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159 小さめの積み石と穴あけ魔法


「この石、割れないかなぁ? ほら、石屋とかはノミで割って使ってるでしょ?」


「いやいや、あれはあれで技術がいると思うぞ。それに石を割るような大きなノミも、それを打つ頭が重い金属製の槌も無いしな」


 大きな石の塊を前にテオドル兄ちゃんがこんな事を言い出したんだけど、お父さんに無理だって言われちゃった。


 でもさ、確かに石屋さんとかは簡単に割ってるように見えるかもしれないけど、あんな事ができるのはいっつもお仕事でやってるからだと僕も思うんだよね。


 だからそれをまねしてやろうと思っても、そう簡単にうまくいくとは思えないんだ。


 でもね、このテオドル兄ちゃんの話を聞いて僕はある事を思いついたんだ。


「そうだよ。おっきいならちっちゃくすればいいんじゃないか」


「なんだ、ルディーン。この石を割る、いい方法でもあるのか?」


 魔石を使って物を生み出す創造魔法と違ってクリエイト魔法はそこにある物を使って物を作る魔法だから、元の材料よりも大きな物は作れないんだよね。


 だからさ、さっきまでみたいに土を使うんじゃなくて、この石を材料にして2個の石が出きるように魔法を使えばいいんじゃないかって、僕は考えたんだ。


「うん。でもできるかどうか解んないから、とりあえずやってみるね」


 そう言って僕は、さっき作った石に集中する。


 作りたいのは正方形の石じゃなくって、今の形を半分に割ったような大きさだ。


 だからそれを頭に思い浮かべて、クリエイト魔法を使ってみる。


「おっ、半分に割れたぞ」


 そしたら僕が思っていた通り、縦に割ったような形の二つの石になったんだよね。


 ただ、それでもやっぱり問題があったんだ。


「でもなぁ、半分になったから場所は前より取らなくなったけど、高さの問題はそのままだ」


 そうなんだよね。


 確かに幅は50センチくらいから25センチくらいになったけど、高さは50センチくらいのまま。


 これだと一個では低いし、二個積んだら高すぎるってのは今までと変わんないんだ。


 だから今度はこれに乗っける為のもうちょっと小さな石を作らないといけないって事で、僕は最初に作った大きな石を材料にして何個かの石を作り出すことにしたんだけど……。


「ルディーン、流石にこんなにいらないぞ」


 さっき作った石の上に乗っけられるくらいの大きさを頭に思い浮かべてクリエイト魔法をかけたら、厚さが10センチのコンクリートブロックと同じくらいの石がいっぱいできちゃったんだ。


 でもこれって、よく考えたら当たり前なんだよね。


 だって材料より大きな物はできないのと同じで、材料より小さい物は作れないんだもん。


 だから今回は小さいのを作ろうと思って魔法をかけたから、元の大きさの分だけできちゃったって訳。


 そりゃあ何度か練習すればさ、金属を使った時みたいに作りたいものと残りの材料を別ける事ができるようになると思うよ。


 だけど今の僕には無理だからこうなっちゃったんだ。


「ねえ、お父さん。この大きさの石なら資材置き場においておけば誰かが使うんじゃない?」


「それもそうだな。じゃあ、余った分は後で台車に積んで資材置き場に持っていくか」


 目の前にいっぱいある石を見てどうしようかなぁって悩んでたんだけど、四角く切り出した石なら、いろんな事に使えるから誰かが使うんじゃない? ってテオドル兄ちゃんが言ってくれたおかげで、後で資材置き場に持ってく事になった。


 と言う訳で、今は先に出来た石を使ってかまどを作る事になったんだけど、ここでも一つ問題が。


「この石、四角く出来てはいるんだけど積むとちょっと不安定だなぁ」


 石屋さんが切ったのと違って僕が作った石だから、完全に四角じゃないせいで積むとちょっとぐらぐらするんだ。


 これが小さな丸い石を積んだものなら多少崩れても問題ないんだけど、僕が作ったのは小さいほうの石でも結構大きいから、もし崩れたりしたら危ないんだよね。


「さて、どうしたもんか」


 これにはお父さんも困り顔。


 これが金属や木材ならクリエイト魔法でくっつけることができるんだけど、どうも僕はまだ石をうまく加工できないみたいだからそれは難しそうなんだよね。


 だからなにか他に使える魔法は無いかなぁって思った僕は、ステータス画面を開いて一般魔法の欄を覗いて見たんだ。


「あっ、これが使えるかも」


 そしたら丁度いい魔法があったんだよね。


 それはディグって言う魔法。


 この魔法は本来土に穴を掘る魔法なんだけど、説明文を読むとその穴の大きさは自由に変えられるみたいだし、それに土だけじゃなく石にも穴を開ける事もできるみたいなんだ。


 と言うのもお城や街を守る石壁を作る時に、ただ積んだだけだと攻撃されたらすぐに崩れちゃうから、そうならないように中に鉄の心棒を入れるために使うからなんだって。


「お父さん。石に穴を開ける魔法があるんだ。これで穴を開けて、そこに棒を差せば崩れなくなるみたいだよ」


「へぇ、そんなのがあるんだ。魔法って便利だなぁ」


 と言う訳で早速土台の方の大きな石に穴を開けてみる。


 ステータス画面に書いてある通り、ディグの魔法を使うと範囲を指定するような点が石の上に出てきたから、それを開けたいくらいの大きさに指定したらあっさりとその大きさの穴が開いちゃった。


「おお、ホントに開いたぞ」


 そしたら、それを見たお父さんが感心したようにこう言ったんだよね。


 で、その声に反応したのは、危ないからってちょっと離れた所で遊んでたスティナちゃん。


「なにがあいたの?」


 トコトコと僕たちのところまで歩いて来ると、僕たちが見てる石をみようとしたんだ。


 ところがこの石、高さが50センチもあるから小さなスティナちゃんじゃ開いた穴がよく見えないんだよね。


「ねぇ、なにがあいたの? スティナ、みえない!」


 だから、石の上に開いた穴が見たいスティナちゃんが怒り出しちゃったんだ。


 それを見て慌てた僕は、すぐにスティナちゃんを抱っこして穴が見えるようにしてあげたんだけど、


「ルディーンにいちゃ! ここ、あながあいてるよ。へんだねぇ」


 そしたらスティナちゃんは大きな石に何故か小さな穴が開いてるのを見て不思議に思ったみたいで、その穴に指を突っ込んだりし始めたんだよね。


 まぁ、元々が木の棒でもつっこもうって思ってたから結構大きな穴が開いてるし、穴の角も別に鋭いわけじゃないから怪我をするわけでも無い。


 って事で僕はスティナちゃんを抱っこしたまま、しばらくの間やりたいようにやらせておく事にしたんだ。



 さて、簡単に穴が開けられることが解ったと言う事で、他の石にも穴をあけていく事に。


 これが石壁を作るとかだと上の石と下の石の開ける場所をきっちりと合わせないといけないけど、今回はかまどを作るだけだからそんなに気にしなくてもいいよね。


 と言うわけだから、ディグの魔法で使う全部の石に穴を開けてったんだ。


 で、それができたらいよいよ石積みだ。


 流石に近くにいると危ないからって、僕とスティナちゃんはちょっと離れた所で見学。


 そしてお父さんとお兄ちゃんたちとでおっきな石の上にちっちゃな石を積み上げて、そこに仮として庭掃除用のほうきの柄を差し込んだ。


「よし。上と下の穴はこれであったな」


「うん。それじゃあ俺はひとっ走りして、資材置き場から心棒になりそうなものを持ってくるよ」


「頼む。後ついでにかまどにかける鉄の棒も二本、一緒に持ってきてくれ。その間に俺とディックでもう一つの方も穴合わせをしておくから」


「解ったよ。じゃあ行ってくる」


 テオドル兄ちゃんが外に走って行くと、今度はお父さんとディック兄ちゃんが二人で石を積んで穴の位置を合わせ始めたんだよね。


 でも今回は二人だから、さっきよりは手間取るんじゃ無いかな? なんて思ってみてたんだけど、


「よし、これで大丈夫だな」


 なんと、あっさりと成功させちゃったからびっくりだ。


「お父さんたち、凄いや! 簡単に穴をあわせちゃった」


「すごい、すごい!」


 これには僕とスティナちゃんも大興奮。


 でもお父さんたちからすると驚く様な事じゃなかったみたいで、


「上に置く石はそんなに重くないし、それにルディーンが作った石は四角くて積みやすいから、そんなに難しい作業でも無いんだぞ」


「そうそう。一人でだとちょっと大変かもしれないけど、二人でやればあっと言う間だよ」


 なんて言ってるんだ。


 そっか、お父さんたちにとっては簡単な事なんだね。


 でね、その話を聞いたこの時の僕は、こんな風にのんきに考えてたんだ。


 だって僕が作った四角い石ならしっかりと計って穴を開けなくても、ちょとずれてるだけなら簡単に合わせて積み上げられるって事がどれだけ便利だってことがまだ解ってなかったんだもん。


 そして当然、すぐ横にいっぱい転がってる石の存在なんて僕の頭からはすっかり抜け落ちちゃってるんだよね。


 だってまさか近い将来、その石でいろんな物を村で作る事になって、その度に崩れないように心棒を入れる穴を開けにいかないといけなくなるなんて、この時の僕は考えてもいなかったんだから。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ブックマークが400を越えた上に総合ポイントも1700を超えました! 本当にありがとうございます。


 次の目標は日間ファンタジーの100位以内! まぁ流石に一日で100ポイント近くは難しいかもしれませんが、もし応援していただけるのでしたら、下にある評価を入れて頂けると本当にありがたいです。


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