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567 クリエイト魔法は何でも作れるわけじゃないんだよ


「それでは皆様、失礼いたします」


 僕たちにいろんな事を教えてくれた店員さんは、そう言って僕たちから離れて別のお客さんのとこに行っちゃったんだ。


 だから僕たちはまたお店の中を見て回り始めたんだけど、後ろの方からとてとてって誰かが走ってくる音がしたもんだから、僕たちはそっちの方を見たんだよ。


 そしたらさ、それはキャリーナ姉ちゃんだったんだ。


「ルディーン、こっち! こっち来て!」


「どうしたの? キャリーナ姉ちゃん」


 なんか解んないけど、キャリーナ姉ちゃんは僕の手を引っ張ってどっかに連れてこうとするんだよね。


 だから僕、どうしたの? って聞いたんだよ。


 そしたらさ、あっちにすごいのがあるのって教えてくれたんだ。


「ルディーン、アクセサリーを作れるでしょ? だからあれも作れるんじゃないかなってレーア姉ちゃんが言ったから呼びに来たんだよ」


「ええっ!? ルディーン君、アクセサリーも作れるの?」


 キャリーナ姉ちゃんはね、僕が魔法でアクセサリーを作れるからそのすごいのを作れないかなぁって呼びに来たんだって。


 だから僕の手を引っ張ってそこに連れてこうとしたんだけど、そしたらそんな僕たちを見てたニコラさんが、アクセサリーを作れるの? ってびっくりしたんだ。


「うん。ルディーンはね、おうちでいろんなのを作ってくれるんだよ」


「へぇ、そんな小さな手なのに、器用なのね」


 キャリーナ姉ちゃんのお話を聞いて、ニコラさんはすごいねって。


 でもね、ちょっと違うんだよなぁ。


「ニコラさん。僕、カンカンしてアクセサリーを作ってるんじゃないよ」


「かんかん? ああ、彫って作っているわけじゃないって事ね。でも、それならどうやって作ってるの?」


「魔法だよ。クリエイト魔法ってので、いろんなもんを作ってるんだ」


 これを聞いたニコラさんは、そんな魔法があるのねってちょっとびっくり。


 でね、それはどんな魔法なの? って聞いてきたんだけど、


「ルディーン。こっち来てって言ってるでしょ!」


 キャリーナ姉ちゃんが怒っちゃったもんだから、僕はお姉ちゃんに引っ張られて連れてかれちゃったんだ。



「ほら、これ。すっごくきれいでしょ?」


「ほんとだ! すっごくきれいなちょうちょだね」


 キャリーナ姉ちゃんに連れてかれたとこにはね、蝶の形をしたおっきなアクセサリーがあったんだよ。


 でね、そこにはレーア姉ちゃんもいて、僕にこう聞いてきたんだ。


「ルディーンは金属なら魔法で思った形にできるのよね? ならこういうのも作れないかな?」


「これを作るの?」


 レーア姉ちゃんに言われて、僕はもういっぺん蝶のアクセサリーをじっと見てみたんだ。


 そのアクセサリーはきれいな模様が全体にびっしり彫ってあって、その上4つに分かれた羽根がまぁるく膨らんでる立体的な形をしてたんだよ。


 それにね、羽や胴体、あとくるくるって巻いてる触角なんかが違う素材で作ってあるから、宝石なんかを使わずに全部金属でできてるのにいろんな色があってとってもきれいなんだ。


 だから僕、これを見て作るのは無理なんじゃないかなぁって思ったんだよね。


「う~ん、多分作れないと思うよ」


「えー、なんで?」


 僕はね、レーア姉ちゃんにこれは作れないよって教えてあげたんだよ。


 でもそしたらキャリーナ姉ちゃんがちょっと怒りながら、何で? って聞いてきたんだ。


「ルディーンはいっつも魔法でいろんなの作ってるじゃない! なんでこれは作れないの?」


「だって僕、絵を描くのはへたっぴだもん」


 クリエイト魔法って、頭の中でこういうのを作りたいって思いながら使うでしょ?


 だから輪っかがいっぱいくっついてるのとか、ハートやお星さまの形をしたのとかなら簡単に作れるんだよね。


 それに僕が知らないちょっと変わった形の物だって、お手本があれば何とか作る事はできるんだよ。


 でもこれは形じゃなくって、蝶々の絵だもん。


 絵はお手本を見ながらでも、おんなじのは描けないよね?


 それとおんなじで、こんな風に絵が彫ってあるやつはそれとおんなじのが描けるくらい絵がうまい人じゃないと、クリエイト魔法を使っても作る事ができないんだ。


「僕、絵なんか描いた事無いからこんなの作れないんだ」


「そっか。じゃあしょうがないね」


 だからその事を教えてあげると、キャリーナ姉ちゃんはそっかって納得してくれたみたい。


 でもね、そのお話を聞いてたアマリアさんが、僕にこんな事を聞いてきたんだよね。


「じゃあさ、どんなのなら作れるの?」


「そうだなぁ」


 僕はね。きょろきょろって周りを見渡したんだよ。


 そしたらハートの形が二個つながってるのとか、ちっちゃな剣の形をしたのとかが置いてあるとこがあったもんだから、僕はそこにトコトコって走ってって指さしたんだ。


「こんなのだったら作れるよ」


「そうね。私も家でルディーンにこんな形のペンダントトップを作ってもらった事あるもの」


 そしたらね、レーア姉ちゃんがその中からお星さまとハートの輪っかがくっついてるアクセサリーを指さしてこう言ったんだ。


「へぇ、こんなの作ってもらったんだ。いいなぁ」


 それを聞いたアマリアさんが、いいなぁってレーア姉ちゃんに言ったんだよ。


 そしたらさ、ちょっと離れたとこにいたディック兄ちゃんが寄ってきて、僕に作ってあげなよって言い出したんだ。


「ルディーン。アマリアさんが欲しいって言ってるんだから、作ってあげろよ」


「いや、そんなつもりで言った訳じゃなくて……ごめんね、ルディーン君」


 でもね、それを聞いたアマリアさんが作って欲しくて言ったわけじゃないんだよって僕にごめんなさいしてきたんだ。


 そしたらさ、そんなアマリアさんを見てディック兄ちゃんが大慌て。


「俺が言い出した事なんだから、アマリアさんが謝らなくてもいいよ。それにルディーンは家でいつもこんなものを作ってるから、それほど大変じゃないんだ。そうだろ、ルディーン?」


「うん。これだったら簡単に作れるよ」


 さっきの蝶々みたいなのは無理だけど、こういうのだったらお母さんやお姉ちゃんたちだけじゃなくってスティナちゃんにも作ってあげてるもん。


 だから簡単だよってアマリアさんに教えてあげたんだ。


「そうなの?」


「ああ。それに魔石に色を付けて、それをこういうのに付けたりもしてたよな?」


 ディック兄ちゃんが言ってるのはね、属性魔石の事なんだよ。


 例えばさ、一角ウサギとかから獲れた小っちゃな無属性の魔石を火の魔石に属性変換すると、中の魔力がオレンジっぽい赤色に変わるんだよね。


 それに魔石はみんな中から魔力の光が出てるから、キラキラして色のついた宝石みたいなんだもん。


 だからそれをペンダントにつけてあげたら、お母さんはすっごく喜んでくれたんだよ。


「うん。火の魔石とか風の魔石は赤かったり緑色だったりして、すっごくきれいなんだ。宝石なんかは高くって買えないけど、これだったら森に行って魔石を獲ってくればすぐ作れちゃうでしょ? だからお母さんのには付けてあげたりしてるんだよ」


「属性魔石を宝石代わりに!?」


 これを聞いたアマリアさんは、とってもびっくりしたみたい。


 何でかって言うとね、魔石は冒険者ギルドに持ってくと高く買ってくれるから、それをアクセサリーにするなんて考えられないからなんだって。


「すごく贅沢なアクセサリーね」


「そっかなぁ? 森に行けばいっぱい獲れるし、僕、今もいっぱい持ってるよ」


 僕、作りたくなった時にないと困っちゃうから、いつも魔石が入った袋をポシェットに入れてるでしょ?


 だから贅沢って言われても、そうかなぁ? って思っちゃったんだ。


 でね、それはどうやらディック兄ちゃんもおんなじだったみたい。


「ルディーン、アマリアさんに似合いそうなアクセサリーを作ってやれよ。魔石は俺が用意するから」


「えー、悪いですよ」


 自分が魔石を獲ってくるから、アマリアさんのアクセサリーを作ってあげてよってディック兄ちゃんが言ったんだよ。 


 そしたらさ、それを聞いたアマリアさんはそんな事しなくってもいいよって。


 でもね、さっきアマリアさんはレーア姉ちゃんがお家でアクセサリーを作ってもらってるって聞いて、いいなぁって言ってたでしょ?


 だから僕、欲しいなら欲しいって言えばいいのにって思ったんだ。


「大丈夫だよ。魔法で作るからあっという間にできちゃうもん。それに、ディック兄ちゃん。用意するって事は森に獲りに行くんだよね?」


「ああ、そうだよ」


「だったら僕も一緒に行けるもん! 僕、森に行きたいって思ってたから、ニコラさんたちの分も獲ってきて、みんなのも一緒に作ってあげるね」


 せっかくディック兄ちゃんが森に行くって言ってるのに、アマリアさんにアクセサリーを作ってあげるっていうお話が無しになっちゃったら行けなくなっちゃうでしょ?


 だから僕、アマリアさんにみんなの分も一緒に作るから大丈夫だよって言ったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 前回は突然休載してしまってすみません。


 コロナ禍になる前は多少忙しくても書く余裕があったのですが、3年ほど続いた間に比較的暇な状況が続いたため、少し忙しくなるだけでも疲れやすくなっているようでして。


 そんな中で先週は少々忙しかったため、いつもは何日かで分けて書いていたプロットや下書きを書く事ができず落としてしまいました。


 その内今の状況にも慣れてくるでしょうから、なるべくこのような事は無いようにしたいと思っております。


 まぁ、絶対とは言えないところが少々悲しいですが。ああ、若さが欲しい。


 さて、ルディーン君はこうして無事、森に行く事ができそうです。


 ただ、彼は忘れています。元々ベニオウの実を採りに家族みんなで森に行く事になっている事を。


 ディック兄ちゃんはその時に、近くにいる魔物を狩って魔石を得るつもりでいます。


 なので実を言うとルディーン君がここでみんなの分も一緒に作るよって宣言しなくても、森に行く事はできるんですよねw


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― 新着の感想 ―
[良い点] ディック兄ちゃん、わかりやすい! ルディーン君もまあ、ベニオウの実を採るだけじゃなく、魔石のために狩りも出来そうで良かったですねー
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