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223 魔石の乾電池、もっと便利にならないかなぁ?


 自分専用の木のさじを貰ってニコニコしてるスティナちゃんと手をつなぎながら、僕はお家に帰って来たんだ。


 でね、二人とは台所で別れて、僕は魔法のジョッキを完成させるためにもう一度いつも魔道具を作ってる部屋へ。


「まずは回路図を書いちゃわないとね」


 木のジョッキの中に貼り付けちゃった後だと回路図が書けないよね? だから僕は、まずクリエイト魔法で薄い銅板を作ったんだ。


 でね、僕はその銅板全体が冷えるように回路図を書いちゃってから、丸めてジョッキの中へ。


 そして先に作っておいた氷の魔石を固定した回路図版をつないでから、その銅板をクリエイト魔法を使って木のジョッキにめり込むような形で貼り付けたんだよね。


 だってさ、もしこのジョッキと銅板の間にお酒が入っちゃっても、そこを洗う事ができないよね? だからこうしとかないとダメなんだ。


 そして最後に木のジョッキの取っ手のところをクリエイト魔法でくりぬいてからそこに魔石の乾電池入れるとこをはめ込んで、それを氷の魔石につないじゃったら中に入れたお酒が冷える魔法のジョッキは完成。


「取り合えず一度台所へ行って、お水で実験してみないとね」


 でも、これでほんとに中に入れたものが冷えるかどうかは解んないから、もう一個作る前に僕はそれを持って台所へ向かったんだ。



「へぇ、こんな小さな魔石でも、中の水はちゃんと冷えるのね」


 魔法のジョッキに魔石の乾電池をつけてからお水を入れてスイッチオン! そしたらちょっと温かった中のお水がだんだん冷たくなって行ったんだよね。


「そうね。完全に冷えるにはお酒を注いでから少し待たないといけないでしょうけど、そのまま飲むよりは遥かにマシだわ」


 魔石の力で中のお水を直接冷やしてるんじゃなく、周りの銅板を冷たくする事で中に入ってるお水を冷やすもんだから、どうしても時間が掛かっちゃうんだ。


 でも、そのおかげで米粒くらいの小さな魔石でも中のお水をちゃんと冷やせてるみたい。


「これで大丈夫? だったらお母さんの分も今から作ってきちゃうけど」


「ええ、お願いするわ」


 どうやら大丈夫みたいだからって、僕は同じ物をもう一個作るために魔道具を作るお部屋に行こうとしたんだよね。


「う~ん、うちにも欲しいけど、お父さんの許可が出たら魔法の水がめを作ってもらうからなぁ。それの魔力もルディーンやキャリーナに頼む事になっちゃうし、この魔法のジョッキの魔力まで頼むのも……」


 そしたら、ヒルダ姉ちゃんがこんな事を言ったんだ。


 これ、小さな声だったから僕に言った訳じゃないと思うんだけど、ついこう思っちゃったんだよね。


「何とかならないかなぁ」



 お母さんの分のジョッキを作りながら、僕はさっきのヒルダ姉ちゃんの事を考えてたんだ。


 お姉ちゃんちの魔法の水がめは、魔石の乾電池があるんだからちゃんとお話すればきっとお父さんは作ってもいいって言ってくれると思うんだよね。


 だからと言って、もっといっぱい魔石の乾電池を使う魔道具を作るよって言ったら、きっと怒っちゃうんじゃないかなぁ?


 でもね、うちはいっぱい魔道具を使えるのに、ヒルダ姉ちゃんちはダメって言うのもなぁ。


 それにお兄ちゃんやお姉ちゃんたちもいつか結婚するんだよ? なのに、魔法が使えるキャリーナ姉ちゃん以外は魔石の乾電池を使っちゃダメって言うのは可哀相だって僕、思うんだ。


「みんなが魔法を使えるようになればいいのに」


 そんな風にも考えたんだけど、そんなの絶対無理だよね。


 だったら、魔石の乾電池の方をもっと簡単に使えるようにしないといけないって事なんじゃないかな?


 と、その時、僕はある事を思い出したんだ。


「そう言えば前の世界で見てたテレビで、そんなのがあったっけ」


 前の世界の僕がまだ小さかったころに見てたテレビに、乾電池みたいなものに入ってる力で変身したり武器を使って戦ったりするヒーローがいたんだ。


 でね、悪者と戦って力が無くなっちゃったヒーローの乾電池は、基地にある入れ物に入れておくと力が一杯になってまた使えるようになってたんだよね。


「そっか。あんなのを作ったら、ヒルダ姉ちゃんにも魔法のジョッキを作ってあげられるじゃないか!」


 それに気が付いた僕は、どうしたらそんなのが作れるか考えたんだよね。


 で、思い出したのが重さが軽くなる魔道具。


 あれって、ひもの所が特別な魔物の毛を使って作ってあって、そこから魔石に周りの魔力を入れてくれるから、時間がたてばまた何度でも使えるようになってるんだ。


「あんな風に魔道具に周りの魔力を入れられるんなら、魔石の乾電池にだって入れられるはずだよね」


 そりゃあ、僕やキャリーナ姉ちゃんが魔力を注ぐのに比べたらもっといっぱい時間が掛かっちゃうだろうけど、だったら魔石の乾電池をいっぱい作ればいいだけだよねって僕、思うんだ。


 だっていっぱいあれば使ってた魔石の乾電池の魔力が無くなっちゃっても、それを魔力が溜まる入れ物に入れて中から別の魔力が溜まった乾電池を取り出して使えばいいだけだもん。


「重さが軽くなる魔道具はみんな使ってるし、きっとその作り方だって魔道具の本に載ってるよね」


 そう思った僕は、とりあえずお母さんの魔法のジョッキが出来上がったら、また魔道具のご本を読まなきゃって思ったんだ。



 魔道具作りが終わったって事で、僕は前に買ってもらった魔道具の本を引っ張り出して魔法の乾電池を作る時に見つけた魔力を通しやすい素材のページを開いたんだよね。


 だってさ、魔力を通しやすい素材が書いてあるなら、そこに魔力を集める素材も一緒に書いてあるんじゃないかなぁ? って思ったからなんだ。


 でも。


「あれ? もしかして、このご本には載ってない?」


 魔力を通しやすい素材は金属だけでなく魔物の素材とかも載ってたんだけど、魔力を集める素材ってのは1個も載ってなかったんだよね。


 でね、そこで僕は気が付いたんだ。


「そう言えばこれ、回路記号図で作る魔道具のご本だった。それじゃあ、魔法陣で作る魔道具の作り方が載ってるはず、無いよね」


 あの魔道具はつけた物の重さを軽くするって言う魔法を使ってるんだから、魔法陣を使わないと作れないんだよね。


 だったらそれに使う素材も、魔法陣を使う魔道具の作り方が書いてあるご本じゃ無いと載ってないのは当たり前なんだ。


「イーノックカウに行ったら、お父さんたちに頼んで本屋さんに連れて行ってもらわないと」


 ご本はとっても高いから僕が1人で行った時は買えないけど、来週はお父さんやお母さんも一緒に行くもん。


 僕はその時に、また本屋さんに連れて行ってねって頼む事にしたんだ。



 そしてその夜。


「へぇ、そんな便利なものを作ったのか」


「うん。これを使えば魔道リキッドが無くても魔法の水がめが動くんだ。それにね、その魔力も僕やキャリーナ姉ちゃんが寝る前に入れとけば、その時に使ったMPも朝起きたらいっぱいになってるんだよ」


 お母さんやヒルダ姉ちゃんの作戦通り、魔法のジョッキで冷たくなったお酒を飲んでお父さんは上機嫌。


 そこで僕が魔石の乾電池を使ってその魔法のジョッキを作ったんだよって教えてあげたら、お父さんはえらいえらいって褒めてくれたんだ。


 でね、そんなお父さんにお母さんがヒルダ姉ちゃんとこの魔法の水がめもこの魔石の乾電池を使うから、作ってもいい? って聞いたんだよね。


「魔道リキッドを使わないんだろ? なら、いいんじゃないか?」


 そしたら、いいよだって。


 こうして無事、ヒルダ姉ちゃんのお家にも魔法の水がめを作ってもいいって事になったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 あ~、ルディーン君の前世のヒーローは獣電で聞いて驚け! の戦隊とは何の関係もありません。


 だから乾電池に入るのも、魂ではなくMPです。そしてそれを使っても、当然サンバのリズムは流れませんw


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