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251 お久しぶりの魔法と新しい冷たいお菓子


「それじゃあ、行ってくるわね」


「ヒルダ姉ちゃん、ありがとう! 行ってらっしゃい」


「いってらっちゃい」


 ヒルダ姉ちゃんが川までお水を汲みに行ってくれてる間、僕とスティナちゃんはお家でお留守番。


 だから僕は、何して遊ぶ? ってスティナちゃんに聞いたんだ。


 そしたら、


「ルディーンにいちゃ、あれやって! つべたいのがぶわーってして、きらきらすうやつ」


 スティナちゃんは、振り上げた両手を横に広げながらこんな事を言ったんだよね。


「ぶわーっとしてきらきらするやつ?」


 う~ん、何の事を言ってるんだろう?


 冷たいって言ってるけど、別にかき氷とかが食べたいんじゃないよね? だって、キラキラしてるけどぶわーっとはしてないもん。


 それにさっきからスティナちゃんが手のひらをひらひらさせながら、ずっとおんなじポーズをとってるんだよね。


 って事は、あれがやってほしい事なんだって僕は思うんだ。


「体の周りでぶわーっとしてきらきらしてるの? ……あっ、解った!」


「ルディーンにいちゃ、やって!」


 そっか、スティナちゃんは前に見せたのをやってほしかったんだね。



 僕がブラウンボアをやっつけて10レベルになった時、村の外に行って覚えたばっかりの魔法をいくつか使ってみた事があるんだよね。


 なんでかって言うと元がドラゴン&マジック・オンラインの魔法だから、使ったらゲームの時みたいにカッコいいんじゃないかな? って思ったからなんだ。


 けど実際に使ってみると、みんな全然カッコよくなくてちょっとがっかり。


 でもね、その中で一つだけ、僕が予想もしてなかったのがとってもきれいで派手な魔法だったんだよね。


 だから僕、お家に帰ってからみんなに見せたんだけど、そしたらその日はきれいだねって喜んでたけど、何度かやってたら、これってきれいだけど寒くなっちゃうねって姉ちゃんたちに言われたんだ。


 そりゃそうだよね、だってあの頃は今と違ってまだ夕方とかになるとちょっと寒かったもん。


 だけど、だからこの魔法、それからはあんまり使ってなかったんだ。


 でもそっか、そう言えば家族のみんなだけじゃなくって、スティナちゃんにも見せた事があったっけ。


「ルディーンにいちゃ、はやくはやく!」


「うん。ちょっと待ってね」


 今はあの時と違って暑くなってるから、みんなも見たら涼しくなるかも?


 そう思いながら僕は体の中に魔力を循環させて、力のある言葉を唱える。


「アイス・スクリーン」


「わぁ、ぶわーってした! きれぇーねぇー」


 僕が使った中で唯一派手だったのが、ゲーム時代は地味だったこの魔法なんだよね。


 そう言えばこの魔法、使うと下から上に向かって細かい氷の粒が舞い上がってそれが僕の周りを包み込むもん。


 確かにスティナちゃんの言う通り、冷たいのがぶわーっとして、きらきらだ。


「ルディーンにいちゃ、もっときらきら!」


「うん、いいよ!」


 このスティナちゃんの言ってるキラキラしてってのは、動いてって意味なんだ。


 だってこの魔法、効果が切れるまでは僕の周りをずっと包んでるから、僕が動けばそれに合わせて一緒に動くんだよね。


 だからお部屋の中を走り回ったり両手を振ったりすると氷の粒もそれに合わせて動くから、そのたんびにきらきら光ってとってもきれいなんだ。


 手をバタバタさせながらお部屋の中を走るとスティナちゃんが喜んできゃっきゃと笑うもんだから、それがうれしくて僕はお部屋の中を走り回ってたんだよね。


 でね、そしたら楽しくなっちゃったのかスティナちゃんも、まてー! って言いながらトテトテと僕の後ろを追っかけ始めたもんだから僕、それからはスティナちゃんが付いてこれるように両手を振りながら行進するみたいにお部屋の中をくるくると歩いたんだ。 



「あっついね。ルディーンにいちゃ。スティナ、つべたいおかし、たべたい」


 そんな事をして遊んでたもんだから暑くなっちゃったのか、スティナちゃんがこんなことを言い出したんだ。


 でもさ、冷たいお菓子って言っても、氷はあるけどそれにかけるシロップが無いからかき氷は作れないんだよね。


 それにこないだ作ったアイスクリームは、イーノックカウにお出かけするからってみんなで全部食べちゃったし……あっ、そうだ! そう言えば冷蔵庫にあれがあったっけ。


 だからどうしよう? って思ったんだけど、そしたら冷蔵庫にいいものがあった事を思い出したんだ。



 前はあんまり村になかったセリアナの実なんだけど、今は僕にポーションを作ってほしいからってイーノックカウや近くの作ってる村からみんながよく買ってくるんだよね。


 だけど大人しかいないお家だと、僕んちみたいに子供がいるお家と違って中のジュース飲まないってとこも多いんだって。


 でも捨てるのはもったいないでしょ? だからそんな人たちはみんなポーションを作ってくれるお礼だって、僕んちに中のジュースをくれるんだよね。


 おかげで僕んちの冷蔵庫には、いっつもセリアナの実のジュースが入ってるんだ。


「スティナちゃん。アイスクリームやかき氷は無理だけど、冷たいお菓子、作れそうだよ」


「つべたいおかし、たべれうの? やったぁ!」


 スティナちゃんも喜んでくれてる事だし、ヒルダ姉ちゃんが帰ってくるまでに準備しなくちゃ。


 と言っても簡単なんだけどね。



 まずは僕がいっつも魔道具を作ってるお部屋に二人で一緒にトテトテと歩いて行って、小さな銅の塊とビックピジョンからとった魔石、それに小さな木切れを何本か、仕舞ってあるところから取り出したんだよね。


 僕たちはそれを持って台所に帰って来ると、まずビックピジョンの魔石を氷の魔石に変えて、それから銅の塊の方は縦10センチ、横20センチくらいで厚さ3ミリ程の板にしたんだ。


 でね、簡単な魔道回路図を銅の板の裏に書いてから、それに氷の魔石組み合わせてっと。


 そして最後に、その板を触らなくてもいいようにって回りをクリエイト魔法で作った木枠で囲ったら、あっという間に冷凍調理板が完成! 後はピュリファイで表面をきれいにしてっと。


「スティナちゃん、準備できたよ。今から冷たいお菓子、作るからね」


「あい!」


 僕は危ないから絶対板に触っちゃだめだよってスティナちゃんに言ってから、この魔道具のスイッチを入れたんだ。


 そしたら、あっという間に銅の板が凍って白くなっちゃった。


「見ててね」


 でね、僕はスティナちゃんにそう言うと、冷蔵庫から出したセリアナの実のジュースをその上にちょっとずつ垂らしたんだ。


 そしたらあっという間に固まっちゃったもんだから、今度はそれを木のへらで削りながらふちに寄せて、そこにまたジュースをちょっとずつ垂らしてはふちに寄せるってのを何回か繰り返したんだよね。


「おぉ~」


 その様子を横で見てたスティナちゃんが目をキラキラさせながらびっくりした顔してるもんだから、僕は先にちょっとだけ出来上がった分を横に置いてあった木のお皿に載っけて、おさじと一緒に渡してあげたんだ。


「はい。セリアナの実のシャーベットだよ。冷たいから、ゆっくり食べてね」


「すごい! つべたいおかし、できちゃった!」


 スティナちゃんはそう言うと、できたばっかりのシャーベットをニコニコしながらたべて、おいしい! って言ってくれたんだよ。



 この後、スティナちゃんが凍ったセリアナのジュースを木のへらでふちに寄せるってのをやりたいって言い出したんだよね。


 だから僕は、もういっぺんスティナちゃんに、


「危ないから、絶対板に触っちゃダメだよ」


 って言ってから、その後も二人していっぱいセリアナのシャーベットを作って、おいしいねっていっしょに食べたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 前にロルフさんが指摘した通りこのアイス・スクリーンと言う魔法は、使い方次第でこの世界の魔法戦の常識を覆してしまうほど強力な魔法です。


 なのにこの村では小さい子にせがまれて使うネタ魔法w


 いやぁ、平和っていいですよね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] スティナちゃんかわいい
[良い点] また新しいお菓子を作ってしまった! おにいちゃんだからせがまれたら魔法の一つや二つみせちゃいますよね、お菓子も作っちゃいますよね仕方ない。 [一言] 帰ってきたおねえちゃんに、作れっていわ…
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