377 今度こそ、魔道オーブンを作ろう!
作ったあったかい風が出る魔道具、お母さんにドライヤーみたいだから取っ手つけてって言われたでしょ?
でもさ、どうせ作るんだったらちゃんとしたのを作りたいもん。
それに今日は魔道オーブンを作ってるから、お母さんにはこれに取っ手をつけるんじゃなくって、今度ちゃんとしたのを作るねって約束したんだ。
と言う訳で、魔道オーブンづくりを再開。
「ちっちゃな魔石でもちゃんとあったかくなったんだから、おっきなのを使えばきっとオーブンが作れるくらい熱くなるよね?」
って事で今度はブレードスワローから獲れた大豆くらいの魔石を火の魔石に属性変換して、さっきの米粒くらいの魔石と取り換えてみたんだけど……。
「あれ? すごく熱くなったけど、これじゃあまだオーブンには使えなさそう」
魔道冷蔵庫にも使った温度によって反応が変わる魔道回路図で作った実験器具に出てきた風を当ててみたら、120度ちょっとにしかならなかったんだよね。
う~ん、これでダメって事はブラックボアとかクラウンコッコの魔石を使わないとダメかなぁ?
でもさ、アマンダさんに教えてもらった魔道オーブンに使ってる魔石って、今実験に使った大豆くらいの大きさのなんだよね。
「やっぱり別のお部屋作って、そこで一度温めてからじゃないとオーブンには使えないのかなぁ?」
クラウンコッコの魔石はまだ何個かあるからそれを使ってもいいんだけど、前に聞いたら大豆くらいのに比べるとお値段が10倍くらい違うんだって。
だったらさ、やっぱりちっちゃい方を使いたいよね?
だから僕、やっぱり筒を通すだけじゃなくって、かまどとは別の所にもう一個お部屋を作ろっかなぁ? ってちょっと考えたんだ。
でもなぁ、それだと出来上がったオーブンがおっきくなっちゃうんだよなぁ。
アマンダさんとこで使ってるみたいに二重のかまどになってるんだったら、そのそばに空気を熱くするお部屋を作ってもいいんだよ?
でも今僕が作ろうとしてるみたいに一個のかまどに熱くした空気を入れて中の温度を上げる形だと、ちっちゃく作ろうと思ったらどうしてもそのもう一個のお部屋の熱がかまどに移っちゃうもん。
そしたらさ、そのお部屋がある方だけが熱くなっちゃうでしょ?
だから僕、なんとか筒を通すだけで熱い空気を作りたいんだよね。
「なんかいい方法ないかなぁ?」
そう思いながら、僕は目の前の机の上を見てたんだよね。
そしたらさ、さっき温度を測るのに使った魔道具が目に入ったんだ。
「そう言えば、クーラーもこれとおんなじように、クールの魔法でつべたくした風を通してるんだよなぁ」
魔道クーラーはクールって言う魔法で冷やした空気を使って、お部屋の中を涼しくする魔道具なんだよね。
だから熱くするか冷やすかの違いはあるけど、やってる事はこれとおんなじ事……って、あれ? ホントにおんなじなのかな?
「そう言えばクールって、効果範囲にある空気を一瞬で最初に決めといた温度まで下げる魔法だよね?」
魔道クーラーはその力を利用して、効果が発動しているとこに風を通すことで冷やした空気を使ってお部屋の中を冷やす魔道具なんだ。
火の魔石も活性化させると近くを通ったものを温める性質があるから、そこだけ見ると効果が逆なだけでなんとなくクールの魔法とおんなじみたいに思えるでしょ?
でも決められた範囲の空気を一定の温度まで下げるクールの魔法と違って、火の魔石の活性化は”周りのものを温める”効果なんだよね。
「って事はもしかして、火の魔石であっためた空気をもういっぺん違う火の魔石があるとこを通したら、もっとあったかくなるのかも?」
少し温いスープをお鍋に入れて、もう一回火にかけたらあったかいスープになるでしょ?
それとおんなじで、もしかしたらあったかい空気をもういっぺん活性化させた火の魔石の近くに通したら、もっとあったくなるんじゃないかなぁ。
そう思った僕は、早速最初に使った米粒くらいの火の魔石とさっき使った大豆くらいの火の魔石を使って新しい魔道具を作ってみたんだ。
そしたらさ、今度は温度が160度近くまで上がったんだよね。
「やった! ちゃんと熱くなった!」
思った通り、火の魔石は活性化した魔力で周りのものを同じ温度まで熱くしてるわけじゃなくって、ただその温度を上げてるだけみたい。
って事はさ、ちっちゃな火の魔石でもいっぱい並べたら、それに近くを通るたびに空気をどんどんあったかくなるって事だよね?
そう思った僕は米粒くらいのちいさな魔石10個を火の魔石に属性変換して、それを少しづつ離しながら一個ずつ筒の真ん中に来るように固定して、最後に片方の入口に空気を送り込むための風の魔石をつけた魔道具を作ったんだ。
そしたらさ、火の魔石全部を活性化させると出てきた風は280度くらいにまで上がってたんだよ!
それにこれ、10個の魔石で温めてるでしょ?
アマンダさんとこの魔道オーブンとおんなじ大豆くらいの大きさの魔石を使った場合、温度の調整は魔道回路記号の抵抗を使ってするから温度が高くても低くても使う魔力はおんなじなんだ。
でもこの方法だと温度を下げる時は活性化する魔石の数が減らすから、使う魔力の量もおんなじように減るんだよね。
そのおかげで普通に作った魔道オーブンよりも、使う魔道リキッドの量を少なくできるみたい。
それにね、米粒くらいの魔石だと10個使っても大豆くらいの魔石より安いんだよ。
そして何より、これは村の森で一番獲れる一角ウサギが持ってる魔石だから、材料もいっぱいあるんだ。
「これで温めるとこは完成かな? あとはかまどの中の温度だけど……」
別のお部屋で温めないとダメってのは何とかなったけど、でもかまどの中全体をおんなじ温度にする問題が残ってるんだよね。
だってさ、
「この方法だと、釜の中でも風が出るとこが一番熱くなっちゃうんだよなぁ」
アマンダさんに教えてもらったオーブンは、周りにあっつい風を通してかまどの中全体の温度を上げてたでしょ?
でもこの筒を使って温める方法だと直接かまどの中に風を送り込むから、どうしてもその出口が熱くなっちゃうんだよね。
「どうやったら中全体を、おんなじくらい熱くできるのかなぁ?」
そう思った僕は、頭をこてんって倒しながらう~んって一生懸命考えたんだよ。
そしたらさ、ある事を思い出したんだ。
「そう言えば前に作った魔道冷蔵庫って、つべたい空気が下に行くからって上に氷を作るお部屋を作ったんだっけ」
前の世界でね、あったかい空気は上に上がってつべたい空気は下に行くってのを、学校ってとこで教えてもらったんだよね。
って事はだよ? 下から熱くなった空気を出してやれば上の方までおんなじように熱くできるかも?
それにね、風を直接かまどの中に入れるんじゃなくって、吹き出し口を下っ側の真ん中にしてそこの上におっきな丸い銅の板を入れてやればいいんじゃないかなぁ?
だってさ、そしたら風が丸い板に当たって広がるように出るし、風が当たった板もあったかくなるから下の方全体がおんなじようにあったかくなるはずだもん。
「あっ、そうだ! そう言えばお部屋の中って、風でかき回してやると全体がおんなじくらいの温度になるんだっけ」
これはね、前の世界で見てたオヒルナンデスヨでやってたんだけど、クーラーをつける時は下から羽が回る機械で風を送ってやるとお部屋の中全体が涼しくなるって言ってたんだよね。
って事はさ、下から熱くなった風を出すだけじゃなくって、かまどの中にも風の魔石を置いて中の空気をかき混ぜた方がいいのかも?
そこまで考えた僕はどうやって作ったらいいのかを一度木の板に書きだして、それを見ながら作業部屋の中に置いてある材料をテーブルに並べてったんだ。
でね、まだ実験だから外っ側までは作んなかったけど、クリエイト魔法を使って一応オーブンに見えない事もない、取っ手のある鉄の扉と4本の短い脚がついた丸っこい魔道具を作成。
早速それに魔力を通して、動かしてみたんだ。
そしたら大成功!
かまどの中に何カ所か温度が解る魔道回路をつけて調べてみたんだけど、ちゃんとオーブンの中全体がおんなじくらいの温度になってたんだよね。
「これだったらそのまんま外っ側も作って魔道リキッドを入れるとことかスイッチとかもつけちゃえば、あとはかまどの中をクリエイト魔法でちょっといじるだけで完成しそうだね」
それにね、実際に動かしてみたら思った以上によくできてたもんだから、僕は実験用のつもりだったオーブンをちょっと手直しする事で、ちゃんとした魔道オーブンとして完成させたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
とうとう魔道オーブンが完成しました! おまけに小魔力化のおまけつきw
そしてこれによって作れるお菓子や料理の幅がぐんと広がります。
さぁ、まずは何を作ろうかなぁ?
あっ、でもその前にドライヤーを作らなきゃダメか。
でもなぁ、1本の話にするのは無理そうだし、次の話の冒頭のナレーションだけで済ましちゃおうかなぁ。




