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190 もしかして、これも無いの?


「それじゃあ、まずは簡単な記号を覚えるところから始めましょうか」


 バーリマンさんは教科書を開いてそう言ったんだけど、それを聞いた僕は頭をこてんって倒したんだ。


「なんで? 教科書ってのに書いてあるなら、別に覚えなくてもいいんじゃないの?」


「えっ?」


 魔法陣の書き方を覚えなきゃいけないのは解るんだけど、記号は見ながらでも書けるんだから覚える必要なんて無いよね?


 そう思った僕は、そのことをバーリマンさんに聞いたんだけど、そしたら物凄くびっくりされちゃったんだよね。


「えっと、それは……そう言えばそうよね。学園ではないのだから試験があるわけじゃないし、確かに無理に覚える必要は無いかもしれませんね」


 でも、すぐに考え直したみたいで、笑いながら僕にそう言ったんだ。


「そうじゃのう。じゃが、やはりある程度は覚えておいた方がよいとわしは思うぞ」


 ところが僕とバーリマンさんの授業を横で聞いてたロルフさんが、こんな事を言い出したんだよね。


 だから今度はロルフさんになんで? って聞いたんだけど、


「確かに記号は書き写せば使えるじゃろうが、必要になるたびに本を開いて探していてはかなりの時間が掛かってしまうのではないかな? そう考えると、やはり覚えてしまった方が早いとわしは思うのじゃよ」


 そしたらこんな答えが帰って来たんだよね。


 そっか。確かに魔法陣を書くたんびに教科書を開いてどこに書いてあったかなぁって探してたら大変だよね。


 でもさ、ならそれだけを別のものに書いとけばいいんじゃないのかなぁ?


「だったら、一覧表を作っとけばいいんじゃないの?」


「一覧表?」


「うん! それに書いとけば、わざわざ教科書を読まなくてもすぐに解るでしょ?」


 基本属性の記号だけでも7つもあるし、その他にも色々な記号があるって言うのなら、そんなの覚えるのはとっても大変だよね。


 でもさ、魔法陣に書く記号を属性とか力の流れる方向とかみたいに使う用途ごとにまとめて表を作っとけば、簡単に魔法陣が書けるようになるじゃないかって僕、思ったんだ。


「いやちょっと待つのじゃ。ルディーン君。その一覧表と言うのはどんなものなんじゃ?」


 ところがロルフさんがこんな事を言い出したもんだから僕、びっくりしちゃった。


「えっ? 一覧表、知らないの?」


「うむ、そのような物は聞いたことないのぉ」


 何とロルフさんは一覧表を知らなかったんだよね。


 でもさ、ロルフさんは知らなくったって、錬金術ギルドのマスターをしてるバーリマンさんは知ってるよね?


 そう思った僕がそっちを見ると、


「当然知ってるよねって顔で見られても困りますわ。私も一覧表などと言う物の事は聞いたこともありませんから」


 何と、こんな風に言われちゃったんだ。


 あっ、でももしかしたら違う名前なのかも?


 生クリームだって名前がなくって、屋台のおじさんは牛乳の上に溜まってるやつって呼んてたもん。


 一覧表はあるけど、名前が付いてないって事もあるかもしれないよね。


 そう思った僕は、一覧表がどんなもんなのか教えてあげる事にしたんだ。


「あのねぇ、一覧表ってのは一枚の紙にいろんな物を書いて、その横に簡単な説明を書いたものだよ。例えばねぇ」


 僕はそう言うと、テーブルの上にあった羊皮紙に魔道具の回路図に使う記号を何個か書いて、その横に簡単な説明を書いて行ったんだ。


「こんな風にいろんな記号を縦に並べてその横に説明を書いたものの事なんだけど、知らない?」


「ほう。一覧表と言うのは目次のような物なのか? いや、用途から考えるに、まったく違う物と考えたほうがよいか」


「そうですね。これはどちらかと言うと試験の時に用いられるカンニングペーパーをより解りやすく纏めた物と言った所でしょうか」


 なんと、ホントに一覧表を知らなかったんだ。


 僕が書いた簡単な表を見て感心するロルフさんたちを見て、僕はびっくりしたんだ。


 だって目次があるんだから、まさかこう言うのが無いなんて思わなかったもん。


「して、ルディーン君。もしやこの記号は用途によって書く場所を別けておるのではないかな?」


「えっ? うん、そうだよ。魔道具でも記号ごとに使う場所が違うでしょ。だからそういうのを纏めて同じとこに書いとけば、回路図を書いてる時にここはどんな記号を使えばよかったっけ? って思っても、その場所に使う記号が書かれたところ見ればすぐに解るでしょ」


「なるほどのぉ。確かにそうしておいた方が必要な記号を見つけるのも簡単じゃろうて」


 さっきちょっと教科書を見た感じからすると、魔道具の回路図より魔法陣の記号の方がいっぱい種類があるみたいなんだよね。


 だから、ちゃんと使う場所ごとに別けて書かないと、一覧表を作ってもその時にいる記号を探すのがとっても大変になっちゃうと思うんだ。


「後ね、簡単な説明の後にその記号が載ってる教科書のページを書いとくんだ。そしたら、記号の横の説明じゃよく解んない時でもそのページを開けばすぐに解るもんね」


「ふむ。確かにこれは便利なものじゃのぉ。しかも理にかなっとる」


「ええ。この一覧表という書式は魔法陣や魔道具の回路図の記号だけでなく、色々な場面で役に立つでしょうね」


 そう言うと、ロルフさんとバーリマンさんは二人でなんかお話を始めちゃったんだ。


 と言う訳で、僕のお勉強はちょっとお休み。


「ルディーン様。旦那様とギルドマスター様はなにやらお話があるご様子。ですから我々は邪魔にならぬよう、別室で待つ事にいたしましょう」


「うん、いいよ。それとね、僕の事はルディーン様じゃなくってルディーン君って呼んでね」


「そうでございました。それではお茶とお菓子をご用意いたしますから、どうぞ此方へ」


「うん!」


 こうして僕とストールさんはロルフさんたちを部屋に残して、一旦いつもジャンプで飛んでくる隣の部屋へ移動。


 そこでお茶を飲みながら、お話し合いが終わるのを待つことになったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ブックマークが680を越えた上に総合ポイントも2500を超えました! 本当にありがとうございます。


 もしこの話が気に入ってもらえたのなら、お気に入り登録や評価を入れていただけると嬉しいです。


 感想共々続きを書く原動力になるので、よろしくお願いします。


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カンペで作る奴が居るのに一覧表という考え方は無いのか……
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