表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

531/759

521 もち米が無くってもお餅は作れるんだよ


 わらび餅はまた今度って事になったけど、代わりに作るお菓子の事はまだ何にも言ってないでしょ?


 だからキャリーナ姉ちゃんは、それがすっごく気になったみたいなんだ。


「ルディーン、どんなお菓子作るの?」


「あのね、わらび餅みたいな、でもちょっと違う柔らかくってもちもちしたお菓子を作ろうって思ってるんだよ」


 僕ね、イーノックカウの豆屋さんで大豆を見つけた時に、醤油だけじゃなくってこれを粉にしてかけたきな粉餅が食べたいなぁって思ったんだよ。


 でもさ、いろんなお店を探して回ったけど、もち米どころか普通のお米さえ見つかんなかったでしょ?


 だから僕、最初は無理かなぁってちょっと諦めかけてたんだ。


 けどさっき大豆の粉でお菓子を作ろうって話になって、それをオヒルナンデスヨでやってたなぁって思い出したその時に、ある食べ物の事も一緒に思い出したんだよね。


「やらかいお菓子って言うと、パンケーキみたいなやつ?」


「違うよ。わらび餅みたいなやつって言ってるじゃないか」


「だって私、わらびもちってのがどんなのか知らないもん。それだけじゃ解んないよ」


 あっ、そう言えばわらび餅がどんなものなのか知ってるのって、家ん中じゃ僕とお母さんだけだっけ。


 それじゃあ、キャリーナ姉ちゃんも解るはずないよね。


「う~ん、どういえばいいかなぁ?」


「あら、そんな事考えるよりも、作った方が早いんじゃないかしら?」


 だから僕、どうやって言えば解ってくれるかなぁって頭をこてんって倒したんだけど、それを見たお母さんが作った方が早いんじゃないの? って。


「そっか! そしたら食べられるからどんなのかすぐに解るね」


 それにキャリーナ姉ちゃんも賛成してくれたもんだから、僕はさっそくお菓子作りを始める事にしたんだ。



「お母さん、ねばねば草の粉と、いっつも作ってくれる芋揚げあるでしょ? あれのお芋出して」


「芋揚げに使う芋も? そんなのでお菓子が作れるの?」


「うん」


 僕ね、お母さんが作ってくれる芋揚げが大好きなんだけど、あれに使ってるお芋が前の世界にあったじゃがいもってのにそっくりなんだ。


 だからあれを使えばきっと、芋餅ってのが作れると僕、思うんだよね。



 僕が前の世界で見てたオヒルナンデスヨにはアナウンサーって言うきれいなお姉さんが出てたんだけど、その人はほっかいどってとこで生まれたんだって。


 でね、そのお姉さんがほっかいどの人たちはお芋と片栗粉でつくったお餅をおやつに食べてるんだよって言って、その作り方をオヒルナンデスヨでみんなに教えてたんだよね。


 前の世界の僕はそれを見て食べてみたいなぁって思ったんだけど、そしたらそれを聞いた前の世界のお母さんが作ってくれたんだ。


「オヒルナンデスヨだと焼いて食べるって言ってたけど、前の僕んちだと茹でて食べたんだよなぁ」


 でも前の僕って、すっごく体が弱かったでしょ?


 だからお姉さんが作ってたみたいなおっきいのを焼いて食べたら消化ってのが悪いかもしれないからって、ちっちゃなお団子にしたのを茹でてから、それに甘いあんこってのかかけて食べてたんだよね。


 それ、おはぎみたいでとっても美味しかったもん。


 だからきっと、甘いきな粉餅みたいにしてもおいしいんじゃないかなぁって、僕、思うんだ。


「それで、ルディーンこの芋はどうするの? 揚げる?」


「ううん。柔らかくなるまでゆでて、それを潰したのにねばねば草の粉を入れて使うんだ」


「茹でるのね、わかったわ」


 お母さんはそう言うとね、早速お鍋の中に水とお芋を入れて茹で始めたんだ。


 でね、それが茹で上がるとすっごくあっついはずなのに、お母さんはその皮をするするって全部むいちゃったんだ。


「お母さん、すごい! 熱くないの?」


「熱いわよ? でもこの芋、潰して使うんでしょ? なら冷めてからだと潰しにくくなってしまうのよ」


 お母さんはね、お芋をつぶして作るお料理の時は、いっつもこうやってあっついうちに皮をむいちゃうんだって。


 だから慣れてるのよって言いながらそのお芋を木でできたおっきなボウルに入れて、今度は潰し始めたんだ。


「わぁ、あっと言う間に潰れてっちゃうね」


「ねっ、温かいうちだと、簡単に潰れるでしょ? でもルディーン。聞かずに潰しはじめちゃったけど、どれくらい潰せばいいの?」


「えっとね、粒々が全部無くなるくらいまで潰しちゃって」


「滑らかになるまで潰せばいいのね」


 こうやってお母さんがお芋を全部きれいに潰してくれたおかげで、僕はすぐに次の作業に移る事ができたんだ。


「あら、そんなにいっぱい入れるの?」


「うん。いっぱい入れないと、もちもちにならないんだって」


 僕はね、お母さんが潰してくれたお芋の中にねばねば草の根っこから作ったでんぷんの粉を、ドバドバってすっごくいっぱい入れてったんだよ。


 でね、これくらいでいいかなって思ったところで、今度はその粉と茹でて潰したお芋を混ぜ始めたんだ。


「うんしょ、うんしょ」


「これは結構力がいりそうね。ルディーン、代わりなさい。私がやるわ」


 でもね、粉と茹でたお芋が混ざるとすっごく重たくなってったもんだから、途中から僕が一生懸命力を入れてもぜんぜん混ざらなくなっちゃったんだよね。


 だからそれを見たお母さんが、途中で変わってくれて、


「こんな感じでいいかしら?」


 一塊になるまで、あっという間に混ぜちゃったんだ。


 って事で、次の工程へ。


「えっとね、ちゃんと混ざったら今度は、パンを作る時みたいにしっかりと練らないと美味しくならないんだよ」


「あら、そうなの? 結構力がいるお菓子なのね」


 このお芋で作るお餅、ただ焼いて食べるだけだったらこれくらいでもいいんだって。


 でも今回はほんとのお餅みたいにしようと思ってるでしょ?


 だったら、ちゃんと柔らかくなるまで練ってあげないとダメみたいなんだよね。


「混ざったお芋、ちょっと頂戴。どれくらい練るのか、一度やってみるから」


「ええ、いいわよ」


 と言う訳で、でんぷんの粉とお芋を混ぜた塊からちょっとだけ分けてもらって、こねこね。

 

 そしたらふわふわでもちもちのとっても柔らかい生地になったから、僕はそれをお母さんに見せてあげたんだ。


「ほら、こんな風になったら生地は完成だよ」


「へぇ、あの茹でた芋が、粉を混ぜて練るだけでこんな風になってしまうのね。わかったわ、残りもやってしまいましょう」


 生地を練るのは僕でもできるくらい簡単でしょ?


 だから今度は僕とお母さんだけじゃなく、お姉ちゃんたちも一緒に4人でこねこね。


 そしたら残りの生地も、あっという間にふわふわもちもちになっちゃったんだ。


「ルディーン、これに大豆の粉をかければいいの?」


「ううん、違うよキャリーナ姉ちゃん。最後にこれをもういっぺん茹でないとダメなんだ」


 目の前の生地はそのまんまでも美味しそうなんだけど、これをお湯に入れて茹でると中に入れたでんぷんが固まってねばねばしてくるんだって。


 だからそのまんま食べるよりも、茹でたり焼いたりした方がもっとお餅に近くなるんだ。


 って事で、練りあがった生地をちょっとずつちぎっては、どぼんどぼんってさっきお芋を茹でたお湯の中へ。


 でね、それが浮かんできたらお餅は完成。


「これにお砂糖を混ぜた大豆の粉をかけてっと。キャリーナ姉ちゃん、大豆の粉で作ったきな粉餅、できたよ」


「わぁい。いただきま~す」


 それにお砂糖を混ぜたきな粉をかけてからキャリーナ姉ちゃんに渡してあげると、お姉ちゃんは早速パクリ。


「わぁ、なんか変な食感。でも、おいしい!」


 キャリーナ姉ちゃんがそう言ってとっても美味しそうに食べるもんだから、それを見てたお母さんやレーア姉ちゃんも浮いてきた生地を鍋から掬って、それにきな粉をかけるとおんなじようにパクリ。


「あらホント、わらび餅とはまた違ったもちもち感だけど、歯にくっつかない分、私はこっちの方が好きかも?」


「つるつるして、もちもちして。これ、とってもおいしいわね」


 ふたりともこのじゃがいも餅が気に入ったみたいで、生地をちぎってはお鍋に入れてぱくぱく食べてったんだよ。


 それにね、きな粉餅を食べてる途中で大豆のクッキーも食べごろになるくらいまで冷めたから、そっちもみんなで試食。


 そしたらそ大豆クッキーもすっごく美味しくできてたもんだから、それからはみんなでクッキーときな粉餅の両方をパクパク食べてったんだ。


 でも、こんなお菓子をそんなにいっぱい食べたら、夜のご飯なんかお腹に入る訳ないよね。


「おい、今日の晩御飯。ちょっと手抜きじゃないか?」


「ごめんなさい。お腹がいっぱいで、あんまり手の込んだものを作る気が起きなかったのよ」


 そしてそのせいでお父さんとお兄ちゃんたちは、量だけはあるけど朝のご飯くらい簡単な夜ご飯を食べる事になっちゃったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 本編でルディーン君がお母さんに、いっつも作ってる芋揚げのお芋を出してと言っていますが、これは別に突然出てきたものではありません。


 殆どの方が忘れているでしょうけど、カールフェルト家の畑でも作っているんですよね、この芋。(第4話参照)


 さて、今回出て来たじゃがいも餅ですが、北海道展のおかげで私の中では茹でて食べる物なんですよね。


 でも北海道ではみたらしみたいに、焼いたものを醤油と砂糖を混ぜたものを絡めて食べると聞いて驚いた記憶があります。


 なので本場の人からしたら、今回の食べ方は邪道と思うかもしれませんね。


 でもこの茹でるという食べ方、結構美味しいんですよ?


 浮いてきたら食べごろとすぐに解るから焼きすぎで焦がすような失敗をする心配もありませんし、スーパーに売ってるパックのあんこや本編のようにきな粉をかけるだけで、すぐに美味しいお菓子になりますからね。


 さて、また泊まりの出張が入ってしまい、次回の更新ができそうにありません。


 ですので金曜日の更新はお休みして、次回は来週の月曜日になります。


 そしてこのような出張なんですが、どうやら今年いっぱい続くなんですよ。


 なのでこの後も何度か休載する事があると思います。


 一応あらかじめ前の回に告知できる程度には出張の日時がわかるようなので、その度ご報告はするつもりですが、このような事情ですので度々お休みする事、なにとぞご容赦ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] カボチャも同じよう団子にして、冬至にお汁粉に入れて食べたりするね~。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ