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341 森の中にはね、動物の群れもいるんだよ


 飛んでちゃったブレードスワローとお別れした僕たちは、また森の奥の方へ。


 途中からは森の中を歩くよりも楽だからって事で、川が流れてるところを歩くことにしたんだけど……。


「う~ん、ここでこいつらと出くわすとはなぁ」


 そしたら途中で、ブルーフロッグの群れが居たんだよね。


 これにはお父さんもびっくり。


 だって朝は、こんなとこにブルーフロッグなんていなかったもん。


 だけどそんなお父さんより、もっとびっくりした人が居るんだよ。


「まっ、魔物!」


 バーリマンさんは錬金術ギルドのギルドマスターだから、こんなとこに来ることなんてないでしょ?


 だからまだちょっと遠くにいるのに、ブルーフロッグがいっぱいいるのを見て怖くなっちゃったみたいなんだ。


 でもね、ロルフさんはちょっと違ったみたい。


 入口の辺りだけって言ってたけど、それでも森の中に入ったことが何度かあるからなのか、ブルーフロッグを見てもそんなにびっくりしてないみたいなんだ。


「これはまた、壮観な眺めじゃのぉ」


「壮観って。ロルフさん、そんな悠長な事を言っていられる状況なのですか!?」


「うむ。ブルーフロッグは確か、こちらから手出しせねば襲ってくることはまずないはずじゃからな」 


 ブルーフロッグはね、基本はおとなしい動物だから、こっちから何もしなかったらゲコゲコ鳴いてるだけで襲ってくるような事は無いんだよ。


 だからロルフさんは、ブルーフロッグの群れがいても心配する事なんかないよってバーリマンさんに教えてあげたんだ。


「そうなのですか? でも……」


 それを聞いてバーリマンさんはちょっと落ち着いたみたいなんだけど、それでもやっぱりまだ安心はしてないみたい。


 だって遠くにいるブルーフロッグの方をちらっと見ては、すぐにまたロルフさんやお父さんの方を見るんだもん。


「いくら襲ってこないと言っても、初めて見るのなら怖がるのは仕方ないさ。それに女性の中には強さ云々以前にフロッグやトカゲ系統の魔物や動物を怖がる人が一定数いるらしいからな」


「確かにのぉ。それにブルーフロッグは魔物でないとは言え、あの大きさじゃ。それがあれ程の数群れておるのじゃから、怯えるなという方が無理かもしれぬ」


 そんなバーリマンさんに、お父さんとロルフさんは怖くってもおかしくないよって言うんだよ。


 だってブルーフロッグの大きさは、ちょっとおっきめの犬くらいあるんだもん。


 そんなのが20匹くらい集まってゲコゲコ言ってるんだから、普段はあんまり街から出ないバーリマンさんが怖がっちゃうのは仕方ないよね。


「しかし、ギルマスがこれほどブルーフロッグを恐れておるとなると、あの近くを通る訳にはいかぬのぉ」


「確かに。手出ししなければ襲ってくる事は無いと言っても、ちょっとしたことでパニックでも起こして大声を出されたらどうなるか解らないからな」


 今日はポイズンフロッグをやっつけに来てるわけじゃないし、そもそもあの群れは全部ブルーフロッグだけみたいだから今回は無視して横を通り過ぎちゃってもいいんだよ?


 でも、もしバーリマンさんが大声を出したりしたら、それを聞いたブルーフロッグが怒っちゃうかもしれないねってお父さんたちは言うんだ。


「やはりここは、一度森の中に入って迂回すべきかな?」


「そうじゃな。わしとしてはせっかくの機会じゃからブルーフロッグを間近で観察してみたいところじゃが、ここはその方がよかろう」


 ブルーフロッグはそんなに強くないけどいっぱいいるでしょ?


 だからそんな事になったりしたら危ないからって、お父さんは森の中に戻ろって言うんだよ。


 でね、それを聞いたロルフさんは、ホントはブルーフロッグを近くで見てみたいけど、バーリマンさんが怖がってるんだから仕方ないねって。


 でもさ、その顔はすっごく残念そうなんだよね。


「ロルフさん。ブルーフロッグ、そんなに見たいの?」


「うむ。このような機会はめったに無いからのぉ。じゃがギルマスに無理をさせるのも、無駄な危険を冒すのもわしの本意ではないから、今回はあきらめるとしよう」


 そう言ってしょんぼりするロルフさん。


 そっか。森の入口に近いとこにいるブルーフロッグは冒険者さんたちが見つけて狩っちゃうだろうから、近くで見ようと思ったら多分森の奥の方まで行かないとダメだと思うんだよね。


 でもロルフさんはお爺さんだから、そんなとこまで歩いて行けないもん。


 そんなブルーフロッグがこんなに近くにいっぱいいるんだから、できるなら近くで見てみたいよね。


「ねぇ、お父さん」


「ん? なんだ、ルディーン。どうかしたのか?」


「あのね、ロルフさんがブルーフロッグを見たいって言ってるでしょ? だからさ、あのブルーフロッグに魔法をかけてもいい?」


「魔法? ってああ、あれか。別にいいぞ」


 そう思った僕は、お父さんに魔法を使ってもいい? って聞いてみたいんだよね。


 そしたらいいよって言ってくれたんだけど、


「魔法をかけるじゃと!? 何を言っておるのじゃ、ルディーン君。そんな事をすれば、あのブルーフロッグがこちらに襲い掛かってくるではないか」


「あの魔物たちが!? そっそんな恐ろしい事、やめて頂戴」


 そしたらそれを聞いたロルフさんたちはびっくり。


 でもね、そんな二人にお父さんは、そんな心配しなくてもいいよって笑いながら教えてあげたんだ。


「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。ルディーンはただ、あのブルーフロッグの群れを眠らせようって言うだけだから」


「ブルーフロッグを眠らせる?」


「えっと、そんな事が可能なんですか?」


「うん! あのね、冒険者ギルドでポイズンフロッグをやっつけてって頼まれたときは僕がみんな眠らせたんだよ」


「あの時は、ルディーンの魔法があってほんと助かったな」


 あの時は何度もブルーフロッグの群れにスリープをかけて回ったでしょ?


 それなのにブルーフロッグどころか、魔物になって抵抗が上がってるはずのポイズンフロッグでさえ全部ちゃんと寝ちゃったんだよね。


 お父さんはその話をロルフさんたちにしてあげて、だから僕が魔法を使ったって大丈夫なんだよて言ったんだ。


「なるほど、ちゃんとした実績があると言うわけじゃな」


「うん! だからね、ちゃんと全部寝ちゃうから、近くに行ってロルフさんがブルーフロッグを見ても大丈夫だよ」


「おお、という事は、わしのために魔法を使ってくれると言うのじゃな?」


「うん。だってロルフさん、さっきブルーフロッグを見たいって言ってたもんね」 


 これを聞いたロルフさんは大喜び。


 バーリマンさんはまだちょっと怖がってるみたいだったけど、それでもすっごく嬉しそうなロルフさんを見て、


「これほど喜んでいるのですから、仕方がないですわね」


 そう言って僕が魔法をかけるのを許してくれたんだ。



「それじゃあ魔法、かけてくるね」


 と言うわけで、僕は一人で先に魔法が届くとこまで走っていったんだ。


 そしたらそれを見たバーリマンさんがびっくりして止めようとしたんだけど、おっきな声を出しちゃったら危ないって思ったのかすぐに黙っちゃったから僕はそのまま先へ。


 ちゃんと全部のブルーフロッグが魔法の届く所にいることを確認してから立ち止まって、そこで魔力を体の中に循環させる。


「範囲を指定してっと、<スリープ>」


 そして力ある言葉を放つと、さっきまであんなにゲコゲコうるさかったのがあっという間に静かになって、川が流れてく音だけになっちゃった。


「おーい、終わったよぉ」


「ああ、ご苦労さん」


 と言うわけで、みんなしてブルーフロッグの元へ。


 ロルフさんたちは心配そうな顔して近づくと、ホントに寝てるのかな? ってそ~っと触りだしたんだ。


「見事に全部寝ておるのぉ」


「ええ。まさか本当にこれほどの数の魔物を眠らせる事ができるなんて。実際にこの目で見ても信じられませんわ」


 でもね、ちゃんと寝てるのを確認すると今度は興味の方が強くなったみたい。


「ルディーン君。してこ奴らは、どれくらいの衝撃を与えたら目を覚ますのじゃ?」


「ちょと触ったくらいじゃ起きないよ。でも強くぶったりしたら、起きちゃうかも」


「なるほど。では多少動かすくらいなら大丈夫なのじゃな」


 ロルフさんはそう言うと、寝ちゃってるブルーフロッグの足をもって持ち上げたり、お父さんに手伝ってもらってゆっくりとひっくり返したり。


 でね、バーリマンさんはと言うと、最初の内はやっぱりブルーフロッグが怖いみたいで恐る恐るって感じだったんだけど、ホントに起きないって解ってからはロルフさんと一緒になって調べ始めたんだ。


 そして最後には、ブルーフロッグの口を開いてみたり、水かきを広げたりしだしたんだからびっくりだよね。


「なかなか貴重な体験じゃったのぉ」


「ええ。生きたままの魔物をあのように綿密に調べられる機会など、まずないですからね」


 結局それは前にポイズンフロッグをやっつけて回った時に解った起きる時間近くまで続いて、そこから離れた後もロルフさんたちは森の中を見る事も忘れてブルーフロッグのお話をつづけたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 因みにですが、ブルーフロッグは魔物ではなく動物です。なのにバーリマンさんが何度も魔物と言っているのにもかかわらず誰も指摘しないのは、ただ単に指摘するほどの事ではないからだったりします。


 別に間違っているからって、特に問題はないですからね。


 さて、ロルフさんたちですが、今回もブルーフロッグを弄り回して森をこれでもかってくらい堪能しています。


 でもその気持ちは解らないでもないですよね。だって死んでいる動物や魔物ならともかく、生きたままの状態で調べるなんて普通はできないですから。


 前にテレビで冬眠中の熊を学者が調べるって言うのをやっていたけど、画面越しで見ているだけでも本当にすごいなぁと思いましたからね。


 それを実際に目の前でとなれば、きっと私でも夢中になって調べたに違いありませんから。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 普段見れないものを見れるってだけでも興味惹かれちゃうのに 生きている状態で見れるなんて研究好きなら止まらなくなってしまいそうw 爬虫類や両生類が苦手って人は犬サイズのカエルの群れに遭遇し…
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