324 いくら力持ちでも、それは無理だよね
僕たちはベニオウの実をいっぱい食べてお腹いっぱいになったもんだから、今度はみんなして持って帰る分を採る事にしたんだ。
でね、みんなで採ったもんだから真っ赤なのも、まだちょっと硬いのも、あっという間にある程度の数採れちゃったんだよね。
「おい、ルディーン。ここはそろそろ俺たちに任せて、お前はもう下に降りた方がいいんじゃないか?」
「うん、解った! じゃあ行ってくるね」
それを見たお父さんからもうここはいいよって言われたもんだから、僕は一人で先に下へ降りたんだ。
何でかって言うと、緩衝材にするための干し草を作んないといけないから。
と言うわけで階段を下りた僕は、解体用のナイフを取り出して近くに生えてる草を刈り始めたんだよ。
そして刈った草がある程度たまって山になったら、そのたんびにドライの魔法を使ってそれを干し草の山に変えてったんだ。
でね、そうやって干し草の山を何個か作った頃、
「おーい、ルディーン。そろそろ完熟した実を持って行っても大丈夫か?」
「うん! もう干し草はいっぱいできてるから、持ってきてもいいよ」
お父さんが上から真っ赤になったベニオウの実を持ってきてもいい? って聞いてきたもんだから、僕はいいよってお返事したんだ。
そしたらつぶれちゃわないようにって、みんなが両手に1個ずつベニオウの実を持って下に運んできてくれたんだよね。
「箱は階段を壊した後に作るから、とりあえずその干し草んとこに置いといて」
「おう」
でも、運ぶための箱はまだできてないでしょ?
だから今のところは、作ったばっかりの干し草の山の上に載っけてってもらったんだ。
みんなが上からベニオウの実を持ってきてくれてる間にも、僕はせっせと干し草作り。
だって、箱に入れてるうちに足りなくなったら嫌だもんね。
だから僕、近くの草が全部なくなっちゃうくらい頑張って干し草を作ってたんだけど、そしたら流石に作りすぎちゃったみたい。
「ルディーン、流石にそろそろいいと思うわよ」
気が付くと採ったベニオウの実を全部下ろし終えたみたいで、みんな下に降りてたんだよね。
そしてその下ろしてきたベニオウの実はと言うと、真っ赤なのだけじゃなくって、まだ硬いのまでみんな干し草の上に並べてあったんだ。
「干し草でくるむのはこっちの完熟した実だけでいいんだろ? ならシーラの言う通りもう十分だから、そろそろ箱を作ってくれ」
「うん! じゃあ階段壊すから、ちょっと離れてて」
お父さんの言う通り干し草はもうこれ以上いらないみたいだから、今度は箱を作る番だ。
と言うわけで、まずは材料にするためにクリエイト魔法を使って階段を壊すことに。
まぁ作った時と違って今度は目の前の階段を一個のおっきな四角い石にするだけだから、何度かに分けてやんなくっても全体に向かってクリエイト魔法を一回唱えるだけでそれは終わっちゃったんだけどね。
さて、階段は片付いたから今度は運ぶための箱作り。
さっき作ったおっきな石にクリエイト魔法をかけてそこからちっちゃな石の塊を1個取り出すと、僕は試しにそれを持ってみたんだよね。
何でかって言うと、あんまり重たい石で箱を作ると持ち上がんないかも? って思ったからなんだ。
でも箱にする石が僕でも持てるくらいの重さだったら、中にベニオウの実を入れたってお父さんやお兄ちゃんだったら簡単に持ち上げる事ができるでしょ?
だからまずは一個分の石を作って、それを持てるかどうかを確かめてみる事にしたんだ。
「うん。この重さだったら大丈夫だよね」
ちょっと大きめの石だったけど、僕でも簡単に持てたから多分大丈夫だと思う。
って事で、僕はそれとおんなじ重さの箱を何個かクリエイト魔法で作って、一度積み上げてみたんだ。
「おっ、なるほど。積み上げた箱がずれないように、箱の下をこんな形にしたのか」
「うん。多分大丈夫だと思うけど、もしずれて落ちちゃったらダメだもんね」
僕が作った箱はね、お父さんの言う通り一番下んところをちょっと窪ませて、重ねるとそこが箱にすぼっとはまるような形にしてあるんだ。
だってこうしとかないと、石の箱だから滑って落ちちゃうかもしれないもんね。
お父さんもこれなら大丈夫って言ってくれたもんだから、残った石を使って僕はどんどん箱を作って行ったんだよ。
でね、そのできた箱ん中にはお母さんやお姉ちゃんたちが干し草と一緒にベニオウの実を入れてくれて、中がいっぱいになったら今度はその箱をお父さんとお兄ちゃんたちが積み上げていってくれたんだ。
「おい、ルディーン。流石にもうそろそろ箱はいいぞ」
「そう? じゃあ作るのやめるね」
そうしてるうちに採ってきたベニオウの実が全部入るくらいの箱がもうできちゃったみたいで、お父さんからもういいよって言われた僕はそこで作るのをやめて積みあがった箱の方を見てみたんだ。
そしたらそこには箱が結構高く積みあがってたもんだから、それを見た僕はびっくり。
「お父さん、ダメだよ。こんなに高く積んだら倒れちゃうかもしれないじゃないか!」
「ん? いや、この箱の作りなら積んでも大丈夫だろ? それにこれだけの数はとても持てないから、運ぶ時は当然何箱かに分けて持つつもりだしな」
だからこんな風に積んじゃダメってお父さんに言ったんだけど、そしたらこんな風に言われたもんだから僕はもっとびっくりしちゃったんだ。
だってさ、ベニオウの実が入った箱はすっごくいっぱいあるんだもん。
まさかそれをお父さんが手で持って帰ろうって思ってるなんて、僕は全然思ってなかったからね。
「こんなにいっぱいあるのに、手で持ってけるはずないじゃないか!」
「そうだよね。私もどうするんだろう? って思ってたもん」
それにどうやらキャリーナ姉ちゃんもいっぱい積んである箱を見て、これ、どうするのかなぁ? って思ってたみたいで、
「ねぇ、ルディーン。こんなにいっぱいあるのに、どうやって持って帰るの?」
って聞いてきたんだよね。
だから僕、魔法で持って帰るんだよってお姉ちゃんに教えてあげたんだ。
「さっき川から石を運んできたでしょ? あの時とおんなじで、フロートボードに載っけて持って帰ろうって思ってるんだ!」
「そっか。ルディーンの魔法があったね」
いくらお父さんが力持ちでも、こんなにいっぱい箱があったら運べないでしょ?
だから僕、そんなの言わなくっても解ってるって思ったんだ。
でも、僕が川から石を運んできた時とおんなじだよって言ったら、お父さんは初めてその事に気が付いたみたい。
「なるほど。それなら確かに、こんな風に積み上げちゃダメだな」
そう言って、高く積みあがった箱を何個かに分けて積みなおしてくれたんだ。
フロートボードの魔法は、下がどんながたがたな道でもすーって滑るみたいに進んでくでしょ?
だから上にのっけた箱も全然揺れないもんだから、真っ赤になったベニオウの実がどんなに柔らかくたってへっちゃらなんだよね。
と言うわけで僕たちは無事、全部の実を森の入口まで運ぶことができたんだ。
「何だ、何だ?」
でもね、こんな石の箱を森の奥から持ってくる人なんて誰もいないでしょ?
だから僕たちを見た人たちが、一体何を持ってきたんだろう? って大騒ぎしだしちゃったんだ。
そしたら今度は表の騒ぎを聞いて何が起こったんだろう? って思った商業ギルドの人たちが、天幕から出てきたんだよね。
「石の箱? それもこんなにたくさんの箱を一体どこから?」
でね、ちょどその時、天幕の入口んところに僕たちが石の箱をいっぱい載っけたフロートボードを引っ張ってきたもんだから、それを見た商業ギルドの人たちはびっくり。
慌てて、何が入ってるんですか? ってお父さんに聞いてきたんだよね。
「森の奥にベニオウの実がいっぱいなってる木を見つけてね。息子が世話になってる人のお土産にしたいと言うものだから、こうやって持って帰ってきたんだよ」
「えっ? この箱、中身はベニオウの実なんですか?」
だからベニオウの実だよって教えてあげたんだけど、そしたらそれを聞いた商業ギルドの人がすっごくびっくりした顔になっちゃったんだよね。
でも何で? ベニオウの実は森の入口近くにもなってるんだから、森の中から持って帰ってきても別におかしくないのに?
僕はそう思って、頭をこてんって倒したんだけど、
「まさか。ベニオウの実は多くても一本の木に数個しかならないはずなのに……。一体何か所の木を周ったらこんなにも収穫できると言うんだ?」
そしたら、商業ギルドの人がこんな事言ったんだ。
って、そう言えば最初に魔法で探した時も、森の入口近くに生えてるベニオウの木には実が2個か3個くらいしかなってなかったっけ。
それなのにこんなにいっぱいの箱全部にベニオウの実が入ってるって聞いたら、そりゃあびっくりしちゃってもおかしくないよね。
読んで頂いてありがとうございます。
森から帰っては来れたけど、街には帰れませんでした。
それどころか、商業ギルドの騒ぎもまださわりだけと言うw
このベニオウの実に関してはロルフさんの所でももうひと悶着ある予定なのに、一体何時になったらこの話が終わるんだろう?
本当に私は、話をまとめるのが下手だなぁ。




