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315 おっきな噴水がある公園があるんだって


「お母さん。これ、ホントにおいしいね」


「そうでしょう」


 商業ギルドの天幕の近くには露店で買ったものを食べる事ができるとこが作ってあって、僕たちはそこでさっそく買ったばかりのベニオウの実を食べてるんだ。


 このベニオウの実なんだけど、見た目は真っ赤なまあるい果物で、大きさはお母さんのげんこつくらいあるんだよ。


 でね、まわりの薄い皮をむくと中から真っ白な実が出て来て、それをかじるとおててがベッタベタになるくらい、いっぱいお汁が出て来てとってもおいしいんだよね。


 だから僕もお兄ちゃんやお姉ちゃんたちも、夢中になってベニオウの実にかぶりついてたんだ。


「そう言えば俺たちがポイズンフロッグを狩ってる間、レーアたちは何してたんだ?」


 そんな風にみんなでおいしいねって食べてたら最初に食べ終わったお父さんがお姉ちゃんたちに、イーノックカウでお留守番してた時は何してたの? って聞いたんだよね。


「私たち? えっとねぇ、錬金術ギルドのお姉さんと一緒に、いろんなお店とか名所って言われてる所を見てまわってたよ」


「あのね。ペソラお姉さんは、かわいいとこにいっぱい連れてってくれたんだ」


 どうやらお姉ちゃんたちは錬金術ギルドにいるペソラさんに遊んでもらってたみたい。


 でもね、そのお話を聞いたお母さんは、ちょっと心配そうな顔になっちゃったんだ。


「それはよかったわね。でもギルドのお仕事も忙しいでしょうに、ご迷惑じゃなかったかしら?」


「うん。だからね、私たちも最初はどっかいいとこない? って聞くだけのつもりだったんだ」


「でもでも、ギルドにいたむらさき色の服着たおばさんが、一緒に行っていいよって言ってくれたんだよ」


 お姉ちゃんたちははじめ、僕たちが狩りに行っていた間に何やろうかなぁ? って思ってたんだって。


 何でかって言うと、二人ともそんなにイーノックカウの事に詳しくないからなんだ。


 でね、そんな時にレーア姉ちゃんが、そう言えば錬金術ギルドにいるペソラさんに、どっかいいとこが無いか聞けばいいんじゃないの? って思いついたんだってさ。


 と言うわけで早速錬金術ギルドまで行ったそうなんだけど、そしたらそこにはペソラさんだけじゃなくって、ギルドマスターのバーリマンさんもいたんだって。


 だからバーリマンさんも一緒になってお姉ちゃんたちのお話を聞いてたそうなんだけど、そしたら、


「あら。二人の親御さんやルディーン君は、この街のためにポイズンフロッグ退治に出かけてくれてるんでしょう? ならば私たち街の住人も、そのお礼に何かしないといけないわね」


 って言ってペソラさんに僕たちの狩りが終わるまでの間、お姉ちゃんたちの案内をしてあげてねって言ってくれたんだってさ。


「ペソラお姉さんはね、さいしょはほんとに行っていいの? ってむらさきのおばさんに聞いてたんだよ? でもね、おばさんはニコニコしながらいいよって」


「うん。いつもいるお爺さんがいるでしょ? あの人が毎日のように来るから、昼間の店番は任せればいいよって言ってくれたんだ」


 そっか。僕が初めて錬金術ギルドに行った時もペソラさんはいなくって、ロルフさんが一人が店番してたもん。


 って事は、ペソラさんがいなくったってロルフさんが居れば大丈夫って事だよね。


「そうなの。それで、どんな所に連れて行ってもらったのかしら?」


「えっとね、いっぱいかわいいものが売ってるお店とかにも行ったけど、わたしが一番楽しかったのは、やっぱりおっきな公園につれてってもらった時かな」


「そう言えばキャリーナ、噴水ってのを見て大騒ぎしてたわよね」


「え~、レーア姉ちゃんだって、すごいすごいって言ってたじゃない!」


 イーノックカウにはね、真ん中におっきな噴水がある公園があるそうなんだ。


 でも、噴水なんて僕たちの村には無いでしょ?


 それにイーノックカウに来ても露店街や商店とかになら行ったことあるけど、そんな公園なんかに行ったことはお姉ちゃんたちも一度も無かったから、その噴水を見てびっくりしたんだってさ。


「だってだって、お水がビューって、お空に向かってとんでってるんだよ。それに、その周りはちっちゃな滝みたいになってるし」


「そうよね。あれってどうやってるんだろう? やっぱり魔道具なのかなぁ?」


 お姉ちゃんたちが言うには、その噴水はまあるい形で、真ん中からお水が噴き出してるんだって。


 それがとってもきれいだったんだけど、途中から何でそんな事ができるんだろう? って不思議に思ったんだってさ。


 だからお姉ちゃんたちはペソラさんに、あれってどうなってるの? って聞いてみたそうなんだけど、そしたら解らないって言われちゃったんだってさ。


「ペソラお姉さんも、そう言えばふしぎねって言ってたんだよ」


「そうよね。ペソラさんは、もしかしたら水の魔石を使った魔道具かも? って言ってたんだけど、でもずっとあれだけの水を魔道具で出し続けようって思ったら普通の大きさの魔石じゃ作れないのよねって。ねぇ、ルディーン。そんな魔道具、作れると思う?」


「えっ、僕?」


 いきなりレーア姉ちゃんにそんな事聞かれて、僕もどうかなぁ? って頭をこてんって倒したんだ。



 僕も多分ペソラさんが言ってた通り、水の魔石を使えばおんなじような事はできると思うんだ。


 でもね、魔道具でずっとお水を出してるとしたら、おっきな水の魔石だけじゃなくってものすごくいっぱい魔道リキッドがいると思うんだよね。


「作れると思うけど、すっごくお金がかかっちゃうよ。だから魔道具じゃないんじゃないかなぁ?」


「そっか。ルディーンが言うなら、そうなのかもしれないわね」


 そう言いながら、だったらあれはどうやってるんだろう? って頭をこてんと倒すレーア姉ちゃん。


 それにつられてキャリーナ姉ちゃんと僕も一緒になって考え出したもんだから、それを見たお母さんがくすくすと笑いだしたんだ。


「どうしたの? お母さん」


「ふふふっ、私もね、昔ルディーンたちと同じように思った事があるのよ」


 お母さんもずっと前に、お姉ちゃんたちが行った公園で噴水を見た事があるんだって。


 でね、その時はレーア姉ちゃんたちとおんなじように不思議に思ったんだよって、お母さんは僕たちに教えてくれたんだ。


「じゃあさ、もしかしてお母さんはあれ、どうやってるのか知ってるの?」


「ええ。いろんな人に聞いてみたら、知ってる人が居たから教えてもらったわよ」


 それを聞いたレーア姉ちゃんが、もしかして知ってるの? って聞いたんだけど、そしたらなんとお母さんは噴水がどうやってできてるのかを知ってたんだよね。


 だからね、僕とお姉ちゃんたちはすぐに教えてって言ったんだけど、そしたらニコニコしながら教えてくれたんだ。


「あの噴水はね、魔法なんか全然使ってないらしいわ。あれはすべて、水の力だけで噴出してるらしいのよ」


「え~、でもお水がピューって上に出てたよ」


「ええ、そうね。でも教えてくれた人が言うには、それは圧力ってので何とかなってるらしいわ」


 お母さんもね、お話を聞いたんだけどよくは解ってないんだって。


 でもその時に聞いた話によると、水がある高いとこから別の低いとこまで穴を掘ってつなぐと、何でか知らないけどそんな風にピューってお水が上に噴き出すんだってさ。


「イーノックカウの水源は横に流れてる大きな川でしょ? そこから見て、あなたたちの行った公園は結構低い位置にあるらしいのよ。だから川の中から水を通すだけで、あんなものができるそうよ」


「へぇ、そうなんだ。不思議だね」


 お母さんはね、この街の地面の下にはその噴水とおんなじようにお水が通ってるとこがいっぱいあるんだよってその人から教えてもらったんだって。


 でね、そのお水が地面の中を流れてるから、こんなおっきな街なのに何処でも井戸が使えるんだってさ。


「井戸を作ろうと思っていくら掘っても、地下水が無い所だと水は出ないでしょ? でもその地下を流れてる水のおかげでどこにでも井戸が作れるから、この街はここまで大きくなったって話よ」


「そっか。遠くまでお水を汲みに行かないとダメだったら、みんなすっごく大変だもんね」


 うちの村だって、真ん中に流れてる川からお水を汲んでくるだけでもお父さんたちは大変そうだもん。


 もしこの街の外に流れてる川からお水を汲んで来ないとダメだったら、きっとみんな困っちゃうよね。


 そんな事を考えながら僕は、でもそんなすごい事を知ってるなんて、お母さんに教えてくれた人はほんとにすごいなぁって思ったんだ。


 だからね、僕はお母さんに、誰に教えてもらったの? って聞いたんだよ。


 そしたら、くすくす笑いながら、僕もよく知ってる人よ、だって。


 その人が誰だったかと言うと、なんと冒険者ギルドの受付をやってるルルモアさんだったんだ。


「あの人、エルフでしょ? だからこの町に住み始めてからも何度かそんな地下水路の工事をやったらしくって、それを見たから知っていたそうよ。それにレーアたちが見に行った噴水もこの町に住み始めた後にできたから、その時に工事をしている人からその仕組みを聞いたのよって教えてくれたわ」


 そう言えばエルフってすっごく長生きだって言ってたよね。


 それにこないだお菓子屋さんに行った時も、この街のおいしいお店屋さんの殆どはできた時から知ってるって言ってたもん。


 だからさ、この街の事だったらきっとルルモアさんに聞けば全部解っちゃうんじゃないかなぁ?


 そう思った僕、お母さんにそう言ったんだよね。


 そしたら、


「流石にそれは無理よ。だってルルモアさんだって、この街ができたころから住んでたわけじゃないもの」


 そう言って、でもある程度の事までなら何でも答えてくれるでしょうねって、お母さんは笑ったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 水の性質なんて現代人ならだれでも知っているから、ルディーン君が知らないのはおかしいと思われるかもしれません。


 でも、これって案外人から指摘されないと気付かないものなんじゃないかなぁ? って思うんですよ。


 かく言う私も、金沢にある兼六園で同じ原理の噴水の説明をバスガイドさんから聞いて、凄いなぁと感心した一人ですw

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― 新着の感想 ―
[一言] ルルモアさんに「長生きしているから、この街のことほとんど知っているの?」と尋ねたら、どんな顔をするのかな。
[良い点] カエル退治中にお姉ちゃんたちの観光案内してくれてたのか またポッポコーン作って持って行ってあげないとw [一言] 噴水、そういうものだって感じであんまり気にしてなかったな~。 興味ないもの…
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