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579 どうせなら特別なのを作っちゃお


 キャリーナ姉ちゃんだけじゃなくって、なんかアマンダさんまでプリンの方がいいって言い出したでしょ?


 だからケーキを作るのはやめにして、その代わりにプリンアラモードを作る事になったんだけど。


「あれ? プリンだったら僕が教えなくってもいいんじゃないかな?」


 プリンはお母さんやレーア姉ちゃんでも作れるでしょ?


 だからアマンダさんに作り方を教えるのはお母さんたちに頼む事にしたんだよ。


「お母さん! プリン作れるよね?」


「ええ。うちでよくキャリーナやスティナちゃんに作ってあげてるから知ってるけど」


「じゃあさ、アマンダさんにはお母さんがプリンの作り方を教えてよ」


 これを言ったらね、お母さんはすっごくびっくりしたお顔になっちゃんたんだよ。


「ちょっと待って、ルディーン。作る事はできるけど、それを教えるなんて」


「大丈夫だよ。だって蒸す時間を知ってれば、そんなに難しく無いお菓子だもん」


 最初ん時は蒸す時間が解んなかったりしたけど、今はそれもちゃんと解ってるでしょ?


 一番難しいとこが解ってるんだから、後は作り方を教えるだけだもん。


 アマンダさんはすっごいお菓子職人さんなんだから、それを教えてあげたらきっと僕よりおいしいプリンを作っちゃうんじゃないかなぁって思うんだ。


「アマンダさん。一番解んない蒸す時間はお母さんが知ってるから、プリンはお母さんとレーア姉ちゃんに教えてもらってね」


「ええ、いいけど。ルディーン君はその間に何をするの?」


「僕? 僕はね、アマショウの実を熟成を使って甘くしたり、いっしょにのっける果物をきれいに切ったりしようって思ってるんだ」


 プリンアラモードって、ただプリンと果物や生クリームをのっけてるだけじゃなくって、おいしそうに見えるように盛り付けられてるでしょ?


 それをやるには果物の切り方もちゃんと考えないとダメだから、僕はアマンダさんが貸してくれた器に合うように果物を切っておこうと思うんだ。


「切り方? もしかして、果物の切り方にも何か秘密があるの!?」


 でもね、そう言ったらアマンダさんがそれも教えてって言い出したんだ。


「切り方を教えるの?」


「ええ。私も果物の味を落とさないように、果汁があまり出ないように気を付けて切ってはいるのよ。でも、器に合うような見た目にこだわった切り方なんてした事が無いもの」


 アマンダさんはお菓子職人さんでしょ?


 だから果物の味が落ちないような切り方をするように、いっつも気を付けてるんだって。


 でも僕がさっき、プリンアラモードの盛り付けに合うように果物を切るって言ったでしょ?


 だからそれを聞いて、そんな考え方で果物を切るなんてって、すっごくびっくりしたそうなんだよね。


「そういうの、考えた事ないの?」


「ええ。生の果物をお菓子にのせるなんて事、うちの店ではしないもの。だから切った後の見栄えなんて考えた事無かったわ」


 そう言えばアマンダさんのお店、果物を生地に張り付けて焼いたお菓子とかはあったけど、生の果物がのっかってるお菓子は無かったっけ。


「焼くんだったらお汁がいっぱい出ちゃうとおいしく無くなっちゃうもん。それを考えるのは当たり前だよね」


「ええ。だからその事には気を使っていたけど、生で食べるのなら見た目も気をつけなくちゃいけない。ルディーン君の言葉でその事に気が付いて、本当に目からうろこが落ちたわ」


 アマンダさんはね、わざわざそんな切り方をしなきゃダメって言うくらいなんだから、当然そういう切り方を何個か知ってるんだよねって。


 だからそれを教えて欲しいなぁって、僕に言ってきたんだ。


 でもね、


「ダメだよ。だってアマンダさん、さっきはプリンの作り方を教えてって言ったもん。それもやめちゃったら、プリンアラモードまで作れなくなっちゃうじゃないか!」


 果物の切り方を教えてたら、プリンが作れないもん。


 そんな事になったらきっとキャリーナ姉ちゃんが怒っちゃうから、僕はアマンダさんにダメって言ったんだよ。


「そっ、それはそうなんだけど……」


 そしたらね、アマンダさんはちょっとしょんぼり。


 でもちょっとしたら、プリンの作り方を覚えるのも大事だよねってお母さんのとこに行ってくれたんだよね。


 だから僕は、果物が入ってるかごのとこに行ったんだ。


「う~ん、まずはアマショウの実の熟成からかなぁ」


 プリンアラモードにはいろんな果物を使うけど、その殆どは切ってのせるだけでいいでしょ。


 でもアマショウの実だけは熟成させないとダメだから、僕が最初にそれをやっちゃう事にしたんだ。


「今日はみんなの分を作んないとダメだから、ひと房全部熟成させちゃおっと」


 いつもはね、熟成させると早く悪くなっちゃうからって、使う分だけをちぎってから熟成させてるんだよ。


 でも今日はいっぱいいるから、かごから出したアマショウの実のひと房を全部いっぺんに熟成。


 それから一本一本ちぎってって、皮をむいてったんだ。


「他はどんな果物をのっけようかなぁ」


 でね、その他にのっける果物をかごの中から選んだら、それとさっき熟成させたアマショウの実を見栄えが良くって食べやすい大きさにカット。


 それを使いやすいようにお皿に並べてったんだけど、種類が何個かあったって今ここにいるみんなの分を切ればいいだけだからそんなのすぐに終わっちゃったんだよね。


 だから僕、次は何をしようかなぁって頭をこてんって倒したんだよ。


「う~ん……あっ、そうだ! どうせだったら特別なプリンアラモードにしちゃお」


 そう思った僕は、いっつも持ってるポシェットの中から魔石の入ってる袋を取り出したんだ。


 でね、その中からあんまりおっきくないのを一個取り出して、氷の魔石に属性変換したんだよ。


 何でかって言うとね、さっき作った泡だて器を使って、かき混ぜるだけで凍らせちゃう事ができる魔道具を作ろうと思ったからなんだ。


「ちゃんとした魔道具を作るんじゃなくって今使うだけだから、魔道回路図は書かなくってもいいよね」


 ずっと使う魔道具にするんだったら、抵抗の回路図とかを使ってどんだけつべたくなるのかを調整できるようにしなきゃダメでしょ?


 でもこれから作るのは今日だけ使えればいいからって、僕はさっき作った鋼の泡だて器の、先っぽの膨らんだとこと手で持つところの間、ちょうど針金が集まってくるとこの中に氷の魔石をくっつけたんだよ。


 こうしとけば氷の魔石を活性化させるだけで、泡だて器の膨らんだとこがつべたくなるからね。


 でもさ、これだと持つとこまでつべたくなっちゃうから、このまんまじゃ使えないでしょ?


 だから、そこに厚手の布をくるくるって巻いてったんだ。


「できた! これだったらちゃんと作れるよね」


 って事で、試しに使ってみる事に。


 まずは卵をよく溶いて、その中に牛乳と生クリーム、それにクラッシュで細かくしたお砂糖を混ぜてから僕はその魔道具で泡立て始めたんだよ。


 そしたらちゃんと固まってきてはくれたんだけど、


「う~ん、僕じゃもう、これ以上かき混ぜられないや」


 ちょっと凍ってきたらすぐに、僕の力じゃ泡だて器を動かせなくなっちゃったんだよね。


 だからこっからどうしようかなぁって思ったんだけど、そしたらさ、近くで見てたニコラさんが手伝おうか? って言ってくれたんだ。


「いいの?」


「ええ。私もなんか手伝える事は無いかなぁって思っていたから、やる事ができてうれしいくらいよ」


 って事でニコラさんにバトンタッチ。


 でもね、そんなニコラさんでもちょっとしたら泡だて器が動かなくなっちゃったんだ。


「う~ん、流石にこれ以上は無理かも?」


「いいよ! 大人のニコラさんでも動かせないくらい凍ったんだったら、後はそのまんま魔道具を突っ込んどけば出来上がるはずだもん」


 凍ってく途中はかき混ぜてないと牛乳や生クリーム中のお水だけが先に凍っちゃっておいしくできないけど、ここまで来たらもう後は固めるだけだもん。


 だからもうこのまま凍らせる泡だて器を突っ込んどけば、アイスクリームはちゃんと完成するはずなんだ。



「ルディーン君。プリン、出来上がったわよ」


「ほんと? よかった、こっちもちょうどいいくらいまで固まったとこだよ」


 僕とニコラさんで作ったアイスクリームがちょうどいいくらい固まった頃にね、アマンダさんが出来上がったプリンを持って来てくれたんだ。


 だから早速盛り付けをしようと思ったんだけど、


「あ~、ルディーンがアイスクリーム作ってる!」


 そこで僕たちの前にアイスクリームがあるのを見つけたキャリーナ姉ちゃんが、それ食べたいって言い出したんだよね。


「ダメだよ!」


「え~、じゃあ何で作ったの? 食べるためじゃないの?」


「そうだけど、これはプリンアラモードにのっけるやつだもん。だから食べちゃダメ」


 僕はキャリーナ姉ちゃんに、これはプリンアラモードに使うやつだからダメって言ったんだよ。


 そしたらさ、それを聞いたレーア姉ちゃんが不思議そうなお顔で、そんなの載ってたっけ? って。


「あれ? 前にミラと一緒に食べた時は、アイスクリームなんて載ってなかったわよね?」


「ううん、前の時は無かったよ。でも今日はアマンダさんもいるから、特別なプリンアラモードにしようって思ったんだ」


 さっき、物をかき混ぜながら凍らせる魔道具のお話をしたでしょ?


 だからせっかくならそれも見せてあげようと思ってこれを作ったんだよって教えてあげたら、それを聞いたアマンダさんがすっごく喜んでくれたんだよね。


「ありがとう、ルディーン君。そう、これがかき混ぜながら凍らせる魔道具なのね」


「うん。でもね、前に作ったのは棒の形のだったんだ。でも今日はアイスクリームを作るのに使おうと思ったし、ちょうど泡だて器が作ってあったからこんな形になっちゃったけどね」


 それにね、アイスクリームも初めてだからってすっごく喜んでくれたんだよ。


「これが、キャリーナちゃんの言っていたアイスクリームなのね。でもこれ、どちらかというとかき混ぜながら凍らせたというよりも、空気を含ませながら作ったっていう感じのお菓子なんじゃないのかな?」


「うん、そうだよ。だってそうしないと、出来上がったのがカチカチになっちゃっておいしくならないんだって」


 これは前の僕のお家にあったアイスクリームを作るおもちゃに書いてあったんだけど、アマンダさんの言う通りアイスクリームは空気がいっぱい入ってないとおいしく無いんだって。


 だからシャーベットを作った時みたいな棒の形をしたやつじゃなく、アイスクリームを作る時は今使った泡だて器みたいのか、うちにある魔道具みたいに羽根がついたのでかき混ぜながら凍らせないとダメなんだよ。


「もう! ルディーン、お話はやめて早く食べようよ」


「うん、わかった! すぐに盛り付けちゃうね」


 そんなお話をしてたらね、キャリーナ姉ちゃんが早く食べたいって怒りだしちゃったんだ。


 だからすぐにプリンとアイスクリーム、それにさっき切って置いた果物を飾り付けはじめたんだけど……。


「あっ、しまった! 生クリームを泡立てるの、忘れてた」


 でもそこで、最後にのっける生クリームを作るのを忘れてた事に気が付いたんだ。


 だから僕、ちょっと慌てちゃったんだけど、そしたらすぐにアマンダさんが大丈夫だよって。


「それならさっき作ったのがあるじゃない。ホウリが入ってるけど、果物と一緒に食べるお菓子なら、それも問題ないでしょ?」


「そっか! うん、大丈夫だよ」


 そう言えばさっきアマンダさんに作ってもらったのがあったっけ。


 って事でその生クリームものっけて、無事特別なプリンアラモードが完成したんだ。



「わぁ、ほんとに私の大好きなプリンとアイスクリームがいっしょにのってる!」


「本当に豪華なお菓子ね。流石にこんなものは私の店では出せそうにないわ」


 さっそくみんなに出してあげたんだけど、そしたらそれを見たキャリーナ姉ちゃんは大喜び。


 それにね、アマンダさんも興味深そうに出来上がったプリンアラモードを見てたんだよ。


 でもさ、そのまんまだとアイスクリームが溶けちゃうでしょ?


 だから僕、早く食べてよって言ったんだ。


 そしたらさ、みんなそうだねって言ってくれて、一斉に食べ始めたんだよね。


「プリンもそうだけど、アイスクリームとアマショウの実って、いっしょに食べるとこんなに美味しいのね」


「このアイスクリームってお菓子、生クリームと材料が殆ど同じなのに、食べてみるとまるで違うものだわ」

 

 みんな反応は違うんだけど、おいしいって思ってるのはおんなじみたいなんだよ。


 だってアマンダさんやお母さん、それにお姉ちゃんたちやニコラさんたちだけじゃなくって、お兄ちゃんたちまでニコニコしながら僕の作った特別なプリンアラモードを食べてくれたんだもん。


 だから僕、すっごく嬉しいなぁって思いながら、プリンを木のおさじで掬ってパクって食べたんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 当初はプリンアラモードを作るだけのつもりだったのですが、かき混ぜながら凍らせる魔道具の話までしたのにアイスクリームを出さないのは不自然だよなぁという事で急遽特別なプリンアラモードを作る事に。


 でもそのせいでプリンとアイスクリームの感想をあまりアマンダさんに言わせてあげられなかったのがちょっと後悔です。


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