表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

393/759

386 おもちゃの三輪車はできたんだけど……


「まずはちっちゃいのを作ってみよ」


 最初っから僕が乗れるくらいのを作って、失敗しちゃったらやでしょ?


 だから最初は、おもちゃみたいな小っちゃいのを作ってみる事にしたんだ。


 それにね、そんなに小っちゃかったら一角ウサギからとれる米粒くらいの魔石でも動くもんね。



 ちっちゃくってても実験で作るんだから、本物を作る時とおんなじように作んないとダメだよね?


 って事で、最初は輪っかにつけるベアリング作り。


「前にお尻のいたくならない馬車、作っといてよかったなぁ」


 でもこれは馬車の時に何個か作ったから、それの小っちゃい版を作るだけでしょ?


 だからそんなに苦労しなくっても、簡単にできちゃったんだ。


 と言う訳でそのベアリングを、クリエイト魔法で作った3個の木の輪っかにくっつけてっと。


「よし、これで輪っかは完成っと。後は3輪車の本体だよね」


 そう思った僕は、前の世界で見た三輪車がどんな形だったのかを思い出そうとしたんだ。


 でもね、


「う~ん、あの形だと、ちょっと乗りにくいかも?」


 あれってスティナちゃんくらいちっちゃい子が乗って遊ぶものでしょ?


 だから僕が使うんだって思うと、ちょっと乗りにくそうなんだよね。


 って事で、車体がほんのちょっと長くなった三輪車って感じの絵を、木の棒を使って地面に描いてみたんだ。


 そしたら思ったよりカッコいいのが描けたもんだから、僕は大満足。


「うん。これだったら大丈夫かも」


 僕が描いた絵はね、元の三輪車とおんなじようにお尻の下に後ろの輪っかがあるけど、その代わり前の輪っかをちょっと前の方に伸ばしてその両脇に足をのっける形にしたんだ。


 これだったら僕でも乗れるし、僕がもっとおっきくなっても足を曲げれば乗れるもんね。


「それじゃあ、これで作ってみよっと」


 形が決まったって事で、今度は車体作りだ。


 でも本物を作るのと違ってこれは実験用のおもちゃだから、ハンドルを動かして前の輪っかが動くようになんてしなくってもいいでしょ?


 それにお尻をのっけるとこも硬くったっていいから、三輪車全体がこういう形になるんだって頭に浮かべながらクリエイト魔法を使って木でできた車体を一気に作っちゃったんだ。


 でね、これにさっき作った輪っかをつければ、おもちゃの3輪車が完成!


「後は動かすための回転の魔道具をつけるだけなんだけど……」


 でもさ、一応形はできたけどまっすぐ走らなかったら困っちゃうでしょ?


 だからまずはお家の中で、このまんま走らせてみたんだよね。


 そしたらおもちゃの三輪車は、シャーって音を立てながらまっすぐ走ってったんだ。


「やった。ちゃんと走った!」


 それを見た僕は、嬉しくなって両手を上げながらその場でぴょんぴょん。


 でもこれ、まだ完成したわけじゃないでしょ?


 だから僕は壁の方まで走ってった三輪車のおもちゃを取りに行くと、それに回転の魔道回路図を書いて、米粒くらいのちっちゃな魔石をくっつけたんだ。



「さっきはお家ん中でやったけど、僕が乗るのはお外だもんね」


 お家ん中と違って、お外はデコボコしてるでしょ?


 だから魔道具として走らせるんだったら、やっぱりお外で実験しないとダメなんだよね。


 って事で、僕はさっそく3輪車のおもちゃを持ってお外へ。


「あ~、ルディーンにいちゃだ!」


 そしたらさ、なんでか知らないけどスティナちゃんとヒルダ姉ちゃんがそこに居たんだよね。


「あら、ルディーン。どこかへ出かけるところだったの?」


「ううん、違うよ。これ作ったから、お外で走らせようって思ったんだ」


「そうなの? よかった、もし出かけるところだったらどうしようかと思ったわ」


 ヒルダ姉ちゃんはね、ちょっと村の外に出かけるご用事ができたんだって。


 でも、スティナちゃんを村の外に連れてけないでしょ?


 だからお出かけしている間預かってもらおうって思って、僕んちに来たんだってさ。


「その変な馬車のおもちゃで遊ぶつもりだったのならちょうどいいわ。ルディーン、悪いけどちょっとの間スティナの相手をしてもらえないかしら?」


「スティナちゃんと遊ぶの? うん、いいよ」


「ありがとう、助かったわ」


 ヒルダ姉ちゃんは急いでたみたいで、スティナちゃんに僕と遊んでてねって言うとそのまんま行っちゃったんだ。



「それじゃあ、スティナちゃん。これで遊ぼっか」


 と言う訳でスティナちゃんと二人で三輪車のおもちゃを走らせることにしたんだけど、僕が持ってる三輪車を見たスティナちゃんは、


「ルディーンにいちゃ、それなあに?」


 不思議そうな顔して、そう聞いてきたんだよね。


「これ? 三輪車って言う乗りもんのおもちゃだよ。今度ね、これの乗れるくらいおっきいのを作ろうと思ってるから、その前に小っちゃいのを作ったんだ」


「ふぅ~ん、ちゃんりんちゃっていうのかぁ」


 僕は三輪車って言う乗り物のおもちゃだよって教えてあげたんだけど、これって手のひらよりちょっとおっきいくらいの大きさでしょ?


 だから名前は解ってくれたみたいなんだけど、これが乗り物なんだって事はよく解ってないみたい。


 でもそれを見た僕は、実際にこれで遊んでれば解るよね? って思って、とりあえず一緒に走らせてみる事にしたんだよね。



 回転の魔道具についてる魔石に魔力を通してスイッチを入れると、前の輪っかがきゅるるるるって回りだしたんだよ。


 そしたら、それを見たスティナちゃんは、それだけで大喜び。


「あっ、ルディーンにいちゃ。ちゃんりんちゃがうごいた!」


 でね、僕は喜んでるスティナちゃんの前に三輪車のおもちゃを持っていくと、それをそっと地面に置いたんだ。


 そしたらね、三輪車のおもちゃはさっきお家ん中で実験した時みたいにシャーって走ってったんだけど……。


 カシャーン!


「あっ! ルディーンにいちゃ。ちゃんりんちゃ、ころんじゃった」


 途中にあるデコボコんとこでがたがた揺れたと思ったら、次のちょっと大きめのくぼみんとこで三輪車のおもちゃはこてんってひっくり返っちゃったんだ。


「早く走りすぎたのかなぁ?」


 この三輪車のおもちゃ、実験だからって前の輪っかをただ回転の魔道具にしただけだったでしょ?


 だから思ったよりずっと早く走ってったんだよね。


 でもさ、輪っかが四つついてる馬車だって、すっごく早く走ったらころんじゃう事があるって言ってたもん。


 だからきっとこの三輪車も、早く走りすぎたからこんな風にひっくり返っちゃったんだって僕、思うんだよね。


「スティナちゃん、ちょっと待っててね。今度は転がんないようにするから」


「うん!」


 って事で、回転の魔道具に抵抗の回路図を追加して再挑戦。


 さっきよりかなりゆっくり走りだした三輪車のおもちゃは、そのおかげなのかさっきがたがた揺れだしたデコボコんとこやおっきなくぼみんとこは無事に通過したんだよ。


 でも。


 カシャーン!


「あ~あ、またころんじゃったね。ルディーンにいちゃ」


 今度はちょっとおっきめの石にぶつかって、三輪車のおもちゃはこてんって倒れちゃったんだ。


 でね、それを見たスティナちゃんはちょっとしょんぼりしちゃったんだけど、僕はそれどころじゃなかったんだよね。


「そっか! ブレーキが無いとダメじゃないか!」


 これが馬車だったら、引っ張ってるお馬さんが止まってくれれば一緒に止まるよね?


 でもこの三輪車の場合、回転の魔道具を止めても走ったまんまだもん。


 だからブレーキをつけとかないと、目の前に急に何かが出てきたり、下り坂を走ってる時なんかだと止まれなくってさっきのおもちゃみたいにど~んってぶつかっちゃたりするかもしれないんだ。


「でも、ブレーキってどうやって作ったらいいんだろう?」


 どうやって走らせたらいいのかは考えてたけど、どうやって止まったらいいかなんて全然考えてなかったんだよね。


 だから僕は、転がっちゃった三輪車のおもちゃを走って拾いに行くスティナちゃんを見ながら、どうしたらいいんだろうって考えこむことになっちゃったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ルディーン君はブレーキの存在を忘れていましたが、これはこの世界の乗り物である馬車がにブレーキが無いからです。


 なにせ馬車は固定した馬が歩けば進むし、止まれば馬車も一緒に止まりますからね。


 だからルディーン君は馬の代わりに三輪車を動かす動力としての魔道具に回転の魔道具を使う事は考え付いたけど、止まる時にもブレーキがいるなんて思いつかなかったと言う訳です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 玩具だけど三輪車がこの世界で走った日! 回転を仕込むならバイク(トライク?)も作れそうですね。 ブレーキと変速、速度と道の悪さに耐えられる強度も必要かな? どうやって解決して三輪車を実用化…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ