258 多分これってゲームの時とおんなじなんだと思うんだ
なんで?
そりゃあさ、お母さんたちに頼まれていっつもお肌つるつるポーションと髪の毛つやつやポーションを作ってるよ? でも、このレベルは流石におかしいって僕、思うんだ。
あっ、待って。そう言えばポーションをいっつも作ってるって言ったら、錬金術ギルドのギルドマスターをやってるバーリマンさんだっておんなじだよね?
そう思った僕は、そのバーリマンさんの錬金術レベルはどうなんだろう? って、ステータスを見てみたんだよ。
そしたら《34/48》で、なんと僕より低かったからびっくり。
「なんでこんなに高くなったんだろう?」
賢者のレベルがいっぺんに上がった時は、僕一人でブラウンボアをやっつけたってのがあったからレベルがものすごく上がってたのも解るんだよね。
でも、錬金術は二つのポーションを作ってるくらいで、他には何にもやってないから普通ならこんなにレベルが上がるはずないんだ。
う~ん、って事は普通じゃないって事なのかな? あっ! じゃあもしかして、これって僕のチートスキル!?
ずっと魔力操作が僕のチートスキルだって思ってたけど、もしかしたら錬金術のチートだったのかも! そう思って一瞬喜んだんだけど……。
「これ、チートじゃないよね」
よく考えたら、そんなはずないよね。だって、もうすぐカンストしちゃうもん。
それにこれが神様がくれた錬金術が上がりやすくなるってチートスキルだったら、ヒルダ姉ちゃんのレベル上昇率UP大みたいにスキルの欄に載ってるはずだよね?
でもそれがないって事は、やっぱり別の事が原因なんだって僕、思うんだ。
■
「ルディーン君はどうなってしまったのかのぉ?」
「ああ、あれはいつもの事ですから大丈夫ですよ。考えがまとまれば、ちゃんと戻ってきますから」
なぜか急に黙り込んだと思ったら小さな声で何やらぶつぶつ言いだしたルディーンを見て、ロルフさんと錬金術ギルドのマスターであるバーリマンさんは心配顔。
でも、これはルディーンが何かに気を取られたり思いついたりした時の行動だと解ってる私は、彼らに大丈夫ですよって話したのよ。
「そうですわ、旦那さま。わたくしもこちらにお連れする際、ルディーン様がこのように考え事に集中されているところを見た事があります」
そしたらロルフさんの家のメイドさんがこんな事を言い出したものだから、もう、この子は所構わずなのねと私は少しあきれてしまった。
「なるほど、ルディーン君も深く考え始めると周りの声が聞こえなくなるのですか。それは研究者に向いているタイプだわ」
「はい。旦那様と同じタイプですね」
でも、どうやらそんな行動を取るのはルディーンだけではないらしく、ロルフさんと行動がよく似ているとメイドさんとバーリマンさんは二人しておかしそうに笑っている。
「わしと? はて、そのような覚えはないのじゃが」
「あら、ロルフさんはそんな所までルディーンと同じなのですね」
「旦那様と同じと仰いますと?」
「ええ。ルディーンも、こんな状態になってこちらの話をまるで聞いていなかったのに、それを指摘すると不思議そうな顔をしてそんな事ないって言いますわ」
その上、考え事をしている最中は周りの声が聞こえていない事を本人が気づいてないところまでルディーンとロルフさんが同じだと解ったものだから、私たち女性陣はその事をとても微笑ましく思ったのよね。
■
チートじゃないんだよね? なら一体何が原因なんだろう? 僕、二つのポーション以外には錬金術っぽい事、何にもしてないんだよね。
そりゃ錬金術の解析に似たスキルである鑑定解析は何度か使ってるよ?
でもこれって、ドラゴン&マジック・オンラインの頃は盗賊が5レベルになると覚えるスキルだったから錬金術とは関係ないんじゃないかなぁ?
じゃあ他に村でやってる事はなんだろう? って考えたんだけど、お菓子作ったりしてるのは料理人のスキルだし、魔法の水がめを作ったりするのは魔道具職人のスキルだからこれも関係なし。
あとやってるって言ったら狩りとかクリエイト魔法で物を作ったりとかだよね? って事はやっぱり二つのポーションを作ってるくらいしか、錬金術に関係ある事をやってないや。
じゃあやっぱり二つのポーションを作ってるのが、僕の錬金術レベルが上がった理由って事になるんだけど……。
そう思った僕は、だったら何でこの二つを作ってたらこんなに上がるんだろう? って考えたんだ。
「あっ、そう言えば」
そしたら、ある事に気が付いたんだ。
ロルフさんやバーリマンさんが何度も言ってたよね。10個以上の薬効に魔力を注げるのは僕だけだって。
もしかしたらそれが原因かもしんない。
じゃあさ、僕が初めてお肌つるつるポーションを作った時の事を思い出せばなんか解るんじゃないかなぁ?
そう思った僕は、うんうん唸りながら、その時の事を思い出したんだよ。
「そう言えばすっごく大変だったっけ」
何度か作ってるから、この頃はお肌つるつるポーションも髪の毛つやつやポーションも簡単に作れるようになったんだよ。
でも最初の頃って、いろんな薬効成分に魔力を注がないとダメだからって、鑑定解析で調べながらその1個1個に魔力をゆっくり注いでたんだよね。
って事はだよ、これってもしかして複合スキル品を作る時と同じような事をやってたんじゃないかなぁ?
ドラゴン&マジック・オンラインの一般職は、ある一定レベルまではどんだけの種類でも上げられたんだ。
でもね、ある一定まで上がると、それ以上上げられるのは1種類だけになっちゃうからメインの一般職を選ばないとダメなんだよ。
だけどそんなシステムだったせいか複数の一般職を一定レベルまで持ってないと作れないなんて特殊なアイテムもあって、それの事をゲームの中ではみんな、複合スキル品って呼んでたんだ。
でね、この複合スキル品ってのはいろんな一般職を上げておかないと作れなかったもんだから、これを作ると普通のものを作るより一般職のレベル上げに入る経験値が多かったんだよね。
例えば裁縫スキルがいる防具鍛冶職人のレシピを作ろうと思った場合、裁縫スキルが必要なレベルに達してないと作れないよって出るけど、防具鍛冶職人のレベルだけが足りないのなら作成スキルは一応発動する。
まぁそのせいで発動しても殆どが失敗して材料が無くなっちゃうんだけど、経験値は入るからみんな赤字覚悟で複合スキルレシピを作ってレベル上げをしてたんだよね。
ドラゴン&マジック・オンラインで言うと錬金術のレベルは足んないけど、鑑定解析と魔力操作がちゃんとできるレベルになってたから二つのポーションが作れたんじゃないかな?
だけど、もしこれがゲームだったら錬金術のレベルが低すぎて絶対失敗するはずなんだよね。
「そう言えば魔法だってレベルが足んなくっても、ちゃんと発動するっけ」
でもね、この世界だとレベルが足んなかったって魔法は発動するし、練習したらちょびっとずつだけど効果が上がってくんだ。
って事は、錬金術だってレベルが足んなくってもちゃんと発動するって事だよね?
それに一般職ってものづくりだから間違えないようにゆっくり慎重にやれば、上手にできないかもしれないし時間もいっぱいかかっちゃうけど、最後には必ずできあがるはずなんだ。
「僕、魔力操作だけは他の人より上手だもんね」
ポーションを作るのって、一番大変なのはその薬効にあった魔力量をきちんと注ぐことだってロルフさんは言ってたもん。
その一番大変なのを鑑定解析で見ながらゆっくり魔力操作したおかげで、時間はいっぱいかかったけど最初からポーションはきちんと作れたんだって僕、思うんだよね。
だからみんなこの二つのポーションを作ってよって言ったんだろうし、それをいっぱい作ってるうちにだんだん簡単に作れるようになったって事は、多分そのころに錬金術のレベルもこの二つの複合スキル品を作れるところまで上がったんじゃないかなぁ?
ドラゴン&マジック・オンラインの頃だって、全部のレベルが作れるとこまで上がったら失敗しなくなったもん。
「でも、そっか。だから僕しか作れないんだね」
それと同時に僕、解っちゃったんだ。
僕とおんなじくらい魔力操作がうまくって、その上鑑定解析も使える人じゃないとこのお肌つるつるポーションと髪の毛つやつやポーションは絶対に作れないんだねって。
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