307 いつの間にかレベルが上がってたみたい
次の日。
昨日は幻獣をちゃんとやっつけられたから、今日からはまたポイズンフロッグ狩りの続き。
と言うわけで僕はお父さんたちと一緒に朝から森に来ると、いつもみたいに探索魔法でポイズンフロッグがどこにいるのかを探そうとしたんだ。
「あれ?」
でもね、何でか知らないけどその結果が今までとちょっと違ってたんだよね。
「どうしたんだ、ルディーン? まさかまた幻獣がいたのか?」
「ううん。幻獣がいたわけじゃないよ。なんかね、解るとこが昨日より広くなってたからびっくりしちゃっただけ」
僕ね、知らずに通り過ぎちゃってたらダメだからって、昨日までとおんなじように全方位に向かって索敵魔法を使ってみたんだよ?
なのに、今までより広い範囲から反応が返ってきたから、ちょっとびっくりしちゃったんだ。
「解る場所が広くなった? って事は、より広範囲まで調べられるようになったって事か」
「うん、そうみたい」
でね、って事はもしかして? って思った僕は、自分のステータスを開いてレベルを調べてみたんだよね。
そしたら、
ジョブ 《賢者 12/30》《レンジャー 3/30》
なんと、賢者とサブジョブのレンジャーが二つとも1レベルずつ上がってたもんだからびっくりしちゃった。
でも……あれ? なんで上がった時にふわっとしなかったんだろう?
ブラウンボアをやっつけた時みたいに倒れちゃったりはしなかったけど、お姉ちゃんたちとクラウンコッコをやっつけて11レベルになった時はふわっとしたよね?
でも昨日、幻獣をやっつけた時にふわったしたっけ?
「どうしたんだ? ルディーン」
そう思った僕は頭をこてんって倒して考えてたんだけど、そしたらそれを見たお父さんがどうしたの? って聞いてきたんだよね。
「あのね、今見たらレベルが上がってたんだ。でも変なんだよ。だって僕、今までレベルが上がる時はいっつもふわっとしたもん。でも昨日はそんな事なかったのにレベルが上がったんだよ。変でしょ?」
だから、なんでしなかったのかなぁ? って聞いてみたんだけど、そしたらそれを聞いたお父さんはすっごくびっくりした顔になっちゃったんだ。
でもね、それはふわっとしなかった事にびっくりしたわけじゃなかったみたい。
「お前、自分の強さが……ステータスが解るのか?」
あれ? そう言えば言ってなかったっけ?
そう思ってちょっと考えてみたんだけど、そう言えばロルフさんやバーリマンさんにはステータス画面の事を話したけど、お父さんに話した事なかった気がする。
だから僕、お父さんに、うん、できるよってお返事したんだけど、そしたらそれを聞いたお母さんが何かを思い出したみたいなんだ。
「そう言えば前に、鑑定士は相手の纏う魔力からステータスを見ているのよって、ルルモアさんから聞いた事があるわ」
「なるほど。ルディーンは魔法で遠くにいる魔物の強さが解るくらいだからな。そうなると自分の強さが解ってもおかしくはないのかもしれない」
考えた事もなかったけど、そう言えば探索魔法だって、前はただ魔力が戻ってくるだけだったっけ?
でもサブジョブにレンジャーがついてからは知ってる魔物ならそれが何か解るし、その強さだって大体解るようになってるんだよね。
って事はだよ? それとおんなじようにスキルがあるとかの条件がそろってれば、相手の魔力からその力が解るようになるのかも。
だったら僕はなんでステータスが見えるの? って事になるんだけど、思いつくのは一つしかないんだ。
それは魔力操作。
「そっか。僕、遠くにいても魔力でそれがどんな魔物か解るもん。だからステータスが見えるんだね」
「ああ、多分そうだと思うぞ」
僕、今までは前の世界の記憶があるからだって思ってて、ステータスがなんで見えるのかなんて考えた事なかったんだ。
でも大人のお父さんがそう言うんだから、きっとそうだよね。
だって僕、はじめっから魔力操作は上手にできてたもん。
それにルルモアさんも魔力でステータスが解るんだよって言ってたなら、教えてもらえなくっても最初っから魔力操作ができてた僕が全部のステータスを見れたっておかしくないよねって思うんだ。
「ところで、ルディーン、そう言えばさっき、俺に何かを聞いてこなかったか?」
「あっ、そうだ。忘れてた!」
お父さんがステータスの事でびっくりしたもんだから、なんで今回はふわってしなかったのか聞こうとしてたのを僕もすっかり忘れてたんだよね。
と言うわけで、もういっぺん聞いてみたんだけど、
「ああ、それは多分、強くなる準備ができてからレベルが上がったからだと思うぞ」
そしたらお父さんは笑いながらそう教えてくれたんだ。
普通だったらね、みんなもっと弱いうちにあのふわっとする感覚は無くなるんだって。
でも僕、今までかなり早くレベルが上がったでしょ?
だからそのせいで、今までは強くなる準備ができる前にレベルが上がっちゃってたから、あのふわっていう感覚があったんじゃないかなぁ? ってお父さんは言うんだ。
「覚えてるか? 初めてこの森で狩りをした時は、自分の体じゃないみたいで立つこともできなかっただろう? でもな、いくら初めての狩りに出かけたからと言って、あそこまでひどくなる事はあまり無いんだぞ」
「そうよね。普通なら一日に狩れる獲物の数なんてたかが知れてるもの。だから本来は何日間もかけて強くなるはずなのに、ルディーンの場合は魔法で獲物を見つけてしまうでしょ? そうやって早く狩りすぎたせいで、誰よりも強くなった時の反動が大きかったんだと思うわ」
レベルって低い内はすぐに上がるよね?
だから最初の内はあんまり狩れなくってもレベルがすぐに上がっちゃうからみんなふらふらするんだけど、普通はそのうちしなくなるんだって。
でも僕はブラウンボアをやっつけて一気に10レベルまで上がったし、その後もお兄ちゃんたちと一緒に持って帰れないくらいいっぱい獲物を狩ったりしてたでしょ?
そのせいでちょっとの間にいっぱい経験値がたまってた所に、一人でブラックボアとおんなじくらい強いクラウンコッコを魔法でやっつけたもんだから、11レベルに上がった時もふわっとしたんじゃないかなぁ?
「ルディーンの言うレベル? ってやつが前にいつ上がったのかは知らないが、それは結構前なんじゃないか? だとしたらその間に、体が慣れて行ったんだと思うぞ」
「そうよね。ルディーンの場合、まだ小さいから他の子と違っていつも森に行けるわけじゃないもの。でも、そのおかげできちんと準備ができたんでしょうね」
そう言えばあの時、レベルが上がってからもクラウンコッコをいっぱいやっつけたっけ。
多分あれだけでも12レベルに上がるまでのかなりの経験値? を稼げたと思うんだよね。
でも、それからはずっと狩りに行けなかったでしょ?
だから久しぶりにこの森で狩りができて、それでレベルが上がったもんだからふわっとしなかったんだって僕、思うんだ。
「それにルディーンもかなり強くなってきたからなぁ。もうその感覚が襲ってくる事は多分ないだろうよ」
「そうなの?」
「ああ。ある程度まで強くなると、次の段階へと至るのにはかなりの時間がかかるようになるんだ。だからいくら急いでも、そんな感覚を覚えるほど早くは強くなれなくなるからな」
でもそのせいで今、自分がどれくらい強くなったのか解らなくなるんだぞって、笑うお父さん。
だからね、僕はお父さんの今のレベルを見てあげたんだ。
「凄いや。お父さん、16レベルになってる!」
そしたら《戦士 16/26》って出てきたもんだから僕、びっくりしちゃった。
「えっと、それはすごいのか?」
「そうだよ。だって前に見た時はまだ14レベルだったもん」
前に見たのは僕が8つになる前だったけど、でもまだそれから半年もたってないんだよね。
レベルって高くなるほど上がりづらくなるから、これってやっぱりすごい事だと思うんだ。
「そうか。そう言えばこの頃、狩りに出る機会が増えたからなぁ」
「冷蔵庫や冷凍庫を作るために村の男衆総出でブラックボアを狩ったりしたし、今回だってポイズンフロッグのとどめはすべてハンスが刺しているものね」
お父さんはね、僕たちがいるからあんまり危ない狩りはしてこなかったんだって。
だからレベルがあまり上がらなくなってたそうなんだけど、この頃はいっぱい狩りをするようになったから強くなったんじゃないの? ってお母さんは言うんだよね
「なるほど。俺が強くなったのはルディーンのおかげとも言えるわけか」
「でも、ルディーンがいろいろな魔道具を作るから、仕事が増えたとも言えるわね」
そう言いながら笑うお父さんとお母さん。
その前で僕は、エッヘンって胸を張っていいのかそれともごめんなさいすればいいのか解んなくって、ちょっと困っちゃんたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
ステータスですが、この世界の鑑定士は確かにスキルを使って魔力から読み取っています。
でもルディーン君の場合、実を言うとステータス閲覧と言う隠れスキルで数値そのものを読み取っているので正確には違うものだったりするんですよ。
まぁ鑑定士も凄腕になるとルディーン君と同じような事が出来てしまうので、その違いがあるからってそれがどうしたの? って話になってしまうんですけどねw
さて、11レベルに上がった時は何も変わりませんでしたが、12レベルになるとできる事がちょっと増えます。
だから次回はその話を……と言いたいところなんですが、それはもうちょっと先になってしまうかな? その前にまだ書かないといけない事がいくつかありますから。




