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222 初めての自分のって、とってもうれしいんだよね


 大きさは違うけど、一度作った物だからたいして苦労せずに予備も含めた4つの魔石の乾電池が完成。


「次は中のお酒が冷たくなるジョッキか」


 さて、どうやって作ろっかなぁ?


 ヒルダ姉ちゃんはアイスクリームを作る魔道具みたいなのを作ればいいって言ってたけど、でも実はあのままだとダメなんだよね。


 だってアイスクリームの魔道具みたいに上から下まで全部冷たくなっちゃったら、飲もうと思った時に魔石の効果でお口まで冷たくなっちゃうもん。


 それに取っ手も別にしないと、持った時に手が冷たくなっちゃうんだよね。


「やっぱり木のジョッキの内側に銅板で作った冷えるとこを作るのが一番簡単かなぁ?」


 この方法なら銅板だけを冷たくする事でお口や持った手が冷たくなっちゃうなんて事が無いもん。


 それに使う魔力を考えてもジョッキの中を氷の魔石で冷やすより、中に貼り付けた銅板を冷やす方が少なくてすむんだよね。


 大体の形が決まったって事で行動開始。


 中に入れる銅板の材料や氷の魔石にする米粒くらいの魔石はこのお部屋にあるけど、ジョッキの材料である木材は無いから、一度資材置き場に行かないといけないんだ。


「お母さん。ちょっとお外へ行って来るね」


「ルディーンにいちゃ、おそとへあそびにいくの? ならスティナもいく!」


 と言う訳で、お母さんに声をかけて出かけようとしたんだけど、そしたら一緒にいたスティナちゃんに一緒に行きたいって言われちゃったんだ。


 でもね、僕はお外に遊びに行く訳じゃないし、資材置き場に置いてある木とかはささくれ立ってるのもあって、スティナちゃんを連れてくのはちょっと危ない気がするんだよね。


「遊びに行くんじゃないよ。お酒を飲むジョッキを作るのに材料の木がいるから、資材置き場に取りに行くんだ」


「でも、おでかけすうんでしょ? だったら、スティナもいきたい」


 だから遊びに行くんじゃないよって教えてあげたんだけど、それでもスティナちゃんは一緒に行きたいって言うんだよね。


 困っちゃった僕は、助けて欲しくてヒルダ姉ちゃんの方を見たんだけど、


「資材置き場か。それじゃあルディーンとスティナだけで行かせる訳にはいかないわね。うん、解った。私も一緒に行くわ」


 お姉ちゃんは止めるどころか、一緒に行くって言い出したもんだからびっくり。


「ヒルダ姉ちゃん。行くのって資材置き場だよ? スティナちゃんとだと危なくない?」


「あら、大丈夫よ。資材置き場では私がスティナをずっと抱っこしてればいいだけだし。行っちゃダメって言ってぐずられるよりはその方がいいもの」


 う~ん、ヒルダ姉ちゃんが抱っこしてくれるんなら大丈夫かな?


 と言う訳で、僕はヒルダ姉ちゃんとスティナちゃんを連れて資材置き場に向かう事になったんだ。



「そう言えば、資材置き場に木を取りに行くはいいけど、ルディーンって木工もできるの?」


「うん。クリエイト魔法を使えば簡単だよ」


 そりゃあ木と鉄を使って樽を作ってって言われたら難しいかもしれないけど、ジョッキの形に削り出すくらいならそれ程難しくないんだよね。


「そっか、ならうちのも今度作ってもらおうかなぁ」


 ヒルダ姉ちゃんちにある木のさじとかの食器って、大人用のばっかりだからスティナちゃんが使うにはちょっと大きいんだって。


 だから前から小さな子供用のを作ってもらわないといけないって思ってたんだってさ。


「スティナちゃんのがいるの? だったらすぐに作ってあげるよ」


「ホント? ありがとう、助かるわ」


 そんなことを話しながらあるいてたら、あっと言う間に資材置き場に着いちゃった。


「食器なら硬い木を使うといいわよ。柔らかい木だと、使ってるうちにささくれ立ったりするから」


「は~い」


 ここにどんな木が置いてあるのあるのかは、前に紙を作ろうと思って調べた事があるんだよね。


 だからヒルダ姉ちゃんに教えてもらった通り、僕は一番硬い木が置いてあるところへ行ってジョッキやスティナちゃんの食器に使いやすそうな大きさの物を選んでは手前に出して行ったんだ。


「ねぇ、ルディーン。出したはいいけど、これ、結構重いわよ。持って帰れる?」


「う~ん、ここで削っちゃった方がいいかも?」


 でもね、ジョッキ二個分だけでも木の塊だと結構重たいんだよね。


 って事で、僕はその場でジョッキの形にしちゃうことにしたんだ。



「なんと言うか……魔法って便利なのね」


 取り出した木材に僕がクリエイト魔法をかけると、殆ど一瞬と言ってもいいくらいの速さで二個のジョッキが出来上がったんだよね。


 そしたらヒルダ姉ちゃんは、それを見てびっくりしちゃったんだ。


「おかあさん! ぱぁ~ってひかって、できちゃったよ」


 それにスティナちゃんも出来上がったジョッキを指差して、ヒルダ姉ちゃんのスカートの裾を引っ張りながら大興奮だ。


「それじゃあ次は、スティナちゃんのさじだね」


 さっきジョッキを作る前にヒルダ姉ちゃんとお話ししたんだけど、今日はスティナちゃんも一緒にいるからここで食器を作っても持って帰るのが大変なんだよね。


 だからお皿とかは今度お姉ちゃんの旦那さんに僕んちまで木を運んでもらって、それで作る事になったんだけど、でも木のさじだけは今すぐにでも欲しいって事で、ここで作っちゃおうって事になったんだ。


 と言う訳で、細長い木を手に持ってクリエイト魔法を発動。


 ヒルダ姉ちゃんに壊れたり無くしたりしたら困るからって言われたもんだから僕、その木から二本のさじを作り出したんだ。


「ねぇ、スティナちゃん。これくらいの大きさでいい?」


 でね、そのできたさじの一本をスティナちゃんに渡して、この大きさでいい? って聞いてみたんだよ。


 そしたらスティナちゃんは、最初にそのさじを見てその後に僕を、そしてヒルダ姉ちゃんを見上げた後、もう一度僕の方を見たんだ。


「ルディーンにいちゃ。これ、スティナの?」


「うん。スティナちゃんのだよ。これくらいの大きさでいい? もっと小さい方がよかった?」


 そう聞いてみたんだけど、スティナちゃんは何も答えず、キラキラした目で自分の手の中にある木のさじを見つめてたんだ。


 でね、


「スティナのだ……」


 小さな声でそう言うと、スティナちゃんはいきなりそのさじを持った手を高く突き上げたんだよね。


「スティナのだ!」


 その姿はまるで前に読んだご本に出てきた聖剣を手に入れた勇者様みたいで、とっても誇らしげだったんだ。


「あら、スティナ。自分のさじを作ってもらえたのがそんなに嬉しかったの?」


「だって、スティナのだよ? これ、スティナのなんだよ!」


 ニコニコしながらヒルダ姉ちゃんが頭を撫でると、スティナちゃんはお姉ちゃんを見上げながら大興奮。


 今までは大人用のさじとかを使ってたから、自分のためだけのさじを作ってもらえたのが本当に嬉しかったんだってさ。


「う~ん、こんなに喜んでもらえるなら、もっと早く作ってもらえばよかったかなぁ」


「そうだよ。言ってくれたら、何時でも作ったのに!」


 そんなスティナちゃんを見て、僕とヒルダ姉ちゃんはとっても幸せな気分になったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 魔道具作りの話が続いているので、ちょっとここでほのぼの話を入れてみました。


 まぁ、次の話から魔道具の話になるんですけどね。

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