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228 魔法文字記号の一覧表を作っちゃおう


 お爺さん司祭様が、帰って来たら早速お尻が痛くならない馬車に使うフロートボードの魔法は放出系の魔法陣で簡単に作れるんだよって教えてくれたんだ。


 って事は多分イーノックカウへ行ってる時でもずっと考えてくれてたんだよね。


 だってそうじゃなかったら、そんな事を思いつくはずないもん。


 もしかしたらわざわざ調べてくれたのかも? だったらすぐに作り始めないと!


 きっとお爺さん司祭様も、お尻が痛くならない馬車ができるのを楽しみにしてるはずだからね。


「司祭様。貴族様のお尻の痛くならない馬車ってどんな風にできてるの?」


 そう思った僕は、さっそく魔法の馬車をどうやって作ればいいのかを聞いてみたんだ。


 ところが、


「すまぬ。ちと疲れておるようでのぉ。一晩寝れば体調も戻るだろうし、明日にはきちんと説明するから、今日は神殿に帰るとするよ」


 お爺さん司祭様は、さっきまでよりずっと疲れた顔をしてそう言ったんだ。


 そっか。そう言えば司祭様、イーノックカウからずっとお馬に乗ってここまで帰ってきたんだもん。


 きっと僕にフロートボードの魔法陣の事を教えたから、ほっとしちゃったんだね。 


「うん! じゃあ馬車は明日からだね。お父さんやお兄ちゃんたちが帰ってきたらそう言っとくよ」


「うむ。また明日。それと、カールフェルト夫人、すまぬが後で神殿までご足労願えぬか?」


「私ですか?」


「ちと話さねばならぬ事ができたのだが、この状態ではその気力が湧かぬ。すまぬが、夕食を作るのに支障がない程度に日が傾いたころ、神殿まで来てもらえるとありがたい」


「解りました。伺わせていただきます」


 こうしてお爺さん司祭様は帰って行っちゃったんだ。



 と言う訳で馬車本体は明日作ることになったんだけど、僕には今からでもできる事があるんだよね。


 そう、フロートボードの魔法陣作りだ。


「また魔法文字を調べなきゃ。そうだ! せっかくだし、一覧表も作っちゃお」


 ピュリファイの時は魔法陣を書いた後に魔法の水がめまで作んないといけないから時間がなかったけど、馬車は明日作るんだから問題なし。


「みんながパンケーキを食べに来てお手伝いしなきゃいけなくなっても、きっとお母さんが呼びに来てくれるよね」


 あとは草原に鳥を獲りに行くくらいしかやる事ないけど、それは別にどうしてもやらなきゃいけない訳でもないから今日は晩御飯まで時間があるんだ。


 という訳で、僕はさっそく前の世界の文字と魔法文字との一覧表作りに取り掛かることにしたんだ。



 この一覧表なんだけど、前に作ろうと思った時は大きな紙を作ってそれに書こうと思ったんだよね。


 でもうまく紙ができなくって、代わりにトイレットペーパーができちゃった。


 そんな訳で手元には一覧表を書けるような物がないから、一覧表を作るって言ってもいっぺんに全部書くのは無理なんだよね。


 だって、おっきな羊皮紙はとっても高いから買えないもん。


 それに木の板だって薄くて大きなものを作ったらぺきって割れちゃうし、厚くしたら重くて運べなくなっちゃう。


 だから僕は、薄くてちっちゃな木の板を何枚か作ることにしたんだ。



 前の世界の文字って5つの音で一つの組になってたんだよね。


 だから僕は、それを組ごとに一枚ずつの薄い板に書いて行ったんだ。


「あれ? 3枚だけ空いてるとこがあるや。変なの」


 でね、記憶にある通り書いて行ったんだけど、順番に書いてったら最後の方で文字が入らないとこが出てきたんだよね。


 もしかしたら覚えてない文字があるのかなぁ?


 そう思ったんだけど、もし前の世界の文字に無い読み方の魔法文字記号が出てきたらそこに入れればいいやって事で、とりあえずこっちは完成。


 続いて今度は魔法の文字記号の教科書を見ながら、前の世界の文字の横に書いて行ったんだ。


 そしたらさ、なんで僕はこれを最初にやらなかったんだろうって思う程びっくりしたんだ。


 だってピュリファイの時は、この教科書に書いてある魔法文字記号は前の世界の文字と並び方が違うから探すのにとっても苦労したんだよ。


 でもさ、今回は教科書の文字記号を読んでそれとおんなじ音の前の世界の文字を探せばいいだけなんだから、みんなすぐに見つかっちゃうんだもん。


 後はその横に魔法文字記号を書いてけばいいだけだから、あっという間に終わっちゃったんだ。


「ピュリファイの魔道文字記号、探すのに1時間くらいかかったのになぁ」


 その半分くらいの時間で全部書けちゃったんだもん。ほんとにもっと早くやっとけばよかった。



 でね、その出来上がった木の板を前の世界の順番通りに並べてから、ディグの魔法で穴を……、


「あれ? 開かないや」


 何故か魔法を使っても穴が開かなかったんだよね。


 だから一度ステータスの魔法の欄を見てみたんだけど、そしたらこのディグって魔法、穴を開ける魔法じゃなくって穴を掘る魔法だったみたい。


 だから土や岩、それに鉄や銅なんかの鉱物には穴を開けられるけど、そのほかのものには穴を開けられないみたいなんだ。



 そっか。だから木の板に穴が開かなかったんだね。


 じゃあ他にいい魔法がないかなぁ? って探してみたんだけど、そしたら一般魔法の中にドリルって魔法があったんだ。


 これはディグと違ってあんまり深い穴や大きな穴は開けられないけど、そんなに厚いものじゃなければどんなものにも穴が開けられるみたい。


「これなら大丈夫かな?」


 そう思った僕は、とりあえず何も書いてない板にドリルの魔法を使ってみたんだ。


 そしたら見事成功。大きさもちょっとだけなら変えられたから、思った通りの穴を開ける事ができたんだよね。


 という事で、文字が書いてある板の両端に二個ずつ穴を開けていき、


「あとは皮ひもを通してっと」


 それを全部繋げると一覧表が完成したんだ。


 出来上がった一覧表は羊皮紙ほど小さくはならないけど一応丸められるから邪魔にならないし、必要な時はすぐに広げられるから魔法文字記号を調べようと思ったらすぐに見る事ができるんだよね。


「一覧表もできたし、フロートボードに使われてる魔法文字記号を探してみよっと」


 フロートボードにはーや濁点が使われてるけど、前の世界の文字だと11枚目が最初の1つしかないからその記号はその下に書いといたんだ。


 だから必要な文字があっという間に全部解っちゃった。


「すごいや。これでもし僕が自分でいろんな魔法陣が書けるようになったら、もうどんな魔道具でもあっという間に作れちゃうね」


 あんまり早く見つかったもんだからうれしくなっちゃって、フロートボードの魔法文字記号が書かれた木の板を持ったまま僕は、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら大喜びしたんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 ブックマークがとうとう念願の1000を突破! その上、総合ポイントも3600を超えました! 本当にありがとうございます。


 もしこの話が気に入ってもらえたのなら、お気に入り登録や評価を入れていただけると嬉しいです。


 感想共々続きを書く原動力になるので、よろしくお願いします。


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