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348 ロルフさんたちは難しいって言ってたのになぁ


「さて、わしらが調べられるのはここまでじゃとして」


 ロルフさんはそう言うと、僕の事を見ながらこう言ったんだ。


「ルディーン君。ちと面倒かもしれぬが、これからわしが言う薬効を鑑定解析で同時に調べる事ができるかどうか、やってみてはもらえぬか?」


「この羊皮紙に書いてあるのを?」


 ロルフさんに渡された羊皮紙を見ながら、何でこんな事を聞くのかなぁ? って、僕は頭をこてんって倒したんだ。


 だってさ、鑑定解析って調べようと思ったもの中にある成分が全部いっぺんに解るスキルなんだもん。


 でね、そんな僕を見たロルフさんたちは説明が足らなかったことに気が付いたみたいで、慌ててその理由を僕に教えてくれたんだよ。


「これはな、ベニオウの実の皮に含まれておる成分の中でも特に有用なものを書きだしたものなのじゃ」


「だからこの他にも当然いろいろな成分が入っているのは解っているのだけれど、もしこれだけを指定できるのならばそれとはまた違った事が解るのよ」


 指定できたら解る事があるの?


 ってそっか。ベニオウの実って皮を一緒に食べるとすっごく美味しくなるんだっけ。


 食べ物ってさ、前に体にいい成分がいっぱい入ってるほど美味しく感じるって聞いた事があるんだよ。


 だったらさ、ベニオウの実の皮にもきっと、体にいい成分がいっぱい入ってるはずなんだよね。


 だって、実と一緒に入れて作ったシャーベットはとっても美味しかったもん。


 でね、ロルフさんたちはベニオウの実の皮に入ってる成分全部を使ったお薬は作れないって言ってたでしょ?


 って事は、もしかしたら体力や魔力を回復する成分を抽出して使っちゃった後でも、残った材料を使って美味しい物が作れるかも? って思って、それを調べようとしてるんじゃないかなぁ。


「どんなのがおいしいか解んないもんね。うん、解ったよ。僕、頑張って調べてみるね」


 そう言って僕はとりあえず全部の成分を一度鑑定解析で調べて、その後に渡された羊皮紙に書かれてるのを一個ずつ調べていったんだ。


 でもね、


「ダメだよ、ロルフさん。これ、体力や魔力を回復する成分を取っちゃうと、おいしく無くなっちゃうみたい」


 食べたらおいしく感じるのは、体にいい効果があるものだけだよね?


 でもそんな効果があるものは全部、体力や魔力を回復するのに必要なのに含まれてるっぽいんだ。


 だから、お薬を作るためにそう言う成分を取っちゃうと、どうやってもおいしくなる調味料になりそうもないみたいなんだよね。


 その事を教えてあげるとロルフさんは……って言うか、バーリマンさんも一緒になって二人して困ったような顔になっちゃった。


「伯爵、あなたがあんな言い方をするから」


「そうは言うが、ではギルマスならもっといい伝え方の案があったと言うのか?」


 それにね、その後も二人してこそこそとお話を始めちゃったんだよ。


 もう! 僕に調べてって言ったのに、何で僕を仲間外れにして二人してないしょ話始めちゃうかな。


 そう思って怒ってたら、そんな僕を見てロルフさんたちはごめんなさいって。


「別にルディーン君を仲間外れにしておった訳ではない。ただな、ちとギルマスと二人で話さねばならぬ事があっただけなのじゃよ」


「そうなの?」


「ええ。私たちとしても、君にどう伝えたらよいのか解らなかったから、その相談をしていたの」


 ロルフさんたちはね、お薬にする成分を取っちゃった残ったのの使い方を知りたかったわけじゃないんだって。


 でもさ、さっき体力と魔力の両方を回復するお薬は作れないって言ってたでしょ?


 だったら、何で全部の成分をいっぺんに調べられるかなぁ? って思ったんだろう。


 だってお薬にできないんなら、その成分を全部指定できたってしょうがないもん。


「確かにその通りなのじゃが……」


 それを言ったらロルフさんもバーリマンさんもちょっと困った顔になって、その後ふぅって小さくため息をついてから僕にこう言ったんだ。


「先ほどは確かに体力と魔力の両方を回復するポーションは作れぬと語った。じゃがな、それはあくまでわしらでは作れぬと言うだけの事なのじゃ」


「ええ。でも肌用ポーションや髪の毛用ポーションを作り出せるルディーン君なら、あるいは作製に成功するのではないかと私たちは考えたのよ」


 ロルフさんたちはね、ベニオウの実の皮を調べてる時にその薬効成分の多さから自分たちではお薬にできないって思ったんだって。


 でも、僕は髪の毛つるつるポーションとかを作った時にすっごくいっぱいの成分に魔力を注ぐことができたでしょ?


 だからもしかすると、体力と魔力の両方をいっぺんに回復するポーションも作れるかも? って思ったんだってさ。


「そっか。でも、何で最初からそう言わなかったの? 言ってくれたら、やってあげたのに」


「確かにその通りなのじゃが、ちと後ろめたくてのぉ」


「先ほども言った通り、このポーションは普通の錬金術師には作れないのよ。だからもし頼んでルディーン君が作れたとしても、それは私たちの自己満足でしかないのよね」


 もし僕が鑑定解析を使ってロルフさんたちが言ってたのを全部調べて、それをいっぺんに指定できたとしたら、もうそれだけでこのお薬が作れるって事なんだって。


 何でかって言うと羊皮紙に書いてあった成分の数は8こで、お肌つるつるポーションよりも少なかったからなんだ。


 だからもしそれができる事が解ったら、そこでこの実験はおしまいにするつもりだったんだってさ。


 でもさ、しらべるのは8こだけなんだよね? だったら全部指定できるのなんて当たり前じゃないのかなぁ。


 だって、もっと成分の多い髪の毛つやつやポーションだって作れるんだもん。


 そう思った僕は、なんで? って聞いてみたんだけど、そしたらロルフさんたちはそう簡単な事じゃないんだよって。


「確かに君は鑑定解析によって肌や髪の毛のポーションを作る事ができる。じゃがな、この二つは共に素材に含まれておる、すべての成分に魔力を注いで作ったのではないかな?」


「でも今回はその前段階として、指定するものを選別すると言う工程が一つ入っているでしょ? そうした場合でも、私たちよりも多くの成分を指定できるかどうかはやってみないと解らないのよ」


 確かに髪の毛つるつるポーションの時は、これよりいっぱい指定して魔力を注いだよね?


 でも今回は入ってる成分全部じゃなくってこれとこれって選びながら指定しないとダメだから、本当にできるかどうかはやってみないと解んないだよってロルフさんたちは言うんだ。


「長年ポーションを作っておるわしらでも、一度に複数の工程を必要とする作業はかなり苦労するからのぉ。それだけに。この作業がいかに難しいかはよく解っておるのじゃ」


「ただ、私たちは鑑定解析が使えないでしょ? だからもしかすると、そのスキルならば簡単にできる事なのかもしれない。それを知りたいと言う意味でも、ルディーン君にはこの作業をやってもらいたいと思っているのよ」


「そっか。うん、解った! 僕、やってみるよ」


 何かすっごく難しい事みたいだけど、とりあえずやってみる事に。


 と言う訳で、まずはベニオウの実の皮に鑑定解析をかけてっと。


「ここから、この8こを指定するんだよね」


 僕は羊皮紙を見ながら、そこに書かれてる成分を一個一個順番に指定してったんだけど……あれ? できちゃった。


 何でだろう? ロルフさんたちはあんなに難しいって言ってたのに。


 あっ、そっか! もしかすると、僕の考えてる指定とロルフさんたちの言ってる指定が違うのかも?


 だってもしおんなじだったら、こんなに簡単にできるはずないもんね。


 そう思った僕は、とりあえずこの8個に魔力を注いでみる事にしたんだ。


 もしロルフさんたちの言ってる指定ってやつと違ったとしても、それがちゃんとできるなら問題ないもんね。


 そして……。


「うん。ちゃんとできたみたい」


「おお、指定ができたのじゃな?」


「ううん。こうだろうなって思ってた指定ってのが簡単にできちゃったもんだから、もしかしたら間違ってるのかも? って思ったんだよ。だから僕、鑑定解析で見ながら指定してた8個全部にちょうどいいだけの魔力を注いで、ポーションになるかどうかやってみたんだ」


「えっ!? という事はもしかしてさっきのできたって言うのは、この皮を体力と魔力が同時に回復するポーションにする事ができたって事なの?」


 そうバーリマンさんが聞いてきたんだけど……う~ん、お薬には違いないけど、これって皮のまんまだよね。


 だからポーションとは違うものなんじゃないかなぁ?


 そう思った僕は、どっちなんだろうって頭をこてんって倒したんだ。


「とにかくじゃ。その皮を調べてみればはっきりするじゃろう」


「ええ、そうですわね」


 僕がそうやってどっちなんだろう? って考えてたら、ロルフさんたちが調べて見れば解るって言って魔力を注いだベニオウの実の皮に解析をかけたんだよね。


「むぅ。これはまた……」


「これを服用すれば、ちゃんと体力と魔力の両方が回復するようですわね。それも思っていたよりかなり」


「うむ。既存の物より、回復量が多いようじゃのう」


 そしたら、これは皮のまんまだけど、ちゃんとポーションになってるって事が解ったみたい。


「よかった! じゃあ、ちゃんと指定ができてたんだね」


「ああ、確かに指定はできておったようじゃな」


「でもそれ以前に……伯爵。これ、どうしたらいいと思います?」


「とりあえず、この存在を外に漏らす事はせぬ方がよいじゃろうな」


 だから僕はやったぁ! って両手を上げて喜んだんだ。


 でもね、ロルフさんたちはなんでか知らないけど難しい顔になっちゃって、二人してう~んって唸ってたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 実際には作る気がなかった魔力と体力が同時に回復するポーションが出来上がってしまいました。


 因みにですが、髪の毛つやつやポーションが別の素材を混ぜて作られている通り、このポーションも別の薬草を混ぜる事で傷を治しつつ、体力と魔力の両方を同時に直せると言う凶悪なものが出来上がります。


 そして、当然ルディーン君ならそれも製作可能なんですよね。なにせ上級や特級のポーションだって必要な薬効は最高で5つなのですから、それを合わせても髪の毛つやつやポーションより魔力を注がなければならない薬効が少ないですからね。


 でもこれ、今まで作ってきたものの中でも、圧倒的にやばいものなんじゃないかな? だってあまりに便利なものなのに、それが作れるのはおそらくルディーン君だけなのですから。


 お肌つるつるポーションや髪の毛つやつやポーションは、その効果からとりあえず匿名表記で特許登録は済ませてありますが、流石にこれの存在を表ざたにするわけにはいきません。なにせこれほどのものとなると、流石に帝国に報告しない訳にはいきませんもの。


 と言う訳でこのポーションは、ルディーン君が作り出した物の中で初めてお蔵入りとなる事にw


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― 新着の感想 ―
[良い点] あっさり作ってしまう、さすがルディーン君や! 今回は出来上がったものが危険すぎましたね。 ベニオウの皮ポーション、見た目がシュールそうですねw [一言] HPとMPを同時に回復できて既存…
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