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242 お母さんがやってもそうなんだ


「あっ、無くなっちゃった。もっと食べたかったのに」


 キャリーナ姉ちゃんが、こんな事を言いながら空になったお皿を眺めてしょんぼりしてる。


 そりゃそうだよね。


 だって、いくら思ったより多く取れたからって言っても、3つの味のポップコーンをみんなで食べたんだもん。


 ポップコーンにするとすっごく増えるけど1本のとうもろこしから取れた粒で作ったんだから、そりゃあ5人で食べたらあっという間になくなっちゃうよ。


「こんなにおいしいのなら、もっと買ってくれば良かったよね」


 レーア姉ちゃんも一緒になってこんな事を言ってるし、お母さんもちょっとがっかりした顔してるところを見ると、みんなほんとにもっと食べたかったんだなぁ。


 でも全部食べちゃったんだから、そんな寂しそうな顔してお皿を見ててもしょうがないんだよね。


 だってそこにはもう、ポップコーンは無いんだから。


 …

 ……

 ………


 あっ! 全部食べちゃったらダメじゃないか!


「バーリマンさん、どうしよう。ペソラさんの分まで食べちゃった!」


「あっ……」


 そうだよ。僕、ポップコーンができたらペソラさんのとこにも持って行ってあげるって約束してたのに。


 それにバーリマンさんもその事をすっかり忘れてたみたいで、どうしようって顔してる。


 でもね、とうもろこしの粒はもうないんだから、これから新しく作ることもできないんだ。


 だから僕やバーリマンさんまでしょんぼりしちゃったんだけど、


「ねぇ、ルディーン。さっきのお菓子、全部食べちゃったらダメだったの?」


 そしたらそれを見たキャリーナ姉ちゃんが、こんな風に聞いてきたんだ。


「うん。だって、店番してるペソラさんに持ってってあげるって約束してたもん」


「だったらさぁ、もう一度さっきのお店で買ってくればいいよ」


 そう言いながら、いい考えでしょって笑うキャリーナ姉ちゃん。


 そっか。確かに売ってるお店はそんなに遠くないんだから、買ってくるのはそんなに大変じゃないんだっけ。


「そうだよ! さっきバーリマンさんが、お母さんに何かお話があるって言ってたよね? だったら、お母さんたちがそのお話をしてる間に、僕たちが行って買ってくればいいじゃないか!」


 ペソラさんにはちょっと待っててもらう事になるけど、後からでも作ってあげればきっと許してくれると思うんだ。


 だから僕もキャリーナ姉ちゃんの考えには大賛成! と言うわけで、さっそく買いに行こうと思ったんだけど、


「あっ、できたらルディーン君は残ってほしいかな」


 そしたらバーリマンさんに、そう言って止められちゃった。


「そっか。ならルディーンはお母さんと一緒にお留守番ね。キャリーナ、それじゃあ二人で行こっか」


「は~い!」


「二人とも。初めての場所なんだから、迷子にならないように、ちゃんと道順は覚えていくのよ」


 と言うわけで僕はお母さんと一緒に残る事になって、レーア姉ちゃんはお母さんからお金をもらうとキャリーナ姉ちゃんと一緒にとうもろこしを買いに行っちゃった。


 あ~あ、僕も行きたかったのになぁ。



「よろしかったんですか? 娘さん二人だけで買い物に行かせても」


「大丈夫ですよ。姉のレーアはもう13歳ですし、何より二人ともそこらの大人より強いですから」


 お姉ちゃんたちを見送った後、僕たちはお台所から別のお部屋へ移動。そこでお話しすることになったんだ。


「それで、私に聞きたい事と言うのは?」


「それはですね。ルディーン君が作った、肌用ポーションの使い方についての事です」


 前にね、僕が村ではお母さんたちがお肌つるつるポーションをお湯で溶いて使ってるんだよって教えてあげたもんだから、ロルフさんとバーリマンさんはあれから何度も実験してみたんだって。


 でもね、


「いろいろと水とポーションの割合を変えて実験をしてみたのですが、なぜか思うように行かなかったのです」


 どうもお肌つるつるポーションにお水を混ぜると、それがちょびっとだけでも解析の魔法で調べたらなんでか、かなり効果が薄れちゃってたみたいなんだよね。


 だからお母さんが来たって事で、村ではどんな風にお肌つるつるポーションを水で溶いてるの? って聞きたかったんだってさ。


「どのようにと言われても……村では桶にお風呂のお湯を入れたり水桶から水を汲んだりして、それにただルディーンが作ってくれたお薬を溶かして肌にパシャパシャとつけているだけなんですが」


 でもお母さんは、村の人たちもそんな特別な事はしてないんだよって言うんだ。


 そりゃあ、そんなにいっぱいお水を混ぜたりはしないけど、逆にちょびっとだけしか使ってない訳でもないんだって。


「みんな混ぜる薬の量も適当だし水やお湯の量だってその時々で違うから、どのように水で溶いているのかと言われても……」


「なるほど、そうですか。ですが、一度やって見せてはいただけませんか? 村では普通に行われている事でも、私たちから見たら思わぬ発見があるかもしれませんから」


「ええ。やって見せるくらいなら構いませんけど」


 でも、バーリマンさんがどうしても見せてって言ったもんだから、お母さんは村でやってる通りやってみる事にしたんだ。



「普通ですね」


「そうでしょ? だから特別な事は何もしてませんよ」


 でね、お母さんがバーリマンさんにいつも村でやってる通り、お肌つるつるポーションをお水で溶かして見せたんだ。


 そしたら、ほんとに普通に溶かしただけだったんだよね。


「ねぇ、ルディーン君。これを鑑定解析で調べてくれない?」


 だからバーリマンさんはびっくりしてたんだけど、それでももしかしたらお母さんが溶かしたら効果があるかもしれないって、僕にこう言ってきたんだよね。


 と言うわけで、鑑定解析をしてみたんだけど、


「薄まったポーションで、お肌をつるつるにする効果はほとんど無くなってるって」


 お母さんが溶かしても、やっぱりバーリマンさんたちがやった時とおんなじ結果になったみたい。


「これってもしかして、私たちが効果があると思い込んでいただけで、本当は何の効果もなかったって事なのかしら?」


 でね、それを聞いたお母さんは、ほんとは村で使ってるのも効果がないのかもしれないって言ったんだけど、でもバーリマンさんは、そんなお母さんに多分村では本当に効果が出てるんじゃないかなぁ? って言うんだよ。


「私が見たところ、カールフェルトさんの肌や髪のつやは間違いなくポーションの効果が出ています。でも、実際に原液のポーションはたまに使うだけで、普段は水で溶いたものを使っているのですよね?」


「ええ、その通りです」


「なら間違いなく、村では実際に効果が出ているという事でしょう」


 そっか。バーリマンさんが言うのなら、ほんとにそうなんだろうね。


 でもさ、じゃあ何でここでお水と混ぜると効果が無くなっちゃうんだろう?



 読んで頂いてありがとうございます。


 ブックマークがとうとう念願の1000人を突破! その上、総合ポイントも4000を超えました! 本当にありがとうございます。


 もしこの話が気に入ってもらえたのなら、お気に入り登録や評価を入れていただけると嬉しいです。


 感想やレヴュー共々続きを書く原動力になるので、よろしくお願いします。


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