表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

234/759

229 できたフロートボードの魔石と、僕の固い決意


 魔法文字記号が揃ったって事で、僕はさっそく放出系の魔法陣の見本を取り出して羊皮紙にフロートボードの魔法陣を描いて行ったんだ。


 でね、それが出来上がったから今度は魔石に刻む作業に移ろうとしたんだけど……。


「これって、どれくらいの大きさの魔石に刻めばいいのかなぁ?」


 ヒルダ姉ちゃんちの魔法の水がめの時は朝と夜の二回、数秒だけぺかーって光ればよかったからそんなに大きな魔石を使わなかったんだけど、フロートボードは馬車が走ってる間、出しっぱなしだもんね。


「ちょっと大きめの魔石を使わないといけないのかも?」 


 だからブラックボアくらいの魔石がいるのかなぁ? なんて思ったんだけど、でも効果が出てる時間は長いけどフロートボードを呼び出すのは一瞬なんだよね。


 そう思った僕は、この魔法の事を詳しく知るためにステータスにある一般魔法の欄を開いたんだ。


 なんでかって言うとね、ドラゴン&マジック・オンラインの頃に無かった魔法でも、僕が一度使うとこのステータスの魔法欄に載っかるからなんだ。


 でね、そこに一度載っちゃうとゲームの頃からある魔法と同じように詳しい説明も載っかるんだ。不思議だよね。


「えっと、フロートボードはぁ……あっ、あった!」


 そこに書いてあった説明によると、フロートボードの習得レベルは1で発動は一瞬、効果時間は消さなければ2時間なんだけど消える5分前になると点滅を始めるから、そうなったらもう一度かけなおす事で持続時間をまた2時間延ばす事ができるんだってさ。


 あとね、上に載っけられる重さは使う人のレベルと攻撃魔力でかなり変わるみたい。


「そっか。だから初めて使った僕でも、あんなおっきな石でも載っけられたんだね」


 前にバーリマンさんが街の壁を作る時に魔法使いの人たちが魔法で石を運んでたって言ってたんだよね。


 でもその魔法使いの人たちは僕と違って狩りとかをしないし、冒険者になる人もいないって話だったからレベルがそんなに高くないはずなんだ。


「狩りとかをしてないなら、街の魔法使いさんたちはきっとみんな5レベルくらいだよね」


 僕、今賢者11レベルだもん。


 そっか、上位職の賢者の攻撃魔力は魔法使いより高いから、僕が作ったフロートボードにはイーノックカウの壁に使ってあったおっきくて重い石だって簡単に乗っけられたのかぁ。



 これはイーノックカウから帰ってバーリマンさんからもらった教科書を読んで初めて知った事なんだけど、魔法陣を使って使う魔法ってそれを刻んだ人の魔力によって効果が違うそうなんだ。


 って事は僕が魔法陣を刻めば、普通に使う一回分の魔力で重たい石が運べるフロートボードを2時間出せるって事だよね? 


「う~ん、だったらあんまり大きな魔石はいらないかも」


 フロートボードに必要なMPは5。


 1レベルの魔法にしては多いけど、便利さから考えるとそんなに多くはないんだよね。


 それにこれってピュリファイとおんなじだし、使う魔力は魔道リキッドや魔石の乾電池から取ればいいから魔法陣を刻む魔石自体はヒルダ姉ちゃんちの魔法の水がめとおんなじ、ちっちゃな大豆くらいの魔石でいいのかもしんない。


 そう思った僕は、机の中から魔石を取り出したんだ。


 これくらいの魔石ってさ、ちょっと大きめの鳥の魔物が持ってる魔石だから、これが使えるとほんと助かるんだよね。


 だってこれよりちょっと大きいのがいるんだってよって事になっても、ちょうどいい大きさの魔石を持ってる魔物がグランリルの森にはあんまりいないんだもん。


「うちの近くの森だと、この上はいきなりブラックボアとかになっちゃうもんなぁ。イーノックカウにはその間くらいの魔物がいっぱいいるけど、一人で森に行っちゃだめって言われてるから取りにいけないんだよね」


 ブレードスワローの魔石なんかは普通の大豆かそれよりちょっと大きいくらいだから、あれくらいの魔物がいっぱい獲れたら魔石の電池がもっと作れるんだけどなぁ。


 あれより小さいと中に入る魔力が少なくなっちゃうし、かと言ってブラックボアが持ってるビー玉くらいのを使うとなると乾電池が大きくなっちゃうもん。


 そして何より魔石自体の値段がとっても高くなっちゃうから、そんなに数が作れなくなっちゃう。


「やっぱり今度、お父さんにイーノックカウの森に一人で行っていい? って聞かなきゃ」


 僕はそんな事を言いながら、魔石にフロートボードの魔法陣を刻んだんだ。



 さて、フロートボードの魔石も完成したって事で、さっそく実験。


 だっていきなりこれを馬車に使うわけにいかないもんね。


 と言う訳で資材置き場に行って試しに魔法陣を起動してみたんだけど、そしたら魔石を中心にしてその下に縦3メートル、横2メートルくらいのフロートボードが出てきたんだ。


 なんでこんな大きさになったのかって言うと、それはたぶん僕が馬車に使うフロートボードを作ろうって思いながら魔法陣に刻んだからだと思う。


 だってこれ、僕が前にイーノックカウに行った時に乗っていった馬車くらいの大きさだもん。



 とまぁ、フロートボードを発動させる実験には成功したんだけど、それを見た僕はちょっと困っちゃった。


「これ、どうやって実験しよう?」


 前にフロートボードの魔法を使ってみた時は石の下に出したけど、これって魔道具だから魔石自体から放出する事しかできないんだ。


「大きさは魔法回路図で変える事ができるけど、出す場所は変えられないもんなぁ」


 だからこの魔石で実験しようと思ったら、フロートボードを出してからその上に石を置く必要があるんだけど、そんなの僕が載せられるわけない。


 う~ん、教科書に書いてあったんだからこのまま馬車に使っても絶対大丈夫だとは思うけど、やっぱり実験はしておきたいんだよね。


 でもフロートボードの魔石の上におっきな石をクリエイト魔法で作ったら、魔石が割れちゃうからそんな事できるはずないし。

 

 だからどうしよっかなぁ? ってしばらく考えてたんだけど、そしたらとってもいい事を思いついたんだ。


「そうだ! これって馬車に付ける魔道具なんだから同じように台を作って、その上に重しのおっきな石を作ればいいじゃないか!」


 馬車は木で作るけど、今は実験なんだから台も石で作ればいいもん! それなら簡単だ。


 と言う訳で、まず真ん中に魔石を入れる小さな穴が開いた縦3メートル、横2メートルの石板をクリエイト魔法で作る。


 でね、その石板に乗ってから真ん中の穴に魔石を入れると、その僕の前と後ろに、前のフロートボードの実験の時に作ったのとおんなじくらいの石をクリエイトマジックで作ったんだ。


 でもね、僕はそこである事に気が付いたんだ。


「あっ、前と後ろに作んなきゃって思ったから、つい前とおんなじくらいの石を二個作っちゃった。でもまぁ、ステータスに攻撃魔力やレベルによって運べる重さが違うって書いてあったし、これでも大丈夫だよね」


 5レベルくらいの魔法使いの人たちが運べる石二個だもん。もう11レベルの賢者なんだから、きっと大丈夫!


 僕はそう思って、魔法陣を起動。そしたら思った通り、ちゃんと二つの石も、それを載っけた石板もフロートボードで浮いたんだ。


「やった! こんなおっきな石が二個も載っかるんだもん。馬車だってきっと大丈夫だよね」


 でも念のため、僕は石板から降りて後ろからその石を押してみたんだ。


 そしたらすーって、簡単に動いちゃった。


「すごいや。こんな重たい石なのに、僕でも動かせちゃった。そうだ! 今度お兄ちゃんたちと一緒に森に狩りに行って前みたいにいっぱい魔物を狩っちゃっても、これを使えばお父さんを呼びに行かなくっても全部持って帰れるじゃないか!」


 前ん時は狩りすぎだってお兄ちゃんたち、帰りの馬車ん中でお父さんに怒られてかわいそうだったもん。


 でも、これでもうお父さんに怒られずに済むね。


 このフロートボードの魔石はお尻が痛くならない馬車に付ける魔道具に使っちゃうけど、イーノックカウから帰ってきたらお兄ちゃんたちのために、絶対もう一個作んなきゃ! って僕は固く決心したんだ。 


 読んで頂いてありがとうございます。


 本編でルディーン君は街の魔法使いは5レベルくらいだろうと言っていますが、実際はそこまで高レベルな魔法使いはほとんどおらず、よくて1~2レベル。中には見習い魔法使いも混ざっています。


 だから彼らが使うフロートボードでは城壁などに使う石は運べないので、重さを軽くする魔道具を併用して使っているんですよね。


 まぁルディーン君クラスの魔法使いなら普通、貴族や王族に召し抱えられるか自分の研究に没頭しているでしょうから、工事現場になんているはずないんですよね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ