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561 一生懸命教えてあげたのに、なんで解んないかなぁ


「ルディーン君。なにやら喜んでおるようじゃが、何かよい事でもあったのかい?」


 僕が喜んでたらね、ロルフさんがどうしたの? って聞いてきたんだよ。


 だから何で喜んでるのかを教えてあげたんだ。


「あのね、クーラーとおんなじのを作れば、どこでもクリーンの魔法が使えるでしょ。だから喜んでるんだよ」


「はて、クーラーとは部屋を涼しくするための魔道具であろう? それを使えばクリーンが使えるようになると言われても、わしにはさっぱり解らぬのじゃが」


 でもね、せっかく教えてあげたのにそれを聞いたロルフさんはよく解ってないみたいなんだ。


「え~、なんで解んないの?」


「えっと、私もよく解らないのだけど、どうしてクーラーがあるとクリーンが使えるようになるのかしら?」


「違うよ。クーラーじゃなくって、それとおんなじのを作るんだよ」


 だから僕、なんで解んないの? って聞いたんだけど、そしたらバーリマンさんまで変な事言い出すんだもん。


 ロルフさんもバーリマンさんも、大人なのになんで解んないかなぁ。 


 そう思った僕は、ちゃんと教えてあげる事にしたんだ。


「クーラーって、後ろから風を吸い込んで前から出すでしょ? だからそれとおんなじのを作れば、汚れが固まってるのを掃除するのがすっごく簡単になるじゃないか」


「確かにそういう構造になってはいるけど……」


「うむ。それだけ聞いても、何故クリーンが使えるようになるのか。わしにはさっぱりじゃ」


 でもね、せっかく教えてあげたのにロルフさんたちはまだ解んないって言うんだもん。


 だから僕、どうしたらいいのか解んなくなっちゃったんだ。


「もう! ちゃんと教えてあげたのに、なんで解んないの?」


「ねぇ、ルディーン君。ちょっといい?」


「なぁに、ルルモアさん」


 そしたらさ、横でお話を聞いてたルルモアさんがこんな事を言ってきたんだよ。


「私は魔道具の事が全く解らないから聞くんだけど、君の言う通り風を後ろから吸い込んで前から出すと、何が起こるのかな?」」


「あのね、固まった汚れが飛んでっちゃうんだ」


 僕はそう言うと、近くにあったちょっとおっきめの固まってる汚れの塊を取ってきて、ルルモアさんの前に置いたんだよ。


「見ててね。ふぅ~」


 でね、その固まってる汚れの塊にふぅ~ってしたら、それはコロコロって転がってっちゃんたんだ。


「ほら。この固まったやつはとっても軽いし、形も丸っこいでしょ? だからちょっとの風でも簡単に飛んでっちゃうんだ」


「なるほど。じゃあルディーン君は、風で汚れを飛ばして集めようって考えたのね」


「うん、そうだよ」


 この汚れが固まったやつって、おっきいのでもすっごく軽いんだよ。


 それにみんな真ん丸だから、僕がふぅってするだけでも簡単に飛んでっちゃうんだよね。


「この汚れが固まったの、触ってもベタベタしないでしょ? それにみんな真ん丸だから、ちょっとふ~ってするだけで簡単に飛んでっちゃうもん。これだったら強い風でぶぉーってやってやれば、みんな吹き飛んじゃうんじゃないかなぁって思うんだ」


「なるほど、そうやって汚れを吹き飛ばしながら、一カ所に集めようというのじゃな」


「うん!」


 クーラーってさ、後ろから空気を吸い込んで前から吐き出すでしょ?


 あれをもっと強くしてやれば、隙間に入った汚れだって簡単に吹き飛ばせちゃうんじゃないかなぁって思うんだ。


 それにね、前の世界でも落ち葉とかは、筒みたいな道具から出てくる強い風でぶぉーって吹き飛ばしながら集めてたんだよね。


 だから僕、この固まった汚れの塊もそうやったら、すっごく簡単に集められるんじゃないかなぁって思ったんだ。


「なるほど、だからクーラーではなく、同じようなものなのじゃな」


「うん。クーラーだと持つのが大変でしょ? だからお掃除しやすい形の、おんなじような魔道具を作ればいいんじゃないかなぁ」


 僕とルルモアさんのお話を聞いて、ロルフさんもやっと解ってくれたみたい。


 だからね、そっからはどんな魔道具を作ったらいいかなぁって言うお話になったんだよ。


「風で固まった汚れを集めるとなると、ある程度の指向性を持った風を作り出す必要がありそうじゃな」


「そうですわね。クーラーのように広範囲に風が出るようになっていたら、吹き飛ばした汚れがかえって散らばってしまいますもの」


 ロルフさんとバーリマンさんは、どんな感じの魔道具にしたらいいかなぁってお話してたんだよ。


 そしたらね、それを聞いてたルルモアさんが、お掃除に使うんだったらその魔道具はちっちゃい方がいいんじゃないかなぁって言い出したんだ。


「持ち運ぶものですから、あまり大きくては使い辛いのではないでしょうか? それに溝などに入り込んだ汚れを吹き飛ばすのが目的なのですから、使う側から考えるとなるべく細い風が出るものだと助かります」


「ふむ。確かにこの話は、溝などに入った塊が掃き掃除では取りにくいというところから始まったのじゃったのぉ」


 僕ね、みんなのお話を聞くまではおっきな筒みたいな魔道具を作ればいいって思ってたんだよ。


 だって前の世界で落ち葉とかを集めてた道具は、そんな形をしてたもん。


 でもルルモアさんのお話を聞いたおかげであれとおんなじようなのじゃダメなんだねって思って、言わなくって良かったってほっとしたんだよ。


 それにね、大人の3人がどうしようってお話してるでしょ?


 だからきっと、まだちっちゃい僕はお話に入らない方がいいんだろうなぁとも思ったんだ。


 でもね、


「フランセン老。この魔道具を発案したのはルディーン君ではないか。それなのに蚊帳の外に置いて意見を聞かないというのはどうかと思うのだが」


「おお、確かにその通りじゃな」


 冒険者ギルドのお爺さんギルドマスターがこんな事言ったもんだから、みんながそう言えばそうだねってこっちの方を見たんだよ。


「ルディーン君は、どのような形がよいと思うのかな?」


「あのね、僕、最初はふっとい筒みたいな形のですっごい風を出して、一気にぶわってやればいいんじゃないかなぁって思ってたんだよ」


 前の世界で見たのはそういうのだったでしょ?


 だからそういうのがいいって思ってたけど、みんなのお話を聞いてたから今は違うんだよね。


「最初はという事は、今は違うのじゃな?」


「うん。すっごい風でぶわってやると、固めた汚れが広がっちゃうってさっきバーリマンさんが言ってたもん。だからね、持ちやすいように取っ手の付いた細長い筒の形をした魔道具を作ったらいいんじゃないかなぁって思うんだ」


 細いとこに入っちゃったのを吹っ飛ばそうッて思ったら、風が出るとこはあんまりふっとくない方がいいでしょ?


 それにね、お掃除する時に使うんだったら、ほうきとおんなじくらいの長さの方がいいと思うんだよね。


 だから僕、両手を広げてこれくらいの長さのがいいと思うよってロルフさんに話したんだ。


 そしたら、それはいい考えだねって。


「強い風を出して広範囲のものを吹き飛ばすのと違って、狭い範囲に風を当てるという使い方を考えると、あまり短すぎるとかえって使い辛いやもしれぬな」


「言われてみると確かに、吹き出し口が床から離れていると風が広がってしまうかもしれませんね」


 ルルモアさんもね、さっきはちっちゃい方がいいって言ってたけど、床のお掃除をする事を考えると長い方がいいかも? って言うんだよ。


 そしたらそれを聞いたバーリマンさんが、だったらこんなのがいいんじゃないのって新しい考えを出してきたんだ。


「それならば、筒の長さを変えられるようにすればよいのではないですか?」


「長さを変えるじゃと?」


「はい。吸い込んだ空気を反対側から出すという魔道具なのですから、筒の長さは出てくる風の強さには関係がありませんもの。筒を付け足す事で長さを変えたとしても何の問題も起こらないと思いますわよ」


 そう言えばこの魔道具、吸い込んだ風を反対側からそのまんま出すだけだもんね。


 だったら長さが変わっても出てくる風の強さは変わんないはずだから、使いやすいように筒の長さを変えたって大丈夫なはずなんだよね。


 だから僕もそれでいいって思ったんだけど、ロルフさんは違う考えみたいなんだ。


「その考えは正しいように思えるが、その継ぎ目がどのように作用するかは実際に作ってみなければ何とも言えないのではないか?」


「それもそうですわね。でしたら伯爵、今から試作をしてみてはどうでしょう?」


「今からじゃと?」


 ロルフさんが作ってみないと解んないよって言ったら、それを聞いたバーリマンさんがだったら今から作ってみようよなんて言い出すんだもん。


 だから、それを聞いたロルフさんはびっくりしたんだよ。


 でもね、今作るのが一番いいんだよってバーリマンさんは言うんだ。


「はい。だって今、ここにルディーン君がいるのですよ? 彼のクリエイト魔法を使えばどのような筒でもすぐに作り出す事ができるのですから、これ以上の機会は無いと思いますわ」


「そっか! 僕、鉄とか銅だったらどんなのでも作れるもんね」


 今お話してた魔道具はね、ほんとだったら鍛冶屋さんに頼んで筒の部分を作ってもらわないとダメなんだよ。


 でも僕のクリエイト魔法を使えば、どんな筒だってあっと言う間にできちゃうもん。


 だからバーリマンさんの言う通り、いっぺん作ってみようって言うんだったら今が一番いいんだよね。


「ふむ。ルディーン君も乗り気のようだし、それでは試作をしてみるとするかのぉ」


「うん! 僕、頑張っていろんな筒を作るよ」


 実験するんだったら、いろんな長さの筒を作んないとダメだもんね。


 僕はロルフさんにそう答えながら、頑張るぞってふんすと気合を入れたんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 これ、このエピソードを書く前は単純に掃除機を作るつもりだったんですよ。


 ではなぜこのような結果になったのかというと、それは頂いた感想の中に、汚れの塊がぼたぼた落ちてくると聞いてGやクモを思い浮かべたというものがあったから。


 私の中では、固まって落ちてくる汚れの塊はジブリ映画に出てくるまっくろくろすけみたいな丸い形をしていたんですよね。


 でもそれを表記していなかった事で勘違いをさせてしまったのでこれはいけないと思い、どこかに入れようと思ったところから丸くて吹き飛ばしやすいという設定を考えて今に至ったと言う訳です。


 しかし後々考えると、これは正しかったのかも?


 だってこの世界にはフィルターも無ければ紙パックもありませんからね。


 吸い込んだ風とごみを分ける方法が無いのですから、掃除機を作るのはかなり難しいんじゃないかなぁ。


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