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569 僕の熟成スキルって変なの?


「ケーキってあれですよね? 前に食べさせてもらった、白いふわふわのが塗ってあって、甘い果物で飾られているお菓子」


 アマンダさんのお話を聞いて、アマリアさんがあれはホントおいしかったなぁって言ったんだよ。


 でもね、それを聞いたアマンダさんは、すっごくびっくりしたお顔になっちゃったんだ。


「えっ、あなたも食べた事があるの?」


「はい。私たちが館に帰ると、ルディーン君と料理長のカテリナさん、それにロルフさまの家の料理長であるノートンさんが試食していたので食べさせてもらったんですよ」


 アマリアさんがそう答えるとね、それを聞いたキャリーナ姉ちゃんがハイハイって手をあげて、私も食べた事あるよって言ったんだ。


「ルディーンが森から採ってきたベリーをすっごく甘くしてのっけてくれてね、それと生クリームを一緒に食べるとすっごくおいしかったんだよ。それにね、スポンジケーキの間に挟んであったアマショウの実もすっごくおいしかったぁ」


「ベリーを甘くする?」


 アマンダさんはね、キャリーナ姉ちゃんのお話の中から、ベリーを甘くしたってとこが気になったみたいなんだ。


 だから僕に何の事? って聞いてきたんだよね。


「甘いベリーを使ったのではなく、ベリーを甘くしたって事?」


「うん。あのね、僕の村の近くにある森はいろんなベリーが採れるんだよ。だから僕、それに熟成をかけてって、一番甘くなったのをケーキに使ったんだ」


「ああ、そういう事なのね」


 僕がいろんなベリーを摘んで試したんだよって教えてあげるとね、アマンダさんはそれなら解るわって。


「ルディーン君の事だから、甘くない木いちごとかを甘くする方法でも見つけたのかと思ったわ」


「僕、そんなの見つけられないよ。ベリーを熟成させたのだって、アマショウの実が熟成すると甘くなるからだもん」


 アマショウの実が熟成すると甘くなるのって、アマンダさんから教えてもらった事なんだよね。


 だからその話を聞いたアマンダさんは、なるほどねってうんうん頷いたんだ。


「果物は熟成すると甘くなるものが多いもの。ベリーだって甘くなるものがあっても不思議じゃないわ。でも、ものによってはあまりやりすぎると食べられなくなっちゃうのよねぇ」


「アマショウの実だって、熟成させすぎちゃうと透き通ってきて甘くなりすぎちゃうもんね」


 僕、前にアマショウの実をいっぱい熟成させたらどうなるんだろうって思って、やってみた事があるんだ。


 そしたらさ、ちょっと透き通った感じになって、なんか甘すぎる変なのになっちゃったんだよね。


「透き通るほど熟成させたって、そんなのドロドロになって食べられなかったんじゃないの?」


「ううん。形はそのまんまだったよ。ねぇ、レーア姉ちゃん」


 あの時は、レーア姉ちゃんも一緒にいたんだ。


 だからレーア姉ちゃんに、でろでろになって無かったよね? って聞いたら、お姉ちゃんはそうだったねって。


「甘すぎてあんまりおいしくはなかったけど、まだしっかりしてましたよ」


「そうなの? 変ねぇ。アマショウの実は確かに熟成させすぎると色がちょっと黒っぽくなってきて透き通ってくるんだけど、そうなった実はもうドロドロに溶けてしまっているはずなんだけど」


 アマンダさんは僕たちのお話を聞いてそんな風に言ったんだけど……あれ? 僕が熟成させたやつ、黒くなんてなってなかったよね?


「レーア姉ちゃん。僕が熟成させたやつって、黒くなってたっけ?」


「ううん、白いままだったよ」


 だから僕、レーア姉ちゃんに黒くなってたっけって聞いたら白いまんまだったよってお返事が返ってきたんだ。


 それを聞いた僕は、やっぱりそうだよねって思ったんだけど、


「えっ!? 白いままって、どういう事?」


 そしたらそれを聞いたアマンダさんが、すっごくびっくりしたお顔になっちゃったんだよ。


「どうしたの、アマンダさん?」


「白いままってどういう事? アマショウの実は熟成させて行くと、だんだん黄色くなっていくわよね?」


 でも、これを聞いた僕とレーア姉ちゃんはびっくり。


 だって僕が熟成させたアマショウの実は、ちょうどいい甘さになるくらいまで熟成させたやつも最初の白かった時と全然色が変わってなかったんだもん。


「アマンダさん、もしかして僕の熟成って変なのかなぁ?」


「う~ん、ちゃんと甘くなっているっていうのなら熟成はしてると思うんだけど……私たちがやる熟成とはどこか違うのかも?」


 アマンダさんはそう言うとね、ちょっとの間う~んって考えこんでたんだよ。


 そしたらさ、急になんかに気が付いたようなお顔になったんだ。


「そうか! もしかしてあれはそういう事だったのかも?」


「どうしたの? なんか解った?」


「はっきりとそうだとは言い切れないけど、もしかしたらという事は思いついたわ」


 アマンダさんはそう言うとね、僕に初めて熟成を使った時の事を覚えてる? って聞いたんだよ。


「うん。お肉が無いから、お酒でやってみたんだよね?」


「ええ、そうよ。その時はベニオウの実を使って作ったお酒を熟成してもらったわ」


 アマンダさんはそう言うとね、今度はお母さんに向かってこう言ったんだよ。


「カールフェルトさんは、ルディーン君が力いっぱい熟成させたお酒の味を覚えていますよね?」


「ええ。かなり美味しかったのを覚えていますわ」


 僕はお酒が飲めないからどんな味なのか解んないけど、お母さんとアマンダさんはあのお酒を飲んだ時にすっごくおいしいねって言ってたのは思えてるんだ。


 でね、そのベニオウの実のお酒なんだけど、あの時にアマンダさんが思ってたのとはもしかしたらおいしくなった理由が違うのかもしれないんだって。


「やっぱり僕の熟成、なんか変なの?」


「えっと、変というより特殊と表現した方がいいのかもしれないわね」


「特殊?」


「ええ。ルディーン君の熟成はね、もしかしたら食材を劣化させずに行えている可能性が出て来たのよ」


 アマンダさんはそう言うとね、何でそう思ったのかを教えてくれたんだ。


「さっき言った通り、アマショウの実は熟成させると色が黄色く変色していくの。これは私が熟成スキルをかけても魔道具で温度管理をして時間をかけながら熟成をさせても同じなのよ。でもルディーン君がかけた熟成では、色は白のままだったのよね?」


「うん、白いまんまだったよ」


「そしてさらに熟成が進むと黒っぽくなっていくはずなのに、白いまま透き通っていったんでしょ? という事は、熟成をさせても素材の劣化が起きていないという事なんじゃないかと考えたのよね」


 アマンダさんに教えてもらったんだけど、黒くなっちゃったアマショウの実は変なにおいがしてもう食べられなくなるんだって。


 でも僕が熟成させて透き通ってきたやつは、甘すぎたけど変なにおいはしなかったでしょ?


 だからアマンダさんはね、僕のスキルは使っても食材を劣化させない、要するにすっごく長い時間分の熟成させても全然腐らないようにできるんじゃないかって考えたんだって。


「そして、そこから考えられるのが、あのベニオウの実を使って作ったお酒の秘密なのよ」


「お酒の秘密?」


「ええ。醸造酒である以上、本来ならあのお酒もワイン同様、熟成が進みすぎれば呑めなくなるはずなの」


 アマンダさんはね、あの時はベニオウの実に魔力が入ってるから悪くならなかったんじゃないかなって思ってたんだって。


 でもね、もしかしたらベニオウの実じゃなくって僕の熟成の方に秘密があったんじゃないかって言うんだよ。


「でもでも、僕の熟成スキル、ステータスを見てもそんな事書いてないよ?」


「ああ、そう言えばルディーン君は、すてーたすってのが見られるんだったわね。う~ん、そうなると、この仮説も間違ってる可能性があるわけか」


 アマンダさんはそう言うとね、ちょっと考え込んだ後で僕にこう言ったんだよ。


「ルディーン君。これからちょっと付き合ってもらえないかしら?」



 読んで頂いてありがとうございます。


 アマショウの実を熟成させすぎると透明になるという話、あれを書いた時点ではもっと早くこの展開をやるつもりだったんですよ。


 でもなかなかやる機会がなくて、今頃の伏線回収になってしまいました。


 それにアマンダさんの話はこの他に、デコレーションケーキを作るというものもあるんですよね。


 せっかくの機会だからとこの話を書き始めてしまいましたが、また長いエピソードになりそうだなぁ(汗


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