257 注げる魔力が少ないとポーションにならないんだってさ
「それでロルフさん、何を調べればいいの?」
鑑定解析の使い方を教えてもらった僕は、それを使ってどんなことを調べればいいのかってロルフさんに聞いてみたんだ。
だって、それが解んなかったら鑑定解析を使っても意味ないもんね。
「そうじゃのぉ。とりあえず水で溶いたポーションに含まれる、魔力を内包している薬効の数が元の肌用ポーションの10個とどれだけ違うかを調べてもらえるかな?」
お水と混ぜたポーションの方は、お肌がつるつるになる効果が元のポーションより減ってるよね?
ロルフさんはなんでそうなってるのかを知りたいから、まだちゃんとポーションとしての効果があるだけ魔力が残ってる薬効の数を知りたいんだってさ。
と言うわけで、お水に混ぜたポーションにそれを調べたいって思いながら鑑定解析をかけたんだ。
「えっとね、ちゃんと僕が作った時とおんなじだけ魔力が入ってるのは3つかな。あとね、ちょっと減ってるのが2つでかなり減ってるのが1つ。後の4つは殆ど魔力を感じなくなってるよ」
「ふむ。完全に魔力が残っておる3つの薬効と言うのは多分、水に溶けないものなのじゃろう。逆に完全に魔力を失ってるのは水に溶けやすい薬効なのじゃろうなぁ」
ロルフさんはね、そのお水に溶けなくって魔力がそのまま残ってる3つのおかげで、これがまだポーションのままなんじゃないかって言うんだ。
なんでかって言うと、薬草に含まれてる薬効ってのは十分な魔力が入ってないとポーションとしての効果が出ないからなんだって。
「しかし3つの薬効だけが魔力を内包しておると言うのは朗報じゃ」
「そうですわね。3つでしたら、そこそこの腕を持つ錬金術師であれば魔力を注ぐことができますもの」
でね、その魔力が十分入ってるのが3つだったのも良かったんだって。
だって、もしこれが6つ以上あったら、やっぱり僕以外誰も作れないからなんだ。
でも、これが5つより少なかったら他の人でも作れるでしょ? で、魔力が残ってたのがそれより少ない3つだったから、ロルフさんたちが廉価版って言ってるポーションが作れるかもしれないんだってさ。
「それでルディーン君、その3つと言うのはどの薬効なのかのぉ?」
「えっとねぇ」
僕はさっき鑑定解析で調べた、魔力が作った時とおんなじくらい入ってるのをロルフさんに教えてあげたんだ。
何でこれが知りたかったのかって言うと、セリアナの実っていろんな薬効や成分が入ってるから調べるのが大変らしいんだ。
でもこれが解ってれば、ロルフさんたちなら錬金術の解析を使ってセリアナの実から取った油の中から僕が教えてあげた成分を見つけることができるんだって。
だから僕からその3つを聞いたロルフさんたちは、早速セリアナの実の油に解析をかけたんだよね。
でもね、そしたら何でかロルフさんたちが急にしょんぼりしちゃったんだ。
「どうしたの? 見つかんなかった?」
だから僕、ロルフさんたちが解析を使っても教えてあげた3つの成分が見つからなかったのかなぁ? って思ったんだよね。
でも、そうじゃないんだって。
「いや、確かにルディーン君がわしらに教えてくれた3つの薬効を解析で見分ける事は出来た。じゃが、この3つはかなり微量でのぉ」
「ええ。この3つに魔力を必要な量込めたとしても、このセリアナの実の油がポーションになる事は無さそうなのよ」
どんなものでも、その量に対してある程度の魔力を注がないとポーションにはならないんだって。
でもね、セリアナの実に入ってる僕が教えてあげた成分はちょびっとしかなかったから、それに魔力を注いでもそれだけじゃセリアナの実の油をポーションにするには足らないんだってさ。
「それじゃあさ、他のにも魔力を注いだらいいんじゃないの? だってバーリマンさん、ギルドマスターさんなんだからできるんでしょ?」
「ええ、私は5つまでなら魔力を注ぐことができるわよ。でもねぇ、このセリアナの実って、1つ1つの薬効が少なすぎるのよ」
3つの成分だけじゃ魔力が足んないからって、バーリマンさんたちは他に魔力を注げるのがないか探してみたそうなんだ。
でもね、セリアナの実ってあんまり魔力が注げるのが入ってないから、5つじゃポーションになりそうにないんだって。
「どうやらこのセリアナの実というものは、ルディーン君の様に数多くのものに魔力を注げる者でなければポーションにする事ができないようじゃのぉ」
「ええ、今のままではどうする事もできませんわ」
あのね、ポーションにする時にいる薬効が入った成分は、魔力を注ぎすぎると壊れちゃうんだよ。
だからもっと魔力を多く注げるのが無かったらポーションにするのは無理でしょ? それが解ったから、ロルフさんたちはそんなこと言いながらしょんぼりしちゃったんだよね。
「あの、すみません」
でも、そんなロルフさんたちを見て、お母さんが不思議そうに聞いてきたんだ。
「私たちが薬草を使う時は煮出したりして飲むのですが、そんな風に濃くして使う事は出来ないのですか?」
「確かに薬草の薬効を取り出すために煎じると言う方法はよくとられる。じゃがのぉ、今回の場合は油をポーションにするのじゃから、熱を加えたら変質する事はあっても濃くはならぬのじゃよ」
薬草を煎じるのは、そうする事でお湯に薬草の薬効を溶かして取り出そうとするからなんだって。
でもお肌つるつるポーションは、セリアナの実の油をポーションにしたものでしょ? だからそれを煮ても濃くはならないんだってさ。
「そうなのですか」
それを聞いてしょんぼりするお母さん。
でもね、そんなお母さんたちの話を聞いてたバーリマンさんがこんな事を言い出したんだよね。
「薬効を濃くですか……もし今必要としている薬効を抽出できれば、それをセリアナの実の油に加える事が可能なのですが」
「確かにそれは可能じゃが、このセリアナの実の油に含まれておる薬効は微量なうえに深く溶け込んでおる。そんなものを誰が取り出せると言うのじゃ?」
錬金術には抽出って言う中に含まれているものを取り出す技術があるんだけど、前に僕がセリアナの実から油だけを抽出しようとしたら、いろんなものがしっかりと混ざってたもんだから無理だったんだよね。
そのいろんなのを混ざったまんまの油を取り出して魔力を注いだのがお肌つるつるポーションなんだけど、そこから今欲しいって言ってる3つの成分を取り出すのはとっても難しくて、ロルフさんたちでもやっぱり無理みたい。
「ギルマスよ、われらが錬金術に関しては誰にも負けぬと言っても良いほどの技量を持っている事は解っておろう? そのわしらができぬのじゃ。それは無理というものであろう?」
「ええ。普通ならそうなのですが」
ロルフさんにそう言われたバーリマンさんが、何でか僕の方を見てるんだよね。
だから僕、頭をこてんって倒したんだけど、
「ルディーン君なら、もしかしたらできるんじゃないかしら?」
そしたらバーリマンさんがこんな事を言い出したもんだから、びっくりしちゃった。
「えー、無理だよ。だって前に油だけ抽出しようとしたらできなかったもん」
「それは鑑定解析の使い方が解らなかった時の話でしょ? でも今ならできるかもしれないわ」
だから僕、そんなのできないよって言ったんだけど、そしたら鑑定解析の使い方が解ったから今はできるんじゃない? ってバーリマンさんは言うんだよ。
でもね、
「前ん時も、油の中にいろんなのが入ってるのは解ったんだよ。でもできなかったんだから、やっぱり無理だよ」
「そうなのですか? 残念です。ルディーン君ならできるのではないかと思ったのですが……」
セリアナの実の果肉から油を取り出そうと思った時だって、鑑定解析でその中にいろんな薬効成分が入ってるの解ってたんだよね。
なのに僕の錬金術の腕じゃ、油だけを取り出すことができなかったんだ。
と、ここまで考えた時、僕はあれ? って思ったんだ。
そう言えば今の錬金術のレベルって、どれくらいなんだろう?
前にセリアナの実の果肉から油を抽出しようと思った時はまだ錬金術を覚えたばっかりだったけど、今はいっぱいお肌つるつるポーションや髪の毛つやつやポーションを作ってるからきっと上がってるよね?
そう思った僕は、一度見てみようって、ステータスを開いたんだ。
そしたら、
一般職 :錬金術 《42/50》
そこには思ってもいない数字が映し出されてたんだ。
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