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352 僕、それもできるんだけど……


「ルディーン君。それじゃあ君はもう初めて作る料理でも、必要な材料の量がある程度わかるって事なのね?」


「うん。だからそうだよって言ってるじゃないか!」


 一通りステータスやジョブのお話をし終わった後で、アマンダさんはもういっぺん僕がほんとに初めてのお料理でも作るのにいる材料とか調味料とかの量が解るんだね? って聞いてきたんだ。


 だから僕、嘘なんかついてないよって言ったんだよ?


 でもね、そしたらそれを聞いたアマンダさんは、ちょっとしょんぼりしちゃったんだ。


「そう、ルディーン君はそんなに小さいのに、もうそのレベルをクリアしてしまっているのね。私はそこに到達するまで、あんなにかかったのに……」


「どうしよう、お母さん。アマンダさんが急にしょんぼりしちゃった!」


「大丈夫よ。でももう少しの間だけ、そっとしておいてあげましょ」


 だから僕、心配になってお母さんに大丈夫かなぁ? って聞いたんだけど、そしたらちょっとの間ほっといてあげてねって言われちゃった。


 そっか。よく解んないけど、お母さんがそう言うんだったらそうした方がいいんだよね。


 だからしょんぼりしてるアマンダさんはルルモアさんに任せて、僕とお母さんはちょっと離れたところでお茶を飲んでる事にしたんだ。



 それから10分くらいした頃かなぁ?


「うん、もう大丈夫。それじゃあ、続きを始めましょう」


 お母さんが言った通り、ちょっとしたらアマンダさんが無事復活。


 と言う訳で、お勉強の続きをすることになったんだ。


「さて、始めるのはいいとして……う~ん、ルディーン君がそのレベルに達しているって事は、料理人としての技量そのものは発酵のスキルを習得できるレベルに達しているって事なのよねぇ」


「そうなの?」


「ええ。本来かなりの素養がある料理人だとしても、これができるようになるには結構長い間の修業を必要とするものなのよ。だから私としては、そこにいたるまでのコツみたいなものを話そうと思っていたんだけど、それが全部無駄になってしまったのよね」


 アマンダさんはね、料理を教えてくれた人からいろんなお話を聞いて、そういう事ができるようになったんだって。


 だから今度は僕にそれを教えてくれるつもりだったらしいんだけど、もう僕ができるって解ったもんだからお料理に関しては教えることが無いらしいんだ。


「どうしよう? 発酵や醸造の話に移ってもいいけど、ここからはルディーン君が錬金術をある程度できるようにならないとあまり意味がないし」


「意味が無いと言うと?」


「実を言うと、料理の腕に関してはそこまで上達していれば技術の習得にもう問題が無いのよ」


 ルルモアさんが意味がないってどういう事? って聞くと、アマンダさんはここからは錬金術がある程度できないとお話を聞いてもあんまり意味が無いんだよって教えてくれたんだ。


「一応知識として話しておこうとは思っていたのよ? いずれ覚えなければならない事だし、それに目標があれば頑張れるものね。でも、料理の腕がもうそこまであると言うのなら、今下手にこの話をしてしまうと、錬金術の上達の妨げにならないかと言う不安があるのよ」


 ほんとだったらお料理も錬金術も、これから僕がいっぱい練習しないとダメだったはずなんだよね。


 なのにお料理の方はもう大丈夫だって解ったでしょ?


 だからアマンダさんは今発酵や醸造のお話をしちゃったら、僕がスキルを早く使えるようにならなきゃって錬金術の練習を頑張りすぎないか、ちょっと心配なんだってさ。


「なるほど。片方がもうそのレベルに達しているのなら、錬金術の技術不足で使えないって事になるものね。アマンダさんは、それがルディーン君の成長の妨げになるかもしれないって心配しているのね」


「ええ。たとえ大人でも、気負いすぎるとうまく行かない事の方が多いわ。それにルディーン君は才能はあるけど、まだ幼いでしょ? それだけに、ここからの話を教えてしまってもいいのかどうか悩みどころよね」


 そう言ってう~んって唸りだす、アマンダさんとルルモアさん。


「ちょっと、いいかしら? アマンダさん、その発酵って言う技術に必要な錬金術って、そんなに難しいものなの?」


 そしたらそんな二人を見て、お母さんがこんな事を聞いたんだよね。


 だってそれが解んないと、どれくらい大変か解んないでしょって。


 それにね、錬金術ギルドにいるロルフさんやバーリマンさんにこの事を話せば、きっと僕がそれができるようになるまでの手助けをしてくれるはずだから、まずはそれを教えて頂戴ってお母さんは言うんだ。


「そうね。でも、覚えるのは大変よ。そりゃあ初めて作る料理でも材料や味付けに必要な量が解るなんて程の難易度ではないけど、それでも中級レベルの錬金術師にならないと習得できないって話だから」


「そうなんですか。それはかなり難しそうですね。それで、その必要な技術と言うのは?」


「抽出と付与って言う技術よ。あっ後、解析って技術も必要って資料には書いてあるわ」


 アマンダさんはね、この三つの中で付与って言うのは初級の錬金術師でも使えるらしいけど、残りの抽出と解析ってのが特に難しくってそこで挫折する人が結構いるそうなんだよってお母さんに教えてくれたんだ。


 でも……。


「アマンダさん」


「ん? なぁに、ルディーン君」


 お母さんと二人して、そんなに難しいならきっとすっごくお勉強しないとダメなんだねってお話してるアマンダさんに、僕は教えてあげないとダメな事があるんだ。


「あのね、僕、もうその二つとも使えるよ」


「えっ!?」


 僕のお話を聞いたアマンダさんは、すっごくびっくりした顔しながら固まっちゃった。


 う~ん、なんかさっき同じような事があったような?


 おまけにお母さんまで、さっきとおんなじようにほんとなの? って聞いてくるし。


 僕、嘘なんてつかないんだけどなぁ……。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ちょっと短めですがちょうどキリがいい所ですし、すみませんが今日はここまで。


 さて、皆さんある程度想像はできていたでしょうけど、発酵と醸造のスキルを覚える為の技術ですが、ルディーン君はすでに料理も錬金術も必要なものを習得していました。


 ただ、過去にロルフさんが言った通り抽出は錬金術に必要な代表的な4つの要素の内でも特に難しいので、それが使えるようになるのにはかなりの練習が必要です。


 それに初めて作る料理にそれぞれどれくらいの量の素材を入れたらいいのかがなんとなくでも解るなんて特殊技術、普通に考えたらちょっとやそっとで習得できるはずがありませんよね?


 それこそ、そういう事ができるようになる素養が無ければ、たとえ何年修行しても習得する事はできないのです。


 でも、そんなすごい技術(正しくは料理人の一般職)のはずなのに、ルディーン君は雲のお菓子をみんなに作ってあげただけで就いたんだよなぁ。


 うん、間違いなくチートですw


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― 新着の感想 ―
[良い点] すでに必要な技術は揃っている! これまでにいろんな物を作りましたもんね。 いろいろ準備したり成長の妨げにならなかと配慮したくれたり すごく頑張ってくれてたのにルディーン君の隠れチート能力で…
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