法の事を全然知らなかったから今まではそんな馬車を作れるなんて思った事も無かったんだって。


 でも実際にそれが作れてみんなでその馬車に乗ってお出かけまでできたから、それとおんなじ様にもしかしたら他にも魔法でできる事があるんじゃないの? って僕に聞きたかったみたいなんだ。


「そんな訳で、俺たちはどんな魔法があるか知らないから聞くが、何かいい魔法は無いのか?」


「森の中に行く魔法かぁ」


 お父さんに言われて、僕、何かないかなぁって考えたんだよ。


 でね、その時に思い出したのが、前にロルフさんたちを森に連れてった時のやり方。


 あの時は確か石の箱をクリエイト魔法で台座と椅子にして、それに座ってもらったんだよね。


「でも、あれだと川は渡れるけど、背の高い草が生えてたらすすめなくなっちゃうよね」


「ん? 何か、思いついたのか?」


 僕が思った事を口に出しちゃったら、それを聞いたお父さんが何か思いついたの? って聞いてきたんだ。


 だから僕、何を考えてたのかを教えてあげたんだよ。


「あのね、前にロルフさんとバーリマンさんを森に連れてったことがあったでしょ? あの時の事を思い出してたんだ」


「ああ、あの時の事が。でもあの石の台座じゃ、流石に無理だろ?」


 僕が教えてあげるとお父さんはすぐに思い出したみたいで、あの方法は今回は使えないよって。


 そりゃそうだよね。


 だってあれは、僕が歩けるところで使うために考えたものだもん。


「うん。だから僕もあれじゃダメって思ってたんだよ」


 でもでも、浮くって事は深い川とかだったら渡れるって事だもん。


 なら、全く使えない訳じゃないのかなぁ?


 僕がそんな事を考えてたらね、お母さんが何かを思い出してるようなお顔でこんな事を言い出したんだよ。


「あの時は確か石の箱を魔法で浮かべて、その上に乗せて行くって話していたわよね。その魔法がもっと高くまで浮かせる事ができれば、ルディーンをそれに乗せて運べるのに」


「ダメだよ。だってフロートボードは、物を今置いてある場所からちょっとだけ浮かせる魔法だもん」


 お尻が痛くならない馬車を作る時に、お父さんもフロートボードに椅子をのっけて馬で引けばいいじゃないかって言った事があるんだよ。


 でもフロートボードはあんまり高く浮かないから、そんな事したら馬が蹴った砂とかがいっぱいかかっちゃうんだよね。


 だからそんなの無理だよって思ったんだけど、


「あれ?」


 その時に僕、頭の中でなんかが引っ掛かったんだよね。


 だから、なんか変な事考えたっけ? って頭をこてんって倒したんだよ。


 そしたらさ、今度はお父さんがこんな事言ったんだ。


「それならいっそのこと、小さな板を持って行って、それにルディーンをのせて運ぶか」


「何を言ってるのよ、ハンス。いくらなんでも、そんな事できるはずないでしょ」


 あきれ顔のお母さんと、それもそうだねって大笑いするお父さん。


 でも僕はそんなお父さんのお話を聞いて、すっごい事に気が付いちゃったんだ。


「そっか! 最初っから浮かべとけばいいんだ。お父さん、頭いい!」


 僕、それに気付いた事がすっごく嬉しくって、わーいって両手をあげながらその場でぴょんぴょんはねて大喜びしたんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 ルディーン君がまた何やら思いついたようです。


 そしてそれは当然、世の中ではまだ知られていない事だったりします。


 ただ、それを知る事ができるのは魔法の事を全く知らないお父さんとお母さんだけなんだよなぁw


 さて、先週の書いた通り、今週末と来週末は出張のため次話を書く事ができません。


 ですので来週と再来週は金曜日のみの更新となります。 


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