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244 お貴族様が食べるみたいなお昼ご飯


 目の前には皮の硬いとうもろこしの山。


 でも、これをそのままにしておく訳にはいかないよね? だって乾燥させておかないと悪くなっちゃうもん。


「お母さん。このとうもろこし、乾かしちゃっていい? このままだと食べられないし、乾かさないと粉にもポップコーンにもできないもん」


「え? ああそうね。乾燥させれば長持ちするし、それに粒にすれば袋に入れられるから残った分を村に持って帰ることもできるわ」


 だからお母さんに乾かしちゃってもいい? って聞いたらいいよって言ってくれたもんだから、僕は早速とうもろこし全部を指定してドライの魔法をかけたんだ。


 そしたらあっという間に乾いて、ちょっとだけ量が減ったんだよね。


 それに水分が抜けて軽くなったもんだから、作業するためにテーブルに動かすのもとっても楽ちんだ。


 でね、その時数えてみたら、なんと26本もあってびっくり。


「お店のおじさんがね。そんなにいっぱい買ってくれるのなら1本おまけしてくれるって言って、1枚のお金でこれだけ買えたんだよ」


 そのテーブルいっぱい積まれたとうもろこしを前に、キャリーナ姉ちゃんはとっても嬉しそうにお母さんにそう言ったんだよ。


 って事は1本4セントって事だよね? じゃあ、お母さんが言ってた銅貨1枚で確か2本買えるはずって言うのはあってたんだね。



 この後はみんなして粒取り作業。


「カールフェルトさん。先ほどのお菓子はとてもおいしかったですし、作り方も簡単でしたからこのとうもろこしの粒、私にも少し分けていただけませんか? お金はお支払いしますから」


「どうぞどうぞ。こんなにあってもうちだけじゃ食べるのも大変ですし、いつもルディーンがお世話になっているのですから差し上げますよ」


「まぁ、よろしいのですか?」


 お母さんとバーリマンさんは二人してそんな事を話しながらも、僕やお姉ちゃんたちよりもずっと早くとうもろこしから粒を取り外してったんだ。


 おかげでどんどん粒が溜まってくもんだから、途中から僕がふるいをかけてレーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんがごみが無くなった粒をテーブルの上に置いてあるお椀に入れたり、落ちたごみが溜まってきたらそれを片づける係になっちゃった。



「わぁ、とうもろこしの粒がこんなに!」


「ほんとにいっぱいあるね」


 そうやってみんなでがんばったおかげであんなにいっぱいあったとうもろこしから、あっという間に全部の粒が取れちゃったんだよね。


 でね、粒がいっぱい入ったお椀がいくつか並んでるテーブルを見て、キャリーナ姉ちゃんと僕は両手を挙げて大喜び。


 レーア姉ちゃんも、こんなにあるならさっきのお菓子がいっぱい作れるねってニコニコだ。


「でも、もうすぐお昼になるわよ。今からさっきのお菓子を作って食べたら、ご飯が食べられなくなるんじゃないかしら」


 ところが、そんな僕たちを見て、お母さんがこんな事を言い出したんだよね。


 村では森に行く時とかにお昼を抜く事もあるけど、今回はせっかくイーノックカウまで遊びに来たんだから村では食べられないような物を食べようねってお話ししてたんだ。


 だから僕やお姉ちゃんたちも、それを聞いてどうしようかなぁって考えちゃった。


「お菓子は食べたいけど、ご飯も食べたい」


「そうよねぇ。せっかく頑張ってとうもろこしの粒を取ったけど、お菓子は村でも食べられるもの。私はやっぱり、おいしいご飯が食べたいかな」


 キャリーナ姉ちゃんとレーア姉ちゃんは、ちょっと考えてやっぱりご飯が食べたいねってなったみたい。


 それだったらポップコーンはまたにして、お昼ご飯を食べに行くのがいいんじゃないかな?


 そう思った僕は、お母さんにご飯を食べに行こって言おうとしたんだけど、


「ああ、それならもうすぐうちのコックが来ますから、皆さんのお昼も一緒に作らせますよ」


 そしたらバーリマンさんが、僕たちの分も作らせるから一緒にお昼ご飯を食べない? だって。


 このお台所って、本来はバーリマンさんとこのコックさんが使うためにあるそうなんだよね。


 でね、毎日お昼になるとそのコックさんが来て、バーリマンさんやペソラさんのお昼を作ってるんだってさ。


「そんな。そこまでしてもらうのは、流石に悪いですよ」


「いえいえ。私としてはルディーン君が作ったお菓子。ぽっぷこーんでしたっけ? あれと先ほどカールフェルトさんが作った甘くてほろ苦いソースの作り方をうちのコックに教えて欲しいので、その代わりと言っては何ですがお昼をご一緒していただきたいのです」


 バーリマンさんが言うには、お菓子や料理のレシピって普通は人に教えないそうなんだ。


 でも僕は前にパンケーキや小麦粉で作った焼き菓子とかを教えてたでしょ? それなのに何のお返しもできてなかったから、お昼ご飯をご馳走するくらいじゃほんとは釣り合わないんだって。


「それにこれはロルフさんとも話をしている事なのですが、ルディーン君に教えてもらったお菓子類のレシピはいずれ商業ギルドにまとめて登録しようと言う話になっているのです。当然、ルディーン君の名前で」


 それと、僕がバーリマンさんたちに教えてきたお菓子って、安い材料で簡単に作れるでしょ? だから街の人たちでも気軽に買えるだろうからって、露店で売れるようにしたいなぁって、バーリマンさんはロルフさんとお話ししてたそうなんだ。


 でね、今回のポップコーンもその一つに入れたいから、バーリマンさんのコックさんに作り方をちゃんと教えて欲しいんだってさ。


「そういう事でしたら私はいいですけど……ルディーンもいい?」


「うん、いいよ。だって、美味しいものはみんなで食べられた方がいいもんね」


 と言うわけで、僕たちはバーリマンさんと一緒にお昼ご飯を食べる事になったんだ。



「ギルドマスター、モーガンさんがいらっしゃいましたよ」


 あの後、僕たちはみんなでおしゃべりしながら錬金術ギルドのお部屋でしばらく待ってたんだけど、そしたら店番をしてたペソラさんがモーガンって人が来たよって言いに来たんだ。


 でね、そんなペソラさんの後から、すっごい筋肉の大きなお爺さんがお部屋に入ってきたんだよね。


「クリスティーナお嬢様、お待たせしました」


「はぁ。ユリウス、家の外でお嬢様と呼ぶのはおやめなさい。私はもうそのような歳ではないのですから」


 その強そうなお爺さんにバーリマンさんはため息をついてそう言った後、


「カールフェルトさん。彼が先ほど話した、うちのコックですわ」


 僕たちにそのお爺さんの紹介をしてくれたんだ。


「いつもクリスティーナお嬢様がお世話になっております。私はバーリマン家で長年コックをやらせていただいている、ユリウス・モーガンと申します。以後お見知りおきを」


 モーガンさんはバーリマンさんがまだ子供のころからお家でコックをしてたんだって。


 だから今でもバーリマンさんの事をお嬢様って呼ぶから困ってるそうなんだけど、


「私にとってクリスティーナ様は、いつまでたっても可愛らしいお嬢様ですから」


 でもね、モーガンさんはいくら言ってもこう言ってやめてくれないから、今ではあきらめてるんだってさ。



 モーガンさんが来たって事で、みんなでお昼ご飯。


 急に人数が増えたから大丈夫かなぁ? ってお母さんはちょっと心配してたんだけど、いつお客さんが来てもいいように材料はお台所にある冷蔵庫にいっぱい入ってるから大丈夫だよって、モーガンさんは笑ってた。


「わぁ、すごいごちそう」


「ほんと。とっても高いお店屋さんで食べるのみたい」


 でね、そのモーガンさんが作ったお料理がとってもすごかったんだよ。


 だってレーア姉ちゃんが言ってるみたいに、高いお店で出てくるみたいなとっても豪華なお料理が僕たちが座ってるテーブルの上に何個も並んだんだもん。


 それを見たキャリーナ姉ちゃんは大興奮!


「なんかお貴族様のお昼ご飯みたいだね」


 それに僕も、そんなお料理を見ながらお母さんにそう言ったんだ。


「ありがとうございます。今日はクリスティーナお嬢様の大切なお客様と聞いておりますから、いつにもまして力を入れて調理させていただきました。楽しんで頂けたら幸いです」


 そしたらね、モーガンさんがそう言って頭を下げたもんだから、びっくりして僕もモーガンさんに向かってペコリ。


 だって僕、コックさんにそんな事されたの初めてだったもん。


 それにお母さんやお姉ちゃんたちも僕と一緒で、びっくりしながら慌てて頭を下げたもんだから、モーガンさんに困った顔をされちゃった。


「せっかく作ってもらったのですから、冷めないうちにいただきましょう」


 でね、そんな僕たちにバーリマンさんは温かい内に食べようねだって。


 確かに冷めちゃったらおいしくないし、もしそうなったらせっかく作ってくれたモーガンさんががっかりしちゃうもんね。


 だから僕たちは慌てていただきますして、目の前の豪華なお昼ご飯をおなか一杯食べたんだよ。


 読んで頂いてありがとうございます。


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 感想やレヴュー共々続きを書く原動力になるので、よろしくお願いします。


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