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541 蒸し器、作ったんだ


 カテリナさんが頼んでくれた人がクレイイールを買ってくるまで、ちょっと時間がかかるでしょ?


 だからそれまでの間に、僕たちはクレイイールをお料理する準備をしてたんだ。


 そしたらね、


「あっ、そうだ。ルディーン君、そう言えば君に見せたいものがあったんだ」


 その途中でノートンさんが僕にこんな事を言ってきたんだよね。


「僕に見せたいもの?」


「ああ、ちょっと待ってろ」


 ノートンさんはそう言うと、ちょっと離れたとこにあるおっきな観音開きの扉がついてる棚の所へ。


 でね、その扉を開けるとそこから木でできたおっきな細長い箱のようなものを取り出して、僕んとこに持ってきたんだ。


「この間、”むす”という調理法と、それに使う道具の事を教えてくれただろう? その話を元に、知り合いの職人と相談しながらこれを作ってみたんだ」


 ノートンさんが持ってきた木の箱みたいなのを近くで見てみるとね、上には柔らかい木を編んで作った蓋がのっかってて、それを取ってみると箱の底が板じゃなくって細い枝をいっぱい並べたような作りになってたんだ。


「わぁ、ほんとに蒸し器だ。でも、丸い形じゃないんだね」


「ああ。俺も初めは君に教えてもらった通り、鍋に乗せやすい丸型を作ろうと考えていたんだ。でも職人から、木で編んで作る蓋や細い枝を並べる底ならともかく、周りの木枠を作るのに指定された丸型で作ろうと思うと手間がかかりすぎると言われてしまってな」


 僕がノートンさんに教えてあげた蒸し器はね、普通の鍋にのっける丸い奴だったんだよ。


 でもね、丸い形の入れもんを作ろうと思ったら普通は木のクリエイト魔法を使える人を探すか、濡らした木の板をゆっくりと曲げていって作るしかないんだって。


 だからどうしてもその形にする必要がある訳じゃないなら、そんな大変な事をするよりも四角い入れもんで作った方がいいんじゃないの? って、職人さんから言われたんだってさ。


「ただ、作ってみて思ったんだが、串を打って焼いたクレイイールを蒸すのなら並べて置ける分、この形にした方がよかったと思うんだ」


「そっか。それにこれだったら、一度にいっぱい蒸せるもんね」


 ノートンさんの言う通り、普通のお鍋にのっける蒸し器だといっぺんに蒸せる量がちょっと少ないんだよね。


 でもこの蒸し器は、長方形の木枠を使って作ってあるでしょ?


 だから一度にたくさん物を入れて蒸す事ができるんだよね。


「それに、むすという調理法はクレイイール以外にも使えそうだからなぁ。この館で働いている人達の食事を作るのに使おうと思ったら、やはりこの形がベストだろう」


「そうだね。お芋なんか、蒸してバターをのっけるだけでもすっごくおいしいもん。それにこないだ作った蒸しパン。あれだって、これを使えばいっぱい作れるもんね」


 ノートンさんはロルフさんちの料理長さんだから、一度にいっぱい作る事が多いもんね。


 そんなノートンさんが使うんだったら、やっぱり丸い蒸し器よりもこういうおっきな四角い蒸し器の方がいいんだろうなぁって僕も思ったんだ。


「なるほど、芋をむしても美味いのか。これを乗せるための特注で作った鍋も四角い形をしている分、普通の鍋よりも安定感があるからなぁ。少々重いものでも大丈夫そうだから、今度この館で勉強しているメイド見習いや執事見習いたちの昼食用に作ってみるかな」


 ノートンさんは顎をさすりながらそう言うと、カテリナさんに蒸すための芋を用意しといてねって頼んだんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 すみません。今回もかなり、というか異常に短いです。


 食中毒の症状が治まり、これなら金曜日はいつも通り更新できそうだなぁなんて思っていたのですが、どうやら寒さがきつくなると咳もひどくなるようでして、この異常寒波で頭が働かなくなってしまいました。


 本当はクレイイールの調理まで書くつもりだったんだけどなぁ。プロットもそこまで書いてあったし。


 でも流石に平日ではこれが精いっぱいだったので、平にご容赦ください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 体調とかいろいろ大変な中、書いてくださってたんですね。 ありがとうございます。 知り合いで後遺症で胃腸と熱と咳がまだ続いてる人がいるので、そんな症状の中、仕事と小説と書いてくださってるの…
[一言] 体調が悪い時は無理せずゆっくりと休んで下さいませ。 お大事に。
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