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243 だってお姉ちゃんが教えてって言ったもん


「同じ事をやっても村では効果が出てるって、それはいったい何故なんですか?」


 バーリマンさんが言ってることが不思議みたいで、お母さんはそう聞いたんだよ。


 でもね、バーリマンさんにも、その理由が解んないみたいなんだ。


「ロルフさんならいろいろと仮説を立ててくれるのでしょうけど、私ではちょっと」


 バーリマンさんって錬金術ギルドのギルドマスターをやってるんだけど、それは上級ポーションとかを他の人より高品質で作れたり、普通の人よりいろんな薬のレシピを覚えていたりするかららしいんだ。


「私もロルフさんのお手伝いをしながら研究をするのは好きなんですよ。でもそれは好きと言うだけで、多くの事例を元に何かを導き出すには経験が私には圧倒的に足りないのです」


 ポーションが低品質しかできない人にその作り方を聞いたり作ったものを見せてもらって、それをどうやったらうまくできるようになるのかをアドバイスをするのは得意なんですけどねって言いながら笑うバーリマンさん。


 そっか。ギルドマスターだとそう言うお仕事はあるだろうけど、新しいお薬とかの研究はあんまりしないよね。


「ただ、私でも思いつく仮説はあるんですよ。でも、数ある仮説をすべて試すには時間もお金もありませんからね。だからここはロルフさんを頼るべきだと思いますわ」


「でも、ロルフさん、ここにいないよ。お家まで呼びに行くの?」


「大丈夫よ、ルディーン君。ロルフさんは昨日、今日も午後からこの錬金術ギルドに顔を出すって仰ってましたから」


 そう言えばロルフさん、いっつもこの錬金術ギルドのカウンターで店番してるもん。


 きっと今日も店番をするつもりで来るんだろうけど、お肌つるつるポーションの事で手伝ってって言えば、きっといいよって言ってくれるよね。


 と言うわけで、僕とバーリマンさんはロルフさんとお話しする気満々だったんだけど、


「午後からもですか? でも、それだと娘たちがなんと言うか」


 お母さんにこんな事を言われちゃったんだ。


 でも、そっか。お姉ちゃんたちはこんなとこでお話しするより、絶対お買い物に行きたいって言うよね。


 だから午後からロルフさんが来ても、僕たちはここにいないからお話しできないや。


 とまぁ僕はこう思ってたんだけど、バーリマンさんはやっぱり午後からもお話がしたいみたいなんだ。


 だからちょっとの間、うんうんって唸ってたんだけど、


「そうだ。あの子に任せればいじゃない」


 急に明るい顔になってそう言ったんだよ。


「カールフェルトさん。娘さんたちはお買い物に行きたいだけなんですよね? カールフェルトさんとご一緒したいのではなく」


「えっ? ええ。私とはいつでも一緒にいられますし、それにあの子たちは普段、村からあまり出ませんからイーノックカウのお店を見て回るのを楽しみにしてましたもの」


「それでしたら、ペソラに案内させましょう。あの子なら女の子が好む小物の店とかもよく知っていますから」


 ペソラさんってイーノックカウのいろんなお店を見て回るのが大好きで、お休みの日はいつも行ってるんだって。


 だからお姉ちゃんたちが好きそうなものが売ってるお店を、ペソラさんはいっぱい知ってるんだよってバーリマンさんは言うんだ。


「それに治安がいいとは言ってもやはり近づかない方がいい場所もありますからね。その点、ペソラはこの街の事を熟知してますし、何より彼女がうちのギルドのものだと多くの人が知っていますから、変なのに絡まれる心配もありませんし」


「そうなのですか?」


「はい。この街に住んでいる者の中には、錬金術ギルドの者に手を出そうなんて考える者はおりませんわ」


 そう、自信満々に言うバーリマンさん。


 でも、なんで? 冒険者ギルドだったらあのおっきなお爺さんギルドマスターが怖いから解るけど、バーリマンさんはそんなに強そうじゃないのに。


 だから僕、バーリマンさんに聞いてみたんだ。


 そしたら、


「えっと……そう! 普通の薬ならともかく、魔法薬や魔道リキッドを作ろうと思ったらうちのギルドの品物がないとダメでしょ? 魔物が出る森が近くにあるこの街の人たちはいつどのような事があるか解らないから、このギルドに関係する人たちに手を出したりしないのよ」


「そっか! 前に冒険者ギルドで冒険者さんたちがいっぱい倒れてた時も、お薬をいっぱい持ってきたっけ」


 街の中にいたって大きなお怪我をする事はあるし、重い病気にだってなるかもしれないよね。


 なのに錬金術ギルドの人になんかして、もしそのお薬を作ってもらうための材料を売ってくれなかったら困っちゃうもん。


 だからペソラさんと一緒なら、お姉ちゃんたちが危ない目に合う事は絶対無いんだって。


「そう言う事でしたら、娘たちもその方に案内していただいた方が楽しめそうですね」


「ええ。午後からでしたらペソラを外に出しても問題はなくなりますし、私としてもカールフェルトさんやルディーン君に手伝ってもらえれば助かりますから、そうしてもらえるとありがたいです」


 こうして僕たちは、午後から来るって言うロルフさんと一緒に、お肌つるつるポーションの研究をする事になったんだ。



「ただいま! 買って来たよ!」


 そのまましばらくの間3人でお茶を飲んでたら、レーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんが帰ってきたんだ。


「お帰りなさい……って、なに、その量は!?」


「えぇ~、たくさんあった方がいっぱい食べられていいでしょ」


 でもね、お姉ちゃんたちが持って帰ってきたとうもろこしを見て、お母さんはびっくりしちゃった。


 だって、どう見ても20本以上あったんだもん。


「たくさん食べるにしても限度という物があるでしょ。さっきの1本だけでもあれだけのお菓子ができたって言うのに」


 さっきはおいしかったからみんなですぐに食べちゃったけど、それでもかなりの量があったから多分あと2本もあればみんなおなか一杯になっちゃうと思うんだよね。


 だから、まさかこんなにいっぱい買ってくるなんてお母さんは思ってなかったみたい。


「それにそれだけの数を、二人だけでどうやってここまで運んできたの?」


「どうやってって、魔法でだよ?」


 キャリーナ姉ちゃんの返事を聞いて、僕の方を見るお母さん。


 そう言えば、キャリーナ姉ちゃんにフロートボードの魔法を教えてたっけ。


 だってさ、お姉ちゃんも魔法が使えるんだから教えてって頼まれたらいいよって答えるよね? 森に行く時とかにあったらとっても便利な魔法なんだもん。


 そりゃあお姉ちゃんは僕より魔力もステータスも低いからそんなにいっぱい物は載っけられないけど、一角ウサギくらいなら2~3匹は大丈夫だから、この魔法を覚えて置けば今までよりは長く狩りを続けられるようになると思うんだ。


 だから僕、お母さんにそう話したんだけど、


「確かにあると便利な魔法だし教えるのは構わないけど、できたらキャリーナが使えるようになってる事を教えておいて欲しかったわ」


 そしたらお母さん、知ってたら、あんなにお金を持たせなかったのに……だって。


 お母さんは確か銅貨1枚でもとうもろこしを2本は買えたと思うんだけど、買った時の値段をよく覚えてなくてもしお金が足んなかったら困るからってレーア姉ちゃんに銀貨を1枚渡したんだってさ。


「でもまさか銀貨1枚で買えるだけ買ってくるなんて思わないわよ。だってこの子たち二人だけなら、持てても5~6本くらいだもの」


「もしかして、全部使っちゃダメだった?」


 お母さんが困ってるのを見て、レーア姉ちゃんが不安そうな顔をしたんだけど、


「いえ、お金はいいのよ。大した額じゃないから。でも、この量がねぇ」


 そんなお姉ちゃんに、笑いながら大丈夫だよって言ってから、お母さんは買って来たとうもろこしの山を見て、大きなため息をついたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 皆さんは解っていると思いますが、このギルドのギルマスは子爵家の者ですし、そこに入り浸っている老人は元領主様です。


 そんな所にちょっかいをかけようなんて考えるやつがいるはずがないですよね。


 ただ、ルディーン君にそんな事を言えるわけがないので、バーリマンさんは冷や汗をかくことになりましたw


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