表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

307/759

302 みよんみよんする鉄、どっかにないかなぁ?


「これがいろいろなところで栓として使える事は解ったけど、ルディーン君はまた別の使い方をするつもりでこの形に切り抜いたのよね?」


 ニールンドさんは樽の栓しか思いつかなかったみたいで、僕に興味津々って顔しながら、ほんとは何に使うつもりなの? って聞いてきたんだよね。


 だから僕、どんな風に使うのか教えてあげる事にしたんだ。


「あのね、もし思ってる通りのものができたら、スプリングの代わりにしようって思ってるんだよ」


「すぷりんぐ?」


 でもね、せっかく教えてあげたのにニールンドさんはよく解ってないみたい。


 だからそれがどんなのかを、僕は話してあげたんだ。


「あのね、スプリングって言うのは、みよんみよんって曲がる細い鉄の棒をくるくるってしてできてるんだよ」


 スプリングがあれば柔らかいベッドやソファーなんかが作れるでしょ?


 だから僕、前に何とかクリエイト魔法で作れないかなぁ? って挑戦してみた事があるんだよね。


 だけど試しに鋼の玉を材料にして作ったちっちゃなバネを上から押してみたら、そのまんま潰れちゃって元に戻んなかったんだ。


 って事はさ、やっぱりバネやスプリングを作るのには、みよんみよんっって曲がる特別な鉄がいるって事だよね?


 でも僕、みよんみよんって曲がる鉄をどうやって作ったらいいか解んないから、その時はスプリングは作れないんだなぁってあきらめちゃったんだ。


「えっと、みよんみよん?」

 

「うん! みよんみよんって曲がらないと、スプリングは作れないんだよ。だって普通の鉄だと、曲げたら元に戻んないもん」


 この後、もしかしたらニールンドさんが知ってるかも? って思った僕は一生懸命お話したんだけど、どうもよく解ってないみたい。


 って事はやっぱり、みよんみよんって曲がる鉄は無いのかなぁ?


「そのみよんみよんって曲がる鉄はね、くるくるって形にすると上から押してもちゃんと元に戻るんだよ」


「なるほど。要するに、そのスプリングって言うのは押しつぶしても元に戻るのね」


「うん! だから、それがあったらいろんなものが作れるようになるんだ」


 ブルーフロッグの皮は本物のスプリングと違ってそんなにビヨンって戻らないからサスペンションとかは作れないだろうけど、長椅子とかソファーになら使えると思うんだよね。


 それにもっといっぱい並べたら、多分ベッドにもできるんじゃないかな?


 だから僕は、その事をニールンドさんに教えてあげたんだけど、そしたら何でか知らないけどちょっと怖い顔になっちゃったんだ。


「ニールンドさん。何で怒ってるの? 僕、何か悪いことした?」


「えっ? ああ、ごめんなさい。そうじゃないから安心して」


 ニールンドさんはね、僕が言ってる事がほんとだったら、それはすごい事なんだよって教えてくれたんだ。


「さっきも言ったけど、この傷だらけの皮は本来捨てられるものなのよ。だから今までは、その処理だけでも結構なお金がかかっていたのよね」


 捨てるのにはお金がかかるけど、何十枚に1枚は椅子に敷くくらいの大きさが取れるものがあるし、何百枚に1枚はベッドのマットレスに使えるものが出てくるでしょ?


 だからブルーフロッグの背中の皮も、お肉やお腹の皮と一緒に持ち込まれたものは全部買い取ってたんだって。


「でも、ルディーン君が言っていることが本当なら、その状況が一変するわ」


 だけど直径3センチくらいの丸型で抜けるとこくらいなら、どんな傷だらけの皮にだって絶対あるよね?


 だったらさ、今までと違って持ち込まれる皮全部が使えるものになるって事なんだ。


「そっか。でも、一度なめしてみないと、ほんとに使えるかどうか解んないよ?」


 ニールンドさんは僕の話を聞いて絶対使えるんだって思ってるみたいだけど、でも僕は使えたらいいなぁって思ってるだけで、ほんとにスプリングの代わりになるかなんてまだ解んないんだよね。


 だって今は大丈夫っぽいけど、なめしてみたらそんな風に使えないかもしれないもん。


 だからそう言ったんだけど、


「確かにそうね。なら実際にやってみましょう」


 そしたらニールンドさんは、今からなめしてみようって言いだしたんだ。


「ちょっと待ってください。やってみようはいいですけど、今から始めても俺たちが村に帰るまでに終わらないんじゃないですか?」


 でもね、それを聞いてびっくりしたのがお父さん。


 なんでかって言うと、皮をなめすのには普通、いろんなものを入れて作ったなめし用の水に皮を長い間漬け込んでおかないとダメだからなんだって。


「ああ、大丈夫ですよ。長時間付け込まないといけないのは、そうしないと皮の芯までなめし液が浸透しないからですもの。この大きさなら魔法薬でも1時間とかからず浸透するだろうし、魔道具を併用すればもっと早く出来上がると思いますよ」


 とっても高く売れる魔物の皮とかだと、ギルドに入ったらすぐに欲しいって言う人たちがいるんだって。


 だからそんな人たちのために、ほんとだったら何日もかかるのを一瞬で終わらせちゃう魔法のお薬があるんだってさ。


「そんなものがあるのですか?」


「ええ。怪我だって普通は治るのに何日もかかるものをポーションを使えば一瞬で治ってしまうでしょ? 専門家に言わせると動物や魔物の皮もそれと同じで、状態をポーションで変えるのはそれほど難しくないらしいです」


 傷がつくって事は皮が破れるって事だよね?


 ポーションを使えばそれがすぐ治っちゃうって事は、その皮に一瞬でポーションが浸透したって事なんだって。


「ただ、はぎ取った皮は人の体と違ってすでに生命活動を終えてしまっているので、残念ながら怪我用のポーションで修復させることはできないそうですが」


 それができたら全部の皮がマットレスにできるのにねって笑うニールンドさん。


 でも、なめすだけならすぐにできるからって、さっきの道具を使ってブルーフロッグの皮を何個か切り抜いてから、僕たちはそれを持って漬け込む作業場へと移動したんだ。



「本当に、あっという間ですね」


 蓋つきの桶みたいな魔道具から取り出した皮を見て、お父さんはびっくり。


 だってニールンドさんはさっきそんなに時間がかからないよって言ってたけど、なめし皮を作る魔道具を使ったらホントに15分ほどでなめし皮になっちゃったんだもん。


「それじゃあルディーン君。これを乾燥させてもらえる?」


「うん、いいよ!」


 魔道具から出したばっかりで、まだべたべたのブルーフロッグの皮に僕が<ドライ>の魔法をかけると、量が少なかったからなのかすぐにからからに乾いちゃったんだ。


「ちょっと乾かしすぎちゃったかなぁ?」


「心配しなくても、ブルーフロッグの皮はなめした後に乾燥させると大体こんな感じになるから、多分大丈夫だと思いますよ」


 だからやりすぎちゃった? って聞いたんだけど、ニールンドさんはその中の一つを手に取って大丈夫だよってにっこり。


 そしてその皮を押したり引っ張ったりして、どんな感じなのかを確かめ始めたんだ。


「これはまた……なんと言っていいか、かなり変わった感触ですね」


 今まではおっきくてきれいな皮ばっかり触ってたでしょ?


 だから、こんな細長いのを触るのは初めてでちょっと変な感じがするんだって。


 だけど見た感じ、うまくできてるんじゃないかなぁ?


 そう思った僕は、目の前の皮を一つとって振ってみたり、机の上にのっけて上から押してから、ぱっと放してみたりしたんだ。


「でも、ちゃんとできたみたいだよ。だってほら、ちゃんとみよんみよんするし、さっき押してみたらビヨ~ンってなったもん」


 そしたらちゃんとバネとおんなじようになったもんだから、一安心。


 これならちゃんと使えそうだねって、手に持ったブルーフロッグの皮を振って見せてあげたんだ。


「なるほど。じゃあ、ルディーン君が考えていた通りの性能が出たんですね?」


「うん。これだったら大丈夫だと思うよ。あとはね、もっと太いのとかを作ればもっといろんなものが作れるんじゃないかなぁ?」


 あんまり大きいと全体がべこってへこんじゃうからダメだけど、細すぎても使いづらいかもしれないもん。


 だからね、僕はニールンドさんが作ってって言う大きさの道具をクリエイト魔法で作ってみて、それで切り抜いた皮をなめしてもらったんだ。


「この感じからすると、ルディーン君が最初に作った細い皮は一人用の椅子に向いているようですね。逆に、長椅子やベッドにはこの太いのが向いているようです」


 でね、それをニールンドさんが調べてみたら、やっぱり太さによって向いてるのと向いてないのがあったんだって。


 あとこれをやってみて、もう一個解った事があるんだ。


「ベッド用のマットレスも、この筒状の皮で作るとまた違った寝心地になるみたいです」


「そうなの?」


「ええ。大きな一枚の皮を複数枚つなげて作る物はとても柔らかく、体を包み込むような寝心地になるんですけど、こちらだと力が分散する分、しっかりとしているにもかかわらず柔らかいと言う寝心地になるようです」


 ニールンドさんはね、これだけ違うんだから、人によって好みが分かれるんじゃないかなぁ? って言うんだよ。


「どちらにしても、この筒状の皮がとても広い使い道を持つことが証明されました。なので、先ほどルディーン君が作った切り抜き用の道具ともども、この筒状のブルーフロッグの背中の皮を商業ギルドの特許に申請しておきますわ」


 でね、こういう使い方ができるんだよって事をみんなが知ってくれたら、これからは傷だらけの皮だって売れるようになるでしょ?


 だからすぐに特許申請して一日でも早く売れるようにしなきゃって、ニールンドさんはそのための書類を作ってきますって言いながら、僕らをおいてどっかに行っちゃったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ただ、スプリングが欲しかっただけなのに、結局またルディーン君の特許が増える事になってしまいました。


 その上、こちらは冷蔵庫などと違って用途が広いので、今まで以上に儲かる事でしょう。


 それに捨てるだけだったものが売れるようになるだけでなく、処理費用まで浮くのですから冒険者ギルドも大助かりです。


 ただ、これ以上稼いでもあまり意味が無いような? ルディーン君、もうすでに一生かかっても使いきれないくらいのお金をもってるんですけど……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やったねルディーン君、また特許が増えるぞ! そしてスプリングを作って部品ができたから 本命に取り掛かれますね! [一言] 成長物語から発明家物語になってしまいそうw
[一言] スプリングの擬音かあー。 みよんみよん。確かにそうかも。 ルディーンくんの総資産凄そう(;・ω・) お嫁さん選び難航するかも? お母さんの奥様ネットワークで しっかり者の女の子がっちり確保済…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ