表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

225/759

220 魔石の乾電池を作ろう!


「どこに書いてあったかなぁ?」


 僕は前にイーノックカウでお父さんに買ってもらった魔道具の本をペラペラとめくってたんだ。


 何でかって言うと、今から作ろうと思ってるものに、この本に書いてるはずの内容が必要だからなんだ。


「あっ、あった! これだ」


 結構後ろの方まで読んでたのに、中々出てこないからこの本じゃなかったっけ? って一瞬考えたんだけど、ちゃんと見つけられて一安心。


「あ~よかった。これが解んなかったら、作れないもんね」


 この魔道具の本の中で、僕が探してたのは魔力を通しやすい素材ってページ。


 何でかって言うと、今僕が作ろうとしてるものにはどうしてもこれが必要だったからなんだ。



 色々と調べてみて解ったのは魔道具に使ってる魔石は外せないけど、その魔石に魔力を供給する魔道リキッドのビンは外しちゃっても大丈夫だってことなんだ。


 だってビンの方は外しちゃったとしても、もういっぺん繋いじゃえばまた魔力が魔道具に供給されるようになるからね。


 だったらさ、その魔力の供給を魔道リキッドじゃなく他の魔石でやれないのかなぁって、僕は考えたんだ。


 そうすればその魔石が魔力を使いきっちゃったら、また別の魔石をそこにくっつければいいもん。


 でもね、それには一つ大きな問題があるんだ。


 それは魔物から取れる魔石が全部形や大きさが違うって事なんだよね。


 多分今まで誰もこれをやってみようって考えなかったのは、これを解決できなかったからだって僕は思ってる。


 これがもし魔石になんかしたら形が変わるとかだったら、きっと誰かがもうやってたと思うんだよね。


 でも魔石って割ったり削ったりはできないから、形を変える事はできないみたいなんだ。



 これは魔道リキッドを作る時の行程を考えてみれば解る事なんだけど、魔道リキッドって魔石の中心部に魔力を注いで活性化させて、その状態で溶解液に入れることで原液が出来上がるよね?


 要するに魔石ってのは魔力の塊の周りを硬い膜のような物で包んでできてるって事だから、形を変えようとするとその膜が壊れて使えなくなっちゃうんだ。


 だって魔力が活性化したら、その破れた所から魔力が流れ出しちゃって魔道具がうまく動かなくなっちゃうからね。



 魔石の形が変えられないとなると、そこから魔力を取り出すには毎回魔道具に繋ぎ直さないとダメなんだ。


 それってとっても面倒だよね? それに魔道リキッドなんていう便利なものがあるんだから、わざわざそんな事をやろうだなんて誰も考えなかったんじゃないかなぁ?


「もし誰かがどうにかできないかなぁ? って思ってたら、まだできてないのはおかしいもん。こんな簡単なものなんだから」


 僕はこれから作ろうと思ってるものの事を思い浮かべながら、そう考えたんだ。



 前の世界にはねぇ、実は魔道具が一個も無かったんだよ。びっくりだよね。


 じゃあみんなどうしてたのかって言うと、機械ってのを使って魔道具の代わりにしてたんだ。


 その機械ってのは魔力の代わりに電気ってので動いてたんだけど、前の世界ではその電気ってのを乾電池って言うちっちゃな筒に入れて持ち運ぶ事が出来たんだよね。


 そう、僕はこの乾電池ってのを魔石を使って作れないかなぁ? って考えたんだ。


 魔石の形は変える事ができないけど、入れ物の形はどんな風にでも変えられるもん。


 だからね、後は簡単にその入れ物を魔道具に付けたり外したりできれば、電気の乾電池とおんなじように使えるようになるはずなんだ。



 この魔石の乾電池、結構簡単に出来るんだよ。


 だって魔石から魔力を取り出す回路図はもうあるんだから、ちっちゃな筒に魔石を固定して、そこから回路図で魔力を取り出せばいいんだもん。


 それに魔力がなくなった後は、その回路図を通して魔力を注いでやればまた使えるようになるんだよね。


 魔石は魔力が少なくなるとくすんで来るから、魔石が筒の外からでも見えるようにしてやれば取替え時もすぐに解るし、同じ大きさの物を何個か作っておけば、外してすぐに次のが付けられるから、これができちゃえば魔道リキッドみたいに使えるようになるはずなんだ。


 でね、この魔石の乾電池に必要になるのが、僕が魔道具の本で探してた魔力を通しやすい素材って訳。


 だって魔石が入った筒を作っても、そこから魔力を魔道具に通せなかったら意味無いもん。


 だから筒とそれを取り付ける魔道具、その二つを繋ぐ場所にはこの魔力を通しやすい素材と言うものが絶対に必要だったんだよね。



「そっか、やっぱりミスリルとかオリハルコンが一番なんだね」


 前にロルフさんたちが魔法の武器を作るにはこう言うのを使うんだよって言ってたけど、この二つはやっぱり魔力を通しやすいんだね。


 でも、流石にこんなのを使えるはずが無いから、僕は他にも何か無いかなぁって先を読み進めたんだ。


 そしたら、その問題はすぐに解決しちゃった。


「へぇ~、鉄は殆ど魔力を通さないんだね。それに銅もあんまり通さないのか。あっ、でも!」


 金属で言うと、金や銀、それにプラチナとかは魔力をよく通すんだって。


 だけどそんなのばっかり使ったらとっても高くなっちゃうよね。だから、別の方法がこの本には書かれてたんだ。


「そっか、銅とか鉄に金とか銀を混ぜて使ったりできるんだ。それにミスリルとかなら、真ん中にちょこっと使うだけで魔道具にできちゃったりするんだね」


 金とかは柔らかいから武器に使えないでしょ? だから鉄とかに混ぜて使ったり、溝を掘って、そこに流し込んだりして魔法の武器を作る事もあるんだって。


「って事は魔石の乾電池を作ろうって思ったら、鉄に金か銀を混ぜたのを使えばいいってことかな?」


 この本によると、どうやら銀よりも金、金よりもプラチナの方がよく魔力を通すんだって。


 プラチナなんて見たことも無いから使うなら金か銀て事になるけど、魔力をよく通すって言うのなら値段は高くても金を使った方がいいよね。


 ただ、僕は金なんて持って無いんだよなぁ。


 一応何かの時にいるかもって金貨は一枚持ってるけど、流石にこれを使っちゃダメだよね?


「お母さん、持って無いかなぁ?」


 そう思った僕は、一度部屋を出て台所へ。そこにいたお母さんに聞いてみたんだけど、


「あるわよ」


 そしたら、あっさりとこう言われちゃった。


 僕は知らなかったんだけど、この村の近くにある森の中を流れてる川では、ちょびっとだけど砂金が取れるんだって。


「みんなね、これを知ると初めは取ろうとするのよ。でも川に入って砂金を探すより獲物を狩った方がお金になるから、みんなすぐに飽きちゃうのよね」


 お母さんと一緒に居たヒルダ姉ちゃんが言うには、村の女の人は森に入れるようになるとみんな一度はやってみようって考えるんだって。


 だけど森の中の川はお水が冷たいし、1時間くらいやっても全然取れない事もあるからみんなやらなくなっちゃうんだってさ。


「そうそう。だからうちにあるって言ってもほんの少しよ。でも、なんに使うの?」


「乾電池に使うんだ!」


「かんでんち? う~ん、よく解らないけど、砂金なんてそんなに価値のあるものでも無いし、使うのなら出してあげるわ」


「やったぁ!」



 こうしてちょびっとの砂金を手に入れた僕は、早速作業部屋へ。


 最初の一個だから失敗するかもしれないけど、作ろうって思ってるものとおんなじ事ができないとダメだからって、前にブレードスワローから獲れた大豆くらいの魔石を机から取り出して、それを鉄の板に固定してから魔力を取り出す魔道回路図を書いていく。


 それが出来上がったら今度は小さな筒を作ってその板を中に固定。


 その時に魔石が外から見えるように穴をあけておいたんだ。こうしたら、魔力が無くなってきたらすぐに解るからね。


 でね、最後にさっきの砂金と鉄を使ってクリエイト魔法で作った合金を回路図板に繋いでそれがむき出しになるように筒の前と後ろを塞げば魔石の乾電池の完成だ。


「ええと、実験は……簡単だし風車の魔道具で作ればいいか」


 これなら一番小さい一角ウサギの魔石でも作れるって事で、回るとこと魔石を取り付けた回路図、それにさっき作った魔石の乾電池をはめる場所だけの簡単な魔道具を作って実験開始。


「うまく動くかなぁ?」


 どきどきしながらスイッチを入れると、風車の魔道具が勢いよく回り始めてくれた。


 これ、魔道具に使った米粒くらいの小さな魔石にも魔力はあるから一応回りはするんだけど、それだけだとこんなに早くは回らないはずなんだよね。


 だからこれで一応は成功。


「でも、一度外して、もういっぺん付けてみないと」


 この魔石の乾電池は付けたり外したり出来なきゃ意味ないもん。


 と言う事で僕はこの後、魔道具から魔石の乾電池を付けたり外したりしてみたんだけど、何度やっても風車はちゃんと回ってくれたんだよね。


「やった! 魔石の乾電池、ちゃんとできたんだ!」


 こうして僕は、魔道リキッド無しでも魔道具を動かす方法を手に入れたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ブックマークが900を越えた上に総合ポイントも3400を超えました! 本当にありがとうございます。


 もしこの話が気に入ってもらえたのなら、お気に入り登録や評価を入れていただけると嬉しいです。


 感想共々続きを書く原動力になるので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ