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568 あれ、僕を探してたの?


「え~、これから森に行くんじゃないの?」


 かわいいもの屋さんを見終わってお外に出た僕は、ディック兄ちゃんに早く森に行こうよって言ったんだよ。


 なのにディック兄ちゃんは、今日は行かないって言うんだもん。


「さっき、魔石を獲りに行くって言ってたじゃないか!」


「いや、今日は初めからお母さんたちの買い物に付き合う予定だっただろ」


 だから何で? って聞いたんだよ。


 そしたらディック兄ちゃんは、今日はお買い物をする日だって朝決めただろって。


 だから今日は森には行かないんだって。


「じゃあさじゃあさ、森へはいつ行くの?」


「明日だよ。それも決まってた事だろ?」


 ディック兄ちゃんが呆れたようなお顔でそう言ったもんだから、僕はホント? ってお母さんに聞いたんだよ。


 そしたらさ、お母さんもちょっとあきれたお顔でベニオウの実を採りに行くと言っておいたでしょって言われちゃった。


「イーノックカウに居られるのもそれほど長い間ではないんだから、明日は家族みんなでベニオウの実を採りに行くわよ」


「そっか。じゃあ明日はみんなで森に行けるんだね」


 それを聞いた僕は元気いっぱい! 次に行くって言う服屋さんの方に歩き出そうとしたんだけど、


「ああ、本当にルディーン君がいる!」


 どっかから僕の事を話してる声がしたんだ。


 だから僕、周りをきょろきょろって見渡したんだよ。


 そしたらさ、ちょっと離れたとこからアマンダさんがこっちに歩いて来るのが見えたんだ。


「あっ、お菓子屋さんのお姉さんだ」


「あら、ほんと。あの様子からするとルディーンに何か用事があるようだけど、何かあったのかしら?」


 でね、アマンダさんを見つけたのはお母さんとキャリーナ姉ちゃんも一緒だったみたいで、そっちを見ながら3人で何のご用事だろうね? ってお話してたんだ。


 そしたら、その間にアマンダさんが僕たちのとこまでやってきたんだよ。


「こんにちわ、アマンダさん。どうしたの?」


「こんにちは、ルディーン君。フランセン家のメイド見習いの子から、君たち家族がこの街に来ていると聞いて探してたんだ」


 アマンダさんはね。僕たちがイーノックカウに来てて、今日はお店屋さんを周ってるんだよってロルフさんちのメイドさんから聞いて僕を探してたんだってさ。


「僕を探してたの?」


「ええ。前に君が買ったという館にメイドの修行に来ているという子から、何かお菓子の事でフランセン家の料理人にわたしの知らない技術を教えていたって話を聞いた事があるのよ」


 アマンダさんはそのメイドさんからお話を聞いた時に、今度イーノックカウに来た時はアマンダさんにもおんなじ事を教えてあげなさいねってロルフさんが僕に言ってたんだよって教えてもらったんだって。


 でね、どうやらその時、それを聞いた僕もそうだねって言ってたみたいなんだよ。


 だからアマンダさんは僕たちがイーノックカウに来てるって聞いて、その事を聞きに来たらしいんだ。


「家族みんなでイーノックカウに来ると聞いてきっと話しに来てくれると思ってたのに、一向に来る気配がないでしょ? だから今日街を見て回っていると聞いて探していたのよ」


「そっか。でも、教えないとダメな事ってなんだっけ?」


 アマンダさんが、何で僕を探してるのかは解ったでしょ?


 でもさ、そのお話しなくちゃダメな事が僕には解んなかったんだ。


 だから頭をこてんって倒して考えてたんだけど、そしたらアマンダさんがヒントをくれたんだよね。


「スポンジケーキの話らしいけど、何か思い当たる事無い?」


「スポンジケーキ? あっ、そっか。バターの事か」


 アマンダさんに言われて、僕は何の事か思い出したんだ。


 それはね、アマンダさんのお店のスポンジケーキよりも僕が作ったのの方が食べてみたらおいしかったもんだから、ノートンさんが何で? って聞いてきたんだよ。


 だから僕、こっちのにはバターが入ってるからだよって教えてあげたんだよね。


 そしたらそれを聞いたロルフさんから、これはもうアマンダさんのお店で売ってるんだから、ノートンさんに教えてあげたならアマンダさんにも教えてあげなきゃダメでしょって言われちゃったんだっけ。


「バター? それって、生地にバターを入れるって事?」


「うん。アマンダさんのお店のスポンジケーキにはバターが入ってないから、僕んちで焼いた方がおいしかったんじゃないかなぁ? って教えてあげたんだ。でもね、後で思ったんだけど、僕、アマンダさんにもバターを入れるとおいしいよって教えてあげたよね?」


「ええ、教えてもらったわよ」


「じゃあさ、なんで? ノートンさん、お店のを食べたけど、入って無いって言ってたよ」


 あの時ノートンさんは、アマンダさんのお店のスポンジケーキにはバターの香りがしないって言ってたんだよね。


 でも僕、スポンジケーキの作り方を教えてあげた時に、いっしょにバターを入れるとおいしい事を教えてあげてたはずなんだよ。


 だから何でお店で売ってるスポンジケーキにはバターが入れてないの? って聞いてみたんだ。


 そしたらさ、アマンダさんはちょっと困ったようなお顔で笑いながら、その理由を教えてくれたんだよ。


「実はね、ちゃんとバターの香りを感じられるほどの量を入れようと思ったら、スポンジケーキの値段がかなり高くなってしまう事が解ったのよ」


 バターって牛乳の上にたまってる生クリームを掬って筒とかの入れもんに入れて、それをシャカシャカ振って作るでしょ?


 だからちょびっと作るだけでも、結構大変なんだって。


 そんなバターをスポンジケーキがおいしくなるくらい入れようと思ったら、今お店で売ってるのよりもずーっと高くしないとダメなんだよってアマンダさんは教えてくれたんだ。


「確かに、間違いなくおいしくはなるのよ。でも、入れなくてもスポンジケーキは十分おいしいでしょ? だから店長と話し合った結果、コストとの兼ね合いから入れないでおこうという事になったと言う訳」


「そっか。高いとみんな買えなくなっちゃうもんね」


 アマンダさんのお店のお菓子はね、お砂糖を使ってるから露店とかで売ってるのよりもずっと高いんだよ。


 でもそんなアマンダさんのお店でも、バターを入れたら高くなりすぎちゃうって言うんだもん。


 だったらそんなの、入れられるわけないよね。


「でも、その事が原因で探しに来られたのでしたら、申し訳ありませんでしたね」


 そんな事をアマンダさんとお話してたらね、お母さんが横からごめんなさいしたんだよ。


 だってもう知ってる事なのに、僕が教えてあげた事を忘れちゃってたもんだからアマンダさんはわざわざここまで探しに来てくれたんだもん。


 でもね、そんなお母さんにアマンダさんはそれは違うんだよって言ったんだ。


「いえ、実を言うとスポンジケーキの件と聞いて、私が期待していたことがまた別にあるのです」


「別の事、ですか?」


 それを聞いたお母さんは、何の事だろう? って頭をこてんって倒したんだよ。


 そしたらさ、アマンダさんが教えてくれたんだ。


「実はですね。私、フランセン家のメイド見習いから聞いているんですよ」


 僕から教えてもらえるんじゃないかなぁ? ってアマンダさんが期待していたのはね、生地にバターを入れるなんて簡単な事じゃなくて、


「スポンジケーキと果物や牛の乳を使ってつくる、とても美味しいお菓子があるという事を」


 生クリームやフルーツを使ってスポンジケーキをさらにおいしくする、デコレーションケーキの事だったんだ。




 読んで頂いてありがとうございます。


 今回の話ですが、実を言うと一番最後のデコレーションケーキのネタで一本書くつもりだったんですよ。


 なので過去の話を読み返してみると、なんとルディーン君のイーノックカウ邸でスポンジケーキを作る場面で上記のような展開になっていたんですよね。


 流石にこれはいけないという事で今回、その言い訳的な回を書くことになりまして。


 と言う訳で少々内容の無い話になってしまいましたが、どうかご容赦を。


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― 新着の感想 ―
[一言] なんていうか、ルディーンを当てにしすぎ。みんな。
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