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176 そっか、邪魔なのからやっつけないとね


 思ったよりお肉が美味しかったらしくって、結局シェルクゥイルだけじゃなくヒルフェザントも1匹解体してみんなのお腹の中へ。そのおかげで、


「ふぅ、流石にちょっと食べ過ぎたわ」


 ってレーア姉ちゃんが言う通り、みんなのお腹はパンパンで動けなかったくらいなんだ。


 だからしばらくの間、お昼休み。


 でね、僕はその間に作った串をクリーンの魔法で洗ってから玉に戻したり、ブロックや石のまな板をクラッシュの魔法でばらばらに壊しておいたんだ。


 僕たちみたいにここでお肉を焼く人なんていないだろうから、こうしとかないと他の人の邪魔になっちゃうかもしれないからね。


「あっ、火がついてる枝に水をかけとかなきゃ」


 元々細い枝ばっかりだったからもう殆ど燃え尽きちゃってるけど、それでも火はきちんと消しとか無いとね。


 だってここは森のすぐそばだし、もし風かなんかで火がついた枝が飛んでいって火事になっちゃったら大変だもん。


 と言う訳で僕は一般魔法、ドリンクウォーターで手からお水を出して火がついてる枝にじょぼじょぼとかけたんだ。


 そしたらそれを見てたミラさんが、ちょっと感心したみたいな顔をしてこう言ったんだよね。


「へぇ、ルディーン君って水まで魔法で出せるんだ」


「うん。これは魔法使いなら誰でもできると思うよ」


 何せこれは1レベルの一般魔法だから、キャリーナ姉ちゃんだって呪文を教えたら出せるはずなんだ。


 ただ、これは持ってる魔力によって出る量が違っちゃうから、僕みたいにいっぱい出せないかもしれないけどね。


「ホント、ルディーンって魔法でいろんな事ができるのよ。ただ、村の中だとあんまり使い道無いんだけど」


「そう? さっきの食器を洗う魔法とか薪をすぐに作っちゃう魔法とかは、村でも便利なんじゃない?」


「確かにきれいになる魔法は便利だけど、ルディーンに毎回魔法を使ってって頼む訳にはいかないでしょ? それに薪は村で使う分を一度に大勢で作るもん。少しくらいすぐに乾燥させられても、他のを今までどおり備蓄乾燥させるなら意味無いじゃない」


「そっか、そう言えばそうね」


 お姉ちゃんが言う通り魔法って便利だけど、それだけで全部できるわけじゃないんだ。


 さっきは魔法でお水を出したけど、そんな事するより井戸から汲んだ方が絶対早いし、ご飯のお片付けだって魔法を使ってできない事無いけど、お水と石鹸を使ってごしごし洗った方が何となくきれいになった気がするもんね。


 それにこのクリーンって魔法を使えばお風呂に入らなくても体をきれいにできるけど、お風呂に入ったほうが気持ちいいもん! やっぱり魔法でやるより普通にやった方がいいって僕は思ってるんだ。


 ただ、村の人たちのパンケーキを作る仕事のお片づけだけは魔法でやるけどね。


 だって、洗い物がいっぱいあるんだもん。普通に手でごしごしなんて、やってられないよ。



 とまぁ、こんな感じで1時間ほど休憩した所で、いよいよクラウンコッコをやっつけようって話になった。


「レーア姉ちゃん、どれからやるの?」


「そうねぇ。ルディーン、クラウンコッコがどのあたりにいるか教えてくれる?」


 でね、お姉ちゃんにこう言われたから僕は探知魔法で今どのあたりにクラウンコッコがいるのかを調べて、それを地面に書いて教えてあげたんだ。


「結構いるのね。ねぇマリア、どれを狙えばいいと思う?」


「そうねぇ。やっぱり森の入り口から入って奥へ行く途中の、この辺りのを狩るべきじゃないかしら」


 お姉ちゃんがどうしようって聞いたら、マリアさんは今僕たちがいる場所からちょっと離れたとこにいるやつをやっつけようって言ったんだ。


 でもさ、もっと近くにもいるのに、なんで?


 そう思って聞いてみたんだけど、そしたら、


「こいつを倒さないと森の奥へ行くのに大きく迂回しなくちゃいけなくなるでしょ。後何匹か邪魔になる位置のがいるけど、こいつらがどう考えても一番邪魔だから、狩るのならこいつらからがいいと思うのよ」


 って答えが帰って来た。


 そっか、僕ならやっつけられるかもしれないけど、普通だとクラウンコッコは大人の人でも相手するのが大変だって言ってたもん。


 なら先に邪魔なのから狩っておいて、残りは村の人たちの手が空いてるときに狩ってもらえばいいって事なんだね。


「解った。じゃあルディーン、まずはここに行くから案内お願いね」


「うん!」



「あっ、ホントにいた」


 しばらく森の中を進むと、遠くの木の陰から二匹の大きなクラウンコッコの姿が見えたんだ。


「ミラ、鳥の魔物は音に敏感なんだから、大きな声を出しちゃダメでしょ」


「ごめん」


 距離はまだ100メートル近くあるから多少声を出した所で気付かれる事は無いけど、マリアさんの言う通り鳥の魔物は鼻が利かない分他の魔物に比べて音に敏感だから、狩りをする時はあんまり大きな声を出しちゃだめなんだよね。


 と言う訳で、ここからはみんな静かに行動。


 とりあえず50メートルくらいまで近づけば一応僕の魔法はとどくけど、狙ったところに当てようと思ったらもうちょっと近づきたいんだよね。


 だって今回は急所を外しちゃったら危ないクラウンコッコが相手だもん。


 だから確実に当てる自信がある30メートルくらいまで近づいてねって、レーア姉ちゃんたちにはお願いしてあるんだ。


 音を立てたりクラウンコッコの視界に入っちゃったりしないように、僕たちは緊張しながらちょっとずつ前に進んで、なんとか気付かれずに魔法が絶対当たるって所まで到着。


 ただね、


 コッコッコッコッコッコッコッコッ。


「ねぇ、こんなに鳴き声が大きいんだから、ここまで慎重に近づかなくても良かったんじゃない?」


 小声でミラさんがそういうくらい、クラウンコッコの鳴き声がうるさいんだよね。


 実際ミラさんのこの声だって、ちょっと聞きづらいくらいなんだもん。


 これなら直接視界にでも入らない限り、足音を立てながら近づいても気付かれないんじゃ無いかな?


 でもね、マリアさんだけはやっぱり静かに行動した方がいいって言うんだ。


「それでも用心に越した事は無いでしょ。もしかしたら自分の鳴き声以外の音に、物凄く敏感なのかもしれないんだから」


「それもそうね。もし気付かれたら危ないし、慎重に行動する方がやっぱり安全だもん」


 と言う訳で、みんなして慎重にクラウンコッコの方を木の陰から覗き込んだんだ。


 そしたらまったくこっちに気が付いてないみたいで一安心。


 一応もし一発で倒せなかった時のことを考えて、お姉ちゃんたちも弓をいつでも撃てるように用意してからちょっとずつ離れた場所に移動した。


「それじゃあルディーン君、お願いね」


「うん。マジックミサイル」


 マリアさんにそう言われた僕が呪文を唱えると、練習の時と一緒で二つの光の玉が僕の頭の横辺りに浮かび上がる。


 そして2匹のクラウンコッコの頭に向かって、僕はその光の玉を放ったんだ。


 音も無く光の線を引くように森の中を進む二発のマジックミサイルは、そのまま吸い込まれるようにクラウンコッコの頭に命中。


 クケッ!


 その二匹は小さく鳴き声を上げた後、その場に崩れ落ちてぴくぴくと痙攣を始めたんだ。


 そして辺りは、さっきまでクラウンコッコの鳴き声であんなにうるさかったのが嘘のように静まりかえる。


「えっと、倒せたのよね?」


 そんな中、確認するようにミラさんがそう一言呟くと、初めてみんなが嬉しそうな声をあげたんだ。


「やった! 本当にクラウンコッコを倒しちゃった」


「お父さんから聞いてはいたけど、まさかこんなに簡単にクラウンコッコを狩っちゃうなんて」


 手を取り合って喜ぶエイラさんとレーア姉ちゃん。


 そしてマリアさんは、成果を確かめる為に倒れてるクラウンコッコに近づいていった。


「きれいに頭を撃ち抜いてるわ。これじゃあ生きてるはず無いわね」


 その場で二匹ともちゃんと死んでることを確かめると、喜びをかみ締めるみたいにガッツポーズ! そして早くこっちへ来なさいよって僕たちを笑顔で声をかけたんだ。



 そんな中、僕だけはちょっと違ってた。


 と言うのもクラウンコッコを倒した瞬間、何となくふわっとした変な感覚があったからなんだ。


「えっとこれって」


 その感覚に覚えがあった僕は、喜んでるお姉ちゃんたちをよそにステータス画面を開いた。


「あっ、やっぱり上がってる」


 そこには、ジョブ:賢者《11/30》の文字が。


 そう、ブラウンボアをやっつけた日から久しぶりに、僕の賢者のレベルが1つ上がって11レベルになってたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 前話でレーアがルディーンに言った、鉄の玉ってまだある? と言う部分が鋼の玉ではないかと言う誤字報告を頂きました。


 ですがこのシーンでは鋼と鉄の違いがわかるルディーンと違って、レーアはそれが理解できていないのでわざと鉄の玉と表現しているんですよ。


 この様な事情なので折角誤字報告をして頂いたのですが、この報告は破棄させてもらいました。


 すみません。


 ですが頂く誤字報告にはいつも大変助かっているので、もし気を悪くされていないのでしたら、これからも報告をして頂けたらありがたいです。


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