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240 かわいいお店に見えるけどお店じゃないんだよ


 錬金術ギルドは今、僕たちがいる露店街のを挟んで北門や冒険者ギルドの反対側にあるんだ。


 だからそんなに急がなくてもすぐ着くって事で、歩いてる方向だけ変えたけど僕たちはさっきまでと同じように露店を見ながらふらふら。


 そしたらね、途中にいい物が売ってたんだ。


「あっ、バターが売ってる! お母さん、これから作るお菓子にいるから、バター買って」


「あら、こんなものまで使うのね」


「うん! 普通の油でも作れるけど、バターを使った方がおいしくなるんだ」


 バターはちょっと高いから、普段のお料理にはあんまり使わないんだよね。


 だから急にこんな事を言っても普通なら買ってくれるはずないんだけど、でもうちではパンケーキに塗ったりもするからお母さんはお菓子に使うんだよって言ったら何も言わずに買ってくれたんだ。


「ルディーンがおいしくなるって言うんなら、絶対使った方がいいもんね」


「何を作るのか知らないけど、おいしい方がいいよね」


 それにお姉ちゃんたちも、これでおいしいものが食べられるねってニコニコ。


 でもキャリーナ姉ちゃん、さっき僕がとうもろこしの粒でお菓子が作れるって言ったら、うそだぁって言ってたよね? なのに、今はレーア姉ちゃんと一緒にどんなお菓子なんだろうって話してるんだよ。


 でも楽しみだねって言ってくれたから、特別に許してあげる。


 だって、お菓子はみんなでニコニコしながら食べたほうが絶対美味しいもんね。



 露店街を超えてしばらく歩くと、僕たちはいろんなお花が咲いた花壇と赤い扉、そしてオレンジ色の三角お屋根が目印のかわいい建物にたどり着いたんだ。


「ねぇ、ルディーン。お菓子を作るのに、まだ何かいるの?」


 だから僕、そのまま入ろうとしたんだけど、そしたらレーア姉ちゃんがこんなことを聞いてきたんだ。


「ううん、もう何にもいらないよ。でもなんで?」


「だって、このお店に入るんでしょ?」


 だからどうして? って聞いてみたんだけど、どうやらレーア姉ちゃんはここが何かのお店かと思ったみたい。


 おまけにお母さんやキャリーナ姉ちゃんまで何でこのお店に入るんだろう? って顔してたから、僕はここが錬金術ギルドなんだよって教えてあげたんだ。


「ここ、本当にギルドなの?」


「うん。僕も初めて来た時はびっくりしたんだよ」


 僕にそう言われて、レーア姉ちゃんはもう一度錬金術ギルドの建物を見たんだ。


 そしたら、上にかかってる小さな看板を見つけて、


「ほんとだ。ギルドって書いてある」


 だって。


 レーア姉ちゃん、実はまだあんまり文字が読めないもんだから錬金術って書いてあるとこは解んなかったけど、その後のギルドって文字は読めたみたい。


 だから不思議そうな顔はしてたけど、納得はしてくれたみたいなんだ。


「それじゃあ入るよ」


 それに、お母さんがその看板を見て信じてくれたから、僕はそう言って赤い扉を開けたんだよね。


 カランカラン


 いつもの音を聞きながら中に入ると、カウンターには珍しくバーリマンさんとペソラさんが二人で座ってたんだ。


「あら、ルディーン君。いらっしゃい」


 でね、ドアベルの音を聞いて顔を上げたバーリマンさんが僕の顔を見て、笑顔になりながらそう挨拶してくれたんだよね。


 だから僕も、こんにちはって挨拶をしようと思ったんだけど、


「えっ!?」


 そしたら何でか、バーリマンさんが固まっちゃったんだ。


 それに僕じゃなくってその後ろを見てるって事は、お母さんやお姉ちゃんたちを連れてきたことにびっくりしてるのかなぁ?


 そう言えばバーリマンさんは僕が魔法でイーノックカウに来られることを知ってるもん。


 だからいつもはロルフさんちのメイドさんと一緒に来るのに今日はお母さんたちと一緒に来たから、もしかしてみんなで来られる魔法を僕が使えるようになったって思っちゃったのかも。


「違うよ。魔法できたんじゃなくって、馬車で来たんだよ」


 だから僕、慌ててそう言ったんだけど、


「もしかして、ルディーン君の親御さんですか?」


 バーリマンさんは僕の事をほったらかして、お母さんにそう声をかけたんだ。


 あれ? お母さんが来たことに驚いてるの? でもなんで?


 そりゃあ、お父さんと違ってお母さんはあんまり村の外には出ないよ。


 だけど全く出ないって事は無いから、僕と一緒に来てもおかしくないと思うんだけどなぁ。


 それにバーリマンさん、一緒にいるお姉ちゃんたちもここへは初めて連れてきたのに、お母さんにだけ話しかけてるし。


「えっ? ええ、私は確かにルディーンの母親ですが……あなたは?」


「ああ、そう言えばご挨拶がまだでしたね。私は錬金術ギルドのギルドマスターを任されているクリスティーナ・バーリマンと申します。以後お見知りおきを」


「まぁ、あなたがバーリマンさんなのですね。ルディーンからお話は聞いております。大変良くして頂いているそうで」


「いえいえ、こちらこそ」


 あれ? なんか普通にご挨拶を始めちゃった。


 バーリマンさん、ニコニコしながらお母さんと普通にお話してるけど、じゃあ何でさっきはあんなびっくりした顔してたんだろう?


 それがどうしても気になったもんだから僕、聞いてみる事にしたんだ。


「ねぇ、バーリマンさん」


「えっ? ああ、ルディーン君。どうしたのかしら?」


「さっき僕と一緒にお母さんとお姉ちゃんたちが入ってきたらびっくりしてたでしょ? なんで?」


 そしたらバーリアンさんは、なんと言うか不思議な笑顔でこう言ったんだ。


「それはね、ずっと前からルディーン君のお母さんに聞きたい事があって、時間が取れたらロルフさんとグランリルに出向かないといけないってお話をしていたの。でもその人がいきなり目の前に現れたから、びっくりしてしまったのよ」


 バーリマンさんたちは、お母さんに何か聞きたい事があったみたい。


 でもお母さんはまさかそんな事を言われるなんて思ってもいなかったから、僕じゃなくて私に聞きたい事があるんですか? って聞き返したんだよね。


 そしたら僕じゃなくって、やっぱりお母さんに聞きたい事があるんだってさ。


「そうなのですか。それで聞きたい事と言うのは一体何でしょう?」


「ああ、それはですね」


 お母さんが聞いたもんだから、バーリマンさんは早速そのお話をしようとしたんだよ。


 でもね、


「ねぇ、ルディーン。お台所を貸してもらわないの?」


 そこにキャリーナ姉ちゃんが来て、こんな事を言ったんだよね。


 だからバーリマンさんは、お話しするのをやめて僕の方を不思議そうな顔で見たんだ。


「お台所?」


「そうだった。ねぇ、バーリマンさん。錬金術ギルドのお台所、使ってもいい?」


 急にお母さんたちがお話を始めちゃったもんだからすっかり忘れてたけど、僕たちはここにお菓子を作りに来たんだよね。


 だからそれを教えてあげると、奥のカウンターにいたペソラさんがお菓子って言葉に反応したんだ。


「ルディーン君。お菓子と言うと、この前のパンケーキみたいなのですか?」


「ううん、違うよ。今度のはね、とうもろこしを使ったお菓子なんだ」


 でね、そんな僕たちのおしゃべりを聞いて、バーリマンさんも興味を持ったみたい。


「ルディーン君がわざわざ台所を借りに来てまで作ろうって言うんだから、私たちが知っているような普通のお菓子じゃないわよね? なら私も興味があるわ」


 どんなお菓子を作るのか気になるからって、お母さんとのお話は後でいいから先にお菓子を作ろうって事になったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 残念ながら、お菓子作りまで辿り着けませんでした。


 まぁ、お菓子の方はシーラお母さんを錬金術ギルドに連れてくる口実だったので仕方ないんですけどね。


 と言うわけで、かなり前に書いた話なので皆さんはもうお忘れかもしれませんが、シーラお母さんが錬金術ギルドに来たおかげで、あの話がちょっとだけ進展しますw


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