216 実はね、お母さんもとっても凄かったんだよ
お父さんがいいって言ってくれたから、僕はピュリファイの効果がある大きさいっぱいの水がめを作る事にしたんだ。
でも焼き物の水がめは作れないから、僕のはクリエイト魔法で作る石の入れ物なんだけどね。
と言う訳で、お父さんたちと一緒にお庭へ。
僕、ここで一度さっき見たピュリファイの大きさを思い出しながら仮の入れ物を作ってみる事にしたんだ。
だってこの頃は石を作るのにも慣れてきてるけど、いきなり作ってもし失敗しちゃったらいやだし、この水がめを一番よく使うのはお母さんだから実際に見てもらって、どこかダメなとこが無いか聞きたかったからね。
「おい、ルディーン。流石にこれは大きすぎないか?」
でね、僕がクリエイト魔法で実際に作った石の水がめを見て、その場でお父さんが言った一言がこれ。
「なんで? さっきお父さん、大きくてもいいって言ってたじゃないか」
「いや、いくらなんでもこれは……」
そう言ってお父さんが目を向けた先にあるのは、大人の人が足を伸ばしても楽に入れるくらい大きなお風呂。
あっ、ほんとにお風呂な訳じゃないよ? 僕は水がめのつもりで作ったんだけど、それでもお風呂に見えるくらい大きいんだから仕方ないよね。
「だってこの魔道具だとこれくらいいっぺんにきれいになるんだもん。ちょっと見ててね」
僕はそう言うと、仮で作った入れ物に魔石をくっつけて起動してみたんだ。
そしたら、高さはこれくらいで良かったんだけど、長さは効果範囲の方がちょっと短くって、逆に横幅は広かったんだよね。
だから僕は、それを参考にしてもういっぺんクリエイト魔法を発動。
丁度いいくらいの大きさに作り変えたんだ。
「ねっ。ちょっと違っちゃってたけど、大体これくらいの大きさであってたでしょ?」
「ああそうだな。しかし、これを台所の中に置くとなると、流石に少し邪魔じゃないか?」
お父さんにそう言われたもんだから、僕はもういっぺん作った石の水がめを見てみたんだ。
そしたら、確かに台所の中に入れるにはちょっと大きいんだよね。
「そっか。こんなに大きかったら、ちょっと困っちゃうかも」
「そうね。確かにこれが台所にあると少し困ってしまうかもしれないわ。でも、これだけ大きいと便利なのも確かなのよね」
僕とお父さんはやっぱり大きすぎるかもって思ったんだけど、お母さんは違うみたいなんだよね。
お水って僕たちが思っている以上によく使うから、こんだけおっきな水がめがあったら、お母さんたちは本当に助かるんだよって言うんだ。
「なるほど。ならこれは外に置く事になるが、問題はどこに置くかだな」
置くとしたら台所のすぐそばがいいよね。でも外に置くとなると、色々と問題もあるんだ。
だっていっくら魔法できれいになるって言っても外だと砂埃とか飛んできた葉っぱとかが入っちゃうし、雨が降った時も全部水がめの中に入っちゃうもん。
「そうねぇ。雨に関してはとりあえず簡単な屋根を作って、後は水がめに蓋をつけるくらいしかやりようが無いんじゃないかしら」
「そうだな。家の中の水がめだって使わない時は木の蓋がしてあるんだし、それが一番か」
木の板を使えば簡単な屋根くらいすぐに作れちゃうから、お父さんとお母さんはそうしようって考えたみたい。
でもね、どうせそこまでやるんだったら僕、もっといい考えがあるんだよね。
「それじゃあさぁ、水がめを高いとこにおいて、下っかわにお水を出せるとこを作ろうよ。あっ、それより台所までお水が流れるようにしちゃった方が早いかな?」
僕の前世のお家には水道ってのがあったんだよね。
それは台所とかにある蛇口ってのを捻ると、そこからお水が出るって言う便利なものなんだ。
でね、それは高いとこにお水を持ち上げて、そこからいろんな場所に管を通してその蛇口ってとこまでつなげる事で使えるようになってるんだ。
僕、思うんだけど、『若葉の風亭』にあった水洗トイレも、これと同じ方法で作られてるんじゃないのかなぁ?
「台所に水が流せるようにする? おい、ルディーン。そんな事が本当にできるのか?」
「うん! その高さまで持ち上げる土台は僕がクリエイト魔法で水がめと一緒に作っちゃえばいいし、その時水がめの上っかわも水を入れるとこ以外は塞いじゃえば屋根もちょっとだけ作ればいいもん。作るのはそんなに大変じゃないよ」
高いとこに水がめを置くとお水を入れるのはちょっと大変になるけど、お父さんは重さが軽くなる魔道具を使ってお水を汲んで来るって言ってたからそこまで上る階段を作っちゃえばいいと思うし、それでも大変なら持ち上げる滑車も隣に作っちゃえばいいもん。
もしこれを木工職人さんが木で作ろうって思ったら大変かもしんないけど、その殆どを僕がクリエイト魔法で作っちゃえるからやれない事、無いんだよね。
「いや、そうじゃなくて。家の中に水が流れるって言うのはどう言う事だ? 俺にはよく解らないのだが」
「え~、そのまんまだよ。お水は下に向かって流れるでしょ? だから水がめの下っかわにお水が出せるとこを作って、そこから台所の中に流れる道を石で作ってやればいいだけじゃないか」
「ああ、なるほど。酒屋にある横倒しの樽みたいなもんか。あれも下側に栓が来るように置いて、その栓を抜く事で酒を出してるからなぁ。要は、それをこの水がめにも作るって事だな」
そう言えばそんなのもあったっけ。
基本は同じもんだから、僕はお父さんにそうだよって言ったんだ。そしたらやっと納得してくれたみたい。
「でも、本当にそんなものが作れるのか? 結構大変な気がするんだが」
「大丈夫だよ。でも、失敗しちゃうといやだから、一度ここに作ってみるね」
僕はそう言うと、お庭の土を使って台所の横に作る水道もどきの試作品を作ってみたんだ。
そしたら結構上手くできて、僕は大満足。
「ほら、できたでしょ?」
「なるほど、この石の樋を台所に引き込めば、この穴から出た水を簡単に使えるって訳だな」
「うん。普段は木の栓をしておけばお水は出ないもん。ね、これなら簡単でしょ?」
多分水場の近くにいる魔物の皮を使えば蛇口も作れるんだろうけど、中がどうなってるかなんて僕、よく知らないから今んとこは木の栓で我慢。
これでも十分便利なんだから、別にいいよね。
「あら、ルディーン。これじゃダメよ」
でもね、試作品の水道もどきを見たお母さんからこんな事を言われちゃったんだ。
だから僕、首をこてんって倒して、なんで? って聞いたんだよね。
そしたらさ、
「だってこれ、水がめの下がまっすぐですもの。これじゃあ最後の方の水は外に流れてこないわよ」
って言われちゃった。
「そう言えばそっか!」
お母さんに言われなかったら僕、まったく気付かなかったよ。
「じゃあさ、お母さん。この穴が下になるように、水がめを傾けちゃえばいいかなぁ?」
「そうねぇ。それより、ルディーンはこの水がめを魔法で作るんでしょ? それなら水がめの底をこういう形にすればいいんじゃないの? 水がめ自体を傾けると、変な力がかかって壊れやすくなるかもしれないもの」
僕が水がめを斜めにした方がいい? って聞くと、お母さんはお庭に簡単な絵を描いて、それよりも底の形をこうしたらいいよって教えてくれたんだ。
「そっか! お母さん、頭いい!」
お父さんもお水を運ぶのに魔道具を使うなんて事を考え付いたし、二人とも本当に凄いなぁ。
僕一人じゃ絶対思いつかない事ばっかりだもん。
お父さんとお母さんに相談して、ホント良かった。
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