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248 そっか、魔力が残ってたからなんだね


「これは一体、どういう事なのでしょう?」


 誰も思ってなかった結果に、バーリマンさんはちょっと慌てた感じでロルフさんにそう聞いたんだ。


「どういう事も何も、ポーションの鮮度が関係しているというわしの仮説が間違っていたと言う、ただそれだけの事じゃろう?」


「そんな」


 でも返ってきた答えがこれだったもんだから、バーリマンさんは困っちゃった。


 そりゃそうだよね。だってこれでまた原因が解んなくなっちゃったんだもん。


「しかし鮮度が原因でないとすると、いったいどんな要因によってこの現象が引き起こされておるのか皆目見当がつかんわい」


「やはり、グランリルの村の周囲では魔力溜まりの影響が強く出ているのではないでしょうか?」


「いや、それはあるまい。もしポーションに影響が出るほど強い魔力が周りに立ち込めておれば、その辺りの動植物が変異しないはずがないからのぉ」


 バーリマンさんはやっぱり僕たちの村でお水を混ぜたからじゃないの? って言うんだけど、ロルフさんはもし本当にそうなら村の近くも魔物でいっぱいになってないとおかしいって言うんだ。


 だからそれを聞いたバーリマンさんも、やっぱり関係がないんだねって納得したみたい。


「しかし、そうなると一体何が原因なのでしょう?」


「うむ。カールフェルトさん。もう一度確認するが、村の浴場で使っておるのは何の変哲もない、ただの水なのじゃな? 温泉などの特別なものではなく」


「はい。先ほども言った通り、村の中を流れている川から汲んだ水です。うちの村でも長雨が続いた時などは川の水が濁る事があるのでその場合は井戸水を使う事もありますが、井戸から水を汲んでお風呂を沸かすとなるとかなり大変なので、そんな時であっても浴場に使う事はあり得ませんし」


 ロルフさんが言うには、これが温泉や井戸水とかだと、もしかしたら何か特別なものが混じってるかもしれないんだって。


 でもうちの村のお風呂で使ってるのは川のお水だから多分普通のだよって、お母さんは言うんだよ。


「う~む、環境でもなく、工程でもない。とすると材料以外は考えられないのじゃが、ポーションの鮮度も混ぜる水も原因ではないとなると……」


 それを聞いたロルフさんは、うんうん唸りながら考えこんじゃったんだよね。


 でも僕たちはどうする事もできないから、そんなロルフさんをただ横で見てるしかなかったんだ。



「ポーションが原因でないとすると、やはり水だとしか……水……川の水……っ! そうか、川じゃ!」


 でね、ロルフさんはしばらくの間ずっとそんな感じで考え込んでたんだけど、そしたら急に大きな声を出したもんだから、僕たちはみんな飛び上がるくらいびっくりしちゃったんだよ。


 でもね、ロルフさんはそんなのお構いなしに、お母さんに質問してきたんだよね。


「カールフェルトさん。もしやグランリルの村の中を流れている川は、魔力溜まりのある森の中を通って村に流れ込んでおるのではないか?」


「えっ? ええ。確かにうちの村に流れている川の上流には魔物がいる森があります。ですがうちの村は森からかなり離れていますよ?」


 お母さんが言う通り、村から森までは結構離れてるんだよね。


 だから僕も、森の中を流れているからってそんなの関係ないんじゃないかなぁ? って思ったんだけど、ロルフさんは多分それが原因だって言うんだ。


「実はのぉ、わしには前々から一つ疑問に思っておったことがあったのじゃよ」


「疑問、ですか?」


「うむ。前にルディーン君が水で溶いたポーションは数日で使えなくなると言っておったじゃろう? じゃがわしは作って数日で使えなくなるポーションなど、他に聞いたことがないのじゃ」


 ポーションって薬草を煮出した汁を材料に使う事が多いんだけど、魔力を注いで作るもんだからかなり長い間悪くならないんだよね。


 でも、いくら効果が薄くなってるからって言っても、水で溶いたポーションがちゃんと効果が出てるのにちょっとの間で悪くなっちゃうのがロルフさんには不思議でならなかったんだって。


「例えば新人の錬金術師が作った効果があまりないポーションであっても、わしらが作るポーションと使える期間はまるで変わらぬじゃろう? じゃから効果が薄まったからと言って、それがポーションであるのならば使える期間が短くなることなどありえないはずなのにと不思議に思っておったのじゃ」


「なるほど。ではロルフさんは、肌用ポーションを水で溶いたものは、実はポーションではないまた別のものになっていたと考えているのですね」


 ロルフさんの話を聞いて、そんな意見を言うバーリマンさん。


 でも、実際に効果があったのにポーションじゃないってどういう事なんだろう?


 僕はそう思って頭をこてんって倒したんだけど、そんな僕を見たロルフさんは笑いながらみんなに答えを教えてくれたんだ。


「いやいや、別のものになったのではない。グランリルの近くにある魔力溜まりの森から流れてきた水の中に含まれている魔力によって、一時的にポーションとしての効果が出ておっただけなのじゃろうとわしは考えておるのじゃ」


 ロルフさんはね、森の中を流れてるお水に魔力溜まりの魔力が溶け込んでて、それが薄まった分の魔力の代わりになったんじゃないかって言うんだ。


「水はのぉ、宝石や魔法金属などと違って長い時間魔力を宿すことはできぬ。じゃが、数日程度なら保つことも可能なのじゃろう。であればじゃ、ポーションを溶いた水から魔力が抜けてしまえば先ほど作ったものと同様、ポーションとしての効果を持たぬものとなるのではないかな?」


「なるほど。セリアナの果肉は、実に穴を開けると数日で腐ってしまいますもの。ポーションでなくなってしまえば悪くなるのも道理ですわ」


 そっか。だからお水で溶いたお肌つるつるポーションはすぐに悪くなっちゃったんだね。


 でもさ、さっきお母さんが言った通り、森からうちの村まではかなり遠いんだよ?


 魔力がすぐ抜けちゃうって言うのなら、うちの村まで流れてくるまでに魔力なんて抜けちゃうんじゃないかなぁ?


 そう思った僕は、ロルフさんに何で村についても魔力が残ってるの? って聞いてみたんだよね。


「うむ。これはわしの予想なのじゃが、グランリルの村の中を流れておる川は、結構流れが速いのではないかな?」


「どうだろう? 僕、他の川を知らないから解んないや」


 そしたら何でか知らないけどこんな事を聞いてきたもんだから、僕はお母さんの方を見たんだよね。


 そしたらお母さんが、そこそこの速さで流れてるよって教えてくれたんだ。


「ふむ。そうなると人の足で半日以上離れている場所であっても、川の水は多分1時間もあれば流れ着いてしまうじゃろうな」


「えぇー、そんなに早く流れてくるの?」


「うむ。一見殆ど流れがないような川であっても、枯葉を落とすと人が歩くよりも速く流れて行ってしまうじゃろう? 人が見て流れが速いと思うのであればそれくらいで辿り着いてもおかしくはあるまいて」


 そっか。それじゃあ、うちの村のお水にまだ森の中の魔力が残ってたっておかしくないよね。


 読んで頂いてありがとうございます


 前に感想欄で水質の違いが原因じゃないかと指摘されてましたが、よく似たようなことが原因の可能性が出てきました。って、もうこれしか考えられないんですけどねw


 今までも本来は肉より腐りやすいはずの魔物の内臓ですら魔力をより多く含んでるから腐りにくいとか言っていたのに、ルディーン君の注いだ魔力を含んでるはずの水で溶いたポーションが普通のセリアナの実の果肉と同じように数日で臭くて使えなくなるのはおかしいですよね。その原因がこれだったと言うわけです。


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― 新着の感想 ―
[良い点] そうか水質ではなく水に含まれる魔力だったのか! 完全にハズレではなかったのか。 [一言] 検証するだろうけど村まで帰らないと水が手に入らないからここまでで一旦区切るのかな?
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