224 お爺さん司祭様が帰って来た!
次の日の朝、ヒルダ姉ちゃんがうちに来て、
「ねぇ、どうだった? お父さんは作ってもいいって?」
って僕に聞いてきたもんだから、いいよって言ってたって教えてあげたんだ。
そしたら、それを聞いたヒルダ姉ちゃんは大喜び。
「ルディーン、もう朝ご飯は食べたんでしょ? だったらさ、今からうちに作りに来てよ」
でね、お父さんの気が変わっちゃったら困るからすぐに作んないとって、僕は手を引かれてヒルダ姉ちゃんちに連れてかれちゃったんだ。
「使う魔石はブラックボアのでよかったのよね?」
「えっとね、うちのはそれくらいの大きさのだけど、お姉ちゃんちのは僕んちのと違って魔石の乾電池を使うから、もっと小さいのでもいいんだよ」
「あら、そうなの? 折角用意したのに」
ヒルダ姉ちゃん、どうやらお母さんから魔法の水がめの事を色々と聞いてたみたいで、魔法陣を刻む魔石を昨日の内に用意してたんだって。
でもさぁ、もしお父さんがダメって言ったらどうするつもりだったんだろう?
そう思った僕は、ヒルダ姉ちゃんに聞いてみたんだよね。
「その時はスティナを連れて行って、お爺ちゃんお願いって頼んで貰おうって思ってたわ。お父さんも、スティナには甘いからね」
そしたらこう言われちゃった。
そっか、スティナちゃんに頼まれたらダメって言えないもんね。
でもさぁ、だったら僕が魔法のジョッキを作って頼まなくっても良かった気がするんだけど……。
「それはまぁ、お父さんもお母さんも喜んでたからいいじゃないの」
なんとなくう~んって感じだったんだけど、ヒルダ姉ちゃんにこう言われた僕は、まぁいっかってなって魔法の水がめを作る事にしたんだ。
用意してあったブラックボアの魔石だと大きすぎて勿体無いからって、僕んちから持ってきたちっちゃな大豆くらいの大きさの魔石にピュリファイの魔法陣を刻む。
でね、その魔石と魔法を起動するためのスイッチが付いた魔道回路図版を仮で作った水がめに取り付けると、その魔石に魔力を注いでピュリファイを発動! それを見ながらクリエイト魔法を使って効果範囲に合うように大きさを微調整したり、お水が最後までちゃんと出るようにするための底の加工や、ゴミや砂埃が入っちゃわないようにするための蓋をお水が入れるとこを残して水がめの上に付けたりしたんだ。
そして、その出来上がった水がめをフロートボードの魔法を使ってヒルダ姉ちゃんちの台所の外まで持って行くと、そこでもまたクリエイト魔法を使って水がめの土台やお水を入れる時に使う階段つきの足場を付けたり、台所の中に繋がる樋を作ったりしたんだよね。
でね、最後に一箇所だけ僕んちとは違う場所、魔石の乾電池をつける所を水がめに取り付けるとそれをピュリファイの魔道具につないで、ヒルダ姉ちゃんちの魔法の水がめは完成したんだ。
「これでもう動くの?」
「うん。あとは魔石の乾電池をつければもう使えるよ。この魔法の水がめに使う乾電池はまだ一個しか作って無いけど、中の魔力が無くなるまでには何個か作っとくから今度取りに来てね」
今日の朝、いきなり連れて来られちゃったから水がめ用の魔石の乾電池は最初に作った一個しかないんだよね。
でもすぐ作れちゃうし、中に使ってる大豆くらいの魔石なら森に連れてってもらえれば簡単に獲れるから、お父さんたちの魔法のジョッキのと一緒に今度暇な時にでも作っちゃおうって思ってるんだ。
と言う訳でヒルダ姉ちゃんと二人でお水を入れる足場に上がると、早速その魔石の乾電池を取り付けてスイッチオン。
そしたら水がめの中がぺか~って光ったんだ。
「まだお水が入って無いけど、今みたいに魔道具を起動したら中がぺか~って光って中をきれいにしてくれるから、これを朝と夜に一回ずつやるだけで暑い時でもお水は悪くならないよ」
「ありがとう、ルディーン。早速午後にでも旦那に水を汲んでこさせるわ」
実験も成功したし、もしお水を入れて何かおかしなとこがあったとしても言いに来てくれたらすぐに直しに来るよって言って、僕はヒルダ姉ちゃんとお別れ……しようとしたんだけど、
「ねぇ、ルディーン。この魔道具のスイッチだけど、もう一個土台の所にも付けられないかな? 今のままだと朝と晩、毎日ここまで上がってこないといけないでしょ。もしできるなら付けてもらえると嬉しいんだけど」
こうして僕は、その場でもう一個スイッチの基板を作って魔法の水がめの土台に取り付けたんだ。
うん、後でお家の水がめにも土台のとこにスイッチを付けとこっと。
お家に帰った僕は、クーラーをつけてるからお家の中で一番涼しい台所でお母さんと一緒にお昼ご飯。
今日はお父さんもお兄ちゃんや姉ちゃんたちも森にお出かけしていないから、お母さんと僕の二人だけなんだよね。
いいなぁ。僕だってパーティーを組めたら森に行けるのに。
探知魔法があるし、お怪我を治す魔法も使えるから1人でも大丈夫だよって言ってるのに、お父さんもお母さんも行っちゃダメって言うんだよね。
今なら多分、ブラックボアだって一人で狩れるのに。
だから前にお父さんにそう言ったんだけど、そしたら、
「そのブラックボアはどうやって森から持って帰って来るんだ?」
だって。
フロートボードの魔法があるから、森の外まで出せれば僕1人でも村に持って帰る事はできるんだよ。
でも森の中だと木がいっぱい生えてるから、フロートボードの魔法だけじゃ外まで運べないんだ。
それにブラックボアより小さな魔物でも、うちの村の近くの森の魔物はみんな大きいから僕1人だと軽くしても運ぶのが大変なんだよね。
と言う訳で、僕は今も1人でお留守番。
あ~あ、イーノックカウの森みたいに小さな魔物がいたら良かったのに。
そうだ! イーノックカウの森なら行ってもいい? って今度聞いてみよ。
あそこなら魔物もみんな弱いし、魔法で軽くすればブレードスワロー1匹くらいなら僕1人でも運べるもん。
ちゃんと森に入る準備をして、そんなに奥まで行かないよって約束すればきっと大丈夫だよね。
お父さんが帰ってきたらお話ししてみようかなぁ? なんて思いながら僕はご飯を食べてたんだけど、
「はて、これはなんだ? 前に来た時はこの様なものは無かったはずだが」
そしたら、台所の外からこんな声が聞こえてきたんだよ。
でね、それは僕が早く帰って来ないかなぁって思ってた人の声だったから、それが誰なのかすぐに解ったんだ。
「司祭様の声だ!」
そう、お外から聞こえてきたのは、お尻が痛くならない馬車の作り方を聞きたいからって、ずっと僕が帰ってくるのを待ってたお爺さん司祭様の声だったんだ。
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