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592 魔法には弱点があるんだって


「えー! もうきれいな鳥、獲らないの?」


 ブレードスワローが一匹獲れたって事で、今日の狩りはこれでおしまいってお父さんが言ったんだよ。


 そしたらさ、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんが、ブレードスワローをもっと狩りたいって言い出したんだよね。


「いっぱい狩ったら、その分いっぱいアクセサリーが作れるでしょ。だから、お父さん。もうちょっと狩ってもいいでしょ?」


「いや、今日はニコラちゃんたちの弓での狩りの練習に来たというのもあるが、ベニオウの実を採りに来たというのが一番の理由だろ。採ってからそれを街まで運ぶ時間のことを考えると、そろそろなってる木のところに行かないとダメじゃないか」


 今日はいつもよりも早い時間にイーノックカウのお家を出たけど、冒険者ギルドでルルモアさんのお話を聞いたりバリアンさんが来るのを待ってたからその分街を出るのが遅れたでしょ。


 それに来る時は狩るつもりじゃなかったブレードスワローまで、キャリーナ姉ちゃんが見たいっていうからって探す事になっちゃったもん。


 だから流石に、そろそろベニオウの実のなってる木が生えてるとこに行かないとダメな時間になっちゃってたんだ。


「そっかぁ。それじゃあ、仕方ないね」


「ああ。それに今日はうちの分だけじゃなく、領主様の分まで採らないといけないからな」


 その事をお父さんが教えてあげると、キャリーナ姉ちゃんも渋々だけど納得したみたい。


 と言う訳で狩りをするのはこれくらいにして、僕たちはベニオウの実を採るために、もっと森の奥の方まで行く事にしたんだ。



 奥の方へ進んでくと、普段はそんなとこまで人があんまり来ないから森の中には草がいっぱい生えてて歩きにくくなってきたんだよ。


 そうなると僕たちやバリアンさんはいいけど、こういう険しい森の中をあんまり歩いた事が無いニコラさんたちは歩くだけでも大変でしょ。


 だからお父さんが先頭になって、なるべく歩きやすいとこを探しながら進んでたんだけど、


「ん?」


 そしたら何かに気が付いたみたいで、お父さんは周りをざっと見渡したんだ。


「ふむ。こっちか」


 でね、その後急に今まで進んでたのとはちょっと違う方に歩き出したもんだから、何でだろう? って思った僕は、向かってる方に探知魔法を使ってみたんだよ。


 そしたらさ、お父さんが歩いてく先に何個かの反応があったもんだから教えてあげようとしたんだ。


「あっ、お父さん。そっちに」


「大丈夫よ、ルディーン。ハンスはちゃんと解ってるから」


 でもね、全部言う前にお母さんが僕の肩をポンって叩いて、大丈夫だよって。


 それにお兄ちゃんやお姉ちゃんたちも黙ってうなずいてたもんだから、僕も黙ってついてく事にしたんだ。



 そのまんまちょっと歩いてたらね、


「ふんっ!」


 お父さんが急に斜め前に走り出したと思ったら、いきなり腰の剣を抜いて目の前の草むらを切り裂いたんだ。


 グギャアッ!


 そこにはね、2匹のゴブリンが隠れてたんだよ。


 お父さんはね、なんと剣の一振りだけで草むらと一緒に、その二匹のゴブリンをいっぺんにやっつけちゃったんだ。


「シーラ!」


「はいはい、解ってますよ」


 そしたら近くに隠れてた他のゴブリンたちがびっくりして、隠れてたとこからいろんな方向にビューって逃げ出したんだけど、お母さんはゆっくりと弓を構えて一番離れてたのにバシッ。


 それにね、お兄ちゃんたちは剣で近くに居たのを、それにお姉ちゃんたちはちょっと離れてるのを弓であっという間にやっつけちゃったんだ。


「僕もやっつける!」


 だから僕もすぐに体の中に魔力を循環させて、


「マジックミサイル!」


 ちょっと離れてるやつに向かって力のある言葉を放ったんだよ。


 そしたらそのゴブリンはやっつける事ができたんだけど、一匹やっつけてる間にお父さんたちが残ってたのを全部やっつけちゃったもんだから、僕、なんでみんなやっつけちゃうの! って怒ったんだ。


「僕の分までやっつけちゃうなんて、みんなずるい!」


「はははっ、ルディーンの魔法は強力だけど、撃つまでに時間がかかるのが弱点だな」


 なのにお父さんが笑いながらこんな事言うもん。


 だから、僕は、もう! ってもっと怒っちゃったんだよ。


 そしたらさ、それを見たお父さんは、慌ててそういう意味で言った訳じゃないんだよって。


「そう怒るな。お父さんは別に、ルディーンの魔法が弱いって言っているわけじゃない。物事には相性ってものがあるんだよと言いたかったんだ」


「相性?」


「ええ、そうよ。魔法には私たちの武器には無い、大きな長所があるもの」


 お父さんとお母さんはね、魔法じゃないとできない事があるんだよって僕に教えてくれたんだ。


「ハンスの剣や私の弓は確かにルディーンの使う魔法よりも早く攻撃ができるけど、ブレードスワローを狩る事はできないでしょ?」


「それに、前に倒した幻獣。あれも俺たちでは特殊な武器が無いとどうにもならない相手だが、ルディーンなら倒せたじゃないか」


 お父さんたちはね、魔法は撃つまでに時間がかかっちゃうけど、別に剣や弓よりも弱いわけじゃないんだよって教えてくれたんだ。


「どんな物だって、長所があれば短所もある。ルディーンの魔法は強力だけど、撃つまでに時間がかかるという弱点があるんだなってお父さんは言いたかったんだ」


「まぁ、ハンスが言葉足らずだったから、ルディーンが怒るのも無理は無いんだけどね」


 お母さんはそう言うと、お父さんをコラ! って叱ったんだよ。


 そしたら怒られたお父さんがしょぼんってしちゃったもんだから、僕、それを見てさっきまで怒ってたのに何か楽しくなっちゃってけらけら笑ってたんだ。


 でもね、


「なぜ?」


 僕の後ろから急に、ニコラさんのちょっと暗いこんな声が聞こえたもんだから、みんなびっくりしてそっちを見たんだよ。


 そしたら真っ青なお顔をしたニコラさんが、ちょっと震えながら立ってるんだもん。


 だから大丈夫? って聞いたんだけど、ニコラさんはそれには答えずに、お父さんにこう聞いたんだ。


「どうして、ゴブリンがあそこに隠れていたことに気付く事ができたのですか? 私にはまったく解らなかったのに……」




 読んで頂いてありがとうございます。


 ここからが本題なのですが、平日であまり書く時間が取れなかったので今回はキリがいいここまでで。


 さて、魔法というものは体に魔力を循環させないと使えないという性質上、とっさに放つ事ができません。


 なので不意打ちされると反撃のしようが無いんですよね。


 ルディーン君の場合は剣を使っての近接戦闘ができるし、何より索敵魔法が使えるので狩りをする際には何の問題もありませんが、本来なら盾役が居なければ魔物がいる森の中になんて入ってこられるわけがありません。


 こういう所が、ルルモアさんが一生懸命探しているのにベニオウの実を採りに行ってくれる魔法使いが見つけられない理由の一つだったりw


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― 新着の感想 ―
[一言] うんとね、600話も超えたしそろそろ幼子から少年くらいには成長してほしいかな?
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